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まちおこしレポート
浦幌町

ハマナスの化粧品で、浦幌町の未来に雇用を!20190329

ハマナスの化粧品で、浦幌町の未来に雇用を!

「あなたの町の花は?」。そう聞かれて、パッと答えが浮かびますか?たとえば、札幌市の花はスズラン、旭川市はツツジ、帯広市ならクロユリなのだとか。今回、くらしごと編集部が訪れた十勝エリアの浦幌町の花は「ハマナス」。町内の豊北原生花園を筆頭に、夏には鮮やかな赤紫色の大群落をつくり、町民の方々にも愛されています。この美しい資源を活用したオーガニック化粧品シリーズ「rosa rugosa(ロサ・ルゴサ)」を手がけているのが「株式会社ciokay(チオカイ)」。代表は森健太さんです。

人とのつながりを求め、44都道府県を巡りに巡る!

編集部を満面の笑みで迎えてくれた森さん。ん?「rosa rugosa」の化粧品を使っているからでしょうか、肌ツヤがとっても良い感じ...というよりも年齢がかなりお若いような。

「ハハハ。ありがとうございます。僕は今、25歳。出身は三重県です」

森さん、聞けば高校生のころまではバリバリの野球少年。三重県の選抜大会準優勝まで登り詰め、スポーツマンらしく当時の夢は体育教師だったそうです。ところが...。

「第一志望の教育大学に落ち、そこからガクンと心が折れてしまって。龍谷大学の大阪梅田キャンパス社会学部に進んだものの、授業には行かずにバイト先と自動車学校を往復する日々(苦笑)」

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悶々とする森さんにとって、転機となったのは大学1年生の夏休みに起きた出来事。東日本大震災から1年半ほどが経ち、時間が有り余っているならば何か行動を起こそうと震災ボランティアに参加しました。「現地で海外ボランティアの方と知り合い、『最近、富士山に登ってきたんだ。あなたもどう?』とすすめられて、帰路に挑戦してみたんです。単純でしょう」と笑います。

ところが、森さんは登山の知識も本格的な装備も持ち合わせていませんでした。持ち前の体力に任せるまま9合目までは踏破するも、突如として天候が変わり、冷たい雨の洗礼を受けることになります。

「体力も体温もどんどん奪われる上、山小屋も閉まっていて...。慌ててトイレに駆け込むと、僕と同じくらいの年代の大学生3人が避難していました。本当に安心しましたし、話しているだけで力が湧いてきたんです。その瞬間、自分のコミュニティの外に出て人とつながることは価値があるんじゃないかって感じました」

urhr_ciokay_3.jpg「道の駅うらほろ」の店員さんとおしゃべりを楽しむ森さん。「もりけん」とあだ名で呼ばれるくらい交流を深めています。

その後、森さんは一人旅をしたり、地域の研修プログラムに参加したり、驚くことに44都道府県を巡り、各地の人とつながりを深めていきました。

地元の人が地元の未来を考える姿勢にひかれて。

森さんが各地を巡るうちに感じたのは地方に暮らす人々のたくましさ。経済サイクルの中心である都会にはヒトもモノも集まる反面、人々はただ消費することだけに終始しているように映りました。一方、地方では商品やサービスの選択肢が少ないからこそ、遊びも仕事も自分たちで生み出そうという気概が感じられたと振り返ります。ところで、浦幌町とはいつ出会ったのでしょう?

