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学校と学生の取り組み
札幌市

クリエイティビティを学ぶ先の「新しい世界」をつくる大学生20190204

クリエイティビティを学ぶ先の「新しい世界」をつくる大学生

2018年12月某日。細かな雪が少し舞い始めた寒空の中、札幌中心部にあるホテルの宴会場では何やら若いパワーの賑わいが溢れていました。そこでは北海道札幌市に1952年から学び舎として多くの人たちに親しまれてきた「北海学園大学」のゼミ生たちがあるイベントを企画・実行していました。

その名は「Business Audition for Student」
イベント内容を一言で表すと「学生のリアル版クラウドファンディング」といったものでしょうか。

主に札幌の学生団体やサークル、ゼミなどに参加する学生たちがそれぞれチームに分かれて、各々が考えた事業企画を企業に発表。企業がそれに対し「応援したい!」と思ったチームにチケット(お金)を渡して事業遂行のために使ってもらうというものです。

まさに顔を見て行われるクラウドファンディング。

daisuke_zemi11.jpegこのように学生たちが企業の方々に説明

私たちくらしごと編集部の大元である、(株)北海道アルバイト情報社にもお声がかかり、このイベントにお邪魔したのですが、学生たちの発表を聞いてみると驚くことばかり。みんながみんな、キラキラ輝きながら「こんなことがしたい」「あんなことがしたい」といった野望を私たちに伝えてくれる姿は、とても勢いがあり、そして眩しいものでした。

そのイベントを企画運営していたのは、北海学園大学経営学部の佐藤大輔ゼミのみなさん。詳しいお話を聞くべく、ゼミ室にお邪魔しました。対応してくれたのは、このイベントのリーダーである高木桂佑さんと佐藤大輔教授です。

まずは、高木さんになぜこのイベントを思いついたのか、というところからお聞きしましょう。

これから先にも続く成果を見据えて

「自分の祖母が人口6,000人ほどの田舎に暮らしていたのもあって、田舎で暮らしたり遊びに行ったりするのが好きなんです。だから別に田舎を活性化させたいとは思っていなくて...」と話し始めた高木さん。


どうやら高木さんの中でひとつキーワードとなっていたのは「田舎」。

daisuke_zemi4.jpg「じゃあどうしたいのかって言ったら...」と言葉を続ける高木さんがこちら

「そんな田舎でも最低限、経済がまわっていく仕組みをつくりたいと思ったんです。今年ゼミの1年間のプロジェクトの中で、田舎を取り上げてイベントを企画したり、何か特産品などを販売したとしても、それは『1年間の取り組み』として終わってしまう。その時成果は出たとしても、結局また元通りになってしまうと思いました」

それは根本的解決にはならない...では、田舎に限らず「何かこういうことをしたい」と行動を起こし続けて、そして考え続けられるような若者が北海道に残ることが根本的解決になるのでは...?と考え始めたそう。

ちょうどそのタイミングで札幌から東京への人口流出が多くなっているというニュースが高木さんの耳に入りました。「やっぱりこれだ」と思い立ち、もっと北海道の学生が地元や、地元企業に対して魅力を感じてもらえるようなイベント、そういったきっかけ作りとなるものをと、今回のイベントの企画までに至ったというわけです。

佐藤教授も言葉を継ぎます。

daisuke_zemi10.jpgこちらが佐藤教授

「北海道より首都圏の方が企業の数が多いっていう現実もあるのはもちろんですが、逆に言うと北海道の企業を知っていますか?ってところなんですよね。僕が知っている学生で多いのは、北海道は好きだし、住みたいって人は多いんですよ。東京に住みたいって人も確かにいるんですが、就職のことを考えたら東京という憧れを持っているとか、都会的な暮らしをしたいとか。そうやって東京の会社を見ている人たちに、札幌の企業どんなのあるか知ってる?って聞いても合説で出会ったこういう企業かな?くらいで結構止まっているんですよね」

北海道の数ある企業を知る前に目に入ってきてしまう都会という煌びやかな世界。

「北海道の企業が決してダメというわけではないんです。北海道の仕事やそこでの暮らしを知るチャンスをどうやってつくっていくかっていうのが大事になってくるはずなんです」と佐藤教授。

少しずつ、今回のイベントを創り上げていく上での駒となり得る『考え』『視点』が揃ってきました。

リアル版クラウドファンディング!

