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江別市

世界を感じ愛おしむ。一杯のコーヒーにこだわる珈琲専門店20220726

この記事は2022年7月26日に公開した情報です。

世界を感じ愛おしむ。一杯のコーヒーにこだわる珈琲専門店

札幌市から本社を移転し、江別市野幌に令和4年5月にオープンしたサッポロ珈琲館「Ebetsu Rinboku(リンボク)」に行ってきました。Ebetsu Rinbokuは、前庭にはサクラやイチイ、カエデなどの樹木が植えられ、建物の後ろには野幌原始林が広がり、自然に囲まれた場所にあります。

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こちらがサッポロ珈琲館外観

サッポロ珈琲館では札幌市内を中心に10店舗の喫茶店を運営していますが、どの店舗もスタッフがそれぞれ自分たちでつくる独自の雰囲気があり、チェーン店とは一線を画します。Rinbokuはどのようなお店なのでしょうか。

「子どもからお年寄りまでほっとくつろげ、地域に愛される店づくりをしていきたい」と、お話してくれたのは代表取締役社長 伊藤仁(いとうじん)さん。コーヒーを飲む人、働いている従業員、コーヒー豆農家などコーヒーに関わる全ての人を幸せにしたいというお話に広がっていきました。

歴史的建造物をリノベーションした特別な空間

サッポロ珈琲館による歴史的建造物を生かしたカフェ展開は5店舗目となります。


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こちらが伊藤社長です。

この建物はもともと、北海道林木育種場旧庁舎と呼ばれ、昭和2年に建築。北ヨーロッパに多くみられるハーフティンバー様式を基調とした洋風の建物です。柱・梁・筋交いが外部に露出しているのが特徴で、建物内部にも木製ドア、腰壁、木製窓枠など優れた意匠が見られます。

昭和11年10月の北海道陸軍特別大演習時に、昭和天皇が行幸の際に視察され、平成13年には、歴史的価値が高い建造物として国の有形文化財に登録されています。平成14年に江別市が国から購入し、地域住民の休憩所になっていました。

「じつは、13年前にもこの建物を見に来ているんです。その時はカフェのみをオープンさせるには建物が大きすぎると考えました」今回は、本社があった札幌市琴似駅前の再開発の話があったため、移転先を探していたところ、ちょうど林木育種場旧庁舎の保存・利活用事業者の再公募があり、応募し選定委員会で選ばれました。内装改修工事を行い、今年4月より株式会社珈房サッポロ珈琲館の本社と焙煎工場として活用し、直営のカフェもオープンすることになったのです。

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江別の印象は?新たな企画やコラボレーションの可能性

長い年月を経てきた建物には、趣きを感じさせる魅力があります。建物に思い入れがあっても、活用されないと存在価値が下がりますが、古い建物は壊してしまったら、もう二度とは建てられない貴重なもの。林木育種場旧庁舎がサッポロ珈琲館のカフェになるというニュースは、江別市民の間でも話題になり、喜びの声や期待が高まりました。

「江別の印象はいかがでしょうか?」とお聞きすると、以前から江別との関わりやつながりがあったことを教えてくれました。

江別市にある小林牧場の生乳を使用したブルーチーズケーキの製造や、パンに使う小麦粉は、江別市に本社を置く製粉会社を使用しています。また、サッポロ珈琲館が25周年を迎えた時には、現在は江別市にあるクラフトビールを醸造する会社とコラボして、珈琲ビールを作り記念品としました。江別に移転したことにより、今までもお付き合いのあった企業との距離が物理的にも心理的にも近くなり、今後はさらにコラボの機会も増えそうです。

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「先日、一般社団法人えべつ観光協会が主催する話し合いの場に参加したのですが、江別を盛り上げたいと考える企業、役所、市民が集まっていて、地域のために何かしたいという気持ちがすごいですね」

伊藤社長も地域の皆さんと一緒に江別を盛り上げることができればと感じたそうです。

サッポロ珈琲館の人気商品である珈琲羊かんを小さく切り分け、レンガを模して積み上げた商品を作ったことがありました。江別の煉瓦は北海道遺産のひとつ。江別でまたその商品を作ったら、おもしろいと思いますとニッコリ。江別限定商品もどんどん作っていきたいと考えています。

