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まちおこしレポート
安平町

まだ自分にできることがある。安平で見つけたセカンドキャリア20261005

まだ自分にできることがある。安平で見つけたセカンドキャリア

今年(2026年)の8月1日、安平町の早来エリアにコミュニティカフェ「HELLO.(ハロー)」がオープンしました。店主を務めるのは、昨年4月から地域おこし協力隊として活動している福津京子さんです。実は福津さん、札幌の人なら「あ、知ってる!」という有名人。札幌で活躍するさまざまな人をゲストに迎えた動画配信番組「札幌人図鑑」を立ち上げ、2000人に取材を行ってきたインタビューのプロです。2025年3月に番組が終了すると、4月には安平町へ。福津さんのこれまでの歩みを含め、安平町に来ることになったきっかけやコミュニティカフェを始めた理由、これからのことなどをたっぷり伺いました。

チャレンジショップを活用してコミュニティカフェをオープン

安平町の早来エリアに2棟あるトレーラーハウス型のチャレンジショップ。このうちの1つが, 福津京子さんのカフェ「HELLO.」です。

「お店の紹介するとき、HELLO.のドットを必ず入れてね。モーニング娘。の句点みたいに。ドットを入れたほうが、画数が良くてお客さんがいっぱい来てくれるらしいから(笑)。チャットGPTと何度も壁打ちして、悩んだ末にやっと決まった名前なの」

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笑いながら楽しそうに話す福津さん。福津さんがひと言発するだけで、その場がすぐにパッと明るくなります。

取材に伺ったのは、カフェのオープンから3日目。店内にはたくさんの方から届いたお祝いの花が並んでいました。「家にもまだたくさんあるんです。本当にありがたいですね」。その数から、福津さんがいかに多くの人たちに慕われているかが分かります。地元の農家さんからはお祝いに野菜をたっぷりいただいたそうで、「ありがたく次の日のサラダに使わせていただきました」と話します。

カフェのほうは、初日から噂を聞きつけた町の人や移住者仲間が来店し、大盛況。「よくぞ作ってくれた!」「こういう場所ができるのを待っていたよ!」と声をかけてもらったそう。「慣れないからてんてこ舞いでしたけれど、なんとか2日間やり切りました」と笑顔を見せます。

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さて、そもそもなぜ福津さんが安平町の地域おこし協力隊になったのか、そしてなぜコミュニティカフェを始めようと思ったのかを次の章から順に伺っていこうと思います。

PTA会長になったのがきっかけで、司会者、ラジオパーソナリティーに

福津さんは札幌生まれの札幌育ち。21歳で結婚し、24歳で息子を出産、子育てに専念する専業主婦として暮らしていました。しかし、息子の幼稚園でPTA会長になったのを機に、人生の矢印が「人前で話す仕事」に向くことになります。

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「その幼稚園、じゃんけんでPTA会長を選ぶんです。それで、最後まで負け続けて、PTA会長になっちゃったんです(笑)。PTA会長って行事の挨拶や会合の司会をやらなくちゃいけないんですけど、いざマイクを持って話すと、ママ友たちに『すごく上手!司会者になればいいのに』と何度も褒められるものだから、嬉しくてその気になってしまって。HBCのアナウンスアカデミーに通い出したのが始まりでした」

結婚式の司会などを少しずつ手掛け始めた33歳の時、札幌で2局目となるコミュニティFM「FMアップル」が開局することになり、パーソナリティのオーディションがあることを知ります。1700人もの応募者の中から選ばれたのは、なんとたったの3人。しかも当時の局長の方針は、「放送未経験者を採用し、それぞれの人生経験を活かしてもらう」というものでした。元国際線CA、元TV局AD、そして子育て経験のある専業主婦の福津さんという、個性豊かな3人でラジオ局がスタートしたのです。

福津さんは15年間、月曜から金曜まで毎日3時間の生放送を担当。地域の人々に寄り添い、まちの声を届け続けました。最後の3年間は、生放送のパーソナリティをしながら、放送局長を兼務。地域の会合や社内の会議に参加し、営業にも奔走し、FMアップルのたくさんのパーソナリティたちの悩みにも耳を傾ける多忙な日々を送りました。