「大学4年生のころ、浦幌で開かれた2泊3日の地域滞在プログラムに参加しました。一次産業の現場や地域のコミュニティにふれた中で、特に興味をひかれたのが『うらほろスタイル』。小中学校9年間の教育に、町への愛着と誇りを育む活動を盛り込んだプロジェクトです。他の地方では移住者がこうした取り組みに力を入れるケースが多く見られましたが、このまちでは地元の大人が地元の子どもたちに働きかけ、新しい未来を真剣に生み出そうとしていました」

urhr_ciokay_4.jpg「うらほろスタイル」と株式会社ciokayの事務所は同じ建物内に。

わずか3日間の滞在ながら、浦幌町の印象は森さんの胸に深く刻まれました。加えて、この地で暮らしてみたいという思いもフツフツと込み上げてきます。そんな時、今までの活動で知り合った方から、ご縁という言葉で説明するしかないような朗報が飛び込んできたのです。

「浦幌の地域滞在プログラムを紹介してくれた方が、『浦幌で地域おこし協力隊を募集するので挑戦してみないか』と。正直、地元の三重で就職する道と迷いましたが、今後の人生の刺激や広がりを考えると居ても立ってもいられなくて。父と母には北海道で働くことを事後報告し、新卒でこのまちの地域おこし協力隊に参加しました(笑)。両親には叱られましたが、今は応援してくれていますし、浦幌に遊びに来たこともありますよ」

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お母さんへの一言が、コスメ開発のきっかけに。

森さんが浦幌町の地域おこし協力隊として移住したのは約3年前。住むところは役場に町営住宅を用意してもらい、町民との交流からあたたかなエールも受け取りました。前任者から引き継いだミッションはハマナスを使った商品づくり、通称「ハマナス事業」。そのスタート地点についてこう教えてくれました。

「浦幌には高校がなく、進学に伴って町を離れる生徒が大半。一方、未来を担う子どもたちに将来もココで暮らし続けたいと思ってもらうことが人口流出を食い止めるカギです。そのため、『うらほろスタイル』の一環として、10年ほど前から子どもたち自身に地元の魅力や価値を見つけてもらう取り組みを進めています。その集大成が、毎年恒例の中学3年生による地域活性化プランの発表会。そこで数多く飛び出すアイデアがハマナスを使ったまちおこしなんです」

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実際、これまで中学生のアイデアからハマナスのハーブティやお菓子の商品化を進めてきました。ところが、販売責任者の擁立や販路の確保、販売後のフォローといった壁が立ちはだかり、市場にリリースされる一歩手前のところで止まっていたそうです。

「ハマナスを使った商品開発の企画には、町民へのヒアリングや意見交換の場も設けられています。平成28年に飛び出したのがコスメ開発のプラン。『ママにはいつまでもキレイでいてほしい』とお子さんからいわれたというお母さんの一言によって、主婦を中心とする『ハマナスコスメブランデイング会議』が立ち上がりました」

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「オール浦幌」のあたたかみを感じるコスメ。

森さんは地域おこし協力隊として、徐々に動き始めていたハマナスのコスメ開発に携わるようになりました。とはいえ、食品加工や木工製品は工程をイメージできますが、化粧品づくりというと専門知識が不可欠な気がします。

「もちろん、僕や主婦の皆さんだけではお手上げ状態(笑)。けれど、浦幌はまちおこしに外部コンサルタントを起用するなど、地域活性化のプロジェクトに対する行政の先進性と柔軟性が富んでいるんです。なので、僕らは20年以上オーガニックコスメのOEMを手がけるアルデバランという企業と手を携えて一緒に化粧品づくりを進めていきました」

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森さんは「ハマナスコスメブランディング会議」をたびたび開いては、商品のコンセプトや価格帯、使用感について話し合いを重ねました。そうして「自分たちが使いたくなるコスメ」をテーマに、敏感肌や乾燥肌といったどんなタイプの肌にもなじみやすい化粧品をアルデバランと開発していきます。

「一方、自分自身もハマナスの植樹や収穫に関わるようになり、町民と一緒に花を一片ずつ手摘みする経験も積みました。今は『まちなか農園』という場所でハマナスを育て、町内の有志やNPO法人の方に手入れを手伝ってもらっています。といっても、ハマナスは浦幌の海辺にもたくさん自生しているので、肥料や農薬を使わずともニョキニョキ育っていくんですが(笑)」

