HOME>まちおこしレポート>北海道を子連れワーケーションの「聖地」に!

まちおこしレポート
札幌市

北海道を子連れワーケーションの「聖地」に!20220224

この記事は2022年2月24日に公開した情報です。

北海道を子連れワーケーションの「聖地」に!

人懐こい笑顔と、取材陣を笑わせてくれるサービストーク。新岡唯さんは、出会ってすぐにファンになってしまうような飛び切り明るい人柄です。

彼女のご出身は門別町(現・日高町)。
千葉県の大学に進学し、直近では東京の大手システムインテグレーターで人事を務めていました。

ところが、2015年に出産した後、「待機児童問題」に直面。お子さんを預ける保育園がまったく見つからず、2017年に子育てのために札幌市へとJターンしました。そのタイミングで考え始めたのが「子連れワーケーション」を軸とした事業。

ん?ところで、ワーケーションってよく耳にするけれど詳しくは分からないような。新岡さん、まずはそこから教えてくださ〜い!

「小1の壁」を乗り越える手立てに、「子連れワーケーション」を。

niioka_yui05.jpgこちらが新岡さん。溢れんばかりの笑顔がとっても魅力的な方です。


新岡さんが起業したのは2018年。
会社組織として「イロドリトイロ株式会社」を設立したのは1年後。

ところで、当時はそもそもワーケーションという言葉自体も、さほど耳馴染みがなかったような気がします。

「そうですね。海外ではワーケーションの事例が注目を集めていましたが、日本では一部の人が知る程度だったと思います。幸い、私が東京で勤めていた大手システムインテグレーターは生産性を高める働き方に敏感。当時からテレワークを導入していたことに加え、人事として次なる一手を模索していたところ、ワーケーションと出会いました」

niioka_yui04.jpg実際に新岡さんがワーケーションをしている時のお写真。息子さんと、東京からワーケーションで来ていた記者さんのお子さん。

ワーケーションとは、「ワーク(work)」と「バケーション(vacation)」をかけ合わせた言葉で、仕事をしながら旅も楽しむ働き方。新岡さんが、この新しいスタイルに着目したきっかけは子育てだったといいます。

「保育園は仕事と子育てのバランスを取りやすい形態。一般に19時までは子どもを預けられますし、年末年始以外は長期にわたって休みになるケースは少ないですよね。一方、小学校には夏休みや冬休みがあり、学童保育も18時で終わるところがほとんど。いわゆる『小1の壁』を、息子が0歳のころから心配していたんです(笑)。私は7年後、長期休みでも仕事を休まず、なおかつ子どもの学びに良い環境をどうつくれるだろうか...と」

北海道は山や川、森、海、さらには地質など子どもが興味を持つ分野の宝庫。夏休みや冬休みに「子連れワーケーション」に出かけ、親は仕事をしながら子どもは当地で遊びと学びを深め、自由研究も終わらせて帰ってくることができるとどんなに素敵だろう。「そう考えると、私がやるしかないという気持ちが膨れ上がってきました」と新岡さんは笑います。

niioka_yui03.jpgこれは新岡さんと息子さんが草を観察中の一コマ。アプリで該当する草を探してはその特徴を学んでいるそう。

北海道には子どもの学びに最適なコンテンツがアチコチに!

新岡さんが思い描いた「子連れワーケーション」の事業は、ワーケーションをやりたい人に場所を紹介し、マージンを対価として受け取るビジネス。ただし、まずは北海道の中でワーケーションを受け入れる土地を増やさなければ、裾野も広がりません。


「折しも私が起業したのは、北海道がワーケーションを推進するタイミングと重なりました。たまたま東京で開催されたワークショップに参加したところ、職員の方と話すことができ、自治体とのつながりも広がっていったんです」

niioka_yui06.jpg

実際、道内の複数市町村から「子連れワーケーション」についての問い合わせがきたり、釧路市で長期滞在の助成金を活用したワーケーションを希望される方のサポートをしたり、新岡さんの取り組みはじわじわと前進していきました。

「自分でも子連れワーケーションにトライしてみたところ、北海道は有名な観光地ではなくても子どもの学びに最適なコンテンツがそこかしこに転がっていました。例えば、何の変哲もない川辺でも瑪瑙(めのう)石を探せたり、鶴居村では満天の星を見ながらスマホアプリで何の星座か勉強できたり、息子がそれを近くにいる人に教えたり(笑)。旅はさまざまな大人と関わる機会も増えるので、コミュニケーション力も高まったと思います」

このように旅を通じて育つ、まさに「旅育」ですね。

聞いている分には実に順調ですが、「子連れワーケーション」を広めるための取り組みを進めるうちに、コロナ禍が世の中をガラリと変えてしまいました。

「最初は東京のゆとりがある共働き家族をターゲットに据えていました。こうした人が継続的に北海道のマチに子連れワーケーションに訪れることで、自治体への小さな経済効果が生まれるのもメリットです。けれど、コロナ禍によって旅行を楽しみづらい世の中になってしまって...」

旅行を通じて子どもが成長する喜びを味わってほしい!

niioka_yui08.jpgこうした自然とたくさん触れ合える経験ができるのも、北海道でワーケーションをする魅力のひとつ


新岡さんの前に立ちはだかった壁はコロナ禍だけではありません。

「子連れワーケーション」に出かける以上、親の仕事中は子どもを預ける場所も必要ですが、現状では受け入れる術がないというのです。

「自分が住んでいる自治体以外の保育園を利用することはできませんし(一時預かりなどを除く)、小学校も区域外への就学は基本的にNGです。親の里帰り出産に伴って、自分の小学校に籍をおいたまま別のところに通うこともできますが、認知度も低く、それを子連れワーケーション用に拡大解釈するにはまだまだ時間がかかります。制度や法律は私一人の力では到底変えることができないため、悶々とした日々を過ごしながら、今は各自治体に子連れワーケーションを受け入れる土台づくりができないかお話ししているところです」

262134807_387602299712454_8818466459370772055_n.jpg特急列車の中での一枚。列車の中だということを忘れてしまいそうになるお写真です。

さらに、東京の富裕層をメインターゲットにしづらくなったことから、子連れワーケーションにかかる費用の高さもネックになってきました。新岡さんは、市町村営の住宅を中長期滞在用に改装し、価格を抑えて提供するのも一つの方法だといいますが、「これも自治体を動かさなければならないため、一筋縄ではいきません」と苦笑します。

「子連れワーケーション」を広めるには、大きな課題が山積しているようです。

niioka_yui07.jpg

頭を抱えながらも、壁にぶち当たりながらも、常に笑顔で「子連れワーケーション」の土台整備に向かって一直線。その原動力はどこから湧いてくるのですか?

「子育てママの力になりたいという思いもそうですし、旅行を通じて子どもが成長するという感動を味わってほしいという願いも原動力。北海道は地元の人にとっては当然の景色でも、子どもにとっては学びの資源になる場所がたくさんあります。その素敵な環境をもっと広く知って、子連れワーケーションの聖地に押し上げたいんですよね」

飾らない言葉とピュアな眼差しでそう語る新岡さん。このナチュラルさが彼女を応援したいというファンを呼び、いつか制度や法律の高い壁も乗り越えていける仲間に恵まれる...そんな未来が見えた気がします。

niioka_yui02.jpgいつもとっても大きなリュックを背負いながらも、持ち前の笑顔で札幌はもちろん、全道各地を旅している新岡さんです。

イロドリトイロ株式会社 新岡唯さん
URL

https://irodoritoiro.com/


北海道を子連れワーケーションの「聖地」に!

この記事は2021年11月18日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。