笑顔と気配りとチャレンジ精神を大切にする社風

珈琲専門店がこだわるコーヒーが魅力的なのはもちろん、サッポロ珈琲館の魅力の一つは、コーヒーに合うトーストや自社工房で作ったスイーツメニュー。全ての店舗にある共通の軽食メニューやスイーツのレシピの他にも、各店舗で作られるオリジナルの商品があります。

「食を自分なりの表現で形にして、お客さまに喜んでもらい、代金をいただけるのが飲食店の醍醐味」。スタッフには「自分の個性を出して、何が表現できるかチャレンジしてみなさい」と地域の特徴や個人のアイデアを活かしたメニューの開発を推奨しているのだそうです。これからどんな江別オリジナルができてくるのかとワクワクします!各店舗を巡っての食べ歩きも楽しめますよね。

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サッポロ珈琲館のロゴ

Ebetsu Rinbokuには「ここができて、本当に嬉しい」と毎日のようにお店に足を運ばれるお客様もいて、オープンから予想以上のお客さまにお越しいただき、当初は年中無休で営業する予定でしたが、従業員がゆとりを持って働けるようにと、急遽、月曜日を定休日としました。「お客様も大切ですが、一緒に働いてくれる人も大切です」

江別への移転を機に、正社員とアルバイトの募集をした時もたくさんの応募がありました。「夢を叶えるための準備期間として修行させてほしい」と面接に来る人がなぜかとても多いのだそうです。長く勤めてくれることも大歓迎ですが、独立して自分の店を持ち活躍している様子を見るのも嬉しいとおっしゃいます。

チャレンジ精神を持った人が集まり、イキイキと自分を表現しながら働く人が多いのは、サッポロ珈琲館をゼロから立ち上げた創業精神にも通じるものがあるのでは?と感じました。

旅行会社の添乗員から珈琲店の店長へ転身

サッポロ珈琲館は、お父さまの伊藤栄一氏が大手コーヒーメーカーに勤めていましたが「北海道に本物のコーヒー文化を創りたい」と一念発起し、1982年に創業されました。

旧本社である札幌市西区のサッポロ珈琲館の本店も、昭和初期に建設された旧北海道工業試験場第2庁舎を改装して喫茶室、焙煎室、売店、カルチャールーム、配送センター、本部事務所を設置し、コーヒー総合専門企業として発展していきます。
また、喫茶店のほかにも札幌市内のオフィスへのコーヒー豆の宅配や業務用コーヒーメーカーを貸出する「札幌珈琲サービスグランデ」を展開しています。

小さな頃からご家庭でコーヒーが身近にあったのだろうなとお話しを聞いていると、伊藤社長は、学生時代には全くコーヒーには興味がなく、好きだった英語や留学経験を活かして旅行会社に就職し、添乗員として世界中を飛び回る日々だったと言います。

「フランスでも必ずといっていいほど食後にコーヒー、カフェオレを飲みますよね。イタリアではエスプレッソ、トルコではターキッシュコーヒーを飲みました」海外に行った方が、日本よりもコーヒー文化が生活の中に浸透している様子に自然と触れることになったのだとか。

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お父様から何度となく「後継者として会社に来てほしい」という話もあり、伊藤社長は、会社員として打ち立てた目標を達成したら独立しようと決め、大きな仕事を成し得た後に旅行会社を退職され、サッポロ珈琲館で働き始めます。

「いきなり店長として店舗に行ったのですが、知識も経験もありません。職人やアルバイトで働く人の方が仕事を知っています」そのため店長の仕事ではありませんが、自らケーキを焼いてみるなど、現場を知るための努力をしました。それから、前職の経験を活かして、伊藤社長が各国の生産地に足を運び、独自に買い付けをするようになり、2003年にブラジルで最初の農園契約を結びました。

海外コーヒー産地の契約農園とのつながり

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普段はなかなかお目見えできない珈琲の生豆!

