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まちおこしレポート
上川町

大雪山級の可能性!ブランディングと雇用に尽力するまち20190617

大雪山級の可能性!ブランディングと雇用に尽力するまち

切り立った山渓の合間に忽然と現れる温泉街、層雲峡。
今回ご紹介するのは、年間200万人もの観光客が往来し、北海道でいちばん高い山である旭岳を含む大雪山系を背景に移住や定住について新しい取り組みをはじめた上川町役場のお話。
人口は約3,600人のこの町が今ちょっと面白い!と聞きつけて雪解けが進み、ふきのとうが顔を出し始める北海道の4月初旬に車を走らせました。

「移住・定住に関しての施策に取り組み始めたのは他の町に比べて10年くらい遅れていたんです」
と開口一番話してくれたのは上川町役場の産業経済課移住定住グループのみなさん。

取材を進めていくと、そんな遅れを感じさせないくらいの考えられている内容で、移住した方も既に住んでいる方もワクワクする内容に「こんな取り組み方もあるのか」と驚きを感じずにはいられませんでした。
その施策は「KAMIKAWORK」と名付けてスタートしています。

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移住を考える上で「しごと」は切っても切り離せないもの。
だからこそくらしごとでは、その土地でどんな仕事をしている人がいるのか、どんな人たちが働いているのかをお伝えしています。
その「しごと」を地域おこし協力隊(以下協力隊と略)という制度を上手に活用して、そして東京の企業も巻き込みながら定住に繋げようと奮闘している役場の皆さんに取材しました。

「ブランディングと人材雇用」先を見据えた企画で移住者にPR

今回お話しをお聞きしたきっかけは東京・大阪・名古屋で毎年開催されている移住イベントでのこと。
移住希望者の方たちへの説明を聞いているうちに同席していたくらしごと編集部のメンバーも「移住したい!笑」と思えるような提案をしている上川町の方にお会いしたのがきっかけです。

話を聞いていたその場で「今度取材に行かせてください!!」と半ば強引(笑)に口約束を取り付け、取材の流れとなりました。
それが冒頭でもお伝えした「KAMIKAWORK」プロジェクトです。
KAMIKAWORKのサイトはこちら(外部リンク)

「KAMIKAWORK」では協力隊という制度を使って「ランプワークプロデューサー」「フードプロデューサー」「アウトドアプロデューサー」「コミュニティプロデューサー」の4つの分野にわたって人材を獲得しプロジェクトをスタートさせました。

この4つのプロデューサーについては後ほど説明いたしますが、いずれも協力隊の任期を終えた3年後の独立(起業)を後押しするかのような地ならしされた計画なのです。

移住・転職という人生のターニングポイントとなるからこそ移住先選びや就職先選びは大事だとみなさん感じているはずです。
そこをサポートするかのような事業計画の裏には企画した上川町役場のみなさんの想いや苦労があったはず。
そもそも、10年も他の町から遅れているというこの町に「KAMIKAWORK」の構想が出来たのはいつなのでしょう。

kamikawork5.JPG札幌出身の松原さん(左)と枝幸町歌登出身の三谷さん(右)

「この構想は2018年の4月からスタートしました」と話すのは松原さんと三谷さん。
「移住の施策に取り組むにあたって、突出した企画とブランディングをしっかりしようということを軸に、この事業を受託した企業と4〜5回打ち合わせを重ね、上川町らしい移住プロモーション計画を組み立てました」

北海道に縁のある有名タレントを起用する?など色々な案が出た中で決まったのが「大雪山を軸に据えたビジネスをみんなにやってもらおう」ということ。
北海道の最高峰である旭岳(2,291m)を筆頭に黒岳(1,982m)や北鎮岳(2,244m)など蒼々たる山々が連なる大雪山系。
その揺るぎない雄大な自然を軸に町外の住民を移住・定住をさせるため上川町役場は動き出したのです。

外部の人たちが気付かせてくれた上川町の未来

2019年4月1日から5名のプロデューサー(協力隊)を迎えてプロジェクトをスタートさせた「KAMIKAWORK」
まずはそれぞれのプロデューサーのお仕事についてお話しを聞いていくことにしましょう。
まだまだスタートしたばかりのこの計画ですが、取材を進めていくと色々な企業が関わっていることがわかります。

