私たち流のメリークリスマス!
ハロウィンが終わると同時に、どのまちもクリスマスカラーに彩られ、どこからともなくクリスマスソングが流れ始める...札幌の中心部にほど近い「北星学園女子中学高等学校(以下、北星女子)」も、敷地内にある大きな木がその時期になるとライトアップされ、クリスマスツリーとして生まれ変わります。
この学校の「クリスマス」はそれだけではありません。何やら校内では生徒たちがその日に向けて準備中・・・。クリスマスをひとつの行事とし、全校生徒が一心に取り組んでいる北星女子は、1887年にアメリカ人宣教師の方によってつくられた女学校。今も尚光り褪せることなく、札幌で輝き続けている歴史の深い中高一貫の学校です。今回は高校の皆さんのもとへお話を聞きに行きました。
学校の敷地内にあるこの建物は、かつて北星女子をつくったアメリカ人宣教師の方の当時の住まい。今は資料館として保存され、その色合いから「かぼちゃ館」と呼ばれ親しまれています。
校舎に一歩足を踏み入れると、生徒たちが廊下や教室で大きな画用紙とセロハンを広げて作業をしています。どうやらこれはステンドグラスをつくっている様子。廊下をさらに進んでみるも、どの教室もこの作業に忙しそう。
大きな黒い画用紙を切り抜き、そこに様々な色のセロハンを貼っていきます。
完成したステンドグラスは、すべての窓に一斉に貼り出します。
キリスト教系の学校ということもあり、クリスマスは大切な行事の1つ。開校当時からの伝統行事なんだそうです。
いわゆる生徒会とはまた別に、こういったキリスト教系の行事を取り仕切るのが、「ライラック会役員」と呼ばれる執行部のみなさん。
毎年秋にメンバーの入れ替えがあり、現在全員で6名。この時期になると、役員メンバーはもう大忙し。
役員が集まる部屋の黒板には、今後の予定がずらり。
取材日は生徒の皆さんステンドグラス作業真っ最中でしたが、これが窓に貼られ、カタチになるのを毎年近隣の方々も楽しみにしているそうです。全ての窓がステンドグラスで彩られた校舎や、クリスマスツリーの美しさに思わず足を止め、写真に収めている人もいるのだとか。
もちろん、このクリスマス行事はステンドグラスづくりだけではありません。他には具体的にどんなことをされているのか、皆さんにお話を聞いてみましょう。
「他には、クリスマスカードを全校生徒一人ひとりが手作りして、それを老人ホームの利用者さんや保育園の園児たちに直接届けたり、市民の方々を招いて『クリスマス礼拝』という式典のようなものをイチから準備しています。この礼拝では、生徒たちがクリスマスの讃美歌を披露したりと盛りだくさんです」と教えてくれたのは、ライラック会役員の会長を務める畠山 夏菜子(はたけやま かなこ)さん。
優しい口調でクリスマス行事について話してくれた畠山さんです。
「誰かのために」が原動力に
「全校生徒がつくったクリスマスカードを届けに行った時、嬉しそうに『ありがとう、また来てね』という言葉をもらえる瞬間が、とても嬉しいんです」と畠山さんはその想いを話してくださいました。北星女子で行われる「クリスマス」という行事は、決して自分たちの学校内だけで完結させるものではないのです。
もちろん運営するにあたって大変なこともあります。生徒が生徒を動かすとなると、難しい壁にぶつかることも・・・。
みんなへの指示出しも、役員の生徒自身が行います。
しかし会長である畠山さんはこう言いました。
「全校生徒の中にはこういった準備を『めんどくさい』って思ってしまう人がいるのも分かっています。私たちは、みんなにこの行事の主旨を理解してもらう役目があるんです」。
熱い想いはまだ続きます。
「クリスマスはこの学校で一番大きな行事です。この行事は、決して自分のためのものではなく、1年の中で一番他者のために動く時。私はこの学校に入って、『人のために動く』というその気持ちが素敵だなと感じるようになりました。また、この行事を通して人との交流もでき、達成感も味わえるという経験ができて本当に嬉しいんです」と話してくれました。
全校生徒が一心に取り組む盛大な行事。じゃあ、みんな一番好きな行事はクリスマス?と聞くと、「クリスマス!...も好きだけど、本当は学校祭も好き(笑)」と本音で話してくれたのは同じく役員の田中舞奈(たなか まいな)さん。
北星女子の生徒の飾らないその姿勢が、とても心地よく感じます。
ライラック会役員の一人、現在高校1年生の今 和佳奈(いま わかな)さん。中学から北星女子に入学していたこともあって、中学校のライラック会役員も経験していたベテランさん。(中学と高校、それぞれに役員がいます)。だからこそ、クリスマス準備の大変さも知っています。
「その経験もあって、高校にあがっても絶対にライラック会役員はやらないと決めていたんです」と最初に衝撃の一言。
「決めていたけど、やってみなきゃ分からないことがたくさんあるっていうことも逆に知っていて・・・」
自分の想いをゆっくりと、大切に話してくれた今さん。
もしかすると今さんは、その当時味わった大変さを乗り越えた先に出会った達成感というものに魅了されてしまったのかもしれません。
また、中高一貫コースも存在するこの学校では、高校から別の学校に行くという選択もないわけではありません。そんな今さんも、実は高校はそのままエスカレーター式で上がるのではなく、違う高校に行っても良いかも・・・なんて考えていたのだとか。しかし、その時にふと、思ったことがあると言います。
