酪農が盛んで、広大な牧草地帯と豊かな自然に囲まれた別海町。まちでの暮らしに自動車は欠かせません。町民の皆さんの快適なカーライフを支えているのが、パイロット国道と呼ばれる国道243号沿いにあるカーサービスのイシダです。
同社の代表を務める石田正覚さんは自動車整備の仕事の傍ら、まちのイベントや野球場の音響を担当したり、地域食堂の運営に携わったり、さまざまな活動を通じてまちに貢献しています。
昨年は「ラップ社歌」をYouTubeで発表するなど、ユニークな取り組みも行っている石田さんに会社のことや活動について伺いました。
誠実な仕事ぶりと確かな技術で、高い評価を得ている自動車整備工場
1971年に創業した「カーサービスのイシダ」は、代表の石田正覚さんの父である先代が、別海町で立ち上げた自動車整備工場です。創業から50年以上に渡り、地元の人たちのカーライフに寄り添い続けてきました。
「カーサービスのイシダ」代表の石田正覚さん。
主な事業は、自動車の車検・点検・整備をはじめ、オイルやタイヤの交換、国産車の新車・中古車の販売、自動車保険、カーリース、レンタカーなど、車に関するあらゆるニーズに幅広く応える総合カーサービスです。
「うちの工場は、国(地方運輸局長)から分解整備(特定整備)を行う許可を受けた自動車整備工場です。そのため、車検の最終検査は隣町の検査場へ車を搬送して受けるスタイルです。自社だけで検査が完結しない分、日数や費用面でお客さまにご負担をおかけしてしまう部分もあります。だからこそ、ただ検査を通すだけの車検ではなく、その先の1年、2年をお客さまが安心して乗っていただける整備の提案を徹底しています。整備は車と向き合う仕事ではありますが、大事にしているのは『お客さまとのコミュニケーション』や『安心感』なんです」と石田さんは語ります。
その丁寧な対応や確かな仕事ぶりは評判で、長年のお付き合いがあるまちの常連さんに加え、転勤で別海町に引っ越してきた人やWeb検索で「評判が良いから」と遠方から訪れる新規のお客さまも増えています。誠実さと安心感で、たくさんの人からの信頼を集めているのがよく分かります。
現在は石田さんとベテランの整備士さんの2人が現場を担当し、地元のプロ野球球団「別海パイロットスピリッツ」の所属選手2人もサポートスタッフとして活躍。奥さまも事務方で会社を支えています。
跡を継ぐつもりはなかったけれど、「やっぱり挑戦してみよう」と決意
今でこそ会社の舵を取っている石田さんですが、子どもの頃から「家業を継ごう」と決めていたわけではありませんでした。
幼少期こそ「車屋さんってかっこいいな」とぼんやり思い描いていたものの、成長するにつれて別の夢を抱くようになります。中学生のときに目指したのは「救急救命士」。視力などの兼ね合いやお姉さんが看護の道に進んでいたこともあり、高校卒業後は看護師を目指して看護学校へと進学します。
しかし、病院での実習は想像以上に厳しいものでした。「手を抜くことができない性格ゆえに頑張るほど疲れてしまい、次第に体力が追いつかなくなってしまいました」と振り返ります。

結局、医療業界で働くことを断念。特に次の目標を持てずにいた石田さんに、ご両親は「とにかく仕事に繋がる資格を取りなさい」と言います。
「自動車が身近だったこともあり、札幌の自動車短期大学に進み、国家資格である整備士の資格を取得しました。看護の実習で人と接する大変さを痛感していたので、文句を言わない機械と黙々と向き合う学びの時間は気持ち的に楽でした(笑)」
短大を卒業した後は、釧路のディーラーに入社。整備士として約3年半、現場で技術を磨きます。このころ、釧路出身の奥さまと出会ったそう。
「整備士の資格を取って、親と同じ整備の仕事に就いたものの、当時は別海町に戻るつもりはまったくなかったんです。釧路で仕事も楽しくやっていたので、跡を継ぐことも考えていませんでした」

そんな石田さんに転機が訪れたのは、2009年。先代が体調を崩したのを機に、「実家の整備工場を継ぐか、それとも閉めてしまうか」という二択を迫られます。
「整備士として働くうちに、自分でゼロから整備工場を持つことはそう簡単ではないと分かっていました。一生のうちに自分の工場を持つことができるかどうかも分からないと思ったので、まずは実家に戻って3年やってみようと決心しました」
そう決意を固めて別海町へ戻り、カーサービスのイシダで仕事をスタート。まちの人たちとコミュニケーションを取りながら仕事をする面白さややりがいも感じられるようになっていきます。
そして、2011年に先代からのバトンを受け継ぎ、代表に就任しました。
音楽好きが高じて、イベントや野球場の音響を担当することに...
