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まちおこしレポート
浦河町

行政も町の人も温かい。だからまた来たい、住みたい町。20190311

この記事は2019年3月11日に公開した情報です。

行政も町の人も温かい。だからまた来たい、住みたい町。

日高振興局があり、周辺地域の中心的な場所である北海道浦河町。海や山など自然にも触れられ、市街地もあり便利なことから、移住者も増加しています。平成17年に北海道の自治体で構成する北海道移住促進協議会が立ち上がった初期から、移住促進に取り組む浦河町。翌年には、体験移住「ちょっと暮らし」を開始し、体験から移住につながった事例もあるそうです。そんな浦河町の取り組みについて、担当する商工観光課移住交流推進室主査の荒木麻里さんと、前任担当者で企画課主幹の菅野泰弘さんに話を聞きました。

住宅やサービスも充実。106世帯が完全移住へ

体験移住の開始時は職員住宅を活用した町営の体験住宅から、家具や家電も職員が使わなくなったものを集めるところからのスタートでした。現在は、町営と民間で管理している体験住宅があり、いずれも家具家電や調理器具などを全て備えています。大家さんの協力もあり場所のバリエーションも豊富で、海に近い場所、市街地に近い場所、不便だけれど田舎暮らしが満喫できる場所などさまざまです。

urakawa11.JPG商工観光課移住交流推進室主査の荒木麻里さん(右)と、前任担当者で企画課主幹の菅野泰弘さん(左)

他の自治体には少ないペットOKの物件もあり、室内犬などを飼う体験者に人気です。空き家リフォーム補助金制度も整備し、少しずつ体験住宅を増やして体制を整えています。年間約50世帯が利用しており、7月から9月の夏季は特に人気が集中し、例年抽選になるほどです。体験移住は1週間からで、リピーターも多く、体験を重ねて移住を決めた人も含め、これまで106世帯が完全移住しました。

初めて体験移住をする世帯には、役場の担当者が約1時間ほどかけて、町内を案内します。食料品や日用品を買える店、病院、趣味やスポーツを楽しめる場所、飲食店など、生活に必要な場所を一通り紹介しています。そして、浦河ならではの魅力は、乗馬体験を1回無料でできること。一度体験するとその面白さにハマり、レッスンに通って上達する人もいるといいます。町の行政サービスも、町民と同じように受けられます。例えば、図書館の貸し出しカードが作れたり、町民向けの文化講座にも登録し参加できます。

urakawa12.JPG馬産地ならではの楽しみがいっぱい

交流会や町内行事で仲間もできる!

体験移住者の交流会も、参加者の多い夏に町主催で開催。冬でも、体験者が多ければ開催しているといいます。そのほかにも、4月から11月に月1回開催されている「ホッカイドウ競馬応援ビアパーティー」に体験移住者も招待し、門別競馬場のナイターレースをスクリーンで観戦し、町の人が馬券の買い方を教えたり、一緒にビールと焼き鳥を楽しんだりという、馬産地ならではの楽しみ方も満喫してもらっています。

そういった公式行事以外にも、地域の人と体験移住者や、リピーター同士が仲良くなり、「『うちで蕎麦を打ったから遊びにおいで』『何組かでカラオケに行くから来てください』と誘ってもらえるんですよ」と笑顔で話してくれる荒木さん。

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地域のボランティアが体験移住者との架け橋に

体験移住者と地域の人との交流を支えているのは、ボランティアの「うらかわ暮らし案内人」の存在です。地元の人や先輩移住者が登録し、活動しています。地元の人が町の人しか知らない情報を教えたり、先輩移住者が「引越しの荷物にはこれが必要、東京と比べて暖房はね...」など経験した人にしかわからない話もできるところが喜ばれています。

地方に移住する際にネックになる住む場所探しですが、そういった時もうらかわ暮らし案内人の活躍の場です。さまざまな業種で情報を持っている人がいるため、「あの家は今、人が住んでいないけれどどうかな」「誰が入るかわからないなら貸したくないけれど、紹介なら貸せる」といった表に出ない物件情報などにも精通しています。

