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まちおこしレポート
江別市

夢への一歩!CHARM(魅力)を持った新卒地域おこし協力隊!20211206

この記事は2021年12月6日に公開した情報です。

夢への一歩!CHARM(魅力)を持った新卒地域おこし協力隊!

北海道江別市。今年初めてちらちらと降る雪を見かけた道中、私たちくらしごと編集部は札幌のお隣江別市へとやってきました。本日お話を聞かせてくださったのは、このまちで、まもなく地域おこし協力隊の任期を終えようとしているひとりの女性。

地域おこし協力隊は、そのまちに入りPR等で地域の盛り上げに一役を買ったり、地域ブランドの開発・販売を行ったり、一次産業に従事したりと、そのまちによって仕事内容はさまざまですが、任期はどこも最大3年と決まっています。

2019年4月に江別市の協力隊となった前田実夢さん。それまでずっと札幌のご実家で過ごしていたという前田さんが協力隊になるまでの経緯から、じっくりお話をお聞きしました!

行政職員になりたいという夢を叶えるべく選んだ道

ebetsu_maeda2.jpgこちらが笑顔がとっても魅力的な前田さんです。


協力隊となるきっかけは思い返せば学生時代の頃。

かつて吹奏楽をやっていた前田さんは、いろんなまちへ地方公演をしに訪れ、そのたびにまちの人の温かさに触れ、次第に「地域の人たちと接する仕事がしたい」とその未来を思い描くようになったと言います。しかし、大学進学を考える際に前田さんの中にはもうひとつやりたい興味のある分野がありました。

「子どもの頃、小児ぜんそくを患っていて、それも人工呼吸器をつけるほどの重症で...。その人工呼吸器を扱う臨床工学技士という仕事に憧れて、その養成学校でもある大学へと進学しました」

医療の道に進もうと進学したものの、就職活動を目前とした時に「地域の人たちと接するお仕事がしたい。行政職員になりたい」という想いがふつふつと沸き起こってきた前田さん。そこで、突然の方向転換!公務員試験の勉強に励みます...が、なかなかうまく行きません。

気付けば大学卒業間近。

未だ就職先は決まらず、前田さんのメンタルもボロボロ。そんな姿を見かねたお母様が、とある地方誌を手渡してくれました。そこで目にしたのは、江別市で地域おこし協力隊を募集しているという内容が書かれた広告。

「もともと協力隊という存在は知っていたものの、過疎地で活躍している隊員というイメージがあったので、札幌のお隣江別市にも協力隊がいるんだという印象でした」

正式な職員とはまた違うものの、行政に関わることができるということは、前田さんの夢が叶うということでもあります。前田さんは藁にもすがる思いで応募を決意し、見事江別市地域おこし協力隊の「地域振興推進員」として採用されたのです。

ebetsu_maeda3.jpg前田さんはこの「観光振興課」の一員として勤務しています。

前田さんが採用となったこの職種は主に、江別の観光に携わるお仕事。面接前には江別の盛り上げたい観光分野は何かあるだろうかと事前にリサーチをしていたそうです。

合格の知らせは3月上旬に前田さんのもとへ来ました。
「その時はもう、やっと就職が決まった!という解放感でいっぱいでしたね...!」と、当時を振り返る前田さんの顔がほころびます。

「住みやすい、働きやすい」と感じた環境で

そうして迎えた2019年4月。

勤務開始と同時に、初めて親元を離れての一人暮らしです。しかし、想像していた以上に江別での暮らしやすさに安堵したご様子。

「江別で借りた家は、近くにスーパーやドラッグストアがあってとっても便利なんです。札幌の実家は、車を使わないと買い物に行けないようなところに住んでいたので、むしろ江別の方が住みやすいと思っています(笑)」と笑います。

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住み心地だけではなく、働く環境の良さも感じたようです。

「協力隊の制度が充実しているなと思いました。家賃補助や、車の貸し出しがあったり、ありがたいことがいっぱいです」

また、他では珍しい週休3日制。お休みの日が多いからこそ、その分卒業後に行政職員になるべく公務員試験の勉強をしているそうです。こうして3年後の卒業に向けた準備ができるのもメリットのひとつですね。

前田さんが入職した2019年は、まだ新型コロナウィルスも蔓延していない時。入ったばかりの7〜8月には、毎週のように江別のどこかでイベントが開催され、協力隊としてもイベントに参加するなどし、繁忙期を迎えていたそうです。

たくさんのイベントの中でも、前田さんの印象に残ったのは「江別やきもの市」。明治時代、このまちにれんが工場が出来たことによって、窯業(ようぎょう)が発展したと言われています。こうしてやきものの文化が根付いて生まれたイベントですが、これがまた毎回大人気!自分好みの器を求め、市外からも多くの人が訪れます。そんな江別にしかないこのお祭りに、とっても魅力を感じたそうです。さらにはこのイベントで初めて協力隊としてブースも出展しました。

「同期の協力隊4名で、子ども向けに写真立てをつくるワークショップのお店を出展しました」

ebetsu_maeda4.jpegこちらが協力隊の4名。

こうした活動を通じて、市民の皆さんに協力隊を知ってもらうべく奮闘していたのですが...冬を迎えた頃に新型コロナウィルスが蔓延。さまざまな活動が制限されてしまいましたが、それぞれが出来ることを模索しつつ突き進んできました。

社会人としてのはじめてのお仕事

協力隊として前田さんが手がけたメインのお仕事は「CHARM(チャーム)」というリーフレット制作です。ここには江別の魅力溢れる喫茶店情報が詰まっています。


ebetsu_maeda5.jpgこちらが前田さんが作ったリーフレット

「大学時代にカフェで働いていたこともあり、自分自身カフェが好きなんです。江別にもカフェはあるのかな?と調べてみたところ、想像以上にたくさんあってビックリしました!江別は札幌からも往き来しやすいですし、喫茶店巡りが好きな人に届けたいと思い、このリーフレットを作成しました」

なんと、この3年間のうちに第4弾まで発行!

