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まちおこしレポート
共和町

町民と共に創る共和町の道の駅。官民連携の運営会社「とものば」20250124

町民と共に創る共和町の道の駅。官民連携の運営会社「とものば」

らいでんスイカやらいでんメロンなどの全国区で知られる特産品がある農業の町・共和町。国際的リゾートになったニセコエリアの倶知安町や豊かな海の幸が獲れる岩内町と隣接する町です。2027年には、新たに道の駅がオープンする予定。オープン1,000日前にあたる2024年10月に開業前イベントも行いました。道の駅を建てるにあたり、地域の魅力をあらためて掘り起こすところからしっかりと関わるために入ったのが株式会社フィルド。札幌で建築設計を軸に宿泊業、まちづくりに関する事業を展開しています。その同社と共和町が共同出資して誕生したのが、今回おじゃました「株式会社とものば」です。官民連携の道の駅運営会社として、まちづくりや特産品開発などの拠点として事業を展開しています。

tomonoba_00.jpg2027年開業予定・共和町道の駅イメージ(とものばHPより)

豊富な農産物をはじめ、道の駅開業や高速道路開通など、ポテンシャルの高い共和町

共和町役場のすぐ近くにある一軒家。表には「とものば」の看板があり、裏手に回ると「とものばショップ」とあります。道の駅開業前のアンテナショップとして2024年夏にオープンしたお店で、中に入ると、なんだかおいしそうなお菓子や素敵な瓶に入ったジュース、農産物などが並んでいます。

地元のお米から作った米粉を用いたカステラやフィナンシェ、特産のらいでんスイカやメロンを用いたサイダーなど、気になる商品がたくさんあります。パッケージもステキで、手土産に利用したいと思わせてくれるようなものばかり。これらは、「とものば」で開発プロデュースしたもの。「共和町は農業の町で、素晴らしいものがたくさんとれるんです。でも、それをうまく使って町をPRできていないのがもったいないと思いました」と話すのは、株式会社とものばの松本和哉さんです。

松本さんからいただいた名刺は3枚。とものばの名刺、株式会社フィルドの名刺、そして共和町の地域おこし協力隊の名刺です。松本さんは、フィルドが道の駅開業に携わることが決まった2022年に転職し、フィルドの社員に。そして、共和町で暮らし、共和町のことを深く知る必要があると、その年の春には地域おこし協力隊として共和町へ移住。現在は、観光振興推進員として活動中です。

tomonoba_10.jpgこちらが松本和哉さんです。

松本さんは札幌出身。酒造メーカーの営業として活躍し、九州や東京にいたこともありましたが、地元・北海道で地域活性に関する仕事をしたいと考えていたとき、共和町道の駅のプロジェクトの事を知り、転職をしました。

「共和町はいろいろな可能性を秘めていると感じました。らいでんスイカやメロン、米、そばなどがとれる農業の町。でも、らいでんという名前は知っていても共和町という地名はあまり知られていないし、実はそばの収穫量も道内屈指なのに知られていない...。それはもったいないなと思う一方で、これは逆にチャンスもあると感じました。また、道の駅ができるころに、高速道路のインターチェンジもできる予定ですし、同じころに町内の小中一貫校も完成。さらにイギリスのパブリックスクールであるラグビー校誘致の話もあり、ニセコエリアのベッドタウンとしても注目されています。すごくポテンシャルの高い町だと思いました」

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地域おこし協力隊として共和町に移住。地域になじむところからスタート

道の駅開業に向けて、まずは町に溶け込むことが大事だと、地域おこし協力隊として、札幌から単身で移住。松本さんは、積極的に町の人たちと交流を深め、地域の抱える課題や、道の駅開業に向けてクリアしなければならない部分にも着目し、アクションを起こしていきます。