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試作を重ねること約1年半。リラックスを誘うハマナスの蒸留水を主原料に、北海道のトドマツの葉から抽出したエキスやなたね油、ひまわり油といった天然由来成分にこだわった「rosa rugosa」が完成しました。

「水の代わりにハマナスの蒸留水を100%使っていますが、良い香りを失わないように精製するのが苦労しました。このコスメにはビタミンCやポリフェノールの含有量が高く、敏感肌や乾燥肌の方にも評価をいただいています。ちなみに、僕も毎日使っているので、肌のハリやツヤが以前とは全然違うんです(笑)」

urhr_ciokay_10.jpg森さんの同期の女性地域おこし協力隊員もハンドクリームを愛用。

商品に使われるハマナスは町民とともに栽培し、一つひとつ手で収穫しています。また、パッケージに描かれている花の絵も、町内の写生会で子どもやご年配の方が手がけた作品。まさに「オール浦幌」のあたたかさまで感じるコスメです。

urhr_ciokay_11.jpg「rose rugosa」はハンドクリーム、化粧水、乳液、美容液、バーソープ(洗顔石けん)をラインアップ。基礎化粧品のシリーズとしては種類が豊富。

浦幌町の子どもたちに「雇用の場づくり」で還元したい。

森さんは地域おこし協力隊でありながら、2017年に「株式会社ciokay(チオカイ)」を設立。「rosa rugosa」を販売するには公的な立場の地域おこし協力隊でいるよりも、会社を立ち上げたほうが良いと多くの人からすすめられたといいます。

「この年齢で会社を立ち上げるハードルの高さに半年くらいは迷っていました。だけど、出来上がった商品を手に取った瞬間、覚悟を決めようと思ったんです。町内の方々にもハマナスの栽培や商品企画を手伝ってもらって生まれた『この子』を、いろんな人に知ってもらいたいと」

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森さんは商品のPR活動や展示会への出展、さらに道内外へのセールスの他、在庫管理や製造量の調整といったバックオフィス業務も一人で担っています。北海道産のハマナスを使ったオーガニックコスメという商品力に加え、浦幌町の人々の温もりが伝わるストーリーも手伝って売上は上々。地域おこし協力隊の任期(3年)を終えてからも、暮らしていけるメドは立っているとホッとした表情を見せます。

「だけど、僕が会社を立ち上げた大きな目的は利益を確保することだけではありません。この『rosa rugosa』は、もとをたどると地域の子どもたちのアイデアから生まれた商品です。だからこそ、若い世代にお返しするために、いずれ雇用の受け皿を作りたいと考えています。例えば、海外展開することで英語を学んだ子が将来外国人と商談を進めたり、販売促進をさらに大掛かりにできればデザインを身に付けた子が町内でパンフレットを手がけたり、外で習得した技術を生かせる職場になれる可能性を秘めていると思うんです」

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今、商品は浦幌町で収穫されたハマナスの花を新潟の蒸留工場に出荷し、精製されたエキスをアルデバランが製品化しています。

「蒸留の工程だけでも浦幌で行うことができれば、小さな雇用を生めるかもしれません。『rosa rugosa』が子どもたちにとって地元の自慢の商品に育ち、やがてまちに戻って働くための理由になるのが理想です」と森さん。

ニコニコと笑顔を絶やさず、常に物腰の柔らかい雰囲気でお話ししてくれた表情が一気にシリアスに変わります。その瞳の奥には浦幌町の未来に雇用を生むという決意が揺れていました。

urhr_ciokay_14.jpg浦幌町の地域おこし協力隊と集合写真!皆さん、とっても良い笑顔!

株式会社ciokay
株式会社ciokay
住所

北海道十勝郡浦幌町字寿町7番地1

電話

015-578-7185

URL

https://rosa-rugosa.jp/


ハマナスの化粧品で、浦幌町の未来に雇用を!

この記事は2019年1月17日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。