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イベントレポート「人工知能&ビッグデータ フォーラム@札幌」20180409

この記事は2018年4月9日に公開した情報です。

イベントレポート「人工知能&ビッグデータ フォーラム@札幌」

「ソサエティ5.0」今、日本はどう変わろうとしているのか。
地域は何を先取りすべきか。

「くらしごと」を運営するHAJの関連会社、HAJエンパワーメントが特別協賛としてお手伝いした「人工知能&ビッグデータ」フォーラムが、札幌市及び一般財団法人さっぽろ産業振興財団により開催されました。
副題にある「ソサエティ5.0」とは、狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会の「次」にやって来ると言われている第5の社会。その変革期に置かれている私たちが「人工知能」「ビッグデータ」などの注目技術と、どのように向き合っていくべきか...というのが本フォーラムのテーマです。

bigdata_2.jpgフォーラムには秋元克広札幌市長も参加し、「AI、ビッグデータの活用で北海道の未来に明るい道筋が作っていければ」と挨拶。

講演1 安西祐一郎氏(独立行政法人日本学術振興会 理事長、人工知能技術戦略会議 議長)

最初の講演者として登壇したのは、日本政府のAI戦略をけん引する人工知能技術戦略会議で議長を務める安西祐一郎氏。
冒頭で安西氏は「ソサエティ5.0」が、2016年に閣議決定された「第5期科学技術基本計画」のキャッチフレーズであると説明しました。

bigdata_3.jpg 1980年代後半に北海道大学で教鞭をとっていた安西氏。北海道が愛着のある土地であると語りました。

人口減少が加速し、特に18歳人口が少なくなっていくこれからの日本では、「これまで以上に『個が生きる、個を生かす』ことが大切になっていく」と安西氏。私たち一人ひとりがワクワクしながら生活するにはどうすれば良いか、という観点から考えていかなければいけないと話しました。

「第5期科学技術基本計画では、多様性、柔軟性を発揮するとありますが、実は、これは近代の日本においては最も苦手とするところ。口で言うのは簡単ですが、ホントにできるの? と疑問を感じている人もおられるでしょう。しかし、成長著しい中国と大国アメリカとの狭間で日本人がこれからも幸せに暮らすためには、苦手なことにも本気になって取り組んでいかなければなりません」

とは言え、こうした状況は誰にとっても未体験であり、どうすべきかという「明確な答え」は無いと安西氏。だからこそ、いろいろなセクターの人たちがしっかりとディスカッションを重ねることが重要であり、また、そのような意識を強く持っている人にとってAI、ビッグデータは「使える技術」だと説明しました。

ダイナミックな社会の転換が起きている。

Bloomberg BETAのキャピタリストは、人工知能や機械学習に関する近年の状況を「マシンインテリジェンス3.0」としてまとめました。「マシンインテリジェンス(1.0)」が発表されたのは2014年。それからわずか数年でAIや機械学習を手掛ける企業は大幅に増え、 マシンインテリジェンス3.0ではIT系企業ではない一般企業(ユーザー系企業)にまで、AIやビッグデータの活用が広がっていくと説明されています。
「既に人工知能領域のスタートアップ企業が多数登場し、ダイナミックな社会の転換が起きています。そのことをしっかりと理解しておくことが重要」と安西氏は強調しました。

bigdata_4.jpgThe Current State of Machine Intelligence3.0(出典:O'Reilly)

文理の分断を解消し、ユーザー側でITを理解できる人を育成する。

社会の転換は雇用市場にも影響を与えます。例えば、IoTが拡大することで、人が介在しないデバイス同士のコミュニケーション(通信)が増え、セキュリティの重要性が増していきます。こうした中では、セキュリティに関する高度なICTを身に付けた人は、雇用市場での価値も高まっていきます。

現状の課題のひとつは文系、理系の分断であると安西氏。
「今は文系の人材がユーザー系企業に就職し、理系の人材がIT系企業に就職しています。その結果、ユーザー系企業にITを理解できる人がないため、IT系の提案を鵜呑みにしてしまう。売り手と買い手が分かれてしまっているのが問題です。アメリカにはユーザー系企業で働きながら、プログラミングもできるような人が大勢います。垣根を取り払っていかなければなりません」

