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函館市

「宝探し」のリサイクル、魅力ある仕事へ。金子商事/Glowing Metal20261001

「宝探し」のリサイクル、魅力ある仕事へ。金子商事/Glowing Metal

函館にある北日本最大の造船会社「函館どつく」。この造船所から出る鉄をリサイクルする「金子商事」は1956年創業、今年で70年目を迎えました。2016年には鉄以外の金属、非鉄(ひてつ)のリサイクルを行なう「Glowing Metal」も別会社としてスタート。2019年には現在の沼田正社長が4代目社長となり、息子の沼田卓さんが専務として、新しい時代を切り拓こうとしています。「若い力で、今の仕事を魅力あるものに変えたい」という沼田卓さんにお話をうかがいました。

会社が存続の危機に、激動の時代

函館市電の終点「函館どつく前」から徒歩で約5分。函館港を目の前に建ち並ぶ工場群の一角に、「金子商事」の建物があります。1956年創業の「金子商事」は、今年で創業70周年。これまで長年の間、北日本最大の造船会社「函館どつく」から出る鉄をリサイクルしてきました。2016年には、「Glowing Metal」の社名で、鉄以外の事業がスタート、ステンレスや銅など非鉄(ひてつ)のリサイクルも行なうようになりました。この頃、「金子商事」に入社したのが、現・専務取締役の沼田卓さんです。

kanekosyouji32.jpgこちらが、専務取締役の沼田卓さん

沼田卓さんは函館で生まれ育ち、高校卒業後は山形大学へ入学。そのまま大学院に進み、卒業後も山形県内でさまざまな仕事をしていました。しかしこれといった仕事にはめぐりあえず、やがて4年が経った頃、お父さんから「そろそろ函館に戻ってこないか」と声がかかります。何のために仕事をしているのだろう、と自分でも疑問をもっていたこともあり、卓さんは函館にUターンすることにしました。
始めの1年ほどは個人で仕事をしていた卓さんですが、再びお父さんから声をかけられ、「金子商事」に入社したのは2016年のこと。「父は当時、金子商事の営業部長。もう30年くらい前から働いており、会社が大変なことになったから一緒に手伝ってほしいと言われたんです」。そのころ「Glowing Metal」もスタートしていましたが、会社は決していい状態ではなかったそうです。仕事自体には興味があり、手伝ってみようという気持ちと、先の見えない不安。「今では愛着のある会社ですが、始めはそんなに長く勤めるつもりはありませんでした」。

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ところが2019年、時代が令和に代わろうとした時、当時の社長が急逝。会社は存続の危機に陥ります。「これから会社をどうするかという話になりましたが、この会社でないと生きていけない人がいる。結局、父が事業継承をすることになりました」。
あえて火中の栗を拾う、、、。覚悟を決めて、沼田正さんが社長に、息子の卓さんは専務として会社を継ぐことになりますが、ふたを開けてみるとその内情は想像を絶するものでした。必要な資料も保管されておらず、まさに会社そのものを立て直さなければならない、ゼロからのスタートになってしまいました。
従業員の労働環境も改善しなければならないと、卓さんは就業規則からつくっていったそうです。もともと就業規則がなかったため、一から規則をつくり、働くための制度を整えていく必要がありました。すると、暗黙のうちに行なわれていた悪しき慣習は徐々になくなっていき、浄化されていく環境になじまない従業員は自然と辞めていくようになりました。
そうして、次第に労働環境が改善されていった頃、今度は核となっていた従業員の不正が発覚。その人が中心になって動いていた現場だったため、卓さんのショックは相当なものでした。

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今まで必死になって会社を立て直してきたのに、信じていた仲間に裏切られた......そこで卓さんの心はポッキリと折れてしまいました。
もうできない、やめたい。
「父は、いつ辞めてもいいけれど、もう少しだけやってみてもいいんじゃないかと、でもそれ以上はあまり多くを語りませんでした」。
自分で考え、悩み抜く時間が卓さんには必要でした。辞めていいと言われれば、すぐに辞めたかもしれません。はっきりと辞めるなと言われれば、納得はできなかったでしょう。
「この時期が一番つらかった。いや、彼の不正を知ってから、自分で名乗り出てくれることをかすかに期待して待ったのですが、結局その期待は裏切られました。その半年の間が一番つらかったですね」。
この仕事をやめれば、楽になれる。結婚して子どももいるのだから、家族のためならいつでも辞めて再出発できる。そう思っていたはずなのに、時間が経つにつれ、会社にとどまることにしたという卓さん。
「もう少しだけやってみようと。ここでとどまったのは、どうしてなのか、今でもわかりません」。
心機一転、人員体制もすべて入れ替わったことで、「金子商事」と「Glowing Metal」は新たな時代に向かっていきます。

