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学校と学生の取り組み
浜中町

『レディ魚ー×くらしごと 漁村体験記』第7弾 浜中町20240927

『レディ魚ー×くらしごと 漁村体験記』第7弾 浜中町

皆さんこんにちは!
水産の未来を考える若者を増やす!」をモットーに活動する学生団体 レディ魚ーの、ふなっしーこと船橋河輝(ふなはしこうき)です!
北海道大学水産学部2年で、レディ魚ーでは主に「漁村訪問」を担当しています!漁村訪問の活動では、実際の水産現場を訪れて自らの手で漁を体験し、第一線で活躍されている漁師さんのお話を伺うことで参加メンバーにとって水産の「今とこれから」を考えるきっかけを作り、大学での学びをさらに深めることを目指しています。

redexigo_hamanaka00005.jpg今回も記事を書かせていただくふなっしーです!よろしくお願いします!

今回の漁村訪問では、9月上旬の3日間、浜中町で昆布漁師をされている石塚仁さんのもとを訪問させていただきました。石塚さんにはレディ魚ーの活動をラジオで知っていただいた際にお声を掛けていただき、今回の訪問が実現しました!今回の訪問メンバーはわたくしふなっしーと、スペシャルゲスト!東京海洋大学2年で、水産人カレッジという水産系学生団体に所属している安野由布里君の2人です!
全国有数の昆布生産地である浜中町で、伝統的な昆布漁を体験してその現状を学び、石塚さんが昆布に、そして浜中町の水産について抱く想いについて伺ってきましたので、是非最後まで読んでいただけますと嬉しいです!

redexigo_hamanaka00008.jpgこちらが石塚仁さん。とても優しく受け入れてくださり、短い間でしたが色々な体験をさせていただきました。
redexigo_hamanaka00012.jpg今回訪問させていただいた2人。手前がふなっしー(筆者)、奥が安野君です!

浜中町ってこんな町‼

『基本情報』
所在:釧路総合振興局
人口:5278人(2024年8月末現在)
特産品:昆布、浜中養殖ウニ、花咲ガニ、ほっき貝、牛乳・乳製品
観光名所:霧多布岬、霧多布湿原、モンキー・パンチ・コレクション

釧路と根室の間に位置する浜中町は水産業や酪農など一次産業が盛んな町で、特に昆布は全国でも有数の生産量を誇ります。町内の飲食店や道の駅には昆布を活用したメニューやお土産が多く見られ、昆布の町であることが伝わってきました!石塚さんが昆布漁をされている地域は霧多布と言うのですが、その名の通り浜中町付近一帯では夜間から早朝にかけて濃い霧が立ちこめ、とても幻想的な雰囲気に包まれます!
ルパン三世などの作品で知られるモンキー・パンチさんが生まれ育った地としても有名で、街の中にはルパンの世界を再現したセットがあり、没入感が楽しめました!

redexigo_hamanaka00004.jpg全国有数の昆布生産量を誇る浜中町。天然昆布の生産量ではなんと日本一だそうです!

初日 拾い昆布漁を体験‼︎

みなさんは天然昆布漁がどのように行われるかご存知ですか?
船に乗っての漁をイメージされる方もいらっしゃると思います。大正解です!
しかし、昆布船に乗って行う漁は良質な昆布をたくさん採ることができる一方で天候の影響を大きく受け、霧が濃すぎたり波が立っていると出漁できないため、3か月の漁期全体でも30日ほどしか操業日がないそう...

そこで行われるのが「拾い昆布漁」と呼ばれるものです。
拾い昆布漁ではその名の通り、ちぎれて浜に漂着した昆布を拾い集めます。
初日は波が出ていた関係で拾い昆布漁となりましたので、その様子をご紹介します!

霧が深く立ち込めた早朝5:30から漁がスタート!
石塚さんは昆布が多く引っかかっているコンクリートブロックの周辺を中心に、波を被りながら息子さんのたいきさんと昆布を集めていきます。
私たちも手伝いたい気持ちは山々だったものの、漁業権がないため漁に参加することは叶わずもどかしい気持ちでしたが、荒れる海を相手に果敢にブロックの間に入り昆布を集めていく石塚さんの姿はとてもかっこよかったです!

redexigo_hamanaka00002.jpg波を被りながら昆布を採る石塚さん。

redexigo_hamanaka00009.jpg昆布をまとめるロープ。かなりおしゃれで欲しくなってしまいました!

浜のカウボーイ?まっけ投げに驚愕!

拾い昆布漁はただ昆布を拾うだけではありません!先端がかぎ状になっている「まっけ」と呼ばれる漁具を海に投げ込み、時化で岸に寄ってきたちぎれ昆布を引っ掛けて採る「まっけ投げ」という方法でも行われます!