行政の役割は「パイプの詰まり」を解消すること。技術活用の主体は民間に。

AIやビッグデータ、IoT、セキュリティなど先端技術の活用をすすめるには、国や自治体が整備すべき部分はあるものの、基本的には民間が主導するべきだと安西氏は主張します。
「行政はあくまでもサポートに徹することが重要。税制や法律など、自由な活動を妨げている『パイプ詰まり』を解消し、風通しをよく、民間が動きやすい環境づくりが必要です」

ただし、AIやビッグデータ活用で大きなムーブメントを起こすにはきっかけも必要。その役割を担っているのが安西氏が議長を務める人工知能技術戦略会議です。同会議は内閣府を含む、複数の省庁の連携によって運営されています。

2016年3月に人工知能技術の研究開発目標と産業化のロードマップが完成。このロードマップでは「生産性」「健康、医療・介護」「空間の移動」という3つの分野で、2030年代までに実現すべき目標が掲げられています。

2017年5月には「官民研究開発投資拡大プログラム(PRISM)」がスタート。2018年度(平成30年度)のターゲット領域のうち、安西氏は革新的サイバー空間基盤技術(AI/IoT/ビッグデータ)領域を統括すると説明しました。

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社会や経済、雇用など、バランスを考えてマネジメントすることが重要。

人工知能についての研究が始まったのは1950年代。現在は第三次人工知能ブームであると言われ、メディアや報道でも盛んにAIが注目されています。
安西氏によれば、現在のAIブームがこれまでと大きく違う点はグーグル、フェイスブック、マイクロソフトなどのビッグインダストリーの存在とのこと。

「つまり私たちが直面する今のAIブームは、かれらのビジネス上の戦略であるとも考えられます。人間の知的な活動をAIがサポートするという『サービス』を、ビジネスとして提供するためにAIブームを仕掛けているという見方ができます。
AIも技術である以上、コモディティ化は不可欠。そうなった次の世界。『AIの次』を彼らは見据えていると考えてもおかしくありません」

一方、安西氏は「AIが流行っているから」という理由で使わなければいけないと考える必要は全く無いと語ります。
「必要がなければ使わなくて良い。技術というのはそういうものです。ただ、世界ではやはりAI、ビッグデータの技術が役に立つから使われ、磨かれていっています」

AIやビッグデータだけを追求するのではなく、社会や経済、雇用などのバランスを考えて、どうマネジメントしていくかが重要だと安西氏。

最後に教育やスポーツによる地域振興、文化の充実にも目を向け、人々がわくわくし、ここに住み続けたいと感じるまちづくりを、ぜひ札幌で実現して欲しいとエールを送り、講演を締めくくりました。

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講演2 長谷山美紀 氏(北海道大学 数理・データサイエンス教育研究センター センター長、大学院 情報科学研究科 教授)

2人目の講演者として登壇したのは、2017年7月に設置された北海道大学数理・データサイエンス教育研究センターでセンター長を務める長谷山美紀氏。

「本センターの設立目的は、学生のデータサイエンスリテラシーを醸成すること。現在日本では、データサイエンスに関するリテラシーが十分な人材が年間50万人が不足していると言われており、この現状を打開するためにも数理・情報教育体制の抜本的強化が不可欠です」

bigdata_7.jpg生物学や医学、脳科学、航空宇宙などの分野で、産業界とともにビッグデータ研究に取り組んでいる長谷山氏。

長谷山氏によると、北海道大学は文科省により選定された全国6カ所の数理・データサイエンスの教育強化拠点のひとつであり、他大学とコンソーシアムで議論しながら、「全国に展開可能な」標準カリキュラムの実装に取り組んでいるとのこと。そして、北大ならではの特徴が、「文理を問わないこと」「オーダーメイド型の教育プログラムがあること」の2点だと話しました。

「北大ではデータを適切に扱う素養を身につけるため、文理を問わず、1年生2500人全員に情報学や数学、統計学など、データサイエンスに関する講義4単位を必修にします。また、卒業研究等を進める学生にはオーダーメイド型の実践教育プログラムを計画し、実際に社会に存在する問題解決へチャレンジします」

「実データ」に触れながら、より実践的な課題解決能力を育み、「使える卒業論文」に仕上げるのだと長谷山氏は強調します。

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社会の問題が複雑化し、大きなビジョンを描ける人材の育成が不可欠。

「以前、ニューヨーク・タイムズでデューク大学のキャシー・デビッドソンがコメントしたように、これから小学校に入学する子どもたちの6割以上が、今はまだ存在しない職業に就くと言われるなど、社会はめまぐるしく変化しています」