クラウドファンディングという仕組みが少しずつ世の中に浸透してきている今、高木さんたちもこの仕組みに魅力を感じて目をつけていました。


「北海道に限らず、学生って何かやりたいってアイデアがあっても、結局資金面が足りなかったり、行動しないで終わるって人が多いと思うんです。自分も含め、それはもったいないと思っていて。今回は『お金』の直接のやりとりが行われるってことで生々しいイベントではあったと思うんですが(笑)、お金をもらうことで半ば強制的にやらざるを得ないという気持ちにもなるし、その気持ちを高めるために3カ月後には出資していただいた企業に事業報告をしにいくという仕組みをつくったんです」

daisuke_zemi13.jpeg企業に事業企画を説明している姿は真剣そのもの。それぞれ個性を出しながらの発表が光ります。

それを聞いていた佐藤教授、「キレイに言うな〜」とニヤニヤ。

もちろん、学生だけにメリットがあっては企業が参加を渋ってしまう恐れも考えられます。そこで佐藤教授は「学生と企業がwinwinの関係をつくらなければ」と助言したそう。

今回企業にとってのメリットは「キラキラした学生と繋がることができる」ということを用意しました。優秀な学生と知り合えるというのは大きい。ただ学生と企業とのマッチングイベントはすでにたくさん企画されています。だからこそもっと、有機的で新しいマッチングのかたちをつくってみてはどうだろうと考えていきました。

ハプニング続出のイベント当日

「このイベントは参加学生が主役で、自分たちは裏方です。準備も全部自分たちでやりましたが、相手があってこその準備...例えば参加者との連携を図るための連絡は思いの外大変でした」


12月の本番に向け、準備は9月後半から始まり、外部との関わりは10月の後半から持ち始めました。

さて、キーポイントとしていた「キラキラしている学生」をどうやって探すのか。その術を当時はまだ持っておらず、右往左往。そこで、学生のコミュニティスペースを運営している方のツテを利用し、そこからどんどん広がっていき参加学生は12チームも集まりました。

集まった学生は「やりたい」という強い企画力を持った学生ばかり。
当日を迎える前に一度学生を佐藤教授の研究室に招き、プレゼン練習なるものを実行しましたがその出来映えは想像以上。佐藤教授も驚きでした。まさに求めていた「キラキラ学生」がそこに集まったのです。

続いての問題は企業集めです。本番当日まで残り1週間。その時点で参加表明をしてくれていたのは...なんと、たったの4社だけでした。

最後の1週間、高木さんたちは必死に足を使って企業まわりを開始。「2カ月前から足をつかって動いていければ良かった」そんな後悔を胸に秘めつつ、とにかく必死でした。

結果、当日キャンセルの企業が出てしまったものの、参加した企業は9社。
4社からの追い上げを考えると、学生たちの努力を感じると共に、企業側の理解の深さも感じ取れます。

daisuke_zemi15.jpg当日の会場の全体図

この時のことを高木さんはこう話します。

「とにかく失礼承知でアポ無し訪問していました。訪問する前は、企業の人ってちゃんと話聞いてくれるのかなって不安だったんですが、意外と話聞いてくれるんだって感動しました。参加できないという答えをくれた企業でも、アドバイスをくれるところもあったんです」

行ってしまえばなんとでもなる、それを身を持って学び「行為する」という大切さに気付いた高木さんたち。多くのアドバイスも受け、同時に修正点も学べました。

逆に参加した企業からは「人間味、パッションがいいね!」という言葉をかけてもらったそう。

参加した学生たちも、そもそも自分たちがお金をもらえるイベントに参加したことなんて初めて。企業とこうして関わる機会もあまりなかった学生にとって、この機会を利用して今まで秘めていたアイデアをすぐに行動に移し出せるということに喜びと期待を感じていた様子。

イベント終了後は「なんとかカタチとなって良かった...」とみんなが安堵したと言いますが、集客だけではなく、実は当日様々なハプニングに見舞われていたのでした。

そのひとつに初っぱなスライドが立ち上がらないというまさかの事件。もうどうなってしまうのだろうと幸先不安。佐藤教授も「とにかくハリボテ状態だった。本当、危ない橋渡ったなっていうのでしかないですね(笑)」と今では笑って振り返ります。

この結果を受けて高木さん自身も「大成功とは言えない」と言っていましたが、次に繋がる何かを身につけ、そしてその後の後輩たちへと繋がるバトンも手渡せたのではないでしょうか。