さて、石田さんを語るうえで外せないのが「音楽」の存在です。
「楽器をいじったり、バンドをやったりしていたわけではないのですが、単純にいろいろな音楽が好きで、高校時代に同じような音楽好きの仲間たちと一緒に音楽イベントを開くなどしていました」
石田さんはターンテーブルを手に入れ、DJとしても活動。「あくまで趣味ですよ」と笑いますが、地元のホテルやバーのスペースを借りて年に数回、ロック、ヒップホップ、ハウス、テクノ、ジャズなどが入り交じるオールジャンルのDJイベントを開催してきました。
地元の商工会青年部に所属していた頃には、地元の花火大会のBGMの選曲や音響も頼まれて担当。音に関する引き出しの多さと音響機材の扱いにおいて、まちで頼られる存在になっていきます。
そんな石田さんの音楽のスキルと情熱が、思わぬ形でまちのスポーツ支援へと繋がりました。別海町のプロ野球球団「別海パイロットスピリッツ」の運営に携わっている先輩から、ホームゲームの際のBGMや選手の登場曲を球場内で流してほしいと依頼されます。
「最初は流すだけでいいと言われていたのですが、いざ球場に行ってみると音響設備が不十分で...。それならばと、知り合いから機材を借りたり、自分で調達したりして、球場全体の音響システムを構築していったんです」
現在では試合時の本格的な音響オペレーションを一手に引き受けるほか、会社としても「別海パイロットスピリッツ」のスポンサーとなります。
また、2人の選手を自社の社員として雇用。週の半分は整備工場で洗車や車内清掃、タイヤ交換などの業務に励んでもらい、残りの時間を野球の練習や試合に打ち込める環境を提供しています。
仕事や地元への思いを込めたラップの社歌「イッテラッシャイ」を制作
石田さんの音と遊び心、そして地域への愛情が結実した取り組みは、ほかにもたくさんあります。
そのひとつが、昨年YouTubeで公開されたカーサービスのイシダのラップ社歌「イッテラッシャイ」です。
企業向けのラップを制作するクリエイターとの出会いをきっかけに制作されたこの曲。「あいうえおの『い』のイシダ~」「車検・点検・整備・洗車〜」といった、耳に残るキャッチーなフレーズと本格的なヒップホップトラックが融合した社歌です。
「思っていた以上に耳に残る曲なんですよ! まちのお祭りで会社のブースを出店した際、このラップ社歌をエンドレスで流していたら、まちの子どもたちが覚えて口ずさんでくれて(笑)。大人でも頭から離れなくて、ついつい歌ってしまうような曲なんです」
YouTubeで大好評のラップ社歌「イッテラッシャイ」のチラシ。石田代表だけでなく、奥様や音楽好きのお子さん2人もノリノリでコーラスを吹き込み、温かい家族の絆と遊び心が詰まった一曲です。
歌詞の中には、石田さんの「車と人とのつながりを大切にしたい」「安心して任せてもらえる存在でいたい」 という願いがたっぷり込められています。
町民にとって欠かせないパートナーである車。まちの車の安心・安全を支えることが自分たちの使命であるという思いが軽快な音楽に乗せて歌い上げられています。
このラップ社歌のミュージックビデオには石田さん本人だけでなく、奥さまや中学生と高校生の2人の子どもたちも出演。家族全員でコーラスを吹き込みました。
「子どもたちが嫌がるかと思ったんですが、思いのほかノリノリで歌ってくれて嬉しかったです。しかもすごく上手で驚きました(笑)。もともと子どもたちは吹奏楽をやっているし、妻も昔バンドをやっていたので、みんな音楽好きというのも良かったのかもしれませんね」
ぜひこのラップ社歌、YouTubeで検索して、聞いてください(記事の終わりにリンクあり)。ミュージックビデオには仕事の様子や別海町の風景なども映っていて、これを見るだけでカーサービスのイシダに親近感が湧いてきます。

