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栗山町

移住検討者と町をつなぐ 栗山町移住コーディネーターのお仕事20210830

移住検討者と町をつなぐ 栗山町移住コーディネーターのお仕事

北海道栗山町は道央圏に位置する自然豊かな町です。札幌市や新千歳空港、苫小牧港からそれぞれ1時間というアクセスの良さも魅力で、近年は移住政策に力を入れています。今回は、栗山町で移住コーディネーターを務める腰本江里沙(こしもと えりさ)さんにオンラインインタビューを実施!コーディネーターのお仕事内容や、栗山町の魅力、そして各自治体が昨年から対応に追われているであろう「コロナ禍の移住政策」についてもお話を伺いました。

※オンライン取材から約1ヶ月が経ち、緊急事態宣言が明けた初夏の良き日に取材班は栗山町を実際に訪問。掲載されている写真はそのときに撮影されたものです。腰本さんのはじける笑顔と合わせて本文をお楽しみください。

「くりエイトするまち」が合言葉

オンラインでのインタビューは初めての取材班。特にライターは、腰本さんと画面越しで「初めまして」ということもあり、緊張していました。ややあって登場した腰本さんのバーチャル背景には、何やら門松のような粘土細工の画像が......門松の中央にはうさぎのような白くて耳の長い生きものが...。この子は一体?

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「栗山町は国蝶であるオオムラサキが生息している北東限地域といわれていて、その幼虫がこんな顔をしているんです」という答え。確かにインターネットで画像を検索してみると、そこにはつぶらな瞳の愛らしい幼虫の姿が......!私が耳だと思った部位は、孵化してから初めての脱皮で爆誕するツノだったのでした。

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栗山町は「くりエイトするまち」を合言葉に、ものづくりをするクリエイターを積極的に誘致しています。2017年9月には栗山駅前に「くりやまクリエイターズマーケット」がオープン。樹脂粘土でつくられたこれらの作品は、札幌市在住の「くりエイター」Cray'z parade(クレイジーパレード)さんの作品でマーケットで販売もしています。腰本さんいわく「このお店の目玉」とのこと。栗山町にお越しの際は、ぜひチェックしてみてください!

一度は道外に出た腰本さんが栗山町に辿り着くまで

腰本さんは、オホーツク海沿岸に位置する雄武町のご出身。中学校を卒業してからは、旭川市内の高校に進学、その後は道外を離れて島根県の大学に進学しました。

「北海道のなかにいるよりは、道外に出たいという気持ちがあった」という腰本さん。飛行機の窓から見下ろした山陰の風景は「遠くの方から法螺貝の音が聞こえてきそうな、そんな雰囲気だった」と当時の新鮮な気持ちを表現してくれました。神社仏閣が多い、方言が強い、雪が少ない、そして何より湿度が高いなどカルチャーショックも大きかったそうです。

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大学を卒業してから初めて就職した先は、鳥取県鳥取市。その後、石川県加賀市に転勤したものの、仕事が軌道にのらず、地元の雄武町に戻ることになります。足掛け5年ほど雄武で仕事を続け、結婚を機に栗山町へ移住しました。2007年のことでした。

道外の大学を選択したことで、北海道を一度は離れた腰本さんですが、その経験は現在の仕事にとっても「良かったことしかない」といいます。「移住コーディネーターは、実際に移住してきた方が務めている自治体も多く、移住者の目線で相談に乗ることができます。私も、外から北海道を見た時期を経験していることは、プラスになっていますね」。

栗山町に移住するまでに、道内外を転々とする人生を歩んできた腰本さんですが、移住した2年後、新築のお家を建てることに!「家を建てる」ということは、栗山町に半ば永住する決断をかなり初期の段階でされたということになります。迷いはなかったのでしょうか。

koshimoto15.JPG役場の屋上から町内を見渡す腰本さん

「ここにいれば、栗山町だけではなく近隣の市町村でも仕事ができるなと思ったんです。栗山町に家を建てても、札幌や岩見沢へも通うことができる。それは大きかったですね。栗山町は今でも家を借りようとすると家賃がやや高くて、それを払い続けるなら自分たちの家がある方が落ち着くね、と夫と話した記憶があります。それから、当時はわりと新鮮だったのですが、子どもの医療費が無料だったことも魅力のひとつでした」

