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まちおこしレポート
札幌市

企業と共に歩む。北の「ものづくり・ひとづくり」を支える団体20201229

この記事は2020年12月29日に公開した情報です。

企業と共に歩む。北の「ものづくり・ひとづくり」を支える団体

みなさんは「北海道にある工業のまち」と聞くと、どこを思い浮かべますか?
北海道最大の港湾がある苫小牧市や、工場夜景で有名な室蘭市を思い浮かべる方は多いのではないでしょうか。

特に苫小牧東部地域は、昭和46年に策定された第三期北海道総合開発計画にて提言され、今日まで北海道のものづくりを牽引し、発展を続けてきました。そんな中、この開発計画から数年後、昭和50年に設立された一般社団法人北海道機械工業会という、北海道のものづくり産業の振興を目指した団体があることは、業界以外の方々ではきっと知る人は少ないでしょう。

今回は、この北海道機械工業会の役目や、北海道のものづくりに対する取り組みなどについて、お話を伺いました。

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北海道機械工業会とは?

北海道機械工業会は設立当時219社からスタートし、現在359社(2020年12月16日現在)の会員企業からなる業界団体です。会員企業の8割は、従業員数が100人以下の中小企業となっています。また、こうした業界団体では珍しく、全国に支部を持つ組織の一部などではなく、上部団体もない、完全に独立した団体です。

「設立当時、苫小牧東部地域をはじめとして北海道に重厚長大(※)の産業を根付かせようという動きがありました。元々、北海道は全国的にみて製造業の集積が少なかったため、業界有志や行政当局が一致団結して、機械工業及びその関連産業を振興していく必要があるとの声が上がったのが、この団体の設立のきっかけです」

(※)重化学工業等の産業を意味する語。主に、鉄鋼業・セメント・非鉄金属・造船・化学工業や、これに関連する装置産業が分類される。

kikaikougyou11.JPGこちらが専務理事の齊藤知行さん

このように教えてくださったのは、北海道機械工業会の専務理事である齊藤知行さんです。札幌生まれ札幌育ちの齊藤さんは、北海道職員を定年退職した後に、こちらの役員として任用されました。
つづけて団体の役目について教えてくださいました。

「スローガンを挙げると分かりやすいかと思うのですが、『北海道のものづくり・ひとづくりのサポート』が私たちの役目です。主に会員企業のニーズに対して、技術力の向上、人材育成・確保、受注の拡大のための事業を実施しています」

大きく「ものづくり=技術」「ひとづくり=人材」と考えると、広く製造業に必要不可欠なことでもありますが、特に機械工業という業界における、具体的な事業や取り組みについて、もう少し詳しく聞いてみましょう。

kikaikougyou4.JPG取材は札幌市中央区にある事務所にお邪魔させていただきました

北海道のものづくりを支える

まずは「ものづくり=技術」についてですが、これまでの北海道の歴史にも触れながら、北海道機械工業会の取り組みを齊藤さんに教えていただきました。

「ご存じの通り北海道は自然に恵まれた土地ですので、従来より水産加工、食品加工、木材加工、セメントなど、資源型の産業が中心でした。そこから機械工業にも注力していく中、平成の時代には、トヨタ自動車やアイシン精機が北海道にも工場を進出したことをきっかけに、より一層地元企業が自動車部品製造技術の向上を目指し、機械工業を牽引してきました」

こうした背景にあるとおり、技術力の向上は北海道の機械工業には欠かせないものであり、歴史そのものであることが分かります。それは、時代は変われども不変であり、この技術力の向上を支えることが、北海道機械工業会の取り組みの一つという訳です。

kikaikougyou10.JPG北海道機械工業会は経済産業省認定、経営革新等支援機関です

「具体例をご紹介しますと、技術講習会や資格取得講習会、先進工場の視察といったものや、企業に専門家を派遣し課題解決の支援を行う『ものづくり技術力強化 エキスパート派遣制度』というものもあります」

この「ものづくり技術力強化 エキスパート派遣制度」は行政事業の一環として、北海道とも連携して行っているもの。企業それぞれが抱える課題に対して、名だたる企業で活躍してきた方などの専門家集団から直接指導してもらえるというなんとも心強い仕組みです。
近年注目が集まる航空機産業への進出に向け、道内中小企業で初めて「JIS Q 9100(※)」を取得した株式会社キメラ(室蘭市)もこの制度を活用し、北海道機械工業会から派遣された専門家の指導を受けています。

(※)航空宇宙産業に特化した品質マネジメントシステムに関する国際規格。

kikaikougyou16.jpgエキスパート派遣制度を活用し研修を行っている様子です

「ひとづくり」の種は興味を持ってもらうこと

つづいて「ひとづくり=人材」についての取り組みも聞いてみました。

「人材は『育成』と『確保』の2つ観点での取り組みとなります。育成は、先に述べました技術力の向上とも重なりますが、技術講習会や資格取得講習会を通して、将来の企業、そして機械工業を支える人材を育てることです。そして確保については、新規学卒者や異業種転職、UIJターン層と企業のマッチングのサポートを行っています」

kikaikougyou14.JPGこちらは高校生を対象とした工場見学の様子です

昨今の新型コロナウイルスが発生する以前は、会員企業の約8割が人材不足の課題を抱えていたそう。このような背景として感じることを、齊藤さんが切実にお話してくださいました。