まず4つの柱のうちの一つ「ランプワークプロデューサー」。
これはコーヒー用の製品などで広く知られるガラスメーカーの「HARIO株式会社」が深く関わっています。

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「HARIO株式会社」では「HARIOランプワークファクトリー株式会社」としてガラスを使ったアクセサリーの製作を行っています。
地域創生の一環としてその製作工場を全国に7カ所ファクトリーを展開し、その一カ所として2016年上川町にやってきました。
というのも上川町には『大雪森のガーデン』という庭園&レストラン&宿泊施設が混在したガーデンが2014年にオープンしたのですが、オープンしているのは夏場だけ。
冬場ガーデンが閉まっている時はスタッフも別の仕事を探さなくてはいけません。
このスタッフたちが定住できるためにも通年で働けるようにと上川町役場は企業誘致をはじめます。
これが一番最初の定住に繋げた動きなのだとか。
晴れて2016年から冬場はガーデンの事務所内でアクセサリーを作るようになり、夏場は今まで通りガーデンにて接客のお仕事に従事し通年で働けるようになったのです。
この事業は好調で夏場もアクセサリー製作を続けて欲しいという要望があり、1年中アクセサリーを作るスタッフとして「ランプワークプロデューサー」の募集となったのです。
夏場の仕事と冬場の仕事を作り出し、定住に繋げよう!というとっても素敵な企業誘致が実ったのでした。

さらに上川町の企業誘致といえば、お酒好きの人たちは知っているかも知れませんが、2017年に上川町に酒蔵が誕生します。
「上川大雪酒造」は三重県で日本酒の製造を休止していた酒造会社を上川町に移転させ、新十津川町にある金滴酒造の杜氏(製造責任者)経験のある川端慎治さんを杜氏に迎えて日本酒造りが始まったのです。

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これは大雪森のガーデンの中にあるレストラン経営に携わった人物が、上川町の魅力を惚れ込み、北海道産素材にこだわった「6次産業化地方創生ビジネス」として酒造会社に働きかけたのがきっかけなのだとか。

さらにもう一つ上川町に新しい風が吹きます。
層雲峡は年間約200万人が訪れる温泉街ですが、一方で残念ながら閉鎖をよぎなくされる旅館もありました。そこのひとつが「ホテル雲井」
その情報をききつけ、リノベーションによって「HOTEL KUMOI」として甦らせたのが龍崎翔子さん。
龍崎さんは東大現役女子大生ながら株式会社L&Gグローバルビジネスの代表でもありホテルプロデューサーとして日本各地で活躍されていてご存じの方も多いのではないでしょうか。

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さらに2018年には「層雲峡ホステル」というゲストハウスがオープンになったりと続々と上川町で新しいビジネスを営む人たちが入ってきました。
新たに上川町の魅力を知った人がまた別の人たちにまちの良さを広めて「ビジネスが盛り上がってきた」と地元の人たちも感じていると言います。

「こういった外部の人たちが上川町の魅力に気付かせてくれたんです」と三谷さんは話します。
移住・定住してもらうためには仕事は欠かせません。そのためには町民の人材育成も必要だと考え、町民向けのセミナーを行う際に呼んだのが『チームラボ』でした。

デジタルアートをフックにまちおこし

2019年夏、上川町に『ヌクモ』という新施設がオープンします。
もともと廃校だった東雲小学校をリノベーションし、地元の住民と移住者や観光客との交流の場となる施設になります。

kamikawork20.JPG小学校の体育館の開放感で子どもたちが走り回れる広い空間があります

そのヌクモの目玉となるコンテンツが『デジタルアート』
子どもたちが塗り絵をした人型のデザインをスキャナーで取り込みアバターのように立体的にプロジェクターに映し出されます。
子どもたちはそれをタブレットを使って走らせたり、握手をしたり、ジャンプをしたりなど行動を指示しプログラミングを体験するというもの。
チームラボによる遊ぶ天才プログラミング(外部リンク))
そこの背景には大雪山が描かれる予定なのだとか。

「何か突出したアイデアで移住に繋げたいと思ったときに、デジタルアートをフックに人を呼び込めないかと考えたのがきっかけで、2017年の秋にチームラボに相談に行ったんです。そして町民の人材育成セミナーの講演を依頼すると共に、ヌクモで一緒に事業ができないか話を持ち込みました」と三谷さんは話します。

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まさにアイデアから営業に至るまで!
「役場の方なのに?!」と思わせる行動力です。