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金属のリサイクル、そのイメージを変えていきたい

創業70年を迎える「金子商事」の仕事は、北日本最大の造船所「函館どつく」から出るスクラップ、鉄くずをリサイクルすること。
非鉄を扱う「Glowing Metal」では、家庭ゴミも含めて不要になったあらゆる金属を買い取り、種類別に分けます。
いずれの金属も納品先の希望に合わせて切断し、かさばるものは減容(げんよう)といって体積を減らし、コンパクトに形をととのえて、全国の原料メーカーへ供給します。
大きな港のある函館には昔から、造船所からの鉄くずを引き取り、リサイクルする会社や作業所が多かったそうです。最近は人口減少とともに公共事業も減って、同業他社との競争が熾烈になってきました。その中で「金子商事」と「Glowing Metal」が生き残ってきたのは、どのようなことからなのでしょうか。

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「まずは、人だと思います。現在は、工場長、スタッフ2名、そして社長と顧問と私の6名体制です。人手が足りているわけではないのに、とても円滑に仕事がまわっていて、とても雰囲気のいい人間関係です。そしてベテランの経験が、とっても頼りになります。スクラップから金属を取り出して、目で見て手に持っただけで、その材質が何か、瞬時に見極めて分別していく。この職人技だけは、よそにはどうしても真似ができないもの。長年培ってきたものだからだと思います」。

kanekosyouji11.jpg手に持っただけで、瞬時に素材を判別して選別していきます。まさに熟練の神業!

これから加わってほしい新しい人材には、どのような仕事をまかせたいのか聞いてみると、意外な答えが返ってきました。
「これから来てくれる若い人には、全ての仕事を任せたい。ただ入社時点では、何も知らなくていい、何もできなくていい。すべて一から教えます。現場も、事務も、パソコンも何でも。現場の作業だけやればいいのではなく、その作業の意味を知っておかないと効率よくできないから、一部分だけでなく全てを教えます。免許が必要なら取れるようにするし、この世で生きていくすべての技術を身につけて、なんでもできる人として育てたい。どこに出しても誇れる人材に育てたいんです」。

kanekosyouji39.jpgこの会社で人生が変わったという社員もいます

適正などは特にあるのでしょうか?との問いかけには
「なんでもやってみたいという、やる気のある人。今6人で人間関係がうまくいっているので、その輪に入れる人。面接は6人全員で行い、現場の意見を最優先で採用します。育てていくうちに適性はこちらで見て、本人に向いている仕事に就けるようにします」。と答えてくれました。
労働時間は朝7時から16時までで、ほとんど定時退社。10時と15時に休憩が15分間あり、12時からは1時間のお昼休み。工場の2階奥には窓から港の風景を眺められる休憩室があり、畳敷きの部屋で横になったり、お昼のお弁当を食べたりして過ごすそうです。窓から見える港の風景は、青い海が広がり、ひとときの間を癒やしてくれそうです。

kanekosyouji2.jpg海をのぞむ休憩室。昼休みにちょっと釣りを、などということも可能です

土曜の午後、日曜・祝日の休みもあり、この会社に就職して安定した生活ができるようになったと、結婚して家をかまえる人もいます。やりがいを見つければ、長くつづけられる仕事になると、卓さんは考えています。

「この仕事は、一般的にはゴミの山に見えるものでも、みんな価値があるものばかり。まるで宝物を見つけに行くような楽しみがあります。捨てられているものから価値を見つける。それは、世の中で一番環境にいい仕事といえるかもしれません」。
金属のリサイクルという仕事に対する、これまでのイメージを払拭し、付加価値を高め、若い力で魅力ある仕事に変えていきたい。そのために、一緒に働いて、一緒に未来を考えてくれる、新しい人材が望まれています。