そうした中、北海道大学が担うべき使命は、研究職に、公共政策に、産業界にビジョンを描ける人材を送り込むことだと説明。

「これまでの大学教育は深化と細分化の歴史。たくさんの研究室を作って、多くの『専門家』を輩出することに主眼が置かれてきました。しかし、社会の問題が複雑化する中、『どんな世の中を作るか?』という大きなビジョンを描ける人材の育成こそが極めて重要です」

さらに長谷山氏はイノベーションの創出をしていくためにも、「融合領域を作り出す人材」を育成していかなければいけないと主張。

「教育は目的にあらず」

北海道大学はこうした未来のための人材を輩出し、社会に貢献する。数理・データサイエンス教育研究センターが新しいビジョンをかかげて前進していくのだと語りました。

講演3 神岡太郎氏(一橋大学 商学研究科 教授、国際CIO学会元会長、高度ICT利活用人材育成推進会議座長(総務省)等歴任、CDO Club Japan 顧問)

bigdata_9.jpg北海道大学の卒業生であり、安西氏の教え子でもある神岡氏。

最後に登壇したのは一橋大学教授の神岡太郎氏。冒頭では北大在学中と比べて外国人観光客が非常に多くなっている点を指摘し、その上で、北海道、札幌が世界に新しい価値を提供していってほしいと語りました。

「現在、世界の時価総額ランキングでトップを占めるのは『GAFA』と呼ばれるグーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルなどの企業です。こうした企業は日本が苦手とする『ユーザー起点』のビジネスを確立し、現在の地位を築きました。しかし、これらの企業は『現在の』トップであって、札幌の皆さんに目指してほしいのはそこではありません。GAFAの次を目指すことが大切です」

神岡氏は業界上位の企業が5年で入れ替わるほど、世の中は目まぐるしく変化していると説明。そうした中、これからのスタートアップ企業にも十分なチャンスがあると話します。

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テクノロジーを上手に使うのがこれからの時代のCOOL!

「これからの時代、重要なのはテクノロジーを『上手に使う』こと。テクノロジーを『開発する』のではなく、上手く活用するのが『クール』だとされています」

その代表格がウーバー(Uber)、エアビーアンドビー(Airbnb)。両者は何か革新的な技術を開発したというよりも、今あるテクノロジーを活用しながら、ユーザーが求める価値を見抜き、急成長を遂げている「デジタルディスラプター」であると神岡氏。

「彼らの登場によって、業界の勢力図は一夜にして塗り替えられました。今や世界最大のタクシー会社はウーバーであり、世界最大のホテルはエアビーアンドビーになってしまった。一方、既存の企業にナゼそのようなことができなかったかといえば、彼らは自分たちの現状を起点にしてしまうから。今ある車両、運転手、コールセンター、駐車場などを利用して、何ができるかを考えようとします。しかし、ウーバーはお客さんが何を求めているか? から考えています」

未来のために自分を破壊する。強みを捨てても自分を変えられるか。

ウーバーのようにすれば良いというのは簡単だが、実行するのは難しいと神岡氏。今いる運転手の雇用をどうするかも大きな問題。しかし、既存の企業は「トランスフォーメーション」して、新しい組織に変わっていかなければいけないと説明します。

「かつてiPodがアップルの売り上げの8割を占める主力製品だった時、iPhoneを発売することにiPodの開発チームは猛反対したと言われています。なぜならiPhoneによってiPodが売れなくなってしまうからです。しかし、結果としてアップルはiPhoneを発売しました。それはアップルがやらなければ他の企業に先を越されることが分かっていたから。強みを捨てて、自分を破壊してでも次へ行く。そうしなければ未来がないと判断したんです」

・ユーザー起点でサービスを考える
・テクノロジーを「作る」のではなく、「上手く使う」のがクール
・自分を変えていく

以上の3点が、これからの差別化を考える上で重要な要素だと神岡氏は説明しました。

理解してから解くのではなく、解きながら理解するという考え方が主流になっていく。

さらに、物事の考え方にもパラダイムシフトが起きていると神岡氏。

「昔は問題の解き方がわかるまでは動かずじっくり考える。解決するためには何が必要かを考え、それを準備することに時間を費やしていました(リソース・ベースト・ビュー)。リスクをゼロにしてから、ようやくスタートするという考え方です。
しかし、今はやりながら解き方を考えるというスタイルにシフトしている。リスクを取りながらスタートし、その過程で必要なものを揃えていくというやり方に変化しています(ダイナミック・ケイパビリティ)」