「最初は地味に企業さんにコンタクトを取ったんですよ。HPのお問い合わせとかコンタクトって所から連絡をしたりして(笑)」と話してくれたのは小知井さん。一番古くから定住施策に関わるメンバーのひとりで、グループの中では唯一上川町出身です。(TOP写真の真ん中の方です)
「『コミュニティプロデューサー』として協力隊で入ってきた方に、子どもとのコミュニケーションはもちろん、チームラボとの連携などし、地域住民の人たちと観光でくる家族連れの人たちとを結ぶ拠点として頑張ってもらいたいと考えています」

そして以前から住民の人たちからも声が上がっていたという「カフェがない・・・」という悩みもこの『ヌクモ』が解決します。

ラーメンやレストランなど、しっかりご飯を食べる場所は上川町にはあるのですが、ちょっとコーヒーを飲んだり、デザートを食べたりするスペースがなかったそう。
『ヌクモ』の中にはカフェスペースも設け、そこには「フードプロデューサー」として入ってきた協力隊の方たちが関わります。
美味しいコーヒーを入れたり、ケーキを作って販売したり、という役割を担います。
「ヌクモのカフェを利用してカフェ経営について学び考え、協力隊3年の卒業後には、町内でカフェをオープンさせて欲しい」と話します。

kamikawork13.JPGフードプロデューサーとしてやってきた絹張さん

上川町を山岳リゾートに・・・

大雪山があることで、アウトドアを満喫するまちとして売り出すのもうってつけの上川町。
しかし、いまのところビジネスとしてやっている人はいないそう。
そこにも着目し、有名アウトドアブランドでもあるスノーピークと手を組み『上川町を山岳リゾートに!』という計画もあり、色々なコンテンツを開発しようとしています。
そこで登場するのが「アウトドアプロデューサー」。
今はまだ計画段階である『上川町を山岳リゾートに』をいかにプロデュースしていくのか、そして3年後を見据えてアウトドアビジネスとして定住をはかる予定だそうです。
通年でアウトドアで収入を得られることを視野に入れて計画を立てていかねばなりませんが、アウトドア好きの人ならば願ってもいないチャンスとも言えそうです。

年間の観光客は約200万人とかなり交流人口は多いのですが、層雲峡の温泉に来て帰ってしまう。町で遊んで帰る場所が無い、というのも課題なのだとか。
「少しでも上川町内で遊べる場所を、ということで出来る『ヌクモ』や『大雪 森のガーデン』を含めて、今後は滞在型の観光を目指したいと思っています。
さらにアウトドアで長期滞在を目指す観光をアウトドアプロデューサーと作っていきたい」と意気込みも語ってくれました。
大雪山という最高のブランドを活かして今後上川町のアウトドア事情がどう変わっていくのかが今後楽しみです。

kamikawork16.JPG2019年4月からプロデューサーが活動しています。

これにて4つのプロデューサーの紹介は終わりですが、最後にもう一つ。
「個人的には一番面白い取り組みだと思うんです」と三谷さんが目を輝かせて教えてくれたのが、
「ラーメン屋事業継承の仕組み作り」だと言います。

上川町でも高齢化・後継者がいないことにより、ラーメン屋を畳むお店もあるのだとか。
飲食店が減っていくことは町の活性が減っていくことにも繋がります。
そこで協力隊の制度を利用して3年間、引き継ぐであろうお店で修行を行い、卒業後に事業継承を行えないか。と模索しているのだとか。

「このアイデアも色々な企業と話す中でどんどんアイデアが出てくるんです」と産業経済課移住定住グループのみなさんは口を揃えます。

こういうアイデアを出し合いながら着実とプロジェクトを進めてきたグループのみなさん。
2018年の9月に東京都世田谷区の下北沢で「KAMIKAWORK」プロジェクトのキックオフイベントを予定していました。
その日程は9月7日、奇しくも北海道胆振東部地震の次の日でした。
開催中止も余儀なしかと思われましたが、「北海道の全部の町が災害に襲われたわけじゃない。元気だということも発信すべきだろう!」という町長の一声があり無事に開催にこぎつけました。
今までの地道な営業努力が実を結び、色々な人がキックオフイベントに来てくれたそうで
「2日間で100人以上の人たちに会うことができ、このイベントをきっかけにKAMIKAWORKにプロデューサーとして採用になった人もいるんです」と嬉しそうに話すのはグループリーダーの高野さん。

