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まちおこしレポート
砂川市

地域に根差した居場所づくり。SHIROの新しいホテルの形20260831

地域に根差した居場所づくり。SHIROの新しいホテルの形

「自分たちが毎日使いたいものをつくる」というコンセプトをベースに、開発から製造、販売まですべてを一貫で行っているコスメブランド「SHIRO」。砂川に製造拠点を置き、現在、道内外に直営店を構えるほか、イギリスや台湾、韓国など海外にも出店し、日本を代表するブランドへと成長しました。自然の恵みを余すことなく素材として活用した製品はもちろん、エシカルなものづくりとその姿勢に共感するファンも多く、2023年にオープンした砂川市内の「みんなの工場」には、連日、国内外からたくさんの人が足を運びます。
そのSHIROが、次は砂川駅前にホテルとサービス付き高齢者住宅(サ高住)を併設した新たな施設「PARK SHIRO」を2027年1月にオープンする計画を発表し、注目されています。今回は、そのプロジェクトのまとめ役として奔走中の武田浩平さん(みんなの工場施設長、企画・製造部門/砂川事業部門部門長)に、「PARK SHIRO」のことをはじめ、砂川への想いなどを伺いました。

新工場設立をきっかけに始まった「みんなのすながわプロジェクト」

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「PARK SHIRO」のプロジェクトの事務局も務めている武田さんは「決めなければならないことがいっぱいで、オープンに間に合うのか?と思うこともあります」と苦笑しますが、そんな忙しい中、「何でも聞いてください」と取材に応じてくれました。

みんなの工場を作る際の「みんなのすながわプロジェクト」にも大きく関わっていた武田さん。
「みんなのすながわプロジェクト」は、工場の移転・拡大を検討していたことがきっかけで始まったといいます。

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「前身である『ローレル』時代から創業の地である砂川に工場があったんですが、事業拡大に合わせて工場を大きくする必要が出てきたんですよね。ちょうど会社が土地を所有していたこの場所に建てようという話になったのです。工場新設を機に、創業以来お世話になってきた砂川になにか恩返しができないかと考えていたところ、市議会議員の方から、砂川への想いを伺いました。どこのまちもそうかもしれませんが、砂川市も人口減に歯止めがきかない状況で、このままだとまちの存続も危ういと。そこで、自分たちが幸せなだけではなく、人が集まれるような場所づくりをしなければならないねという話になりました」

とはいえ、企業が一方的に場所を作るだけでは意味がない。まちのためになる持続的な場所を作ることを考えたとき、市民と一緒に作っていくことに意味があると、この場所の在り方について考える「みんなのすながわプロジェクト」を2021年に発足しました。プロジェクトには、市民を中心に市外に暮らす砂川の応援者らが参加しました。

プロジェクトでは、地域説明会、ワークショップ、座談会などを何度も実施。市民がこの場所に何を求めているのか、どんな場所であってほしいかなど、意見を交わし、深く掘り下げていき、お互いを理解することに重きを置きました。

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「この場所に何があったらいい?って聞いたら、最初は、都会にあるようなチェーン店がほしいという話がありました。確かに人は集まるかもしれないけれど、我々が作りたいと考えていたのは、みんなの未来の砂川。自分たちで考え、この先も持続的に循環させていける場所づくりをしたいということを伝えながら、対話を重ねました。そのうち、ライブラリーがあったらいいなとか、アイデアが次々と出てきて、皆さんの意識も変わっていくのが感じられました」

そして、2023年4月に市民の声も反映した「みんなの工場」が完成しました。

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市民に愛されたホテルを新たな交流拠点に。「PARK SHIRO」プロジェクト

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「みんなのすながわプロジェクト」の座談会でも話題に出ることが多かった「砂川パークホテル」の存在。市民の結婚式やハレの日に利用されてきた駅前のホテルですが、建物の老朽化などもあり、その活用方法についてたくさんの意見が出ていたそう。

「駅前という立地の良さもあり、市民の多くはパークホテルでの思い出をなにかしら持っていて、皆さん愛着を持っているんですよね。だからこそ、なんとかうまく活用できないかとそれぞれが考えているようでした」

もともとは「市内で結婚式を挙げられるホテルを」と、地元の有志によって建てられたホテルでしたが、時代の流れと共に経営が厳しくなり、コロナ禍で大きな打撃を受けます。そんなとき、市からホテルの運営について相談が寄せられ、2022年にSHIROが経営権を譲り受けます。