なぜ、このようなパラダイムシフトが起こったかといえば、今の時代、解決しようとする問題や環境が常に変化し、準備してから解こうとするのでは対応できなくなっているからと神岡氏は説明します。

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部署や部局の垣根を超えて、データを活用できるプラットフォームづくりが必要。

ビッグデータの活用には多くの組織が重要性を感じているものの、組織としてデータを活用する体制が整っていないことが多いと指摘する神岡氏。

「ビッグデータの特徴は、色々なタッチポイントからデータが入ってくることで、これを上手く繋いで問題を解決することがビッグデータの醍醐味でもあります。しかし、現状を見ると、例えば、観光に関するデータは観光局、農業に関するデータは農業局...といったように、バラバラにデータをもってる。しかし、生活者にとっては観光のデータが農業に役立つこともあり、データを活用できる仕組みを作ることが大切です」

また組織だけでなく、活用のプロセスにも課題があると神岡氏は指摘します。

「組織にはデータが山のように溜まっても、それが社内のどこにあるか分からないと言うことが多い。自分が取ったデータは分かる。しかし、隣の部署のデータのことは分からない。データの組織化ができてないんです。じゃあ、整理しようということで、データの分析をするけど、今度は分析結果が山のようになり、意思決定に使えない。その結果、行動に結びつかず、競争力にも結びつかないという状況が起きています」

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ではこうした状況に陥らないようにするためにはどうしたら良いかということについて、神岡氏は「集中」と「分散」という考え方があると説明。

「ひとつは中央集権的にデータを集めて、データサイエンティストがそれを分析するという方法。これは非常に効率が良く、アマゾンなどでも採用している方法です。しかし、データを取るポイントと分析者が離れてしまい、現場で何が起きているかわかりにくいというデメリットもあります」

「もうひとつは観光や農業など、データを取る各チャンネルに、その分野についての専門知識を持ったデータサイエンティストを置き、彼らが専門分野以外のデータも見られるプラットフォームを作るという方法。このようなサイエンティストは『市民データサイエンティスト』などと呼ばれ、札幌市のような組織にはマッチする方法ではないかと考えています」

また、行政を始めとしたこれからの組織にはCDO(チーフ・デジタル・オフィサー)と呼ばれるリーダーが必要であり、各部署を横断的に見ていく必要があると神岡氏は語ります。

「CDOの役割は組織を横串で見て、縦割りをクロスさせることで新しい価値やサービスを生み出すこと。また、リーダーとしてみんなの気持ちを束ねて組織をひとつの方向に向かせることもCDOの役割です」

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神岡氏は地域戦略の好事例として、シンガポールとメルボルンの例を紹介。

「シンガポールは面積が小さく、人口も少ない国です。しかし、国際的なハブ空港や港湾を整備することで、成長してきました。近年は企業のヘッドクオーターを積極誘致したり、ハイテク企業を誘致して、その企業が開発した製品のアジア諸国への販売を政府が支援するなどの政策で存在感を表しています。最近では更に進んで、各国のスタートアップ企業を誘致して融資を行うなどの政策を実施しています」

「オーストラリアのメルボルンでは、市が収集した駐車場の利用データやゴミ箱に取り付けたセンサーから収集したデータなどを一般公開し、スタートアップ企業が自由に分析し、ビジネスを作り出せる環境を整えています。これを市が抱える渋滞問題等の解決に結びつけて、テクノロジーを活用することで、人々が快適に過ごせるまちづくりに取り組んでいるんです」

最後に神岡氏は、北海道も同じように、テクノロジーの利活用にチャレンジングな地域であってほしいと説明。

「東京に何かを売るという発想ではなく、北海道に住んでいる人、あるいは住みたい人たちをエンドユーザーとして、快適な暮らしにつながるような価値を提供していってほしいと思います。今、アジアの若者はシンガポールで働くことに憧れを抱いています。しかし、北海道や札幌の地域ブランドを高め、ここで起業したり、スタートアップすることがクールでカッコイイと思われるような場所にしていってください」

パネル・ディスカッション。

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講演のあとに行われたのが3氏によるパネルディスカッション。モデレーターは長谷山氏。注目コメントをピックアップしてご紹介します。