サッポロ珈琲館では現在、ブラジル、コロンビア、インドネシア(バリ・スマトラ)、ミャンマーの4カ国5カ所の契約農園があります。コーヒーは産地によって味が違うといいますが、各国の生産地特有の気候や土壌などを重要視しながら、精選方法の指定をし個性豊かな良質なコーヒー豆を輸出してもらいます。
さらに、生豆を約1カ月かけて日本へ輸送する中で、品質が下がならないようコンテナ管理もおこないます。
日本でおいしいコーヒーを飲めるのは、現地で働く生産者、輸出業者など、多くの人の労働があるからなんだと、改めて気がつくことができました。

独自のCSR(炭直火)焙煎法でつくる炭焼珈琲

農家が一生懸命に育て、大切に届けられたコーヒー生豆は、サッポロ珈琲館がこだわる備長炭の直火で焙煎され、炭焼珈琲となります。


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炭焼珈琲を、黒く焼いた苦いだけのコーヒーと誤解される事がありますが、ガスの炎で焙煎するのが一般的なのに対し、備長炭の直火焙煎をしているという意味なのです。
炭直火焙煎は、そもそも炭焼きの焙煎機が売られていないため、特別につくられた専用の炭火焙煎機を使用しています。この日は、焙煎士の方がお仕事されている様子を見学させていただきました。

その日の気温や湿度をみて微妙に調整しながら、焙煎士がつきっきりで火床に備長炭をくべ、火力を安定させます。豆の色づき具合を見ながら最高のタイミングを熟練の感覚で判断します。部屋中に香ばしい良い香りが広がっていますが、暑い中での大変なお仕事です。

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なぜ専用の機械までつくって炭火にこだわるのかというと、炭は燃焼時に発生する水蒸気がほとんどなく、遠赤外線効果で豆の芯部までムラなく均一に豆を焼くことができるため。さらにアルカリ物質である炭の灰が焙煎中にコーヒー豆に付着し、酸性がほどよく中和されます。炭で焙き上げるからこその、豊かな香りとコクのあるコーヒー豆となるのです。
この炭直火焙煎を採用しているのは、日本国内でも数少なく北海道では、サッポロ珈琲館が先駆けとのこと。

ここでしか飲めないオンリーワンの一杯を提供する

サッポロ珈琲館では、扱いやすいペーパードリップではなく、珈琲本来の旨味を抽出し、味のまろやかさを引き出すために布製のフィルターを用いてコーヒーを淹れるネルドリップ方式を採用しています。

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「珈琲は温度にとても敏感で、お湯の温度が高すぎると苦味が出てしまうし、低すぎると酸味が出やすくなるんです」と伊藤社長にコーヒーを淹れていただくという贅沢なおもてなしを受けました。

フィルターにコーヒー豆を挽いた粉を入れ平らにならし、手際よくお湯の温度を調整しながら、おいしいコーヒーを淹れるためのポイントを詳しく説明していただきました。丁寧にお湯を注ぎ泡立つ様子を真剣かつ愛情の眼差しで見つめています。

コーヒー豆が、地球の裏側から赤道直下を通り北海道まで届けられた道のりを思うと、自然と豆を大切に扱いたいという気持ちになります。その豆を今まで自分がどれほど適当に扱い、ドバドバとお湯を注いで、おいしいコーヒーを飲んでいたつもりになっていたのかと、少しガッカリしていると、今後、カルチャー教室を開催しコーヒーの魅力や淹れ方をお伝えする機会を検討していると教えていただきました。

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ご家庭でも、せっかく購入したコーヒー豆の実力を存分に発揮させたおいしいコーヒーを飲みたいですよね。知っているようで知らなかったいくつかのポイントやコツがあるので、ぜひプロの技を知りたいですよね!

さて、伊藤社長が淹れてくれたコーヒーは、深く芳醇な香りからも「どうぞおいしく味わって」と誘いを受けているようです。口に含むとすっきりとした苦味と上品なコクがじんわりと心にまで染み入る味わい。私たちが「おいしいコーヒー」を飲めるまでの過程を思い浮かべると、コーヒーに関わった人たちにも感謝の気持ちがわき、さらにおいしく感じます。

極上の一杯をいただきながら、伊藤社長の「コーヒーに関わる全ての人を幸せにしたい」という『珈福』と掲げた言葉を思い出しました。夢が叶えば叶うほど、世界に幸せな人が増えるのだなと、優しい温かい気持ちになります。

令和4年4月に創業40周年の節目を迎え、江別から始まるサッポロ珈琲館のさらなる発展に期待の気持ちでいっぱいになりました。

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株式会社 珈房サッポロ珈琲館
住所

江別市文京台緑町561-2

電話

011-376-0688


世界を感じ愛おしむ。一杯のコーヒーにこだわる珈琲専門店

この記事は2022年6月27日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。