今では3人の娘さんの母となり、快適に栗山ライフを満喫されている腰本さん。さまざまな作物が収穫される栗山町ならではの農村らしい風景が魅力的で、特に夕方はエキゾチックな雰囲気もあり、おすすめなのだそうです。

koshimoto4.JPGこちらは、腰本さんオススメの景色。移住希望の方を実際にお連れすることもあるそうです。

移住コーディネーターとは?

腰本さんが栗山町に居を構えて2021年で14年目。移住コーディネーターの仕事に就いたのは、2019年春からです。今の仕事を始めたきっかけは何だったのでしょうか。

「くりやまクリエイターズマーケットがオープンした当初から、私も布小物を製作して販売をしていたんです。マーケットは役場が管轄していたこともあり、当時の担当者から『移住コーディネーターという立場の人を作りたい』という声を聞きつけ、自ら手を挙げました」

役場職員は異動があり、また市町村によっては地域おこし協力隊が移住PRを担う場合もありますが、3年という任期があります。栗山町は、職員や協力隊とは違う立場の人を入れたいと考えていました。そこで、栗山町役場若者定住促進課・くりやま移住促進協議会の移住コーディネーターとして、腰本さんが抜擢されたのです。

koshimoto5.JPGこちら腰本さんが在籍する場所

移住コーディネーターは、移住を希望する方に対しての相談対応や情報発信をするのが主なお仕事。腰本さんは資料請求者への対応、ホームページの更新(くりやまSATOYAMAライフ)といった後方支援にくわえて、全国で開催される移住フェアへの出展と、ちょっと暮らし体験のアテンドという二大事業を一手に担っています。ちなみに、ちょっと暮らし体験とは、移住検討者が家具・家電付きの住宅に「ちょっと」暮らしてみて栗山町での生活を体験することができるしくみのことで、導入している市町村も多い事業です。

腰本さんがこの2年ほど移住検討者の対応をしているなかで、いちばん割合が多いのは農業に関心のある人。栗山町では、北海道で作ることができるほとんどの野菜が生産されており、この品種でなければという縛りもないため、受け入れに寛容なところが特徴でもあります。本格的に新規就農したいという方もいれば、自給自足や家庭菜園など「理想のいなか暮らし」をイメージしている方もいて、年齢や性別もさまざま。ひとりひとりの希望に寄り添い、丁寧に対応しているのが腰本さんなのです。

koshimoto6.JPG移住希望の方の要望を聞いて、栗山町の農村地帯を実際に見て感じてもらいます。

ちなみに、移住相談を受けるなかで一番多いのはやはり「仕事はあるのか」という質問。地方の人手不足は栗山町もご多分に洩れず、特に土木や建築、介護や保育などの分野でニーズが多いのが現状です。しかし、移住検討者がこれらの職種を希望するとは限らず、仕事のマッチングはどの自治体も同じ悩みを抱えているかもしれません。実際の栗山町への移住者は、リモートで仕事をしている方、会社勤めをされている方、農業法人に勤めている方、これから起業を予定している方......と幅広くお仕事をされているそうです。

コロナ禍で激変したコーディネーターの仕事

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就任したその年は順調に仕事をこなしていた腰本さんですが、昨年度は予期せぬ方向転換を迫られることになります。そう、コロナによる影響です。栗山町の暮らし体験事業は、昨年4月に発令された最初の緊急事態宣言にともない令和2年度いっぱい中止の判断が下され、体験者はたった1組に。道外で年4回ほど参加していた移住フェアにも一度も出展できず、毎回20組ほどいた来訪者数はもちろんゼロになってしまいました。


メインの二大事業を失った腰本さん。さぞかし暇になるのではとクビまで覚悟したそうですが、実際は「記憶が飛ぶほど忙殺された1年になった」そうなのです。その理由とは...?