浦河町で「まさご湯」と「ラーメンまさご」、「ゲストハウスまさご」を営む大久保直幸さんも、うらかわ暮らし案内人として多くの体験移住者をサポートしています。

urakawa1.JPGうらかわ暮らし案内人の大久保直幸さん

「いろいろな地域から来てくれて、いろいろな話ができて、ありがたいですよね。感謝の気持ちで、自分にできることがあれば...とお手伝いしています。私も遊ぶのが好きなので、釣りやシーカヤック、山菜採りなどお供していますよ!」

urakawa10.JPG銭湯&ラーメン屋&ゲストハウスとそろっているこの場所は、地元の人と移住希望の方の交流の場でもあります

試してみないとわからない。だから、間口は広く

「移住してもらうには、まず来てもらうこと。服なら試着、食べ物なら試食して買いますよね。まして、移住は人生の一大決心。どんな場所に住むのか、試してみないとわからないと思います」と菅野さん。

「どんなにいいところでも、隣に住んでいる人が嫌な人だったら住みたくないですよね。体験移住のリピーターの方も、友達ができたからまた来る、と言ってくれる方も多いです」と荒木さん。

「完全移住となる場合、やっぱり決め手は人」と菅野さんと荒木さんは口をそろえます。

地域の人との交流があると、夏に来た人に「もう少し早い時期に来ればウニがあったのに」「もう少しいたらサケが獲れるよ」などと言ってもらえて、「じゃあまた来ようかな」とリピートにつながります。夏に来た人が冬にもう一度体験し、「このくらいの寒さだったら住めるね」と、完全移住を決める場合もあるんだそうです。

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「地域の人も受け入れに慣れてきていて、最初は遠目から様子を見ていた人も、野菜をおすそ分けしたり、魚料理を教えたりと、積極的に交流してくれています。そのような面では、行政が一から十までできない部分なので、とても助かっていますね」と、荒木さん。

地域住民と体験移住者をつなぐことにも気を配っています。体験移住が入る地区の自治会長には必ず事前に知らせると、町内のお祭りがある時などは自治会長が声を掛けてくれるといいます。また、体験住宅の大家さんも近くに住んでいる場合が多いので、近所の人に紹介してくれたりとバックアップしてくれています。その点で、「最初は旅行感覚でもいいと思う」と荒木さんは言います。そして、こう継ぎます。

「他の自治体では、体験移住の希望者に小論文を書いてもらったり、体験移住は1回だけとか3カ月だけと制限を設けているところもありますが、旅行感覚で繰り返し来てくれているうちに、『あそこも行きたかったけど時間が足りなかった』『仲良くなったあの人とご飯を食べに行けなかったからまた来る』と言って、また来てくれることも。まず来ないと始まらないので、間口は広げたいですね」

urakawa7.JPG笑顔がとっても親しみやすい荒木さん

過ごしやすい気候。子育て、医療にも優しい町

北海道の中でも過ごしやすい気候も、体験移住から完全移住の後押しになっています。夏は30℃を超える日は少ない涼しい気候なので、本州から避暑に訪れ、中には毎年夏に来るという人も。そして冬は積雪が20センチにも満たないほど雪が少ない地域でもあります。雪かきもほとんどいらないほど。そのため、道内の雪が多い地域から体験移住に訪れ、その後完全移住した高齢の女性もいるなど、過ごしやすさへのニーズも満たしています。

移住者には気になる子育て支援も充実。子育て支援住宅は東部、西部、小学校の近くとエリアを分散させて平成29年度・30年度に2棟ずつ新築しました。また、高校生までの医療費を町内で使える商品券として還元しています。病院も総合病院が1つ、診療所が5つ、そして保育園は5つ、認定こども園が2つと充実しています。

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また、現在の動きとしては、新ひだか町、様似町と連携し、3町で移住促進をする政策も進んでいます。

「近隣の町にエリアを広げると、美味しいものや魅力もたくさんあります。エリア全体で受け入れる気持ちでこの政策を進めています。浦河で体験移住をした方が、考えた末他の町に移住し、その後浦河に遊びに来てくれることも。浦河を拠点にいろいろな町を見て、選んでほしいです。浦河だけで抱えず、オール北海道で受け入れていければ、移住する方ももっと増えると思います」

そう熱く語ってくれる荒木さん。その親しみやすい笑顔とフレンドリーな対応を見ていると、その向こう側に浦河の人の温かさが見えてきます。体験移住に来た人がまた来たくなる、住みたくなる魅力も伝わってきました。

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浦河町役場
浦河町役場
住所

北海道浦河郡浦河町築地1丁目3番1号

電話

0146-22-2311

URL

https://www.town.urakawa.hokkaido.jp


行政も町の人も温かい。だからまた来たい、住みたい町。

この記事は2018年12月4日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。