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学校と学生の取り組み

『レディ魚ー×くらしごと 漁村体験記』第三弾苫前町20240530

『レディ魚ー×くらしごと 漁村体験記』第三弾苫前町

皆さんこんにちは!レディ魚― 漁村訪問担当の船橋河輝改めふなっしーです!
今回レディ魚―メンバー3人(代表北浦、くろちゃん、ふなっしー)でGW前半の3日間、苫前町のタコ漁師、小笠原宏一さんのもとを訪問させていただきました。2つの漁に同行させていただき、青年部の漁師さんとの交流の場を持たせていただいたりと、非常に充実したものとなりましたので報告させていただきます!

redigo_tomamae00002.jpeg今回の記事を書かせていただく船橋河輝です。よろしくお願いします!

苫前町ってこんな町‼

苫前町の基本情報
位置:留萌振興局管内
人口:2,734人(2024年2月現在)
面積:454.48㎢
特産品:アマエビ、ミズタコ、ホタテ、苫前メロン、かぼちゃ
観光名所:三毛別(さんけべつ)羆事件復元地、とままえ夕陽ヶ丘ホワイトビーチ、苫前温泉ふわっと

redigo_tomamae00003 のコピー.jpeg船上から眺める朝日と大きな風車
今回訪問させていただく苫前町は、留萌市の北、羽幌町の南に位置し、日本海に面する農林水産業が盛んな町です。日本海から吹き付ける風が強烈で道内随一の強風地域として知られ、「風のまち」と呼ばれているそうです。海沿いには風力発電の風車が立ち並び、その風景は圧巻です!
またヒグマ4大事件のひとつ「三毛別羆事件」の地と知られ、当時の事件現場の古民家を再現した三毛別羆事件復元地では、巨大なヒグマのオブジェが迫力満点に出迎えてくれます!
アマエビやミズダコ、ホタテが町の特産であり、苫前町は水産業の6次化支援にも力を入れています!

苫前訪問でやりたいこと

今回の訪問でレディ魚―としてやってみたいことが大きく2つあります。

1.持続可能な水産を目指すタコ漁師、小笠原さんの活動を学びたい!
小笠原さんはご自身でinakaBLUEという団体を設立し、持続可能なミズダコ漁の実現のために独自の資源管理ルールを設け資源保護に取り組まれています。また、漁獲から加工、そして販売までを一貫して行い、「ReTAKO」というブランドを立ち上げていらっしゃいます。この画期的な活動をされている小笠原さんの思いや目指すところを伺いたいです!

以前のくらしごとの記事はこちら

redigo_tomamae00004.jpeg小笠原宏一さんとReTAKOステッカー。漁村訪問用車 レディスタディ号に貼ってもらいました!

2.多くの漁師さんと本音で語り合い北海道の水産の今を知りたい!
今回の訪問では、小笠原さんにお願いをして青年部に所属されている4人の漁師さんとワークショップを開かせていただけることになりました。その場で漁師さんの「本音」を伺い、現場視点での水産業の魅力や課題を探り、レディ魚―として水産業に対してどのように貢献していくことができるのかを考えたいです!

初日 ニシン漁へ!

それでは今回の訪問の様子を紹介します!
初日は早朝5時に苫前港を出港し、ニシンの刺し網漁に同行させていただきました。港から船を走らせたところで網の巻き上げを開始。訪問前日まで一週間ほどほとんどニシンが獲れず、ホッケだらけだったそうですが、なんと今回はニシンが大漁!船の上がみるみるうちにニシンでいっぱいになる様は圧巻でした。

redigo_tomamae00006.jpeg船上に水揚げされたニシン

redigo_tomamae00005.jpeg海から巻き上げられる大漁のニシン。まだ元気で水面に出ると暴れまわっていました!