「移住してすぐのころは、『あんた、どっから来たの?』からはじまり、時には道の駅の話をすると、あからさまに反対する方もいました。協力隊として着任する際に、町の基幹産業は農業なので、新しい観光事業は必要ないという考えの方もいると聞いていたので、そこでへこたれることはありませんでした。そして、町のいろいろな方と対話を重ねる中で、30、40代の方たちの中には、共和町を自分たちの子どもに魅力を感じてもらえる町にしていきたい、誇りに思える町にしたいと考えている人が多いことも分かりました」

tomonoba_13.jpg地域おこし協力隊としても活動する松本さん。役場で職員さんと打ち合わせをしたりすることも。

松本さんはとにかく町になじもうと、活動をスタート。5月には、収穫量が全国でもトップ10に入る地元のそばをブランド化しようと、町をあげて新そば商品開発のプロジェクトを立ち上げ、地元農家さんと協力し、種まきから刈り取りまで週1回は畑を観察。冬には、のど越しの良い「ふのり蕎麦」を完成させました。

「そばは、これまで原料ベースの流通だったので、共和町でそばが収穫できることを知らなかった人も多かったんです。せっかくなら幌加内や新得のようにブランド化して、共和町のオリジナルのそばを作ろうと、のど越しの良いふのり蕎麦を開発しました。隣の岩内町出身で、そば通で知られるDEENの池森秀一さんがYouTubeでも取り上げてくださったこともあり、おかげさまでたくさん反響をいただきました」

tomonoba_22.jpgその土地ならではのお土産にもぴったりな「ふのり蕎麦」。

このほかにも、1年目には町の方とアイデアを出し合い米麹の甘酒やメロンのお酒、メロンパンなど、特産を生かした商品開発を行いました。取り組んだのは商品開発だけではありません。共和中学校の生徒を対象にしたワークショップをはじめ、マルシェの開催、町の祭りやイベントの手伝いなども行いました。8月には、町とフィルドが共同出資した「とものば」もスタート。観光プランナーや食品衛生管理責任者の資格も取得し、冬には町民の方々と一緒にアイスキャンドルのイベントも開催しました。1年でこんなにいろいろなことをやったのですか!?と驚きます。

「僕が1人で好き勝手やっているのでは意味がない。とにかく町の人と一緒に取り組むことが大事なので、特産品の開発も地元の生産者さんらと一緒に考え、行動しました。僕は外とのパイプ役であり、プロデューサーであり、いろいろな役割を担っています」

tomonoba_9.jpgこの日も地元の生産者さんと打ち合わせがありました。

予算がなければ資金を調達すればいい。特産品開発やイベント実施に奔走

2年目に入ってもその勢いは変わらず、中学校の学校運営協議会委員にも任命され、前年度に引き続き中学生対象のワークショップを行ったほか、総合的な学習の授業で講師としても登壇。もちろん特産品開発も行い、すいかサイダーや米粉スイーツにも取り組みます。町の文化施設を使ったナイトミュージアムやハロウィンマルシェといったイベント開催のほか、共和町のモニタリングツアーなども行い、冬には観光コーディネーターの資格も取得しました。

「役場の人から、『ここまでやってくれるとは思わなかった』と言われることがあるのですが、町の人たちと一緒にとにかく動き回っていましたね。今も変わらず動いていますけど(笑)」

3年目も同様に、特産品開発を行い、中学校で子どもたちに向けて働くことや町について考えるワークショップや授業も実施。夏にはアンテナショップ「とものばショップ」をオープンし、10月には道の駅開業1,000日前のカウントダウンパネルを製作して開業前イベントを開催しました。これだけさまざまな活動をしていると、資金も相当かかりそうな気がしますが...。

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「ほかの市町村の地域おこし協力隊の方たちと話をしていて、よく予算について話が出るんです。やってみたいことがあっても予算がないからできないという人もいますが、僕はそこで諦めない。補助金を活用したり、イベントで物を販売してその利益を回したり、町の人たちと協力し、知恵を出し合って実行すればいいと思うんです」

松本さん自身もいろいろ試行錯誤をしているところと話しますが、「お金のことだけでなく、ひとつの町村だけで何か新しい取り組みをするのが難しいなら、近隣の町村とタイアップするのもひとつの手だと考えています。これからは近隣との協力体制も重要になってくると思います」と続けます。

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とものばショップの運営やイベントをサポートするスタッフも活躍