「まっけ」を頭上でぐるんぐるんと回してから投げ込む動作はまるでカウボーイさながらで、30〜40mの距離を軽々と飛ばす様子は迫力満点です!霧に包まれた幻想的な浜で西部劇を観ているかのようでした!
海底の地形や海の色を把握して、どこに昆布が溜まっているかを予測しながら投げ込むことが大切だそうで、「たくさん昆布がかかってずっしりと重くなる感触はたまらない」と石塚さんは言います。しかし、時にはまっけが海底に根掛かってしまうこともあるようで、コンスタントに採り続けるためには熟練の技術が必要。漁師さんによってシャフトの長さや重心の位置などにこだわりがあるそうです。
昆布を採り終えたあとの干し作業は後ほどご紹介させていただきます!

redexigo_hamanaka00014.jpgまっけを投げ込む石塚さんの後ろ姿。カウボーイに見えてきませんか?

redexigo_hamanaka00006.jpg昆布を引き揚げた石塚さん。霧もいい雰囲気を醸し出しています。

redexigo_hamanaka00007.jpg拾った昆布を集めて干し場に持っていきます。

このまっけ投げも漁業権が必要で私たちはできないのですが、今回は砂浜に向かって投げるという条件で、まっけ投げの練習を特別にさせていただきました。
ヘルメットを着用して安全対策はばっちり!いざまっけを投げてみますが、最初は2人ともまっけを離すタイミングに苦戦してうまく飛ばせません...石塚さんに教えていただきながら徐々にコツを掴み、最後は少し前に飛ばせるようになりました!しかし慣れない動きだったのでたったの数投でしたが想像以上に疲れを感じ、1日に何十回も投げられる石塚さんの凄さを思い知らされました。

redexigo_hamanaka00001.jpg渾身の一投を決めるふなっしー(筆者)。この一投で安野君とのまっけ投げ対決に勝利!

約7mの棹を自在に操る!特別に船での昆布漁を模擬体験!

拾い昆布漁を終えたあと浜中漁業協同組合さんに船を出してもらい、船での昆布漁を模擬体験させていただきました!
船からの昆布漁では、先端にかぎがついた「棹(さお)」と呼ばれる道具を使って、海中に生えている昆布をからめて引き抜きます。ところがこの棹、とっても長いんです...その長さはなんと7m!かなりの重量感があるうえ、非常によくしなるため地上で持ち運ぶだけでも大変です。

船上から棹を海に入れて、実際に棹を動かす練習をさせていただいたのですが、軽々と自在に棹を操る石塚さんとは対照的に、終始棹に翻弄されて悪戦苦闘...棹を海底に突き立てて小刻みに動かしていくのですが、棹を動かした反動で船は大きく動き不安定で体勢を崩し、棹にも体を持っていかれてしまうなど散々で、石塚さんの助けを借りてやっと少し思い通りに動かせたといった具合でした。
実際の昆布漁では3時間ほど波の影響を受け不安定な船の上から棹を入れ続け、海の様子や他船の状況を考慮しながら棹の先端のかぎの種類を選択し、昆布が多いポイントを点々とするそうです。とてもハードで頭を使い、経験も必要になってくるといい、昆布漁師とはアスリートなのではないかと感じました!

redexigo_hamanaka00016.jpg石塚さんの助けを借りながら棹を懸命に動かす安野君

町長にレディ魚ーの活動をご報告させていただきました!

石塚さんのご紹介で浜中町役場を訪問し、齋藤清隆町長にレディ魚ーの活動をご報告させていただきました。齋藤町長には今年3月に札幌で行われたイベントの際にレディ魚ーについて知っていただいており、今回改めて前回お会いさせていただいた以降の活動や浜中町で見て感じたことについてお伝えさせていただきました。
齋藤町長からは応援のお言葉をいただき、浜中町の水産を取り巻く資源減少や担い手不足などの課題についてもお話をしてくださいました。また「これからも継続的にレディ魚ーをはじめ、水産に関心を持つ学生が浜中町を訪れることは、地域の活性化や産業の発展にもつながる」と、来年以降の浜中町訪問も提案していただきました。また浜中町を訪問させていただこうと思っています!

redexigo_hamanaka00018.jpg齋藤清隆町長と石塚さんにレディ魚ーポーズをしていただきました!

石塚さんが抱く浜中の水産への想い

今回レディ魚ーを呼んでくださった石塚さん。
その胸には浜中町の水産をどうにかしたいという熱い想いがありました。

近年は高水温の影響を受けてか昆布生産量が減少傾向にあり、毎年本格的に昆布漁が始まる前に行われる棹前昆布が今年は異例の中止に追い込まれたり、漁が始まっても水揚げ量が例年になく少ないなど危機に見舞われています。また雑草ならぬ雑海藻の出現にも悩まされています。スジメと呼ばれる雑海藻が、昆布の繁茂を妨げ大きな被害を与えています。
そんな中石塚さんは、「工夫を凝らして浜中の昆布をもっと売り込めばより昆布の価値が上がって産業は盛り上がるだろうし、スジメも何かいい活用方法があるはず。レディ魚ーのみんなで何か考えて欲しい!」と前を向き、浜に新しい風を吹き込ませようとされています。浜中以外の浜の取り組みにもアンテナを張っていらっしゃったことも印象的でした。

また石塚さんは春頃にホッキ漁をされているのですが、そのブランド化にも積極的です!浜中産のホッキ貝は恵まれた環境で生育するため殻が黒く、「黒ボッキ」と呼ばれ、身質や歩留まりに優れた高品質なものなのです。しかし石塚さんは、「浜中のホッキはうまくPRできていなくて知られていないし、品質やその希少性を売りにして地域全体でブランド化を進め、もっと高く取引されてもいいはずだ」と町や漁協にも提案をされていました。私たちも浜中町自慢の黒ボッキ、いつか食べてみたいです!

redexigo_hamanaka00015.jpgバーベキューをごちそうして頂きながらお話を伺いました!