「思えば中学の時に、役員として活動してみない?と声をかけてくれて、きっかけを作ってくれたのもここの学校の先生。数学が苦手な私に対して、いつも朝早く来て勉強を教えてくれたのも先生。先生方は自分が思っている以上に私たちのことを見ていて、正直最初は見られ過ぎている気がして嫌だったけれど、でも裏を返せばちゃんと私のこと見ていてくれてるんだって、そう思ったら嬉しくなって・・・」
そう、だから・・・
「そうやって支えてくれた先生方に、私は恩返しがしたいっていう気持ちで今は役員の活動を頑張っています」と、照れながらも一言一言を大事に話してくれたその真っ直ぐな想いが、取材陣の心にもしっかりと届きましたよ。
本当の自分を出して良い、個性を出して良いのだと教えてくれた
齋藤 有里杏(さいとう ゆりあ)さんの、北星女子への印象は「こんなに他人を大切にする学校あるんだ」というもの。
そう話す齋藤さんが役員をやりたいと思った理由は「人のために頑張るって、北星ならではの活動だなって思ったから」なんだそう。
そんな「誰かのために」と活動しているメンバーに、この活動を通して、この学校に入って得たものは何かと聞いてみると、みんな口々に「本当の自分が出せるようになった」と話していました。
「北星女子って、変な人が多いと思います(笑)。良く言えば、個性が強い。だからこそ、この学校では1人ひとりが輝いています」と話してくれたのは、好きな行事は学校祭!という田中さん。
高校から北星に入学した髙橋あきらさんも言葉を続けます。
元気にハキハキ答えてくれた髙橋さん。
「私は高校からこの学校に入りましたが、それまで『目立つ』という行為は悪いことなんだとずっと思っていて、静かに静かに、誰にも気づかれないように...という中学時代を過ごしていました。でも、この学校に入って、自分を出していいんだ、私らしく生きていいんだ!っていうことを知ったんです」と、イキイキして話す表情からは、中学時代が静かだったなんて今では想像もつきません。
昆 深月(こん みづき)さんも、高校から入学し、中学時代は目立たないように過ごしてきたうちの1人。
笑いが絶えない昆さんは、本当に明るい生徒さん。
「中学時代は自分に自信がなかったんです。中学まで友達は多い方ではなかったけれど、北星女子のみんなはこんな私を受け入れてくれた、だから自然と自信もついていきました」とニコリ。昆さん、今ではみんなのムードメーカーです。
Shine like stars in a dark world〜暗い世にあって星のように輝きなさい
2017年12月21日。すっかり暗くなった18時頃、まばゆいステンドグラスの光が暗くなった外を照らします。
この日、ステンドグラスの光だけではなく、校舎の中では生徒たちも一人ひとりが輝きを放っていました。
そう、ついに時間をかけて準備してきた集大成でもある「クリスマス礼拝」の本番の日です。
近隣の市民の方々や、卒業生たちがぞくぞくと礼拝が行われる講堂へと入っていき、始まる前からほぼ満席状態。こうしてスタートした、生徒たち手作りのクリスマス礼拝。
講堂中に、生徒たちが歌うクリスマスの讃美歌が響き渡っていました。卒業生も、懐かしむように生徒たちと一緒に口ずさみます。
また、舞台にあがる生徒だけではありません。全て生徒たちで作り上げるため、裏方作業も頑張っています。
タイミング良く照明を当てるのだってお手の物。
そんな生徒たちが、イチからつくりあげてきたこの「北星女子のクリスマス」を目にした市民からは「良かったよ」「このステンド、みんなで作ったんでしょ?すごいね」なんて直接生徒に声をかけている一幕も。
北星女子の教えの中でこんな言葉があります。
「Shine like stars in a dark world」
この言葉は「暗い世にあって星のように輝きなさい」という意味。そんな教えをしっかりと受け継ぎ、輝く姿を私たちに見せてくれた北星女子の生徒たち。
本番数日前に取材対応してくれたライラック会役員のみんなは本番当日のこの日、とても忙しそうに動き回っていました。取材中は、明るく、笑顔がとても印象的でしたが、仕事中のみんなの瞳や表情は真剣そのもの。何か1つのことを、みんなで目標達成に向かって突き進む姿は、とても格好良かったです。
勉強はもちろん、きっとそれだけじゃない大切な何かを教えてくれる学校。ここで過ごした生徒たちは、「自分らしさを大切にし、他者と共に生き、輝くことができる女性」として、これからもっともっと大きく飛躍していくのではないでしょうか。今後辛いことがあっても、ここで学んだ「生き方」を自信に変えて歩み続けていってほしい。困ったら手を取り合い、歩んでほしい...そして、星のように輝き続け、誰かの目印となるような、そんな素敵な女性となりますように。
心から笑うその素の表情、「本当の自分」で取材に対応してくれたみんな、ありがとう!
- 北星学園女子中学女子高等学校
- 住所
北海道札幌市中央区南4条西17丁目2番2号
- 電話
011-561-7153
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