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士幌町

一人ひとりの「夢」と「想い」が士幌町の「財産」となる20180115

この記事は2018年1月15日に公開した情報です。

一人ひとりの「夢」と「想い」が士幌町の「財産」となる

プレゼン大会で大活躍!

北海道帯広市から車で50分ほど車を走らせると、士幌町の看板が見えてきます。取材陣がこの日向かう場所は北海道士幌高等学校(以下、士幌高校)。


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2017年10月、札幌市にて北海道内の高校生が集まり、「北海道のこれからの移住・定住」をテーマに発表する「高校生プレゼンテーションコンテスト」が行われました。

士幌高校からは3人の生徒が代表して登壇。士幌町への想いを始め、士幌高校が地域と共にすでに取り組み始めている活動や、これからの展望について、堂々とプレゼンしている姿が印象的でした。

shihoro_school3.JPGプレゼン本番。心地の良い話し方ですらすらと話す姿に引き込まれていきます

士幌高校は、大きく分けて「アグリビジネス科」と「フードシステム科」に分かれています。さらに2年生に進級すると、より専門的な知識を培うべく、10個の専攻グループ(通称「専攻班」)に細分化されます。

「草花」「環境」「畑作」「肉加工」「地域資源」「野菜」「乳加工」「有機農業」「畜産」「農産物加工」......並べてみると、本当にたくさんの専攻班がありますね。

shihoro_school12.JPGこちらは野菜班のみんな。かっこよくキマっています!

生徒たちの希望を取った上で各専攻班に入るため、班によって人数もバラバラ。そして、それぞれ空気感も違い、なんだか楽しそうな雰囲気。

shihoro_school16.jpg肉加工専攻班のみなさん。一番右は先生です!

まずは、プレゼン大会で活躍していた3人の専攻班活動について、少しお話を聞いてみましょう。

世界的なスポーツの祭典で選手が口にする野菜をつくる

今まで農業とは無縁だった中野直哉くん。
高校進学を目前とした時、普通科に進むのは何かちょっと面白みに欠ける・・・という思いから、進学先を調べていたところ見つけたのが士幌高校でした。


shihoro_school6.jpg冷静な中野くんですが、内に秘めた想いは熱い

入学後、2年生で有機農業専攻班を選択。
経験して学んでいく中で、『農業って面倒くさい』と感じたこともあったそうですが、その大変さだけではなく、同時に楽しさも知っていったそう。だからこそ、農業を学んできたこの3年間を無駄にはしたくないと、卒業後は士幌町内の農園に就職予定です。

そして中野くんが所属するこの班の自慢を聞いてみると・・・

「栽培しているニンニクと人参でグローバルGAPを取得したんです」。
ん?グローバルギャップ?
「世界的なスポーツの祭典時に選手が食べる野菜に選んでもらえる国際認証のことを言います」。

こ、国際認証!?

グローバルGAPとは、「食の安全リスクの低減」「労働安全」「環境保全」「生態系の維持」という、全世界農業者が共通とする4つのテーマを通して「食の安全と持続可能な生産管理」を社会の求めるレベル以上に実現するためにつくられた、共通規格とるものだと言います。

現在は日本でこの認証を取得している農家は400件ほど。また、農業高校が取得するのは未だに珍しいことであり、全国に数ある農業高校の中で、士幌高校は2番目に取得したと言うから驚きです。

shihoro_school5.jpg国際認証書とともに

つまり、2020年の東京で開催された世界的なスポーツの祭典では世界のアスリートたちの口に、士幌高校の生徒たちの手で育てた野菜が運ばれる可能性があるということ。

中野くんは言葉を続けます。

「今回はニンニクと人参での取得でしたが、これからも他の野菜で認証取得を増やしていきたいです。あと、僕たちのこの事例を士幌町の農家さんにも伝えていって、士幌町全体をあげて認証獲得をしていけたら良いなって思っています」と熱い想いを語ってくれました。

キーワードは「牛」

「私、子牛が好きなんです」と話す前多唯衣さんは、小さい頃からご両親のお仕事の関係で牛に触れ合う機会が多かったのだそうです。
それもあって、前多さんは畜産専攻班を選びました。この班はさらに馬班と牛班に分かれますが、もちろん後者を選択しています。


shihoro_school7.jpgニコニコ笑顔が素敵な前多さん

「私の専攻班は3人しかいないんです(笑)でも、人数が少ないからこそ仲が深まっている気がします。この前、学校で飼育している牛に赤ちゃんが生まれてみんなで『スカイ シホロン』って名前をつけたんです」とニコニコ笑顔。

そんな畜産専攻班は、ソフトクリームの販売を道の駅で実施。地元の方や、観光客、役場の方まで足を運んでくれ、自分たちがつくったソフトクリームを直接販売できる楽しさを前多さん自身も味わっているようです。

また、士幌町の横、音更町というまちからスクールバスに乗って通学している前多さんに、士幌町の良さを聞いてみると「自然が豊かで夕日や星が綺麗に映える士幌町の景色が大好き」と話してくれました。

そんな牛と士幌町が大好きな前多さん。将来は、牛に関わる仕事・・・には就きませんが、大好きになったこのまちで暮らしたいと士幌町の役場の入職予定です。

代々受け継がれてきた「ヌプカの雪解け」を守る

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さて、最後に登場したのはギリギリまで乳加工専攻班でヨーグルトの加工品づくりに専念していた阿部楓さん。「ヌプカの雪解け」という商品を生産している班に所属しています。

「この商品は、高校で生産された生乳100%でつくったヨーグルトを水切りしてムースをつくり、冷やして食べる新感覚、新食感の商品です!」と元気よく教えてくれました。

凍らせて少し解かしてから食べるその商品は、ムース生地が雪解けのように溶けるというところと、士幌町内にある広々とした「ヌプカの里」という公園の名前と合わせて命名されました。

shihoro_school10.jpgこのキャラクターの名前は「シホロン」。実は士幌町のかたちをしているのです!