「空き家に関する相談が爆発的に増えたんです。夏場は、毎日のように相談者がやってくるという1週間もあって...!私が就任して1年目は、窓口にまで相談に来るケースはあまりなかったので、2年目(昨年度)になって増えたことには変化を感じました」。

ただ、それを補う空き家の数が圧倒的に不足しているのが現状。こちらのマッチングも、最重要課題だと感じています。

栗山町の場合は、空き家の数はそれなりにあるものの、所有者が施設に入っているなどの理由ですぐには手放せない方が多いという事情があります。また、売却の意思がある物件があっても、移住検討者は賃貸を希望する方が多く、紹介物件が限られてしまうこともマッチングが難しい理由のひとつです。

「空き家相談のニーズを全て叶えることができたら10〜20数組移住者が増えるのでは」というのが腰本さんの見解。今後の施策が期待されます。

また、「移住志向」の高い相談者が増えたこともコロナ禍で起こった変化のひとつ。それまで移住とは「何年もかけて検討するもの」というイメージで「すぐには結果が出ない」ことが共通認識でしたが、「今すぐにでも行きたい」「候補はいくつかあってあとは決めるだけ」という本気度の高い移住相談者が浮き彫りになってきたそうです。「いつかは移住したい」......その「いつか」がコロナウィルスの流行によってついに訪れたということでしょうか。

せわしない毎日を過ごした腰本さんですが、コロナ禍によって急速に需要が高まったオンラインでの相談やイベントの参加にも、かなり初期の段階から積極的に取り組みました。最初は「そもそもZoomとはなんぞや」状態からのスタートでしたが、いち早く導入した自治体を参考にして、整備を進めていきました。

koshimoto8.JPG当初は戸惑いつつも始めたzoom。

オンラインの移住イベントは、全国規模のものだと候補地として栗山町の名が埋もれてしまい、逆に参加自治体が少ない比較的小さなものでは、そもそもの参加者が集まらないという問題も。オンラインでの移住PRに関しては、どの自治体もまだまだ手探りという印象ですが、腰本さんは「移住候補地として栗山町自体のPRがさらに必要」と改めて感じたということでした。

デジタルの便利さとアナログの心の込め方を両立する

今回、腰本さんへの取材で特に印象的だったのは「アナログの良さを大事にしたい」とおっしゃっていたことでした。「オンラインにせよ対面にせよ、どちらも利点と難点があり、どちらかが取って代わるようなものではないと私は思います。今の状況が落ち着くまで、まだまだ時間がかかり、オンライン化が加速しても、人と人との繋がりは大事にしないといけないですよね」。

腰本さんは、資料請求をしてくれた方には必ず手書きのメッセージを同封しているのだそうです。その心遣いに感動して「わざわざ丁寧に手書きのメッセージをありがとうございました」とお礼のメールが来ることも。「社交辞令かもしれないけれど、そこでひとつ話題ができたり、印象に残ったりしたら本望。なんでもデジタルな時代だけど、そういうことが心に訴えたりするのかな。不思議なものだなぁと思っています」。

koshimoto9.JPG栗山町名物のきびだんごと、手書きのメッセージを添えて。

どこかの町に興味をもったとき、その窓口になる担当者がどんな人なのかで、町との関係性はかなり変わったものになるのではないでしょうか。資料請求をして形式的なものが送られてきて終わりなのか、ていねいなお礼とアフターフォローというきめ細やかさがあるか。それだけで印象は大きく異なります。

さらに、腰本さんは就任1年目のときに、くりやまクリエイターズマーケットの情報を発信する「くりマ通信」を発刊していました。こちらも、もちろん手書きです。印刷してお店に配るなどして、広報活動をしていました。

