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札幌市

中学生が考えるSDGs20190314

この記事は2019年3月14日に公開した情報です。

中学生が考えるSDGs

突然ですが、SDGsという言葉、皆さんはご存じですか?
Sustainable Development Goals 直訳すると持続可能な開発目標、の頭文字です。
もう少し簡単に表現すると、「世界中の全ての人が、持続的に、人らしく生きる」為の開発目標です。
言葉にすると何やら難しく聞こえてしまいますね。
授業で習い、身近なワードととらえている子供達よりも、むしろ大人の方がまだまだ認知度が低いかもしれません。

今日は、このSDGsについて深い興味を持った結果、一般の方向けに授業をする、というイベントを成功させてしまった中学生達のお話です

なぜ、中学生がSDGsのイベントを?

うかがったのは、東区にある札幌市立開成中学校。
オープンスペースとなっている職員室や、私服の生徒達から、とても自由な雰囲気を感じます。
「こんにちは~」と元気に挨拶してくれたのは、今日の主役
富谷湖雪姫(とみやこゆき)さん、田邉日菜花(たなべひなか)さん、熊田芽依(くまだめい)さん、坪井若菜(つぼいわかな)さん、の4人の中学3年生です。

kaisei4.jpg左から富谷さん、田邉さん、熊田さん、坪井さんの4人。放課後の学校でお話をうかがいました

早速、なぜ中学生がこんな大それた(失礼!) 企画をしようと思ったのか、恐らくその場にいた取材陣みんなが思っていた質問をしてみました。

「最初は、環境広場さっぽろのイベントに出てみないかと誘われたことがきっかけでした」
と坪井さんが口火を切ります。

「知り合いから、中学生の立場から環境を考えるというブースもあるので、是非やってみないかと誘われたんです。
もともと興味があったので、それならと思って他の3人を誘って軽い気持ちで参加しました。」

そうして参加したイベント会場で出会ったある取り組みに4人は衝撃をうけたのです。
それは下川町がすすめている「今ある資源を余りなく使う」という取り組みでした。
SDGsでは17の行動目標が示されていますが、下川町の取り組みは、森林という一つの資源でその17の目標をクリアする、というものだそうです。

それを聞いた、熊田さんは「ワクワクが止まらなかった!!」 そうです。

kaisei1.jpg趣味のクラシックバレーとこの活動も両立させたい、と熊田さん

そんなに素敵な取り組みがほんとにあるのか!! それなら是非この目で実際に見て見たいと、彼女達はすぐに行動を起こします。先生にもお願いして、熱意が通じて下川町ツアーに出かけられることになります。

そこで目にした光景はどんなものだったのでしょう。

「地元の木がチップになり木質バイオマスとして燃料になる過程を工程ごとに順番に見せてもらい、目で見て、音を聞き、においをかいで、感覚で感じ、カラダで学ぶことができました」と田邉さんは目を輝かせます。
地元の資源が循環してその地域に恵みをもたらす光景を、目の当たりにしたのです。

kaisei3.jpg田邉さんはバスケット部にも所属しています

でも、これを、すごい! 面白い! だけでは終わらせず
「これは下川町だからできること。例えば札幌ではきっと同じ事はできないと思います。まわりに森林が少ないし、外から木材を運んで来るようなことになればCO2を排出することになり本末転倒です。やはり地産地消が基本なんです」とかなり冷静な分析もしているところが、さすがとしか言いようがありません。

イベントの開催に向けて

こうしてますます興味を深めていった彼女達は、イベントに出かけたり、フォーラムで登壇したり、色々な人と会う中で、もっとたくさんの人にSDGsのことを知ってもらいたいと思うようになります。
札幌市のSDGsについて語り合う場に参加した際には、その場にいた札幌市の職員の方や大学生に、「こんなことやってみたいんですよね」と、少しずつ暖めていたイベントの概要をぶつけてみたこともあったそうです。そうした動きをする中で、では実際にやってみなさい、困ったことがあれば手伝うから、とまわりの大人や高校生が協力を申し出てくれたのです。

kaisei10.jpg使い慣れたタブレットでいつでもどこでも打ち合わせができます

そこからは、学校内でのイベント経験を経て、いよいよ一般の方向けのイベント実現に向かって動き出します。
開催に向けて苦労は無かったのか聞いてみました。

「まずは告知、ということで1ヶ月前に宣伝を開始しました。インスタやfacebookにそれぞれが告知したのですが、そこそこ集まるのでは?と気軽に考えていました。ところがふたを開けてみれば、イベント直前になってもほとんど予約が集まらない、といった状況に。かなりあせりましたね~」と富谷さんは笑います。

会場は60人ほどの収容だったので、それを限度に30~50人くらいと見込んでいたそうです。
なにせ中学生ですから、SNS以外は知り合いに声をかけたり、フライヤーを配ったりする以外お金をかけての宣伝は基本的にできません。
となるとここはやはり大人の出番です。知り合いの新聞記者にこんなイベントがあるよ、と伝えたところ、もともと話題性抜群の彼女達、大きく取り上げてもらい、記事を見ての予約も順調に入り始めたそうです。

さて、イベント本番!