松本さんは地域おこし協力隊としての任期がまだ残っていますが、道の駅開業に向けての取り組みも進めていかなければなりません。そこで、株式会社とものばのスタッフとして、2シーズン目から道の駅の準備や特産品開発に関わっているのが、上石有紀さんです。

「普段はフィルドの札幌本社に勤務し、社内外の広報やまちづくり関連の業務に携わっています。松本が地域おこし協力隊として業務に携わっている中、特産品の開発業務や広報活動などのバックアップをしています。共和町でイベントが行われる際はお手伝いにも駆けつけます!」(上石さん)

tomonoba_6.jpgこちらが上石有紀さん。

そしてもう1人、今年の9月からとものばのスタッフとして加わったのが有海奈生子さんです。北海道が大好きという有海さんは、とものばでスタッフを募集しているのを知り、千葉県から共和町へ移住。とものばのスタッフとして松本さんのサポートや 、とものばショップの運営に携わっています。

「北海道へは何度も旅行で訪れていて、いつか暮らしたいと考えていました。ちょうどとものばで募集をしていて、町の人たちと一緒に道の駅を作っていくと聞き、それはすごくステキな話だなと思って応募しました」(有海さん)

tomonoba_7.jpgこちらが有海奈生子さんです。

取材時も、上石さんと有海さんの2人で、クリスマスマルシェで提供するフードメニューについて打ち合わせをしていました。米粉カステラにバニラアイスをトッピングしたもので、どう盛り付けるかなどを相談(とてもおいしそうでした!)。ちなみにこの米粉カステラは、とものばショップでも販売しており、そのパッケージデザインは上石さんが手がけたそう。

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道の駅の開業は通過点。町の人や子どもたちとどう育て、作り上げていくかが大事

2027年の道の駅開業に向けて、完成イメージもでき上がりました。観光拠点であるとともに、地元の人たちにとって日常的な居場所として利用してもらうことを目的としています。農産物や特産品の販売スペースを設け、地域産業の活性化にも貢献。地元の食材を用いたメニューが楽しめるレストラン、屋内と屋外に子どもたちが遊べる遊戯施設も設置するほか、オートキャンプ場、温浴施設も設け、ニセコ地域はもちろん、岩宇地域(共和町、岩内町、泊村、神恵内村)の広域観光の起点となれるようにという構想も盛り込んでいます。

「道の駅の開業はあくまで通過点であり、ゴールではありません。建物を作って終わりではなく、そこからどう町に暮らす人たちと一緒に道の駅を育み、運営していくかが大事。町の人と共に次世代が誇れる魅力的なまちづくりしていくことが目標です」(松本さん)

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そんな松本さんの思いが一番現れているのが、中学校でのワークショップや授業のように感じます。働くというテーマで子どもたちと話をするそうですが、特産品をどうやって作っていくか、実際に作ったものをどうやって販売していくかなど、自分たちのアイデアを形にしていく過程を子どもたちに実際に見せているそう。

「小さな町にいても、自分のアイデア次第で新しい仕事を生み出すこともできるし、仕事がないなら自分で作ることもできると伝えています。子どもたちの中には、共和町にいたら、あれもこれもできないとはじめから諦めて、都心部へ出ることを考える子もいます。でも、ここにいてもできることや可能性はたくさんあると思うんです。だから、ワークショップを通じて子どもたちに、この町で暮らすこと、関わりをもって働くことについて真剣に考えてもらうきっかけとなったら嬉しいし、目的を持って課題に取り組むことがいかに大事であるかを伝えられたらと思います」(松本さん)

松本さんの地域おこし協力隊としての任期は2025年3月までですが、そのあとも、とものばと関わって道の駅開業に向けて、具体的に活動を展開していくそう。道の駅完成までまだ期間はありますが、町の人たちとじっくりタッグを組み、共に土台作りを行っていく姿勢は、共和という町名にぴったりだなと感じました。

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株式会社とものば
住所

北海道岩内郡共和町南幌似30番地5

電話

0135-67-7867

URL

https://www.tomonoba.co.jp/

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町民と共に創る共和町の道の駅。官民連携の運営会社「とものば」

この記事は2024年12月4日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。