「蝦夷富士」とも呼ばれる羊蹄山の麓に位置し、環境省の「名水百選」にも選ばれる極上の湧き水に恵まれた京極町。この地から湧き出る豊かな水資源を活かし、ミネラルウォーターや氷、コーヒーなど、毎日の暮らしに寄り添う商品を製造している会社が、「北海道ミネラルウォーター株式会社」です。地域にしっかりと根を張り、セコマグループの一員として全道をはじめ、全国へ高品質な商品を届ける同社。そのこだわりのものづくり、地域との結びつき、そして現場を支える社員の想いや職場環境について、代表取締役社長を務める村山秀之さんと現場で活躍する生産部部長の新松智久さん、生産課主任の鈴木翔さんに伺いました。
看板商品の「京極の名水」と、名水で丁寧に仕込まれた「名水珈琲」
コーヒー専門店など、水にこだわる全国のプロも認める超軟水
京極町は古くから「名水の里」として知られるまち。羊蹄山に降り注いだ雨や雪解け水が長い歳月をかけて地下深くで自然ろ過され、絶え間なく湧き出ています。豊かな湧水を見て、触れることができる「ふきだし公園」には、日々多くの人が訪れ、地域の重要な観光スポットとなっています。この公園の斜め向かいに工場を構えるのが、今回おじゃました「北海道ミネラルウォーター株式会社」。名水を最大限に活かした製造事業を展開する地元企業です。
同社は、北海道内で圧倒的な人気を誇るコンビニエンスストア「セイコーマート」を運営するセコマグループの一員。道民にとってはおなじみのミネラルウォーター「secoma京極の名水」をはじめ、夏の定番であるかき氷などの氷菓、さらには名水仕込みの本格的なリキッドコーヒーなど、水のおいしさが直接味を左右するセコマのPB(プライベートブランド)商品を手掛けています。
工場に隣接する「ふきだし公園」。羊蹄山から絶え間なく湧き出る澄んだ名水が地域を潤します
「当社がボトリングしている『secoma京極の名水』は、羊蹄山の自然のフィルターによって長い年月をかけて磨き抜かれた、非常に透明度の高い名水です。水質としてはミネラル分が適度に含まれた『超軟水』に分類され、飲むのはもちろんのこと、素材の風味を引き立てるので、和食の出汁やコーヒーの抽出などに最高の適性を発揮します」と誇らしげに話すのは村山秀之社長です。
同社では、セコマのPB商品だけでなく、小ロットのOEM生産も柔軟に請け負っています。こだわりのコーヒーを出す全国の専門店や自家焙煎所から「京極の名水を使って、自社の豆で抽出したコーヒーを作ってほしい」という依頼が絶えず寄せられており、雑味がなく、まろやかな口当たりの名水は、水にこだわる多くのプロにも認められています。
同社から取り寄せた水でコーヒーを淹れているという本州のコーヒー専門店もあるそうで、「どんなところから水が湧き出ているのかを見てみたいと、ふきだし公園と当社の工場にわざわざ足を運んでくださった方もいらっしゃいます」と村山社長。
こちらが代表取締役社長の村山秀之さんです
セコマグループの一員として、地域の産物を活かし、地域を持続的に豊かに
同社の前身企業は湧水を使った製氷会社と、隣接する場所にできたミネラルウォーター事業の会社でした。2010年代から段階的にセコマグループの傘下に入り、2020年にはさらなる経営基盤の強化と製造体制の効率化を目指し、組織の再編・統合が行われ、現在の「北海道ミネラルウォーター株式会社」として新たな歩みをスタートさせました。
北海道を代表する企業であるセコマグループが大切にしているのは地域密着。地域の産物を活かして、その地域全体が豊かになれば自ずと地域もそこに暮らす人も元気になり、持続可能な経済活動に繋がっていくと考えています。
工場内に掲げられた「私達の使命」。地域資源を守り高める強い想いが込められています
「前身の2社はどちらも、町外の方が京極のふき出し湧水の持つポテンシャルの高さに着目して事業を立ち上げたと聞いています。縁あって、現在は当社が京極町の唯一無二の自然の恵みを使わせていただき、事業を行っている以上、この場所から離れることはありません。だからこそ、京極町をはじめとする周辺の地域社会とともに生きていくことを大事にしています。突飛な成長や身の丈に合わない無理な拡大を追うのではなく、これまで築き上げてきた名水のブランド力を大切にしながら、地域にしっかりと根を張り、一歩一歩着実に歩みを進めることが重要だと考えています」
同社は地元のイベントへの協力や、近隣の小中学校からの工場見学の受け入れなど、地域住民との交流も大切にしています。また、地元の高校からの新卒採用を継続的に実施。地域の若い世代が地元で安心して働き、着実にキャリアを重ねていける職場づくりにも取り組んでいます。