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今後は移住に特化した通信をつくりたいと考えています。「田舎では、新聞や広報誌といったアナログ媒体の宣伝効果がまだまだ強いですよね。TwitterやInstagramなどのSNSはどの自治体でも盛んに利用していますが、アナログな部分を重視するともう少し別なことが動き出すのかなと思っています」。

「栗山町といえば腰本さん。全員が腰本さんの人柄に魅力を感じている」という編集部たっての思いから実現した今回のインタビュー。初対面のライターも、取材終盤にはそのことがはっきりと感じられるようになっていました。それはきっと移住検討者にとっても同じはず。「移住の玄関口」となる移住コーディネーター。腰本さんという素晴らしい窓口がいることは、栗山町にとって大きなアドバンテージになっているのではないでしょうか(と、ご本人に伝えるととても恐縮しておられました)

「この町が好き」と思ったらどうぞ気軽に栗山町へ!

最後にありきたりな質問になってしまいましたが、移住コーディネーターというお仕事のやりがいや楽しみについて聞いてみました。

「色々な人の考え方を知れるという点でしょうか。なぜ移住したいと思うのかは人それぞれで、その方なりの理由があり、伝え方があります。『都会にいる意味を見出せなくなった』『北海道に憧れている』『自給自足の暮らしをしたい』など、十人十色のお話を聞けるのは楽しいなと思います」。

移住とは人によっては人生を左右するといっても過言ではない大きな決断です。言い方はおおげさかもしれませんが、そこにはそれぞれの思想や人生哲学のようなものがあるのかもしれません。その一端に触れることができるのは、移住コーディネーターの楽しみのひとつなのでしょう。

koshimoto17.JPGこちらは腰本さんオススメの栗山スポット。小林酒造内「小林家」のお庭です。

一方で腰本さんは、移住検討者に対して「あまり気負わずに来てくれたらいいな」とも思っているそうです。「以前、ある移住検討者さんから『私は資格もないし、手に職といった仕事をしていたわけでもない。いろいろなことを求められているような気がして自分のモチベーションで移住をしても良いのか不安になる』と言われたことがあるんです」と教えてくれました。

近年、ローカルプレイヤーの登場や地域おこし協力隊の活動などによって移住に際するハードルが上がっていることは事実かもしれません。人材不足の地方では、『わが町でこんなことをしてほしい』『こういう人材を求めています』とついいろいろなことを求めてしまいがち。しかし、腰本さんの考えは違います。

「『北海道に住みたい』『この町で暮らしたい』というライトな気持ちで全く構わないんです。栗山町が好きだと思ったらふらっと来てくれたら良いと思います。あまりご自身でハードルをあげずに、漠然とした表現ですが『柔軟性のある方』が来てくださったら十分。なんとかなるだろう、というくらいの心持ちの方が楽しめるのかなと」。

koshimoto16.JPG栗山に来た人は絶対ここに連れていく!という小林酒造。歴史ある建物がそのまま残っています。

「とにかく飲みにだけは誘いますのでぜひ来てほしい!」と腰本さん。栗山町には、創業明治11年、北海道最古の酒造である小林酒造があります。取材陣も訪れましたが、古き良き時代の情緒が漂う素晴らしいスポットでした。

在住歴14年の腰本さんですらまだまだ知らない魅力が随所に隠れる「掘り下げると面白いまち」栗山町。移住を検討している方はぜひ候補のひとつに加えてほしい町なのでした。

kohsimoto14.JPG気付けば腰本さんの魅力にどっぷりハマってしまう。そんな不思議な力を持った方です。

関連動画

くりやま移住促進協議会 腰本江里沙
住所

北海道夕張郡栗山町松風3丁目252番地 栗山町役場 若者定住推進課

電話

0123-73-7521

URL

http://www.kuriyama-iju.com/


移住検討者と町をつなぐ 栗山町移住コーディネーターのお仕事

この記事は2021年6月9日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。