行為が先か?理解が先か

対して佐藤教授、高木さんたちの頑張りをどう見ていたのかお聞きしました。

「これを通じて行為が先か、理解が先かという感覚を知ってもらう目的がありました。『出来ることからやる』のではなく『やりたいことをできることにしていく』のです」

例えば、学校は先に「出来る」ようになってから、やりたいことをつくっていきましょう、始めましょうと学ぶのに対し、社会に出ればいきなり「営業に行ってこい!」なんてこともしばしば。

「今回のようになんのスキルもないけど、とにかく足を使って企業の扉をコンコンって叩いて行ってみると、なんとかなるんだってことを気付いて欲しかった。できることからは新しいものは生まれない。夢想でもいいから、やりたいことを広げてみて、それにできることを創り上げていくことで全く新しい世界がつくられるんです」

佐藤大輔ゼミでは、このように「クリエイティビティ」に特化した研究を行っています。未知の世界へ飛び込むという勇気。それをこのゼミを通して学べるようです。

さらに佐藤教授は続けます。

「ある意味こうやって、ちょっとスリルある経験は大学生の時にできたらいいのかなって。学生の時にこういう経験しておけばその後の学び方も変わると思うんです。就職活動で準備しようと思ったってキリがない。完璧なエントリーシートの書き方なんてゴールではない。先に行為をして、あとから理解がついてくるということを学ぶ。こういうことを通じて学んでいって欲しいですね」

この1年間のゼミ活動を通して得たもの

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実は同じ経営学部からはある意味「宗教ゼミ」と呼ばれるくらいその活動が熱い佐藤大輔ゼミ。
これまでのお話を聞いても、ゼミで実践していく事柄は確かにたくさんあり、ゼミありきの4年間となるのではないかというくらい大きい存在になるのではと思ってしまうほど。

そのゼミを自ら志望した理由を高木さんはこう話します。

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「ゼミに入るまで、サークルにも入らず、バイトしかしていませんでした。大学生ってこんな暇なんだ、楽しくないな...なんなら大学辞めたいなって思うくらい退屈だったんです。そんなある日、ゼミの体験会でプレゼンしていた僕の2つ上の先輩の発表がすごくて。今までこんなすごい説明聞いたことない!って思うくらい分かりやすくて、この人に近づきたい、この人みたいになりたい!って思ったんです」

こうして佐藤大輔ゼミの研究室の扉を開いた高木さん。ゼミでの日々を通し、特に今回のイベントを通して得たものは大きかったようです。

「色んな場面で自分の企画書つくって、企業の人にアポを取ってお会いするって行為も多く経験してきました。最初はもちろん不安でした。しかも、自分なりにはその企画書は最高のアイデアだと思って企業のもとへ行くのですが、ダメ出しをいただくことも多く、そこで気付きがたくさんありました。自分では気づけないところを、まわりの人たちによって気づかせてくれるんです」

途中からその感覚が楽しくなってきたと話し、もっとこういう風にしたいとどんどん成長意欲が湧いてきたそう。

今後ゼミは高木さんの後輩たちがメインとなっていく時代。自分がかつて先輩に憧れを抱いたように、後輩に憧れを抱いてもらえる存在になりたいと高木さんはその目標を話します。

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またもう一つ、高木さんは課外での目標も教えてくれました。

「僕、音楽がとても好きで、これを活かして人を笑顔にする活動をしたいと考えています。2018年9月、北海道胆振東部地震が起きましたよね。こういったニュースは、これから何度もずっと、常に目にするわけではないと思うんです。忘れ去られたくないことだからこそ、例えば被災地を巡って音楽のPVをつくりたい。観光のプロモーションじゃなくて、その土地の『人』を取り上げるPVをつくりたいと考えています」

これからも地域の魅力、そして現実を伝えていきたい、高木さんが願う想いはそこになります。卒業までまだまだ挑戦し続ける高木さんを始めとする佐藤大輔ゼミのみなさんの今後の活躍に期待大です。

北海学園大学 佐藤大輔ゼミ
住所

北海道札幌市豊平区旭町4丁目1-40 佐藤大輔研究室

URL

http://ba.hgu.jp


クリエイティビティを学ぶ先の「新しい世界」をつくる大学生

この記事は2018年12月19日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。