「SHIROとしてリニューアルすることを見据えて、最初はレストランのメニューを変えるなどして運営を続けていました。リニューアルでは、この場所をもっと活用して、人々が行き交う活気ある場所を作ろうということで、『PARK SHIRO』のプロジェクトが動き始めたんです」

武田さんは、「みんなのすながわプロジェクト」に引き続き、「PARK SHIRO」のプロジェクトも担当することに。実は、「みんなの工場」がオープンして以来、武田さんたちは気になっていたことがありました。

「ありがたいことに、全国、または海外からもたくさんの方がここを目指して訪れてくださいます。食事、買い物、体験と、朝から夕方までこの施設を満喫してくださる方たちも多いのですが、その後は皆さん札幌や旭川に移動して、宿泊されるんですよね。砂川が『通り過ぎるまち』のままなんです。自分たちとしては砂川の滞在時間を長くしてもらいたいと思っているので、スタッフおすすめのお店紹介のカードを入り口に設置するなどしていますが、もっと砂川を満喫してもらうには宿泊できる場所が必要だなと考えていました。今回、ホテルをオープンすることで、砂川市に長く滞在し、まちの素敵な場所を知ってもらえればと考えています」

市民が気軽に利用できるよう市民の声を拾って作り上げる「みんな」の場所

「PARK SHIRO」は、2つの施設で構成されています。ひとつは、宿泊施設「みんなのホテル」。ホテルの中には客室のほか、日帰りでも使用できるサウナもある温浴施設(もちろんSHIRO製品が使えます!)や、レストラン、ショップも設けられています。また、宴会やイベントにも使える多目的スペース、地域の子どもたちが利用できるスタディラウンジも設けるそう。

「地域の人と観光客が交わりあう場所になればと考えているので、砂川の人たちが気軽に立ち寄れることが大事」と武田さん。今回のプロジェクトを進めるにあたり、今井浩恵会長をはじめ、武田さんたちは市民の日常に寄り添うため、自らまちに繰り出し、生の声を拾い集めたといいます。

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「駅前で遊んでいる子どもたちや、地元の看護学校の学生たちに直接『放課後はどう過ごしてるの?』って声をかけて回りました。『何があったらいい?』という質問をすると、コンビニで買ったものを温める電子レンジが欲しいとか、宿題でiPadを使うための安全なWi-Fiが必須だとか、リアルな声が聞こえてくるんですよ。それらをどう反映させていくかを一つひとつ、建築家チームと膝を突き合わせながら形にしている最中です」

「PARK SHIRO」を構成するもう一つの施設は、サ高住「みんなのおうち」*。ホテルとサ高住が一緒というのは意外な印象を受けます。

「うちの会長が、『自分が入りたい高齢者施設がない』と感じたことがきっかけでした。高齢者施設の多くは、施設に暮らす人たち以外との交流が少ない印象があります。今回、ホテルと併設することで何かが変わるのではないかという化学反応も期待しています。新しく砂川を訪れる若い観光客の方たちやまちの子どもたち、そして砂川の最盛期を支えてくださった高齢者の方々が、同じ場所で自然に交流する。そんな居場所の掛け合わせに大きな意味があると感じています」

泥臭くても、それがSHIROらしさ。地域にとことん根差した企業姿勢

「みんなの工場」も「PARK SHIRO」も、時間をかけて市民のリアルな声をできるだけ吸い上げているのが印象的です。


「泥臭いと思われるかもしれませんが、それこそがSHIROらしさだと思います。これは、生産者を訪ね、対話し、製造するといううちのものづくりにも共通しているんですよね。僕は、SHIROは砂川で生まれたからこそ、今のフィロソフィーがあると思っています。転勤で東京に行ったときにそれをあらためて感じました」

東京本社に8年ほど在籍した武田さんは、電車の中で自社製品の香りを感じ、多くの人がSHIROのショッパーを手にしているのを見た時、「砂川にいた時は数字でしか知らなかった自社製品の認知の広がりを肌で実感し、衝撃を受けました」と言います。それと同時に、もしSHIROが東京で生まれていたら、今のような「らしさ」はなかったと思うと続けます。

「SHIROの前身である「ローレル」では大きな農場を営んでおり、そこで収穫したハーブや作物から石鹸、ジャムやドレッシングなどの製造を行っていました。そうした自然に囲まれた砂川という場所だったからこそ、自然素材を使った丁寧なものづくりにとことんこだわり、環境のことも考え、自分たちが毎日使いたいものを正直に作るというSHIROの軸が育まれたようにも思います」