普通の人なら、目の回りそうなこの忙しさに疲弊し、放り投げてしまいそうですが、「振り返ってみると、楽しかった」と笑う福津さん。「自分の原動力となる好奇心は、FMアップル時代に開花したように思います」と話し、超人的なバイタリティと圧倒的な人間関係構築力と合わせ、このころにはすでに元気印の福津さんが誕生していたのだと分かります。

アーカイブ的なメディアに携わりたい。「札幌人図鑑」の誕生

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15年間、FMアップルに在籍した福津さん。ラジオという「放送されれば流れて消えてしまうメディア」の良さを実感しつつも、「せっかく聞いた素晴らしい話を動画やWEBで後から見返せるようなメディアを作りたい」という思いや憧れを強く抱くようになっていました。

そんなとき、FMアップルの番組に出演してくれたNPO法人シビックメディアの専務理事から、番組終わりにNPOに入らないかと声をかけられます。当時、シビックメディアでは地域密着型の情報ウェブサイト「WEBシティさっぽろ」や「ようこそさっぽろ」の運営などを行っていました。

「でも、私は文章を書いたことも、写真を撮ったこともないって言ったら、NPOには文章を書ける新聞記者もいるし、動画を撮れる人もいるし、その編集をできる人もいるし、いろんな技術を勉強することができるよって。私はすでにラジオというメディアをひとつ経験しているけど、『お道具が増えるとさ、料理の幅も広がるぜ』と言われて、なるほどなぁと思ったんです」

ラジオとNPOと2足のわらじで、WEBに載せる記事のために取材に赴き、記事を書き、写真を撮影。ここで動画の撮影や編集スキルもマスターします。また、ラジオとWEBのメディアミックスも実践。

そして、同じ時期に京都で行われていた「研究者図鑑」というWEBメディアの取り組みを知ります。毎日のように全国の研究者に会ってインタビューをして、それをWEBにアップするというもので、当時、大学などの研究者の間で話題になっていました。

「これに感銘を受けました。こういうメディアがやりたい、この札幌版をやりたいと思ったんです。それで、研究者図鑑をやっていた西尾直樹さんに会いに行って、ノウハウを教えてもらいました」

こうして誕生したのが「札幌人図鑑」です。ラジオを卒業した福津さんは、次なるステップへと踏み出します。

人選、撮影、インタビュー、編集、すべてを1人でこなし、12年間で2000人に取材

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「札幌人図鑑は、3年間で1000人のインタビューを配信します!と公約してスタートしたんです。でも周りからは、『お金はどうするの?』『そんなことして何になるの』って、すごく止められました。だけど、湧き上がる衝動を止められなくて(笑)。試しに何も見ないで、思いつく人たちを紙に書き出してみたんです。そしたら、200人は軽くリストアップできて、これはゆっくり考えたら自分のネットワークだけで365人はいけるなと思ったんです。そのあとは、『こんな素敵な人がいる』『応援したい人がいる』とみんなが紹介してくれるだろうと踏みました。
それでとにかく毎日取材と編集の日々。その合間を縫って、司会やファシリテーターの仕事をこなしていました。1日に3〜4人の取材をこなす日もありました」と福津さん。

ここで驚くのが、人選、アポ取り、撮影、インタビュー、編集、YouTubeへのアップロードまで、すべて福津さんが 1人でこなしていたということ。お手本とした「研究者図鑑」は数名のスタッフで制作していたと聞けば、福津さんの凄さをあらためて感じます。

「活動費のほとんどは司会の仕事などで稼いだ分でやりくりしていました。仲良しの友人からは、仕事にもならないのにどうして?とよく言われましたし、お金のかかる趣味に見えていた人もたくさんいたと思います。でも、確かに今はこれで稼げていないけど、これが私の仕事なのと胸を張っていました」


そして、見事3年間で1000人を達成すると、その実績が評価され、ケーブルテレビ局「J:COM」から番組化のオファーが舞い込みます。19分30秒ぴったりに完パケ納品するというシビアなプロの現場になっても、福津さんの「1人スタイル」は変わりませんでした。無人のカメラをセットし、ゲストと1対1で向き合い、撮ったものを自ら編集。