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子どもが働きたいと思う会社に

「私はここを、働く人が長くいたいと思う会社にしたいと思います。トヨタは自分の子どもを入れたい会社、と言いますが、そこまではいかなくても、近づけるようになりたい。自分には娘がおりますが、入社当時の気持ちなら娘に薦めることはなかったでしょう。今は、娘が将来入ってもいいような会社にしたい、と思っています」。

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そんな卓さんが今やってみたいこと、将来の夢について聞いてみました。
「この建物には2階から下までの大きなシャッターがあります。今はもう開かないようにしているんですが、このシャッターに大きな絵を描いてもらえたらいいですね」。函館には「ISARIBI with(イサリビウィズ)」という学生団体があり、まちをよくするために地域の人々と様々な活動をしています。その一環として、大きなシャッターに描いてほしい、、、それは、どんな絵なのでしょう。
「たとえば子どもたちが考えたような絵で、それを見たら函館に帰りたいって思えるような絵。その絵を見てじもとの人も愛着が湧いてくるようになってくれば、この業界に対するイメージも変わっていくんじゃないかと思います」。

kanekosyouji35.jpgこのシャッターにどんな絵が描かれるのか

古くさびついたシャッターも、子どもたちが夢を描くキャンバスになる。会社のイメージ、ひいては業界全体のイメージを変えていけば、地域の人に認められていく。一枚の絵が導く未来の姿に、卓さんは期待を込めています。
「ほかにも工場には廃棄された大きなガスボンベが何十個もあって、その活用についても考えています。ガスボンベは鉄ですが、穴を開けて手をかけて出荷しないといけない。どうせ手がかかるなら、全く違うものにして、新しい役割や楽しさを与えられないか、と考えました。そこで子どもに色を塗らせてみて、ちょっと作り込んで、何かロボットみたいな面白い置物にしてみました。まだ試作段階ですけれど、子どもたちにとっても、楽しい創作活動につながるかもしれませんね」。

kanekosyouji46.jpg工場の片隅で、主のように鎮座していた試作品1号!

ほかにも、コンテナハウスをリサイクルして、新しい事務所をつくろうと、社内で相談を進めているそうです。そこに若い人が加わり、新しいアイディアが出てくれば、将来がさらに楽しみになるプロジェクトになるでしょう。自分たちが働く場所がますます素敵になれば、毎日の仕事もより楽しくなるにちがいありません。

函館のまちが好きになる、そんな未来へ

最後に、自分の生まれ故郷である函館のまちについて卓さんに聞いてみたところ、人気の観光地でありながら「住みづらい」という率直な言葉が返ってきました。

kanekosyouji36.jpgこのコンテナは、どんな快適なスペースに生まれ変わるのか。リサイクルは無限の可能性があります

「じもとにいると、正直、若い人は就職しづらい、子育てしづらいところがあります。だからこそ、それを変えていきたいと思っているんです。高校を卒業すると函館を出る人も多い。だけどちょっとしたきっかけで、ひとりでも函館に帰ってきたいという人が増えていけばいいなと思います。うちの家族も、従業員の家族も、やっぱりこの会社がいいなと思ってくれて、函館もいいなと思えるようにつなげていきたいんです。ほんのちょっと、何かきっかけがあって、函館が好きになってくれる。そこに、この会社があってほしいと思っています」。
函館で生まれ育った卓さんは、いったん外へ出て、再び函館に戻ってきました。そのときの景色は決して美しいものではありませんでした。しかし、苦労した末にたどりついたものは、自分が見た景色を将来には美しい景色にしたいという新しい夢。

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函館港のあるこのまちには、将来きっと、子どもたちが笑顔で集まるようになる。大きくなってから、ここで働きたいと思う仕事もある。その日に向かって一歩ずつ進んでいけるよう、新しい取り組みが少しずつ始まろうとしています。

有限会社 金子商事 株式会社グローイングメタル
有限会社 金子商事
株式会社グローイングメタル
住所

北海道函館市入舟町4-16

電話

0138-22-1108

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「宝探し」のリサイクル、魅力ある仕事へ。金子商事/Glowing Metal

この記事は2026年8月20日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。