「辞めるか、続けるか」転機となった社長の一言

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せっかくなので、ここで武田さんのこれまでの歩みについて少し教えてもらいました。

武田さんは株式会社シロの前身である株式会社ローレルに2011年に新卒で入社。以前は他社の商品を作るOEMを中心に行っていましたが、「自分たちが毎日使いたいものを作ろう」と自社ブランド「LAUREL」を設立。2014年にはOEMから完全撤退し、翌年ブランド名を「shiro」に変更。ブランド名変更から間を置かずにロンドンで直営ショップをオープンさせます。

「僕自身は、入社してすぐに人事と開発という部署に配属されたんですけど、新卒だから大したことができるわけでもないのに、プライドだけは高くて...。期待に応えられていない自分を受け入れられず、会社への不平不満ばかり現場で口にしていました。今思えば、本当に扱いづらい新入社員だったと思います」

そんなある日、当時社長だった今井さんがスタッフの意見を聞く場を設けてくれました。武田さんはやけくそになり、会社への文句をぶつけました。黙って話を聞いていた今井社長は、言い終わった武田さんに対して、「それで、会社を辞めるの? 続けるの?」と聞いただけでした。

「そのとき、会社に対してかすり傷一つつけることもできない、自分の立場の小ささを自覚しました。そこから猛省して、次の日から誰よりも早く来てトイレ掃除をするなど、自分にできる雑用から始めたら、少しずつ周りが仕事を任せてくれるようになったんです」

そんな経験があったからこそ、その後、任された仕事はすべて懸命に取り組んできた武田さん。カフェがオープンして店長を任されたときは、「ラテアートを描いていました」と笑います。さまざまな経験を重ねる中で、会社や製品に対する強い責任感が芽生えていった武田さんは、あらゆる重要なポジションを任されるように。砂川に戻ってからは、前述した「みんなの工場」の施設長や、「PARK SHIRO」のプロジェクトの統括を担当。

「うちの会社は年齢や経験に関係なく、意欲があり、本気でチャレンジしたいという社員に対して、いくらでもチャレンジさせてくれる環境が整っていると思います」

「みんな」で描く、砂川のこれからの景色

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「みんなの工場」がオープンしてから、市内や近郊の人がたくさんSHIROに就職。中には、観光で訪れたのをきっかけに、「ぜひここで働きたい」と砂川に移住してくる人もいるそう。みんなで考えた工場がいかに魅力的な場所であるかという証です。「みんなの工場」が雇用を生み、人口を増やすなど、地域の力になっていると感じます。

新しくオープンする「PARK SHIRO」でも新たな人材が必要になりますが、「極端にいえば、SHIROというブランドが死ぬほど好きじゃなくてもいいと僕は思っています。まちを良くしたい、人やモノ、コトに純粋に向き合いたい。そんな僕たちのミッションやフィロソフィーのどこか一つでも共感してくれるなら、ぜひ力を貸してほしいです。PARK SHIROに関しては初めての挑戦ばかりですが、素直に、前向きに、手を取り合って進んでいける仲間を待っています」と話します。

2027年1月のオープンに向け、工事が急ピッチで進んでいる「PARK SHIRO」。武田さんは、「ホテルやサ高住と言うと、多角経営を目指しているように思われがちですが、そういうわけではないんです。ただ、砂川が活気あるまちであってほしいと願い、自分たちのやれることをやろうというだけなんです。だから、ホテルのオープンをきっかけに、SHIROが主体ではなく、市民の皆さんが主役になって新しいことや面白いことが起きるきっかけになればいいなと思っています。そうした取り組みが連鎖して、面白い街として外に知ってもらえるようになると嬉しいです」と最後に語ってくれました。

現在本社は東京ですが、創業の地であり、製造拠点である砂川はシロという会社にとって大事な場所。「市民と同じ目線に立ち、「みんなで」というその姿勢に、地域に根差したいと願うシロの想いを感じました。

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*「みんなのおうち」は、ALSOK介護株式会社運営の『グループホームみんなの家』から、名称使用の許可を受けています。

株式会社シロ
住所

北海道砂川市豊沼町54-1(みんなの工場)

電話

0125-52-9646

URL

https://shiro-shiro.jp/ec/

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地域に根差した居場所づくり。SHIROの新しいホテルの形

この記事は2026年6月23日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。