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まちおこしレポート
札幌市

「友情」で世界を変えようとする若き3人組20171120

この記事は2017年11月20日に公開した情報です。

「友情」で世界を変えようとする若き3人組

23歳、社長。上司はいない

2017年10月。札幌に初雪が降った翌日、本格的な寒さが始まったこの季節に、札幌のとあるゲストハウス・・・いわゆる『宿』に立ち寄りました。このゲストハウス、テレビや新聞、ウェブ記事など様々なメディアに引っ張りだこ。その理由はなぜ?それは、代表を勤める3人の経歴にあるのかもしれません。


1991年生まれの世代は四年制の大学を卒業した場合社会人4年目。今回お話をお聞きしたのは、社会人経験のない91〜92年生まれの3人組。東京の大学を卒業後、3人は共同代表として合同会社Staylinkを立ち上げ、札幌で2つのゲストハウスを経営しています。

2014年10月に1号店となる「ゲストハウスwaya」をオープン(以下waya)。続いて2016年8月には2号店「ゲストハウス雪結(yuyu)」が誕生(以下yuyu)。

この日は、2号店のyuyuにお邪魔してお話をお聞きしました。

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寒さも忘れるような温かな笑顔で出迎えてくれたのがStaylink共同代表の1人木村高志さんと、主にyuyuの方に常駐している社員の奥村早紀子さん、北川三和さん。

guesthouse_yuyu9.jpg左から奥村さん、木村さん、北川さん

「ここyuyuは都会の喧噪を忘れさせてくれる、ほっとするような空間づくりを目指しています」と話してくれた北川さん。

yuyuの場所は、札幌で「創成川イースト」という名を馳せている注目エリア。札幌都心すぐそばでありながら、宿に一歩足を踏み入れると、初めて訪れた場所にも関わらず不思議と心が落ち着くような、そんな空気感です。

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yuyuの共有スペースの壁には札幌軟石を使用。札幌の暖かみを演出している他、札幌在住ものづくりのアーティストさんたちがつくった照明や、カーテンなど所々に作品が存在しています。

「本当にここは色んな人たちと一緒につくった場所なんです」とyuyuの空間を見つめる木村さん。
それではまず、この場所が誕生するまでの軌跡を聞いてみました。

それぞれの人生を歩んだ先で運命の出会い

yuyu8.jpg代表の木村さん


「今日を迎えるまでのきっかけとなった河嶋と出会ったのは、大学3年生の冬。僕たちは教職課程を選択していて、その課程の中で介護実習があり、たまたま実習先が彼と同じだったんです」

Staylink代表、河嶋峻さんとの出会い。それが、今日を迎える全ての始まりだったとは、誰も想像できない未来でした。

「あの時期はちょうど就活のタイミングでもあり、最初は普通に就活をして企業に入り、社会人経験を積もうと考えていたんですけど、やりたいことも分からない状態で就活をしていることに違和感を感じていて・・・」

そんな時に、河嶋さんから一緒に「起業しない?」と声がかかり、木村さんは承諾。続けて、「紹介したい人がいるんだ」と河嶋さんの紹介により出会ったのが、柴田涼平さん。河嶋さんとは、高校の同級生だったそうです。

こうして出会った3人。ゆっくりと、新たなレールが動き出しました。

具体的に「これをしよう」と決めて起業を決意したわけではなかったため、半年間ほどアイディアを出し合っては行き詰まり・・・この繰り返し。

そんな時、河嶋さんの地元、北海道の右側に位置する別海町に東京の学生を引き連れ、別海町の同世代と交流をもたせようという、その名も「Jimotrip(ジモトリップ)」を企画。盛り上がりを見せたその結果に行き着いた先が、「人と人とが交流できる場所をつくりたい」という「ゲストハウス」でした。

yuyu4.jpg動き出したその日から、7人の新たな社員が加わり10名に

東京から3人で札幌へ移住

東京にはすでに数多くのゲストハウスが存在していましたが、河嶋さんと柴田さんの地元である北海道にはまだまだ少ない現状。「札幌はゲストハウスが不足している・・・今がチャンスだ!」と3人で東京からの移住を決意しました。

北海道とは縁のなかった木村さんも、ずっと東京で過ごしてきたからこそ一度東京から離れてみたいという想いもあったそうです。

北海道に来てからは、物件探しのため小樽や洞爺湖、旭川にも足を運び、ついに札幌で出会った築60年のアパート。これが今のwayaです。

理想のゲストハウスをつくるべく、大掛かりなリノベーションを実施。まわりの友人たちを巻き込み、みんなで改装しました。

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yuyu3.jpgこの時深夜。手伝ってくれた友人たちとまだまだ笑顔で頑張っているところ