「飲食店が併設されている会場では、居酒屋のメニューも大雪山にちなんだものが出され、そこに来ると上川町のことを知ることが出来るというコミュニティイベントでした。ひとりひとりの人と深く話す事が出来ました。上川町に関わってくれている人たちが増えれば増えるほど『この人がいるから上川町に来たい!』という人がイベントにも来てくれるんです。そういう人には、『あなたもそういう人になって欲しい』という気持ちがありますね」

人が人を呼び、また更に人を呼ぶという好循環が生まれていく実感が実際にあると高野さんはさらに続けます。
「協力隊の人たち以外にも移住に結びついている事例は増えてきていて、こういったプロモーションによって役場への問い合わせの電話も増えました。移住イベントに行っても座ってくれる人たちも最初の頃に比べるとかなり増えてきたんです」と笑います。

移住を考える上で住まいのことも重大なポイントの一つだと考え、「KAMIKAWORK」では協力隊で単身来る人に向けてシェアハウス&コワーキングスペースを作りました。
その名も「KAMIKAWORK.Lab」
それぞれのプロデューサーが活動できるスペースとなっています。

kamikawork14.JPGコワーキングスペースとしてみんなで集まって作業できる場所や個人で活動できるスペースもあります

できるだけ知らないことは「無し」にしよう

住まいも準備され、自分のやりたい方向性に関して突き進むことのできる活動場所も用意したとは、上川町の本気がうかがえます。
移住への取り組みは各市町村によってスピード感や方向性も違いますし、また移住者の方たちが求めているものも千差万別。
ですので一概に何が良いのか、ということはこの記事を読んでいる方によっても違ってくるでしょう。
ですが上川町のここにも知っておいて欲しいポイントがあります。

まだまだ移住と就業の相談窓口が別々な市町村もあるなか、上川町ではもし移住したいと相談しても、色々な窓口にたらい回しにされることなく、しっかりひとりの担当者が全て話しを完結してくれるそう。
「移住って人生の重大なターニングポイント。特に住まいと仕事はこれから生活をしていく上で最重要事項ですよね。それを我々は推し進めて行く上で、私たちのグループでは『知らないってことは無し』にしよう!やれることをやろう!と話し合っているんです」と高野さんが熱く話します。

kamikawork4.JPG美瑛町出身の高野さん

移住者目線・視点を損なわずにプロジェクトを進めてきたKAMIKAWORK。思わず、すごく大変な企画だと思うのですが・・・と聞いてしまうと
「すっごく大変ですよ(笑)」と全員から笑顔で返ってきました。
「それでも、これからがもっと大事だと思っています。今まではKAMIKAWORKのブランディングや計画作りでしたが、もうプロデューサーの人たちが入ってきたので実際にスタートしてみて、どれだけこの町に定住したいと思ってもらえるのか。それと並行してこのKAMIKAWORKが注目され初めているなかで、ブランド力を落とさずクオリティを落とさず事業を継続していかなければならないので、これからももっともっと大変ですよ(笑)」と三谷さん。
それに大きくうなずくグループの皆さんでしたが、その目には上川町の未来が映っているようでした。

最後に、ありきたりな質問を投げてみました。ここまで上川町について考えている皆さんにご自身の言葉で聞きたかったことです。
「上川町の最大の魅力ってなんでしょう?」

小知井さんを筆頭に「人、ですね。」と全員がうなずきます。
「どこの地域でも自然は豊かだけれど、上川町は人がいいねって良く言われます。親切に返してくれるねって」と三谷さん。
「って自分で言っちゃダメだよね(笑)」と小知井さん。

行政らしい上下関係を感じさせないグループの風通しの良さが、行政という枠組みにとらわれない企画の原動力となっている気がしました。
今後の注目され続けるであろうKAMIKAWORK。移住・定住へと繋がる第一歩となるのか上川町の未来が楽しみです。

(登場したプロデューサーの方達に焦点をあてた話「自然を楽しむプロ達が、大雪山のふもとで挑戦する新しい働き方」も併せてご覧ください)

上川町 産業経済課移住定住グループ
住所

北海道上川郡上川町南町180番地

電話

01658-2-4058

URL

https://www.town.hokkaido-kamikawa.lg.jp

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大雪山級の可能性!ブランディングと雇用に尽力するまち

この記事は2019年4月8日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。