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まちおこしレポート
幌延町

もともと仲良しの2人。互いのやりたいことを叶えるため、幌延町の協力隊に20250901

もともと仲良しの2人。互いのやりたいことを叶えるため、幌延町の協力隊に

道北エリア、北緯45度線上にある幌延町。町の西側は日本海に面し、南側には天塩川が流れています。酪農業が主産業の町ですが、トナカイの観光牧場があることでも知られています。今回は、トナカイ好きが高じて地域おこし協力隊として幌延町にやってきた成田詩織さん、その成田さんの紹介で同様に地域おこし協力隊として着任した上野麻衣子さんに、協力隊になるまでの経緯や今の仕事内容、これからのことなどを伺いました。また、地域おこし協力隊の担当をしている役場の職員・菅原巧さんにも同席していただき、幌延町の協力隊について教えてもらいました。

トナカイが好きすぎて、観光牧場の飼育員の協力隊に応募

生まれも育ちも札幌で、札幌を離れたことが一度もなかったという成田詩織さん。そんな彼女が幌延町の地域おこし協力隊に応募したのは、トナカイがきっかけでした。


horonobekyouryokutai_118.jpgこちらが、幌延町の地域おこし協力隊2年目の成田詩織さん

「子どものころから動物が好きで、よく円山動物園にも行っていました。家でも犬やハムスターなどを飼っていました。大人になってからは趣味のバイクで、道内各地の動物たちと触れ合えるところへ遠出していたのですが、ちょうど5、6年前に幌延町のトナカイ観光牧場を訪れたのがトナカイとの出合いでした」

大人になってから、鹿系の動物に興味を持つようになったという成田さん。観光牧場で出合ったトナカイたちにすっかり魅了されます。ちなみに、どのようなところが好きなのかを尋ねると、「全部です」と照れ臭そうに笑います。鼻も尾も目も、すべてが好きとのこと。トナカイの話になると目尻が下がっていく様子から、本当にトナカイが好きなのだと伝わってきます。

horonobekyouryokutai_11.jpg成田さんの名刺には、愛らしいトナカイの顔が!

初めてトナカイと触れ合ったあとも、何度か幌延町まで通ったという成田さんは、観光牧場の飼育員がアップするSNSも欠かさずチェックしていました。そこで、地域おこし協力隊の観光部門でトナカイの飼育員を募集していると知ります。

「募集しているのを見つけて連絡をしたら、もうその年の募集は終わっていて、次の募集が出るのをマメに確認していたら、翌年にまた募集をしていて、すぐに連絡をしました」

ところが、これまで女性飼育員の採用経験がなかったため、役場のほうからまずは2週間の体験をしてみないかと提案されます。

horonobekyouryokutai_33.jpgこちらが、幌延町役場職員の菅原巧さん

このときのことを役場職員の菅原さんは、「成田さんのトナカイへの熱意はすごく感じたのですが、体力的な心配もありましたし、ひとまず2週間のお試しを提案させてもらいました。想像していたのと違うというギャップはどこでもつきものだと思うので、とにかく体験してもらったほうがいいと判断しました」と振り返ります。

成田さんは2週間、町のホテルに滞在し、毎日観光牧場で先輩飼育員についてエサやりや掃除など、トナカイのお世話を体験します。

「本当はお試し住宅に入る予定だったのですが、ちょうど空いていなくて、ホテルに滞在しました。2週間の間に、トナカイのお世話の仕方を教えてもらいながら、仕事が終わったあとは、町内を歩いて回り、スーパーの場所の確認などをして、町で暮らすイメージを自分の中で作り上げていきました」

2週間のお試しを経て、成田さん自身も、採用側も、飼育員として働くことができると判断。成田さんは正式にトナカイの飼育員として地域おこし協力隊に採用されます。そして、バイクの免許は持っているものの、車の免許は持っていなかったため、採用が決まるとすぐに札幌で車の免許を取得。しかも、牧場にある軽トラックがマニュアル車であるため、マニュアルで免許を取ったそう。

