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まちおこしレポート
八雲町

目立て! バズれ! すべては、八雲のために。20230801

目立て! バズれ! すべては、八雲のために。

北海道二海郡八雲町は、太平洋と日本海の「二つの海」を有する稀有なまち。「木彫り熊」発祥の地としても知られ、近年のブームも手伝って木彫りフリークが熱心に足を運んでいます。
一方、若者の流出や高齢化が深刻な影を落としているのは他地域と同様。この課題に「面白おかしく」、ユニークに立ち向かっているのが有限会社ボデーショップ八雲で常務取締役を務める小西雄一さん。彼の目に映る八雲町のポジティブな未来を伺いました。

企業の経営者とガンガン話した経験が自身の刺激に

JR八雲駅からクルマを走らせること約3分。この間にもマチナカには大手ドラッグストアや スーパー、飲食店や個人商店、さらに総合病院などの姿が見え、普段の生活に不自由することはまったくないことが分かります。取材陣は有限会社ボデーショップ八雲に到着。オフィ ス兼整備工場は一見すると、小さなまちの、小さなクルマ屋さん。

bodesyoppu_yakumo00004.JPG整備や、来訪など、いつもお客さんの車でいっぱいの店先

「あ〜、ちょっとお待ちくださいね。まずは座って、座って。今日だけでもカーリースが3件も...月末なのも重なって、バッタバタで」

小西さんは一瞬だけ顔を見せて声をかけてくれると、またオフィスの中に消えてしまいまし た。あまりに忙しそうなので、本当にインタビューの時間が取れるのだろうか...と暗雲が立ち込めたところ、ほどなく「スミマセン!お待たせしました。さ、何でも聞いてください」 と人懐こい笑顔が戻ってきました。

「ウチの会社は父が創業し、順調に進めば私が二代目にあたります。僕は長男ですし、周りを見ても八雲に残って親の面倒を見続けられるよう役場職員の道を選んだり、Uターンした りする人も多く、将来的には継ぐことになるのかな...と、ぼんやりと思っていました」

小西さんは札幌市の大学に進み、卒業後は大手税理士法人で働きました。昼間は仕事、夜は税理士を目指すための学校に通っていたと振り返ります。

bodesyoppu_yakumo00011.JPGこちらが、今日の主役小西雄一さん。

「正社員ではなかったものの、実務として企業の経営者とガンガンお話しできたのは刺激的な経験。仕事を通じて自分で会社の舵を握りたいという気持ちも膨らんできましたね。ただ、結局のところ税理士資格を取るには至らず、27歳のころに八雲に戻り、ボデーショップ八雲に入社しました」

これからの時代に生き残るためには、変化に対応することが大切

小西さんは税理士を目指していただけあり、「数字」に飛び切り強く、Uターン後は会社の経理や税務をすべて自ら担当。e-Tax(イータックス/国税電子申告・納税システム)を駆使してお金と奮闘するかたわら、自社を客観的な視点から見て、今後のビジョンや戦略を箇条書きにしていきました。

「ウチは板金塗装業から出発していますが、クルマに傷やヘコミができ、それを持ち込んでいただけるかどうかは正直なところ水もの。事故の多い冬場に比べて夏場は仕事量が大きく減りますし、お世辞にも経営が安定的とはいえませんでした。この先も生き残っていくためには変化に対応することが大切。なおかつ、安定収益を得ることが必要だと考えました」

bodesyoppu_yakumo00006.JPG若手からベテランまで、幅広い年代が活躍していました

こうした思いから4年ほど前にスタートさせたのが、大手のオリコオートリースが運営する 「コアラクラブ」の代理店事業。車検など諸費用込みの月額料金で新車に乗ることができる仕組みで、5年や7年の周期でリースが終了します。

「古いクルマを大切にするのも良いことですが、アチコチ故障するたびにお金をかけて修理するのはモッタイナイじゃないですか。リースなら5年・7年周期で新車に乗り換えられるので、さながらスマホや携帯電話の『機種変更』。車検込みの月額料金なので、周囲との価格競争に巻き込まれずに整備に集中できますし、万一の際にはウチで修理もできます」

リース事業を始めてから、驚くことに売上は5倍に跳ね上がったとか。改めて道南エリアでニーズの高いことを肌で感じたといいます。

bodesyoppu_yakumo00012.JPGニーズが増加中のカーリース。この日もひっきりなしにお客様が訪れていました
bodesyoppu_yakumo00010.JPG新人スタッフさんも笑顔で奮闘中

「ただ、そもそもリースについて知らなかったり、『自分のものにならないから結局は損』 と誤解していたり、田舎だからこそ必要とされる情報が行き渡っていないことも実感しています。なので、思い切って若い世代の新卒採用に乗り出し、職種を『SNS企画運用スタッフ』と して情報発信の専任者として迎え入れているところです」

まちが元気でなければ、ビジネスチャンスも生まれないのだ!