第1〜3弾までは、イラストレーターの方と共に制作したそうですが、最後の第4弾は自分でイラストレーターのソフトを使い、最初から最後まで自分ひとりで制作した思い出の一冊でもあります。これがまた好評!「どこに置いてあるの?」といったたくさんのお声がけをいただいているようです。

ebetsu_maeda6.jpgこちらがその第4弾。マップが欲しいという意見を取り入れ情報量もボリュームアップです!

しかし、思い出して欲しいのです。
前田さんは「新卒」で地域おこし協力隊になったということを...。

つまり、企業をはじめとする大人と仕事の話をする経験も無ければ、アポ取り・取材などの経験もありません。それこそ喫茶店の皆さんから話をうまく引き出す方法も、前田さんはまったくの未経験。まさに右も左も分からない状態でしたが、上司や同期の協力隊の存在が大きかったと話します。

「喫茶店取材も、江別の歴史を深く知っている人が多いし、珈琲についてもこだわりを持っている方が多く、質問の仕方が難しいなぁと感じました。そんな時、社会人経験のある同期にセールストークを学んだことで、乗り越えていけたのかなと思います!」

ebetsu_maeda11.jpegこちらが社会人経験のある丹治さんです!

ちなみに、このリーフレットのタイトル「CHARM」には「魅力・愛嬌」という意味があり、地域の魅力を伝えようという想いと、「前田実夢」の愛嬌を伝えたいという想いが込められているそうです。

「私、あだ名というあだ名が無かったので、『チャーム』って気軽に呼んでもらえるようになったら嬉しいなとも思っていました」と話す通り、実際に「チャームさん」と呼んでくれるまちの人も増えたと、にっこり笑顔のチャームさんです。

ebetsu_maeda7.jpg掲載している喫茶店の店主から「この『CHARM』をもとにお客さんと話ができたよ〜」なんて声をかけられたこともあったそうです。

協力隊としての働きやすさ

前田さんは終始「働きやすい環境に感謝している!」と嬉しそうに話していたのがとっても印象的でした。

「企画がまだ固まってなくても、『今、こういうこと考えているんですけど、どう思いますか?』と聞いたら、みんなしっかり手を止めてアドバイスをしてくれるんです」

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今や全国的にさまざまな市町村が導入している「地域おこし協力隊」という制度ですが、大きく分けて2種類あるかと思います。与えられたミッションをこなす「ミッション型」と、自らアイデアを企画し実行する「フリー型」。江別市は比較的フリー型だと思う、と前田さん。

「ガチガチなミッションはないからこそ、やりやすい面もあれば、自分たちでゼロから生み出さないといけないのも大変です(笑)。もちろん、アイデアを出しても予算の面で難しいことだってあります。そんな時は、上司と相談しながら少しずつカタチにして、アイデアに近づけていくのですが、このやり方は結果的に私にとってはやりやすかったのだと思います」

自分で企画し、実行することは決して簡単なことではありません。時に壁にぶつかりながらも、受け入れてくれる、サポートしてくれる人たちによって、前田さんは3年間江別市というまちで走り続けられたのかもしれません。何より、協力隊卒業後も行政職員になりたいと思えるということは、それだけ憧れる方がまわりにいたということでもあるのではないでしょうか。そう思える江別市役所の環境って、すごい!と編集部メンバーはただただ感心してしまいました。

ebetsu_maeda9.jpg左が同じく協力隊の安達さん。右は市役所職員であり、同時期に入職した奥泉さん。前田さんには頼もしい仲間がたくさんいます!

江別は前田さんにとってどんなまちですか?と聞いてみると、「クサイこと言いますけど...」と照れながらも「私にとっての第二の故郷です」とまっすぐな瞳で答えてくださいました。

新卒で飛び込んだ最初の社会人経験をした場所。ある意味、社会人としての育ての親(まち)のような存在なのかもしれませんね。

「人より遅れて就職が決まったけれど、地域の人と関わりたいという夢を実現できて本当に良かった。やりたいことがやれた3年間でした」と胸をはる前田さんは、とても頼もしく見えました。

ebetsu_maeda12.JPG協力隊の仲間たちとみんなで描いた黒板アートです。さて、この記事内に江別のキャラクター「えべチュン」は何匹いたでしょうか!

江別市地域おこし協力隊 前田実夢さん
住所

江別市高砂町6番地

電話

011-381-1091


夢への一歩!CHARM(魅力)を持った新卒地域おこし協力隊!

この記事は2021年11月16日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。