気付けば体力もつき、体もマッチョに。トナカイと一緒にいられて毎日が楽しい

2024年6月に幌延町に住まいを移し、念願のトナカイ観光牧場で働き始めた成田さん。最初の2、3カ月は、先輩たちに付いて仕事を覚え、そのあとはひとりで作業をこなすように。


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「牧場には今、33頭のトナカイがいるのですが、エサやりや掃除、草刈りなどのほか、トナカイたちがケガをしていないかのチェックなどもします。その他、来場者への案内説明や、SNSでトナカイの魅力を発信しています。重機を使う仕事以外はほとんど全部やっていますね」

成田さんは札幌にいたころ、販売の仕事やカフェのスタッフ、コールセンターなどの仕事をしていました。動物に関わる仕事に就いたことはなかったため、すべてが初めての経験でした。トナカイの生態に関する知識を先輩たちに教えてもらいながら、実際に目の前にいるトナカイのお世話を通じてたくさんのことを今も学んでいるところなのだそう。

「とにかく毎日楽しい。もともと動物を観察するのが好きだったので、毎日トナカイと触れ合えるのが楽しいのです。もともと力があったタイプではないのですが、トナカイのお世話をしているうちに、自然とマッチョになっていきました(笑)」

冬の間は、トナカイと一緒にイベント出張などに出かけるそう。特にクリスマスシーズンはトナカイが大活躍。道内各地のイベントに呼ばれ、成田さんも同行してトナカイのお世話をします。

幌延町に移住するまで、札幌以外で暮らした経験がなかった成田さん。町での暮らしについて、「特に困っていることはありません。日曜は町内のスーパーがお休みなんですが、隣町に行けばスーパーもあるし、あとはネット通販で何でも手に入りますしね」と、田舎町での暮らしに対して不便は感じていないと話します。

「トナカイの飼育員は天職だと思う」と話すほど、トナカイに夢中の成田さん。協力隊の任期が終わったあとも飼育員として働き続けたいと思っていると最後に話してくれました。

horonobekyouryokutai_109.jpg新しく協力隊として入ってくる方がいたら、動物が好きで一緒にコミュニケーションを取りながら働ける方だと嬉しいです、と話す成田さん

静岡移住の経験があったから、移住に関するハードルも低めだった

次に話を伺うのは、成田さんより少しあとに地域おこし協力隊として着任した上野麻衣子さんです。実は成田さんと上野さんは、前職が同じ職場で仲も良かったそう。成田さんがバイクを乗り始めたのは、上野さんの影響だったとか。


horonobekyouryokutai_51.jpgこちらが、幌延町地域おこし協力隊1年目の上野麻衣子さん

「私は北広島市出身で、もともとは美容師でした。専門学校を卒業したあと、5、6年、札幌のサロンに勤務しました。美容の仕事は自分に向いていると思っていたものの、当時の美容業界は休みも少なくて、先々の自分の人生を考えたら、もっといろいろなものを見てみたいと思って、コールセンターに転職しました」

その後、結婚して、札幌で夫の経営する飲食店の手伝いを行う傍ら、休みには夫婦でバイクに乗ってあちこちツーリングを楽しんでいました。

「夫と日本全国をバイクで周ってみたいねと話し、2011年に店を閉め、思い切って縁もゆかりもない静岡に移住しました」

静岡を選んだのは、日本各地にアクセスしやすいからでした。平日はそれぞれ仕事をして、休みになるたび、全国をバイクで周遊。

IMG_7998.jpeg砂浜をバイクで駆け抜ける上野さん

「初めての道外での生活だったので、最初は不安もありましたが、いざ暮らしはじめると案外楽しくて。全国各地を回って、その土地ごとの食べ物や生活、景色を知ることができて面白かったです。そして、北海道を離れたことで、逆に北海道の良さに気付くことができました。食べ物のおいしさや北海道の人の大らかさなどをあらためて実感しました」