そして、J:COMになってからの9年間でさらに1000人にインタビューを行いました。合計12年間で、2000人もの人々の人生と魅力を発信し続け、その中には札幌市長や北海道知事など、地域のキーパーソンもずらりと名を連ねています。たった1人でひとつのメディアをここまで育ててきたのはアッパレです。

ひょんなことから移住イベントに参加。地域おこし協力隊として安平へ

2000人の目標を達成し、ちょうど還暦を迎えたタイミングで「札幌人図鑑」の放送が終了。「これで一区切り。肩の荷が下りた」とほっとしたのも束の間、元来元気いっぱいの福津さんは、1か月もするとウズウズし始めます。

「若い頃に想像していた60歳と違って、自分はまだまだ動ける。これで隠居生活に入るのは早すぎるんじゃないかと思ったんです」

たまたま「札幌人図鑑」の終盤にゲストとして出演した移住者の女性の話を聞いて、移住に関心を持ち始めていた福津さんは、その女性が関わっている移住関連イベントに参加します。

「ちょっと覗いてみるかというくらいの感じで参加したんですが、それが、安平町で起業にチャレンジする官民連携のプログラム『Fanfareあびら起業家カレッジ』だったんです」

札幌にしか住んだことがなく、そのときは「安平町の場所すらよく知らなかった」と笑う福津さんですが、持ち前の好奇心が頭をもたげ始めます。現地を訪れ、まちの人々と触れ合い、町立の早来学園をはじめ、教育・防災への取り組みに感銘を受けます。

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「私が行けば、今までのスキルを活かして安平町をもっと面白くできるかもしれない!と直感的に思ったんですよね(笑)」

福津さんは、Fanfareあびら起業家カレッジの起業プレゼンで、安平の人やモノ、コトを動画で紹介する「安平町図鑑」を提案し、採択されます。地域おこし協力隊としての採用が可能ということで、起業型の協力隊として安平へ。

移住となると、家族は?と疑問が湧いてきますが、6つ年上で、すでに定年退職していたご主人も「安平やその周辺にはゴルフ場がたくさんあって良いんじゃないか」と快諾してくれたそう。こうして夫婦で安平へ移住し、福津さんの起業型地域おこし協力隊としての新たなステージが始まりました。

経験を活かし「安平町図鑑」をスタート。まちで暮らす中で気付いた課題

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福津さんは得意のメディア制作スキルを活かし、YouTube番組「安平町図鑑」をスタート。まちの中を巡り、地元の人々と対話を重ねる中で福津さんはあることに気付きます。

「早来エリアって、おしゃべりしたり、ちょっと美味しいコーヒーを飲んでホッと一息ついたりできるカフェや喫茶店がないんですよね。レストランや食事をするところはあるんだけど...。札幌から友達が来たときも、食事をしたあと、セブンイレブンでコーヒーを買って、まなびお(早来学園の図書室)で飲む、みたいな状態で(笑)。まちの人たちが集まり、交流できるような場所が必要だと感じました」

ちょうどその頃、安平町でスタートアップを支援するチャレンジショップの募集が始まりました。「チャレンジショップのここなら、まちの人が集まる交流拠点がつくれる!と思ったんですよね」。福津さんはすぐに応募し、採択を勝ち取ります。こうして8月1日にオープンしたのが、コミュニティカフェ「HELLO.」です。

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「実は札幌人図鑑が1000人に達したあと、1カ月ほどだけ、『大通すわろうテラス』でポップアップのカフェをやったことがあったんです。これが意外と楽しかったんですよね。お店に来てくれるいろいろな人と話すのが面白くて。今思えば、このときの経験がHELLO.にも繋がっているかもしれません。いろいろなまちの人とお店で交流できたらなと思っています」


カフェで提供するのは、札幌の人気店「まだ名前のない喫茶店」から仕入れた極上の豆を使用したコーヒーや、福津さんお手製の昔ながらの懐かしいプリンなど。ナポリタンやクリームソーダなどもあります。