帰港してからは、作業場で網外しと選別の作業をさせていただきました。コツを教えていただきながら一匹ずつ丁寧に外していき、お腹を押して卵が出てくるかどうかを確認して雄と雌を選別しました。大漁だと嬉しいですが、その分作業も増えるので少し複雑な気持ちになりました。

redigo_tomamae00007.jpegメンバー全員で網外しの作業(小笠原さん撮影)

redigo_tomamae00008.jpeg網外しと選別作業を終え、きれいに箱詰めされたニシンのメス。数の子に加工されるみたいです!

2日目 ついにミズダコ漁に!

2日目はタコ箱漁に同行させていただきました。6時に出港し、20分ほど船を走らせた沖合でタコ箱の引き上げを開始。海水がたっぷり入ったタコ箱を持ち上げ、箱の中を繰り返し確認する作業はかなりハードでした。

redigo_tomamae00009.jpeg重いタコ箱を引き上げる北浦さん(代表)

4月後半はタコが沿岸に近づき沖合ではタコが獲れにくくなるようで、今回も最初の一杯が揚がらないまま40箱ほどが経過...厳しいかと思われましたが何とか一杯目が姿を見せてくれメンバーは歓喜!本州のマダコとは比べ物にならない大きさのミズダコを目の前にして、小笠原さんに、「小学生みたいにテンションが上がっていたね」と言われてしまうほど嬉しくはしゃいでいました。最終的には6杯のミズダコが獲れ、16㎏の巨大ダコも姿を見せてくれました!

redigo_tomamae00011.jpegこの日最大のミズダコと筆者。その重量とパワーに圧倒されました!

今回はタコ箱漁に同行させていただきましたが、ほかの伝統的なタコ漁として樽流し漁もされているということでその仕掛けを見せていただきました。縄張り意識が高いというミズダコの習性を利用した漁法で、「いさり」という大きく派手な疑似餌(下の写真)に樽(浮き)を繋げて海に複数流し、ミズダコが「いさり」に抱き着いて、樽が流れずに止まった仕掛けを回収する仕組みです。小笠原さんは、「仕掛けの長さや潮の流れを考える必要があってどの漁よりも腕が求められるけど、一番やっていて楽しい漁」とおっしゃられていて、その奥深さを感じました。

redigo_tomamae00013.jpegカニの人形が結わいつけられた「いさり」(手前)と樽(奥)。漁師さんによっては生エサを付ける方もいるようです。

青年部の漁師さんとのワークショップ

2日目の午後、小笠原さんのお声がけで青年部に所属されている4名のホタテ漁師さんとナマコ漁師さんにお越しいただき、ワークショップの場を持たせていただきました。レディ魚―の活動を紹介させていただいた後に、漁師さんに日々感じている喜びや悩みを紙に書いていただき、漁師さんの「本音」を伺ってみました。すると人手不足や高齢化、近年の異常気象による不漁、漁師の意識や漁協の体制など次々と課題があがってきましたが、当事者の視点で漁師さんご本人の口から語られる言葉の数々は、本やニュースで見聞きするよりも問題の本質をついていて重みがあり、自分事かのように捉えることができました。かなり暗い話題が続きましたが、漁師さんは皆さんで個別の問題の解決には何が必要かを深く考えていらっしゃる印象を受けました。

redigo_tomamae00014.jpegワークショップの様子

最後に今回の漁村訪問のテーマであった、レディ魚―が漁村、水産のために何ができるのかを直接漁師さんに伺ってみました。漁師さんからは、販売活動や商品開発などこれまでレディ魚―が魚屋として力を入れている内容も挙がりましたが、特に印象に残ったのはホタテ漁師さんからの意見で、漁師が何をしているかを一般の人にも伝えてほしいというものです。
苫前町のホタテ漁は、主にオホーツク海側で行われるホタテ養殖のための種苗生産(放流や養殖に用いる前段階として、天然のホタテの幼生を採取してある程度まで育てること)なのですが、ホタテの種苗生産自体の認知度が低く、働こうとする人が集まりにくく、漁師さんも自分の仕事が知られていないために誇りを持ちにくいとのことでした。近年は人手不足が深刻で、外国からの技能実習生に頼らざるを得ない状況だそうです。
そこでレディ魚―が販売の場やSNS、このようなくらしごとさんの記事を活用して一般の方々に伝え、興味を持ってもらうことに意味がある。これまで以上に漁村訪問や大学で学んだこと、そして水産の魅力を発信していくことに力を入れていこうと強く思いました。