石塚さんはこのような浜中町の水産の現状を見て欲しいと、私たち学生を呼んでくださいました。次年度以降は町内にある長期滞在施設を活用して、より多くの学生が浜の現状を見る機会を設けるなど具体的な提案をしてくださっており、レディ魚ーとしても石塚さんの助けをお借りして活動の幅を広げていきたいと考えています!

最終日 波も収まり念願の昆布漁を見学!

最終日は天候に恵まれて前日までの波も収まり、船での昆布漁が行われ、私たちは浜からですが見学できることに!
早朝5:30前に霧がかかる幻想的な浜から出船していき漁開始まで沖合でスタンバイ!私たちは浜から船が見えなくなるまで見送り続けましたが、あっという間に霧の中に消えていってしまいました。このあと操業開始の号令がかかると昆布船は一斉に霧多布岬周辺の漁場を目指して猛スピードで走り、その様子は洋上のF1を彷彿とさせる光景だそうです。

石塚さんが昆布漁をされている間、その様子を見ようと私たちは霧多布岬に移動してみましたが、霧が濃過ぎて海すらも見えずに撤退...「こんな視界の中で昆布漁をやっているのか!」と驚かされます。
しばらくすると霧が晴れてきて、石塚さんから「もうはっきり見渡せるぞ、ちょっと来てみな!」とご連絡をいただき、もう一度岬に向かって海を見下ろしてみるとこちらに手を振ってくれている石塚さんが!長い棹を揺れる船上から巧みに操り昆布を採る姿を双眼鏡を覗きながら見させていただきました!

redexigo_hamanaka00017.jpg幻想的な霧の中へと出漁していく石塚さん

redexigo_hamanaka00019.jpg私たちの方を指差してくださっている石塚さん。スマホカメラを双眼鏡に押し当てて撮った渾身の一枚です!

3時間ほどの漁を終え、大量の昆布を載せて無事に帰港!
朝とは打って変わって霧が晴れ、陸揚げされた昆布は日に照らされ輝いて見えました!
長時間揺れる小舟の上で行うハードな昆布漁ですが、帰港したからといって気は抜けません!ここからはまた別の戦いが幕を開けます!

redexigo_hamanaka00013.jpg船に満杯に積まれた大量の昆布!つややかに輝いて見えます!

時間と天気との戦い!昆布干しを体験!

昆布漁は干すまでが勝負です!大量に採れた昆布をできるだけ速く昆布浜と呼ばれる干場に並べる力や、天気や乾き具合に合わせて干し時間を変えたり、乾燥小屋に回収するなどの判断が求められます。その干し作業をお手伝いさせていただいたのでご紹介させていただきます!

主にこの時期に浜中町で採れる昆布は長昆布と厚葉昆布の2種類なのですが、長昆布はその名前の通り、とっても長いのです!長い昆布を重なりがないように並べるのが至難の業で、僕たちは4本並べるのが精一杯でしたが、石塚さんはその倍近い本数を綺麗に並べていきます!この干し作業ですがどうしても人手が必要で、私たち学生が体験で行うだけでも十分力になるようで、学生が漁村に学びに訪れながらもしっかりと力になれる可能性も感じました。
昆布の重なりを取り除きながらしっかりと干した後、一定の長さに切断、選別して出荷されていきます。

redexigo_hamanaka00020.jpg長昆布を干す安野君

redexigo_hamanaka00003.jpg昆布の重なりを除去するふなっしー(筆者)

今回の訪問を振り返って

今回の訪問では浜中町で行われる伝統的な昆布漁の2つの漁法とその現状について、実際の体験を通して学ぶことができました。見えてきた課題の解決は一筋縄にいかないかもしれませんが、浜中町の水産物が持つポテンシャルはどれも高く、大きな可能性を秘めているのではと感じさせられました。
石塚さんが抱く熱い想いにも触れ、レディ魚ーとしてもそれに応えられるように努力していきたいです!

石塚さん、そして浜中町、浜中漁業協同組合の皆さんには3日間大変お世話になりました。これからも頑張って参りますのでよろしくお願いします!

それでは次回の漁村訪問もお楽しみに!
redexigo_hamanaka00011.jpg霧多布岬から眺める昆布漁の様子

移動式鮮魚店レディ魚ー×くらしごと
住所

札幌市北区北20条西5丁目2-50(レディ魚ー事務局)

URL

https://www.instagram.com/ready_5500/

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『レディ魚ー×くらしごと 漁村体験記』第7弾 浜中町

この記事は2024年9月27日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。