長谷山氏「変革期をどう捉えるべきかでしょう?札幌のポテンシャルは、どのような所に見られますでしょうか?」

安西氏「まず何が変わりつつあるかについて言えば、一つ目はテクノロジーの進化により国や地域を超えた人と人とのコミュニケーションがダイナミックになっているということ。もう一つはトランプ大統領の誕生により、米中の2大国による新しい社会の仕組みが生まれつつあるということ。そういう変わり目の時期にあるということに対し、私たちは心のスイッチを入れておく必要があります。変化を他人事として捉えるのではなく、このような変革期だからこそ何がしたいかを主体的に考えることが大切。
札幌のポテンシャルについて言えば、しがらみにとらわれない柔軟な気質はこれからの時代にあっている。全国のいろいろな都市を見てきたが札幌が一番あっていると言っても過言ではありません。あとは心のスイッチが入るかどうかだけ」

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長谷山氏「AI、ビッグデータの具体的な活用事例はとして、挙げられるものはございますでしょうか?」

神岡氏「私が訪れたソウルの病院では、患者が受付をしたり、待合室で待つこともなく予約時間に直接診察室に行き、診察後も会計や薬局で一切待たない仕組みになっていました。お金は電子マネーで決済し、処方箋データは帰り道の薬局に送られ、ピックアップするだけ。一方、日本は病院ではすごく待つ。これは病院がデータを公開していないからです。
また、小学校も中学校とデータが共有され、中学校の先生が子どもの小学校時代のデータを確認することができます。このようにデータを上手く活用するだけで、色々なことが便利になります」

長谷山氏「既得権を守るあまり、データの公開が進まない問題もあります」

安西氏「データ自体が価値を持っているので、データ整備をしようと言っても各部署や事業部がデータを出したがらないのは当たり前。なので、これからは、例えば小中学校の連携のように、これからやろうとしているテーマに対して、その仕組みを作る中でデータを蓄積していく。既存のデータを出せというのではなく、新しいデータを作る「データを開発する」という方向に頭を切り替えたほうが早いという考えもあります」

長谷山氏「企業との共同研究でも、複数のデータを組み合わせられたらと思うことは多々あります。また、個人情報保護への過剰な反応も多く見られます。使われなければ意味が無いデータにも関わらず、競合他社に使われると脅威になるという『亡霊』に怯えて、利用されないデータも少なくありません。データを有効に活用したプロフィットシェア、ベネフィットシェアの仕組みを社会につくり出す取り組みが必要だと考えてます」

神岡氏「シンガポールのチャンギ空港は利用者のデータを日本のハイテク企業に全て公開し、ユーザーの利益を高められるように分析を依頼したが、このような例は日本ではほとんどありません。これはデータは守るものではなく、踏み込んで新しい価値を生み出すために使うというマインドがあるから。
さらに言えば、何かを生み出すためにリスクをとるということも大切。やったことないことは失敗することがある。チャレンジした結果の失敗は学習すれば良いんです。次の問題解決に生かすのが重要。ミスが怖くて何もしないでは発展しません」

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長谷山氏「では最後に、これからの札幌に期待するものは何になりますでしょうか?」

安西氏「今後、冬季五輪の誘致が一つの目標になると思います。その時までに何を仕込むかという、具体的な目標を共有することが大事です。冬季五輪の時に、世界の人々にどんな札幌を見せたいかを考えて、この街に来る人が楽しく過ごせる方法を考える。もちろんその課程では札幌ならではの、開かれた文化を大事にしてほしい。小さくてもいいからやってみて、成功体験を重ねることが重要ではないかと思います」

神岡氏「やはり、どういう街を作りたいかというビジョンが全てのスタートになります。そこからロードマップを作っていく。ロードマップは途中で変わっても構いません。個人的に、札幌は調和の取れた町だと感じています。何かを犠牲にすることなく、楽しく生活でき、働けて、エキサイティングできる。だからこそ世界中の優秀な人が札幌に住みたいと思うように地域ブランドを高めていっていただきたいと思っています」

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株式会社HAJエンパワーメント
住所

北海道札幌市中央区南1条西6丁目20-1 ジョブキタビル8F

電話

011-206-9440

URL

http://www.haj-emp.co.jp

人工知能(AI)とビッグデータという二つの旬なキーワードと地域のこれからについて、日本を代表する3人の識者が語るフォーラムが札幌で開催されました。


イベントレポート「人工知能&ビッグデータ フォーラム@札幌」

この記事は2017年11月16日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。