redigo_tomamae00015.jpegレディスタディ号の前で皆さんとレディ魚―ポーズで記念撮影

翌日早速ですが、ホタテ漁師の堀切さんの仕事場でホタテの種苗生産の現場を見学させていただきました。伺ったときは種苗の水揚げ・出荷の作業の最中でしたが、稚貝(種苗)が大量に入った巨大なカゴが吊り上げられ目の前に下りてくる光景は迫力満点で圧倒されてしまいました。このカゴは紐を引き抜くと簡単に開く仕組みになっていて、流れ作業で次々と大量の稚貝が取り出されていく様子はまさに圧巻でした。

redigo_tomamae00016.jpegクレーンを操作していらっしゃる堀切さんと吊り上げられた大迫力のカゴ

redigo_tomamae00017.jpeg稚貝が機械で次々とふるい落とされて出荷されていく

小笠原さんからの学び

今回小笠原さんからたくさんのお話を伺いましたが、水産を、そして地域をどのようにして持続可能なものにしていくか、真剣に向き合っていらっしゃいました。ミズダコ水揚げ量が道内2位の苫前で「日本一サステナブルなタコ漁」をつくり上げるために、水産試験場との連携を主導して資源量を科学的に検証し、苫前のタコ漁の規則を改善するなど資源保護への熱意が伝わってきました。活動をされている漁師さんの中には、周囲がついていかずに地域で孤立してしまう方もいらっしゃるのですが、小笠原さんは「自分ひとりだけでなく地域全体で変わっていかないと意味がない」、と粘り強く話し合いを重ね多くの漁師さんを取り込むことに成功されています。それでも話し合いに参加してこない方はどうしてもいるそうで、地域一丸となって漁業のあり方を変えていくことの難しさを知りました。
また6次産業化をして立ち上げたブランド、「ReTAKO」では、資源管理されたサステナブルなミズダコに、最高の加工を施し付加価値をつけることが重視されています。忙しい漁の合間をぬって加工を行い、ご自身で茹で加減を絶妙に調節してミズダコらしいみずみずしい食感にこだわられていてとても美味しいです。いずれはほかの漁師さんからも買い取り、規模を拡大して地域として付加価値をつけていくことを目指しているそうです。

redigo_tomamae00018.jpegReTAKOをごちそうしていただきました。まるで生のようにぷりっぷりな食感で最高でした!

苫前訪問を振り返って

今回は天候にも恵まれニシン漁とタコ漁に同行でき、さらにこれまでにないほど多くの漁師さんと交流の場も持たせていただき、とても充実した訪問になりました。実際の漁の現場を見て体感し、漁師の方々の本音を聴き、レディ魚―としてできることを議論できたこの経験はかけがえのないものでした。今回学んだことを活かして、これからも北海道の水産により還元できるように頑張っていきます!
 
redigo_tomamae00019.jpeg朝日を眺める北浦とくろちゃん
訪問を受け入れてくださった小笠原さん、ワークショップに参加していただいた皆さん、本当にお世話になりました。恩返しができるように頑張りますのでこれからもよろしくお願いします!
 
それでは次回の漁村訪問記もお楽しみに!

移動式鮮魚店レディ魚ー×くらしごと
移動式鮮魚店レディ魚ー×くらしごと
住所

札幌市北区北20条西5丁目2-50(レディ魚ー事務局)

URL

https://www.instagram.com/ready_5500/


『レディ魚ー×くらしごと 漁村体験記』第三弾苫前町

この記事は2024年5月16日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。