幌延町は協力隊の活動やチャレンジしたいことを応援してくれる

日本各地を回り終わった上野さん夫妻、次はお金を貯めて世界一周にチャレンジしようと一旦札幌へ戻ります。静岡時代と同様、仕事の傍ら、休みのたびに世界各国へ。20か国ほどを回ったそうです。

その後、移動販売の手伝いをしていた上野さんは、カフェで働いていた成田さんと知り合います。意気投合した2人は、同じコールセンターに転職。バイクでツーリングにも出かけるようになります。

そんな中、成田さんが幌延町へ移住することに。実は、上野さんも夫と田舎暮らしについて検討し始めていた矢先でした。「静岡で暮らした経験があったので、違う場所で暮らすことに対してのハードルは低く、次は田舎がいいねと話していたんです」と続けます。

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「成田さんに、幌延で何か仕事ない?と尋ねたら、地域おこし協力隊の募集をしていると教えてもらったんです。幌延町はバイクで何度も訪れている町で、私が日本で一番好きな景色(オロロンラインの海沿いの道)もあったので、幌延に移住するのもありかなと思いました」

地域おこし協力隊の制度は知っていたという上野さん。3年という任期の間に、自分たちがどうしたいか、次に何がしたいかをじっくり考えられるのが魅力的に感じたと話します。

そのとき募集していたのは商工分野でしたが、「お店がやりたいとか、そういうのではなく、幌延町に住みたいという気持ちのほうが先にあったので、その思いを役場の人たち伝えた上で採用となりました」と振り返ります。

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2024年7月から幌延町に夫婦で移住し、上野さんは地域おこし協力隊の隊員として、今は町のパン屋さんで製造と販売に携わりながら、JRの駅構内にある幌延町移住情報PR支援センター「ホロカル」にも勤務。旦那さんは町内のレストランの調理員として働いているそう。上野さんはパン屋さんの商品開発のほか、ホロカルで販売する町の特産品作りなども行っています。トナカイの角で作ったボタンは上野さんのアイデアから生まれました。最近は、地元のミズナラの木を使ったかんざしを商品化したそう。

「町での暮らしは気に入っているので、そろそろ協力隊を終えたあと、町でどうやって暮らしていくかも考えなければと思っています。役場の人とも相談して、今はドローン操縦士の資格を取ろうと考えています」

資格を取ったのち、ドローンを使った事業をどのように発展させていくかは、検討している真っ最中。「何か町の役に立つようなことができればと考えています」と上野さん。役場の担当の菅原さんも「このエリアではまだドローンに関する事業は普及していないので、町としても事業として成立できるのであれば応援したいと考えています」と話します。地域おこし協力隊の期間中に、操縦士免許取得費用などの支援も町として行うそう。

上野さんは、「幌延町は協力隊の活動にとても寛容なところがあると感じています。卒隊後のことも含め、チャレンジしたいという思いを汲んで、できる限りのことをしようとしてくれるんですよね。それがとてもありがたい。暮らしの面でも、住宅料を町で負担してもらっていて大変助かっています」と話します。人口約2000人という小さな町だからこそ、柔軟かつ親身な対応が可能なのかもしれません。今後も家賃や引っ越しに関する支援など、新たに協力隊を募集する際もできる限りのことはしたいと思っていると菅原さん。「幌延町を好きになってもらって、卒隊後も残ってもらいたいので」と最後に話してくれました。

horonobekyouryokutai_147.jpg明確に「これを始めたい!」という目標が見つからない方でも、幌延町の地域おこし協力隊は「なにかを始めてみたい」、「幌延町で暮らしてみたい」という思いがある方にぴったりな暮らし方・はたらき方だと話す上野さん。一緒に新たなスタートをきりませんか?

幌延町役場
住所

北海道天塩郡幌延町宮園町1番地1

電話

01632-5-1111

URL

https://www.town.horonobe.lg.jp/

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もともと仲良しの2人。互いのやりたいことを叶えるため、幌延町の協力隊に

この記事は2025年8月6日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。