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さて、そんなピンチも乗り越えての本番。当日はどんな様子だったのでしょう

「親子で来た方や、農家さんや、学校の校長先生、それに、新聞記事を握りしめて来てくれたおじいさんもいました。ほんとに色んな方が来てくれてとても嬉しかったです」と皆さん。

「1時限目 SDGsについて4人から説明、2時限目 講師をむかえてのSDGsカードゲーム、3時限目 楽しみながら振り返る交流会という流れで開催したのですが、参加した皆さんが、楽しくゲームに取り組んでくれましたし、『またやって欲しい』という嬉しい声もありました」

当日は電気を少しだけ消して節電したり、おやつにフェアトレードの商品を使用したり、プラスチックではない土にかえるお皿を使用したりといった彼女達なりの工夫も、SDGsをより身近なものとして感じてもらうことにつながっていたようです。

会は大成功のうちに終わった、、、かと思いきや、彼女達に言わせると、反省点はたくさんあったそうです。
でも、ホワイトボードに書かれた反省会のまとめをこっそり見てみると「良かったことと悪かったこと」ではなく「良かったこととつぎに向けては」としているところが、もう大成功だった証拠です。

kaisei15.jpg

これからやってみたいことは?

こうしていきいき語る彼女達を見ていると、まわりの友達や大人をどんどん巻き込んで、自分の良いと思ったこと、楽しいと思ったことを実行していくその行動力と、その源になっている大きな大きな好奇心、それがとてもまぶしいものに見えました。
そして、一生懸命行動したことからはまた、次の新たな夢や目標が生まれます。
これからやってみたいことを皆さんに聞いてみると、、、

熊田さんは
「将来の夢は建築士です」とまっすぐ答えてくれました。

「小学校3年生のときに家を建てたんですが、少しづつカタチになって行くのを見ているのがとても楽しくて。それ以来家に興味がありました。今はどんな木材がバイオマスとして暖房に適しているのか実際に燃やしてみて研究しています」とはにかみながらも、はっきりと将来を見据えて語ってくれました。

富谷さんは
「SDGsのカードゲームを自分達でつくってみたいです」とこれまたはっきり言います。
「今回のイベントでは、カードゲームをする為にファシリテーターを呼ばなければならなかったんです。
でも自分達のつくったゲームならば、ファシリテーターも自分達でできるし、道具も簡略化でき、もっと気軽にいつでもどこでもできるんじゃないかなと考えてます」

kaisei2.jpg音楽や演劇にも興味があるという富谷さん

田邉さんは
「このSDGsの活動をしている中で、貧困や環境という問題には、教育が大事だと思うようになりました。もともと環境にも興味があったんですが、自分が学んだことや学術的なことをたくさんの人に伝えられるインフルエンサーになりたい、その為には先生という選択肢もあるかもしれません」

富谷さんは
「今は中学生だから、中学生なのにすごいねと取り上げてもらえる。でも高校生になったらきっとそうではない。今より自由になり色々制限がなくなる分、高校生としての自分の価値をもっともっと高めていけるようにがんばりたい」とのこと。

恥ずかしながら、筆者は学生のときに「自分の価値」など考えたことありませんでした。

その他にも、最終的には起業という選択肢もあるかも、何かに特化している人は強いと思うのでそんな大人になりたい、などなど前向きな意見がどんどん出て来ます。

kaisei16.jpg

大人顔負けのその発言に少々圧倒され気味なので、最後にこんな質問もしてみました。
そもそも4人はクラスも部活もバラバラなのにどうして集まったの?

すると意外な答えが。

「若菜(坪井さん)が学年の掲示板にSDGsの事を書き込んでいるのを見て、変わってる子だな~と思ってました(笑)」と熊田さん。
そのSDGsって何なのさ?と面白半分で聞いたところ、興味があると思われて今回のチームに誘われたそうです。

「私たちにいたっては、ほとんど話したこともなかったのに突然誘われたんですよ」と富谷さんと田邉さん。

その人選の理由がとても気になりますが

「判断基準は喜んでやってくれそうな人! 仲の良さとか全然関係なくやる気のありそうな人!」だったそうです。
これにはその場の一同大笑いでした。それと同時に人を見る目と行動力に恐れいります。

kaisei8.jpg今回の活動の発案者 坪井さん

SDGsは、彼女たちにとって自分と社会との関わり方や、広い視野で世界を見ることの素晴らしいツールになっているようです。
最初はどうして中学生がそんな大変なイベントを?と勝手に思っていましたが、彼女たちにとっては、大変なことでも、特別なことでもなかったのです。興味を持ったものをつきつめていく上での自然な流れだったのです。

きっとこの先それぞれがまた、様々なものや人に出会って興味を持ち、持ち前の行動力で動きを作り出していくことでしょう。
そんな彼女達がつくる、未来の持続可能な社会、とっても楽しみになりました。

kaisei13.jpgイベントに協力してくれた公認ファシリテーターの高橋さんを囲んで

市立札幌開成中等教育学校
住所

札幌市東区北22条東21丁目1-1

電話

011-788-6987


中学生が考えるSDGs

この記事は2019年2月14日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。