「地域への社会的責任を果たしながら、社員が自社に誇りを持って生き生きと働き、地域の方々からも『あの会社は良い会社だね』と愛される組織を作っていくことが、私の最大の役割です」
そう話す村山社長は、長年にわたりセコマグループの営業部門で現場を経験し、直営店舗を運営する子会社の社長を経て、2024年に北海道ミネラルウォーターの代表に。就任してからは、積極的に従業員に声をかけ、対話を重ね、一人ひとりのライフスタイルに配慮した働きやすい職場環境づくりに注力。現在も、より風通しの良い、温かな組織づくりを推進しています。現場からの些細な気づきや改善提案も積極的に吸い上げ、たとえば夏場の繁忙期における生産ラインの稼働スケジュールや人員配置についても、現場スタッフの意見を尊重しながらより負担の少ない方法を選択しています。
社員のみなさんと話す時の笑顔がとても印象的な村山社長でした
製造業=「夜勤が多くシフトが不規則」というイメージを持たれがちですが、同社は製造業では珍しく、基本的に土日が休みで、24時間稼働も行っていません(水ラインのみ2交代制)。そのため、充実したワークライフバランスも可能に。この体制を組めるのは、計画的な製造を可能にしているセコマグループだからなのだそう。
さらに村山社長は、「できるだけ社員に学ぶ機会を設けるようにしています」と話します。セコマグループで行っている各種研修制度を活用するなど、「工場で、与えられたことをただこなすのではなく、自分たちで『考える』時間があることによって、仕事に対する姿勢も、課題を見つけ解決する力も育つという思いです。そうした積み重ねが、会社の発展にも繋がり、次の若い世代の原動力にもなっていくと考えています」と続けます。社員の成長が、結果として企業の成長、地域全体の活性化にも繋がっていくというわけです。

安心安全な製品づくりは、やりがいがあり、働きやすい環境があってこそ
同社の敷地内には大まかに水、氷、コーヒーの3つの工場があります。それぞれ工場内の仕事は一見するとシンプルな工程に見えるかもしれません。しかしそこには、厳格な衛生管理と、現場で働く社員の徹底した品質へのこだわりと技術、そして一つひとつの作業に対する誠実さがあります。だからこそ、私たちは安心安全なおいしい製品を手にすることができるのです。
「全道のセイコーマートの店頭に自分たちが作った商品が並び、さらには本州や全国のファンにも届いているという実感は、社員にとって大きなやりがいであり、誇りにも繋がります。誇りを持つことで、ブランドを守っていこうという意識も強くなり、安全に対してもより細心の注意を払うようになると考えています」
ここから全道のセイコーマートに名水が届けられるのです
水資源の保全や製品の安全性追求においては、定期的な水質検査や最新設備による衛生管理を行い、妥協を許さない体制を維持。京極町の土地のブランド価値を守り抜き、お客さまに安心を届けることを大切にしています。
最後に、同社の今後の展望や未来への想いを尋ねると、村山社長は次のように語ってくれました。
「私たちが目指しているのは、地域とともに歩む持続可能な確実な成長です。セコマグループが持つ強い総合力と物流ネットワークを生かしながら、『京極のふき出し湧水』と私たちが積み重ねてきた技術から生み出される素晴らしい商品を、より多くのお客さまへ安心とともに届けていきたいと考えています。そしてそのためには、現場で働く社員一人ひとりが自分の仕事に誇りと喜びを持ち、元気に笑顔で働ける職場であり続けることが何より不可欠です」