「夫も店の周りの草刈りや掃除などをしてくれて、オープンしてからも毎日手伝ってくれています。マスターという名刺を作ってあげたら、喜んでゴルフ仲間に配っています(笑)。本人は『巻き込まれた、振り回されている』と言っていますが、初日が終わったあと、『大変だったけど楽しかったね』って言ったら、夫も『楽しかったね』と言ってくれて、良かったなと思っています」

店の一角には、「安平町図鑑」の撮影スペースも用意。まちの人たちにここでゆっくりインタビューもしていきたいと考えているそう。

「ここは、地元の人の想いに応えたくて作ったカフェ。ここをまちの情報発信の基地にしていきたいとも考えています。並びにあるベーカリーのたむポポ(くらしごとでも取材)さんのパンなら、持ち込みもOKです。むしろ推奨します! うちは週4日営業ですけど、イベントやちょっとした集まりで使いたいという人がいれば貸出もしますし、私自身もこれまでの人脈を活かして、札幌から人を呼んだ面白いイベントなどもできたらと構想しています。2日間営業してみて、すごく手応えはありました。絶対楽しくなるはずっていう手応えが!」

福津さんのワクワクしている感じがこちらにもしっかり伝わってきます。

「出たとこ勝負」のポジティブ思考で、還暦を迎えても元気いっぱい

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安平での暮らしやまちの人について尋ねると、「人懐っこくて、お話好きな人が多いと思います。子どもも人懐っこい。まなびおに行ってもすぐに声をかけてくれるんです。札幌とは全然違いますね」と話します。持ち前の明るさと行動力ですっかりまちの人とも打ち解けている福津さん。オープン前に地域の人が「もし店の電気代が払えなくなったら、飲み会してやるって言ってくれて(笑)。背中を押してもらいました」と笑います。

「札幌にあのまま住んでいたら、元気だけど、正直仕事もしなかっただろうし、こんなふうに新しいことにチャレンジできなかった気がします。でも、地域おこし協力隊として安平に来たことで、若い協力隊の人たちも仲間に入れてくれるし、そこからの紹介でまた人の輪が広がるなど、札幌では味わえない経験をさせてもらっています。札幌では溢れんばかりの情報の中に身を置いていたけど、こちらに来てから思うのは、安平は人の数も情報の量もちょうどいい塩梅なんです。暮らしやすいですよ」

チャレンジショップとしての任期は2年間。福津さんの視線はその先の将来についても向いています。

「必要とされるのであれば、きちんと物件を探してカフェを続けていきたいと思っています。そして、移住を経験してみて思うのは、還暦を過ぎても元気なシニア世代は、もっと自分のこれまでのキャリアやスキルを活かして、地方と都市の2拠点生活やセカンドキャリアに挑戦したらいいと思うんです。安平町は空港も近いし、札幌や東京とのアクセス抜群。私も、安平町をベースにしながらもっと面白いことをやってみたいし、やれる気がするんですよね」

とにかく明るくて、元気な福津さん。暗闇とオバケが苦手な話、アビーロードの話、店名候補の話など、ここに書ききれないほど次々と話題が飛び出し、取材中もずっと笑いが絶えません。もし、これらの話題について詳しく聞きたいという方はぜひカフェへ。

最後に、悩んだり、落ち込んだりすることはあるんですか?と尋ねると、「こう見えてもクヨクヨすることは結構ありますよ」と意外な答えが...。「でもね、最後の最後は『えーい、もう出たとこ勝負だ』って突き抜けちゃう」と笑います。そのポジティブさが福津さんの魅力。「HELLO.」は、そんな福津さんの明るさに惹かれ、まちの人たちがたくさん集まる場所としてすぐに定着しそうです。

「HELLO.」は、福津さんの明るい笑顔に引き寄せられ、地域の人々が自然と集まる温かい場所になっていくことでしょう

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コミュニティカフェ HELLO.
コミュニティカフェ HELLO.
住所

北海道勇払郡安平町早来大町68

URL

https://www.instagram.com/hello.hayakita/

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まだ自分にできることがある。安平で見つけたセカンドキャリア

この記事は2026年8月4日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。