4年前に卒業した生徒たちの代から誕生し、販売をスタートしたヌプカの雪解け。先輩方が守ってきた商品、そして楽しそうに生産している先輩方の姿を見て、乳加工班に入りたいと決めた阿部さん。
この「ヌプカの雪解け」という商品は、士幌町の道の駅で生徒たちが直接販売などもしており、30分で売り切れを出すほどの人気っぷりなんだそうです。

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ただ、高校生だけ、それも乳加工班だけでの生産ではなかなかたくさんの数量を生み出すことが出来ず、ついに町が動きました。
「士幌町にヌプカの雪解けを生産する新しい会社、工場が出来ることになたったんです」
町を挙げて、士幌高校で誕生した特産品を多くの人に届けていこうとしているところ。そんな阿部さんは、新しく出来るその企業に就職予定。今学んできたことを存分に活かすことが出来る道へと進みます。

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地域と密着して、士幌町を盛り上げたい!

さて、10月に行われたプレゼンテーションの中で3人がよく言葉に出していた「志プロジェクト」。取材中も、ちらほらとこの単語を耳にしましたが、これは一体?


前多さんが口を開きます。
「士幌町の『士』と、想いの『心』を合わせて『志』プロジェクトと名付けられました」。

shihoro_school11.jpg校内に入ると「志」と書かれた大きな看板が

そう呼ばれるこのプロジェクトは、士幌高校で行っている独自のもの。自分の夢や想いを叶えるために日々学んでいる生徒たちの姿を、より多くの人に知って欲しいという願いから始まったものです。

生徒が自分たちの「夢」や「想い」を専用の用紙に記入し、農業クラブ(生徒会)に提出。そして、提出されたそれぞれの夢や想いを、みんなでブランド認証化していこうというのがプロジェクトの中身。

提出用紙に夢や想いを記入し、その後農業クラブの生徒たちによる面談を行い、直接その熱い想いをぶつけます。そして見事認証された証として、農業クラブより「志バッジ」というものが手元にやってきます。このように生徒の想いが目に見えるカタチとなっていくのです。

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生徒自身も、自然と常に夢や目標を持つことが当たり前となってくるだけではなく、それを提示することによってみんなが応援してくれ、達成に向かって頑張ろうという気持ちにもなっていきそうですね。

士幌高校は、夢や想い、目標などをまわりの人に伝え、まわりが応援してくれる環境。そんな素敵な文化が、士幌高校には根深く浸透しています。

もちろんブランド認証されたものは、学校外にも発信。そうすることによって、学校の盛り上げに一躍買っている他、学校の認知度も高まっていっているようです。

志プロジェクトはこうして地方創生のモデルとして、町からも認められました。
3人の「移住・定住」をテーマにしていたプレゼンの中では、このプロジェクトを通して、今度は士幌町への移住者を増やしていきたいと話します。

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「例えば、この志プロジェクトをまち全体で取り組んでいくんです。町民も、私たちと同じように夢や想いを提出してもらって、認証された夢や想いを、道の駅のディスプレイで発信し、ビジネスの発展に繋げるチャンスをつくりたいと考えています」と3人はこれからの展望を話してくれました。

また、阿部さんたちの班が生産している「ヌプカの雪解け」。この商品は、すでに新千歳空港での販売経験もあり、全国へ、全世界へと、士幌町の魅力を発信しています。さらには、amazonでの販売も決定。それに伴い、商品もどんどん進化させようと、姉妹都市である岐阜県とのコラボ企画の考案を始めたり、近隣市町村の中学生を招き、色々なフレーバーの実験を行ったりと、今日も商品開発に勤しんでいます。

こういった活動を通し、士幌町の魅力を知ってもらったことをきっかけに、このまちを訪れる人が増えてほしいと3人は口を揃えます。

「これまでヌプカの雪解けに関わってきた卒業生も、もちろん、商品の今後が気になっている様子ですし、応援してくれているはずです」と乳加工専攻班を担当する先生もお話してくださいました。

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1人1人の想いや夢が、財産となっているまち。きっとその想いは、少しずつ全国へ、世界へと届いていくはずです。

愛してやまない、士幌町へまずは自分たちが移住

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今回お話を聞かせてくださった3人は、士幌町出身ではありません。帯広市や音更町といった、士幌町近隣からスクールバスに乗って通学しています。そして卒業後、3人は士幌町へ移り住み、ここでの暮らし始める予定。

親元から離れる寂しさよりも、「士幌町に住みたい」という想いが生まれたということは、3人が過ごした高校3年間はきっと素敵な経験と思い出でいっぱいのことでしょう。3人からは「士幌町が大好き!」そんな愛が、ひしひしと伝わってきました。


一人ひとりの「夢」と「想い」が士幌町の「財産」となる

この記事は2017年11月29日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。