クルマ屋さんがカーリース事業を始めるのは納得の流れ。月額制なので毎月安定した売上が見込めるのも小西さんの思い描いていた通りです。ところが、ここ最近、八雲駅前の「コアラクラブ」に「コアラのお店」なる店舗を併設。コストコの商品を中心に、地物野菜や地場の水産加工品を販売しています。コ、コストコ?一体どうして?

bodesyoppu_yakumo00021.JPGここに来れば、札幌まで行かなくても商品が手に入ります!見るだけでも楽しい店内

「町内の方が面白おかしく買い物できる場所を作りたいと思って。これまで、コストコの商品は札幌まで出かけなければ手に入らなかったので単純に便利ですし、話題性を生み出す意味でも効果的だと考えたんです」

小西さんは「とにかく目立ってナンボ。そのためには何事もパイオニがいい」と冗談めかして笑い、こう続けます。

「僕はUターンした初日から地元愛が燃え上がり(笑)、すぐに商工会青年部に加入しまし た(現在は青年部を卒業)。他にも、さまざまな団体やビジネスサークルに参加し、民間・ 役場の方と話し合ううちに、まず八雲・道南エリアが元気にならないといけないと痛感するようになったんです。いくら商売を続けられても、お客様となる人口の分母が縮小の一途をたどるようでは伸びしろはありません。移住者が子育てして定住することで、ようやくビジネスチャンスを広げる段階になると思います。なので、僕ができることはニーズが高まりそうなものをいち早く見つけ、移住者を呼び込む一歩目となるようなバズる発信をすること。その中で新卒採用などの雇用が生まれれば、わずかばかりでもまちへの貢献にもなるかな... と」

bodesyoppu_yakumo00020.JPGお店では、笑顔のスタッフさんがお待ちしています!

なるほど、ユニークな取り組みはビジネスのためだけでもなく、単に奇をてらっているわけでもなく、八雲町を盛り上げるためだったのです。ところで...店内にある不思議なボックスは何?

「高気圧酸素カプセルボックスです。SNSで見かけて、コレは面白そうだと取り入れてみま した。グッと疲れが取れるのでお客様にもオススメですし、社員の福利厚生として使っても らうのも良いと思ったんです。他にも『ミラバス(マイクロバブルを生成し、お湯に浸かるだけで美肌を目指せる浴槽)』をすでに用意しているんですが、まだ活用段階まで手が回っ ていません(笑)」

「木彫りの熊」に価値があることを、まずは町民に周知!

小西さんは2022年にビームスジャパンとコラボした「八雲の木彫り熊アイテム」の開発に携わり、翌年にはパッケージに熊の木彫りを配したご当地アクリルスタンドを制作・販売するなど精力的に活動。自身も参加している守成クラブ(ビジネス交流の全国組織)のつながりから、「木彫りがホット」だと知り、こうした取り組みに乗り出したそうです。

bodesyoppu_yakumo00018.JPG自慢の、オリジナルコラボTシャツ

「地元の方は『今さら木彫りなんて...』という反応をする人も多いですが、今はいろんな雑誌で木彫りが取り上げられ、ビームスジャパンとのコラボ開発時には40ページもの特集が組まれたんです。木彫りがアツいことを知らない町民に改めて木彫り熊発祥の地に価値があることを伝えるために、町内の経営者や有志らとポスターを作ろうと考えているところ。今後、まちおこしや観光の軸とするにも、八雲の誰もが歴史を知っていたり、好きだったりしなければ、文化として厚みがないと思いますから」

bodesyoppu_yakumo00026.JPGショーケースには、代々の名人が彫った木彫り熊が、大事に保管されていました

現在、会社はカーリース事業を中心に収益が安定していることから、今後は観光に力を入れたいと小西さん。数年後には町内のとある物件を買い取り、中古車のショールームやコストコ商品・地元グルメの販売、飲食店テナント、鮮魚の加工場などを集めた複合施設をオープンするという具体的な構想も抱いています。

「先日、札幌からわざわざ八雲に出向き、船の上でお寿司を食べながら釣りを楽しんで帰っ ていったグループがいたそうです。しかも、かなり高額な料金を支払って。僕ら地元の人は 当たり前に慣れてしまっていますが、海があり、森が広がり、牛がいて、イルカが泳ぐ...こんな何もない光景にこそ価値があると感じる層も多いと気づかされました。いずれ、景色の良い場所にコンテナハウスを設置し、ワーケーションやグランピングを楽しめる施設も作ります...と、宣言するとやるしかなくなりますからね(笑)。で、繰り返しになりますが、こ うした取り組みや八雲の魅力を発信し、まちおこしの第一歩として『目立ってバズる』ためにも、若いSNS運用スタッフが必要なんです」

bodesyoppu_yakumo00032.JPG

「何もない」「今さら木彫り熊」などと嘆くのではなく、すべてをポジティブにとらえ、持ち前のバイタリティでグイグイと前に進んでいく小西さん。この明るく、頼りがいのある彼なら、口に出したことを現実にする日もきっと遠くない...確固たる意志を宿した瞳からも、そう確信することができました。

有限会社 ボデーショップ八雲
有限会社 ボデーショップ八雲
住所

北海道二海郡八雲町東雲町115番地1

電話

0137-63-4132

URL

http://www.bsy-yakumo.com/


目立て! バズれ! すべては、八雲のために。

この記事は2023年6月30日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。