「北海道といえば『食』や『観光』を思い浮かべる人が多いと思います。そして、こうした業界は生活の中で接する機会も多く、イメージがし易い業界ともいえます。一方で、北海道の製造業、特に機械工業はエンドユーザー向けの製品そのものではなく、その製品に使われる部品製造が大部分です。こうしたことが、なかなか機械工業をイメージしにくい背景でもあります。ですが、それらの部品は、普段使っている冷蔵庫やテレビ、自動車にも使われている部品で、実はとても身近に存在し、社会の役に立つ製品をたくさん生み出しているんです。このことをこれから働くみなさんにも知っておいていただきたいと思っています」

kikaikougyou3.JPG斎藤さんは北海道職員時代に東京で経済産業省 資源エネルギー庁のお仕事もされていたそうです

道内製造業は正社員の割合も高く、新規学卒者の就職後3年以内の離職率も他業種に比べ低い傾向も見られます。また、最近では女性の活躍も増えてきているそう。そうした中、業界全体での人材確保に向けて取り組んでいる実例をいくつか教えていただきましたので、ご紹介させていただきます。

●北海道で働こう!求人情報

北海道内ものづくり企業の求人情報をリーフレットとWEBサイトで掲載しています。
UIJターン者にも嬉しい、面接時の旅費補助有無などの情報もあります。
http://h-kogyokai.or.jp/job.html

●ものづくり系就職応援情報誌「つくりーと」

主に新規学卒者に向けた情報を多く掲載している情報冊子です。
実際に働いている方のインタビューといった生も声もあります。
https://drive.google.com/file/d/1-QKaxI7FiY2LoJgnrELAlL7-lX5-Sphx/view

発行:北海道経済部産業振興局産業振興課/制作:北海道機械工業会

●道内ものづくり企業 企業見学バスツアー

広く一般の求職者を対象として、北海道のものづくりに興味を持ってもらうきっかけとして、企業見学を行っています。普段はなかなか見ることができない工場も見ることができます。

主催:北海道経済部産業振興局産業振興課/運営:北海道機械工業会

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熱意が北海道の機械工業を支える

北海道機械工業会の役目はこれだけではありません。他にも、企業の受注拡大の場として、受発注拡大商談会といった大手・中堅企業からの受注情報の提供を行っていたり、産学官交流の推進を図るため、大学などの教育機関・研究機関と民間企業が連携できる場作りも行っています。

また、会員企業への情報提供や調査研究として、会報やメールマガジンの発行、経営環境の調査なども定期的に実施しています。中でも週に1度のメールマガジンは企業の役員さんたちからも好評のようで、担当する企画係長の小笠原公彬(たかあき)さんが、とある嬉しいエピソードを教えてくださいました。

kikaikougyou9.JPGこちらが企画係長の小笠原公彬さん

「週に1度『機械工業会だより』というメールマガジンを主に会員企業様に向けてお送りしています。これまで齊藤からご紹介させていただきました事業や取り組みに関する告知や、セミナーなどのイベント情報をメインとしてお伝えさせていただいており、自分で作っておいて言うのもなんですが、なかなかボリュームのある内容となっています(笑)その中で、どうしても固い内容が多くなってしまうので、最後にあとがきとして『アラフォーのつぶやき』というタイトルで私のつぶやきを書いているのですが、とある大企業の会長さんから『いつも見てるよ』って仰っていただいたことがあるんです」

これには小笠原さんも「私のつぶやきなんて当然見てないと思っていたので」とビックリしたと同時に、組織の上に立つ方の目配りに感銘を受けたそうです。さらに、会員企業の方々と接する中で、感じたことについてこうつづけます。

kikaikougyou7.JPG小笠原さんのご出身は神奈川県、幼少期はアメリカにお住まいだったそうです

「会員企業の社長さんとお話をする中で感じるのが『中小企業はこれでやるんだ!』という熱意です。社員の方とお話をしていても、これまでの企業の歴史や想いを共有できているためだと思いますが、同じように熱意を感じます。こうした熱意が北海道の機械工業を支えているんだと思うんです」

このように話す小笠原さんの口調にも力が入っているのが分かりました。企業、そしてそれを支える北海道機械工業会、これまでの約半世紀にわたる歴史がこうした関係を生み出しているのでしょう。

kikaikougyou8.JPG現在、北海道機械工業会は11名の職員で運営しています

企業と共に歩む北海道のものづくりという道

これまで道内の製造業は過去10年以上出荷額が増加しており、中でも加工組立型工業(※)は大きく成長をつづけてきました。ただ、近年では自動車のEV化など、新しい製品への移行も増えており、これまで必要とされていた部品や技術にも変化が伴ってくることが予想されます。

(※)自動車などの輸送機械、携帯電話などの情報通信機器、産業用の機械設備などのこと。

「北海道のものづくり、そしてそれを担う企業も進化が必要になる時がくるでしょう。その準備として、行政が中心となって、航空機産業などといった、新しい成長産業へ取り組む環境を整えています。また、これまで培ってきた技術力を活かし、新しい技術へ転用することも重要になります。そのためには、これからも企業と北海道機械工業会がお互いに連携し、課題解決に向け一致団結し、『北海道のものづくり』を発展していきたいと思います」と、力強く話す齊藤さん。

ここまで記事を読んでいただいた方は、きっとこれまで知らなかった北海道機械工業会という団体が少し見えてきたのではないでしょうか?
北海道機械工業会が支え、企業が新しい製品を生み出していく。普段お使いのその製品も、実は北海道のものづくりの想いがたくさん詰まったモノかもしれません。

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一般社団法人 北海道機械工業会
住所

北海道札幌市中央区北1条西7丁目3-2 北一条大和田ビル4階

電話

011-221-3375

URL

http://h-kogyokai.or.jp/

E-mail:hmma@h-kogyokai.or.jp


企業と共に歩む。北の「ものづくり・ひとづくり」を支える団体

この記事は2020年12月16日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。