培ってきた技術やものづくりの情熱を次世代へ。ベテラン社員の想い
村山社長の次に、実際に現場で働く社員の方たちにお話を伺います。登場するのは、製造現場の全体を統括する生産部部長の新松智久さんと、若手のホープ・生産課主任の鈴木翔さんです。
まずは現場における大ベテランの新松さんから。新松さんは小樽の高校を卒業後、1990年代に前身の「夢氷工房」に入社。それ以来、約30年にわたり京極の工場で製氷や水処理、製造ラインの管理に携わってきました。
「高校生の時、氷を作る会社でアルバイトをしたのがきっかけで、就職する際に京極町の工場を紹介され、生まれ育った札幌を離れて寮に入って働き始めたのがスタートです。当時は右も左も分からない状態でしたが、製氷技術や機械設備の扱い、現場の動かし方などを一から覚えていきました」
こちらが生産部部長の新松智久さんです
会社の経営母体が時代とともに変わっていくという大きな変化の波も経験した新松さん。一度は会社が閉業したため、札幌に帰ろうかと考えたこともありました。しかし、尊敬する先輩から、「京極の工場はきっと再スタートするはず。そのときには絶対にお前の力が必要だから残っていてくれ」と言われます。新松さんは先輩の強い言葉を信じ、京極に残ってアルバイト生活を送ります。数か月すると、先輩の言葉通り、工場はセコマグループの一員となって再稼働を始め、現場のことをよく理解している新松さんも現場に復帰。
「セコマグループの傘下に入ったことで、経営基盤が安定。給与や待遇、体制も安定したので、安心して仕事に従事できるようになりました。しかしそれ以上に大きかったのは、自分たちが丹精込めて作った氷やミネラルウォーターが、グループの物流網と店舗ネットワークを通じて、全道のお客さまの元へ確実に届くという仕組みができたことです。自分が作った商品が多くの方に手に取られているという達成感は、ものづくりに携わる者として何よりも嬉しいですね」
また、村山社長が就任してから、社長と話す機会も増え、「研修への参加などもそうですが、社長の話も現場のマネジメントを行う自分としてはとても勉強になります」とも話します。
現在は工場全体の安全衛生管理や生産ラインの効率化を推進する一方で、長年培ってきた技術やノウハウを若い世代へ継承することに注力しています。
「氷づくりや液体の充填現場には、機械のスペックデータだけでは測れない微調整や長年の勘や感覚的なものが必要な部分もあります。現場で働く若いスタッフたちが事故や怪我なく、安心して自分の力を発揮できるよう見守りながら、私たちが繋いできたバトンをしっかりと次の世代へ伝えていきたいと考えています」

複数の業務を経験できる面白さが魅力。若手も大いに活躍できる職場
新松さんがバトンを繋いでいきたいという若手の一人が鈴木さん。「機械の調整や動かし方のセンスがいい」と新松さんが高く評価する生え抜きのホープです。今年で9年目を迎え、最近主任に昇格しました。
鈴木さんは、近隣の岩内町出身。地元の高校を卒業後に同社へ入社し、現在も岩内から車で通勤しています。
こちらが生産課主任の鈴木翔さんです
「高校時代に部活動で運動(空手)をやっていたこともあり、デスクワークよりも体を動かす現場作業の仕事に興味がありました。企業見学に来た際、『この工場では毎日同じ単純作業をずっと繰り返すのではなく、工程ごとにさまざまな機械操作や作業に携わることができる』と聞き、そこに大きな魅力を感じて入社を決めました」
同社では、一人の作業員が複数の製造ラインや工程をこなせるマルチスキル(多能工化)を積極的に推進しています。鈴木さんも入社後、会社の資格取得支援制度を活用してクレーン操作や玉掛けの資格を取得し、これからフォークリフトの資格を取得予定。氷の製造からミネラルウォーターやコーヒーの充填ライン、さらには機械設備の日常点検・メンテナンスに至るまで、幅広い業務を着実にマスターしてきました。
「自分が担当するラインの機械を事前に細かく調整し、その日の生産目標がトラブルゼロで順調に達成できた時にやりがいを感じます。機械の不調や詰まりを防ぐための微妙なセッティングには難しさもありますが、自分で調べて工夫した通りにラインがスムーズに動いた時は本当に面白いですね」
現在は新入社員の教育係という重責も担っている鈴木さん。後輩への指導にあたっては、自分の新人時代を思い出しながら、相手の目線に立った丁寧なコミュニケーションを意識していると話します。
「自分自身、入社当時は分からないことだらけで不安でしたが、先輩たちがとても親身に優しく教えてくれました。だからこそ、新しく入ってきた後輩が孤立したり不安を感じたりしないよう、言葉遣いや声かけに気を配り、様子を見ながら適切なフォローができるよう心がけています。毎日違う変化や工夫の余地がある職場だからこそ、飽きずにやりがいを持って続けられています」

休みがきちんと取得できるのも会社の魅力と話す鈴木さん。休みの日には趣味の夜釣りを楽しむそう。話の端々からオンもオフも充実しているのが伝わってきます。
今回、社長、現場の社員のお二人に話を伺いましたが、撮影時の様子やちょっとしたやり取り、雑談からも職場の風通しの良さがよく分かりました。同社はこれからも社員が一丸となり、地域に根差し、名水のブランドを大切にしながら、持続可能な成長を続けていくのでしょう。


- 北海道ミネラルウォーター株式会社
- 住所
北海道虻田郡京極町字川西40番4
- 電話
0136-41-2231
- URL