誘われて関わるようになった地域食堂。今ではまとめ役として活躍
もうひとつ、石田さんが関わっている大きな取り組みが、立ち上げから約4年を迎える「みんなの食堂 まーる」の運営です。
地元の喫茶店主や中学時代の恩師から声をかけられたことをきっかけに石田さんも参加するようになり、現在は全体をまとめるリーダーとして尽力しています。
単なる「子ども食堂」にとどまらず、お年寄りから子どもまで誰でも気軽に集まれる場にしたいという思いから「みんなの食堂」と名付けたそう。1カ月半に1回のペースで、町内にある生涯学習センター「みなくる」を会場に開催しています。
「子ども食堂」では、毎回約150食を準備し、100名を超えるボランティアと共に、世代を超えて楽しめるステージの音響なども一手に担っています。
「幅広い層の方たちが訪れてくれる『地域食堂』です。提供する食事の数はだいたい毎回150食ほど。登録しているボランティアスタッフのメンバーは100名を超えていて、毎回30〜40名が駆けつけて運営にあたってくれています。また、地元の大切な食材を楽しんでもらいたいと思っているので、別海産の牛肉や卵、乳製品、海産物などを積極的に取り入れています」
せっかく広い会場にたくさんの人が集まるのだからとステージも用意。地元の人たちが自分の特技を発表したり、楽器の演奏会や合唱などを披露したりする場にもなっています。もちろん、ここでも石田さんが音響を担当し、ステージのプログラムなども考えるそう。
まちの人たちが食事を味わいながら世代を超えて交流できる場所として、「みんなの食堂 まーる」はすっかり定着。これからも楽しみながら長く続けていきたいと石田さんは話します。

一度外に出たからこそ分かった別海町の魅力。地域の未来にも貢献したい
高校を卒業して別海町を離れ、札幌や釧路での暮らしを経験した石田さん。若い頃には見えていなかったまちの姿が、大人になり、経営者として戻ってきたことで鮮明に見えるようになったと言います。
「高校生までは自分の周りのすごく狭い世界しか見えていませんでした。でも、外から戻ってきて、商工会青年部や同友会で出会った地元の経営者さんや別海町に暮らしている方々と関わる中で、『このまちにはこんなに熱くて面白い人たちがたくさんいるんだ』と知りました。食べ物もおいしいし、まちの人たちも人間味にあふれていて、とにかく居心地がいいです。まだまだ知られていない魅力がたくさんあるんじゃないかなと思っています」
石田さんは同友会などで経営者としての学びを深め、今年に入ってから企業理念を作ることにも着手。
この車が生活に欠かせない広大なマチにおいて、カーサービスのイシダは人々の移動の安全と地域の元気のベースを支えています。
石田さんが悩みながら考えたその理念の中には、誠実な仕事を通じて、お客さまの安心を守り、地域の未来にも貢献したい旨が盛り込まれており、そこには強い地元愛も感じられます。
「企業理念の文言自体はこれからもっと自分の中で揉んでいきたいと考えているので、たぶん変わっていくと思います。ただ、根っこにある思いは変わりません」
最後に今後の目標について尋ねると、「若い世代を新しく迎え入れ、未経験からでも一から整備の技術と心を伝えられる教育体制を整えていきたいですね。まちで働いてくれる若い人を増やすのも地元への貢献に繋がると思いますし。車に詳しくなくても『別海で働いてみたい』という情熱がある方なら大歓迎です」と語ってくれました。
【車検・整備など車のサポーター】カーサービスのイシダの社歌ラップ『イッテラッシャイ』
- カーサービスのイシダ(石田自動車整備工場)
- 住所
北海道野付郡別海町別海118-5
- 電話
0153-75-2807
- URL