しかし、日々続く改装作業に次第に3人の顔はげっそり・・・。wayaのアパートのオーナーであり、その1階にスナックを構えるお母さんが、見かねてごはんを食べさせてくれたそう。

wayaは、決して3人だけで作り上げたわけではありません。多くの人の手によってついに誕生を迎えたのです。

その後、口コミがどんどん広がりオープンからわずか2年で2号店yuyuをオープンさせるまでに至りました。

guesthouse_yuyu16.jpg「旅好きの男女向け、冒険心が心躍るゲストハウス」と謳っているのがwaya。色合いも鮮やかで、元気が溢れるそんな空間です。

guesthouse_yuyu8.jpgyuyuは「自分らしくいられるひとときを」というコンセプトを元に、はじめてゲストハウスに泊まるという人でも気軽に泊まれます。

wayaとyuyuには、20代はもちろん70代の方まで幅広い年齢の旅人がやってきます。中にはリピーターもおり、たくさんのファンを生み出しています。

ゲストハウスでの仕事内容

guesthouse_yuyu14.jpg受付に立つ奥村さん


「ゲストの対応や掃除がメインです。一番時間のかかる仕事が掃除ですね」

ここでは宿泊者のことを「ゲスト」と呼びます。朝、ゲストさんが旅立つ姿を見送ってから大体夕方くらいまで掃除。その後、16時から22時頃までゲストがやってくるそう。

guesthouse_yuyu5.jpg札幌周辺のまち案内もお任せあれ

「基本はそれの繰り返し。このルーティーンの中でいかに仕事を楽しめて、新しいことを生み出せるかというのもゲストハウスで働く大切なことの1つです」と木村さんは話します。

毎日、様々な国籍、年齢の方々と出会うこの仕事は日々新鮮。

「以前2〜3週間ほどyuyuに宿泊してくれたハワイから来た旅人のブライアンさんは、『地球をキャンパスだと思って、絵を描くように旅をしているんだ』と言って、共有スペースで絵を描いては他のゲストに声をかけて場を和ませていました」と奥村さん。

guesthouse_yuyu15.jpg長く宿泊してくれたゲストとのお別れはやっぱり寂しいもの。ひょうひょうとしている木村さんが「毎日泣いてますよ」なんて言うと、女性陣からは嘘つき!なんて声も(笑)

ゲストハウスにほとんどいるこのお仕事、お休みってちゃんと取れているのでしょうか?と尋ねてみると、「シフト制で月8日休みです」と3人ともニコリ。社員のシフト管理をしている奥村さんのおかげで「休み希望もほぼ100%叶う!」と北川さん。

なんでここで働こうと思ったの?

guesthaouse_yuyu.jpgニコニコ笑顔が素敵な奥村さん


奥村さんは、大学を卒業後企業に就職。しかし、「このままここで働き続けて良いのかな?」「私は何がやりたいのかな?」と立ち止まっていた時に、たまたま宿泊した先のゲストハウスのスタッフさんが、外国人のお客さんに英語で接客している姿を見て「私もこうなりたい!」と心が震えたそうです。

そうと決まれば一直線。縁あって、yuyuの募集を目に応募。もともとwayaの存在も、3人のことも知っていた奥村さんがyuyuで働きたいと思った一番の理由は「3人に引き込まれた」というのが一番。そう、河嶋さん、木村さん、柴田さんにです。

guesthouse_yuyu3.jpg優しい雰囲気で、場を和ませてくれる北川さん

一方北川さんは、静岡出身。その後東京や茨城で生活をしていたという生粋の道外の方。

当時Webマーケティングの仕事をしていた北川さんは、出張でよく札幌に訪れ、その時に宿泊施設として利用したのがwaya。そこからwayaの魅力の虜になった北川さんは、何度も泊まりに足を運びました。

ちょうど将来のことを考えていた時に、大好きなwayaが2号店を出すタイミングで求人募集を発見し、すぐ応募。

北川さんも代表の木村さんも道外からの移住者ということで2人して「移住してきて感じたギャップ」の話で大盛り上がり。

guesthouse_yuyu10.jpg「冬靴って言葉、初めて知ったよね」「雪道の歩き方が分からなくて、道民の河嶋に爆笑されながらムービー撮られてたなぁ」「ゴミ捨てるってことを、ゴミ投げるって言われた時は何かと思った」「あと・・・」

・・・二人とも、次から次へと止まらない盛り上がりっぷり!最後は「北海道のごはんは本当に美味しい」という意見にお互い深く頷き合っていました。

そうそう、北川さんが考えていた「将来」は、英語の先生になること。そのために今後留学をする予定です。

そんな目標を持った北川さん、現在wayaにて英会話教室を開いています。毎週火曜日17時から1時間、年齢性別問わず参加でき、wayaの共有スペースにて開催。同じくStaylinkの社員であり、ニューヨークからやってきたアニルという社員と一緒に。(※2017年10月現在、定員に達しています)

英会話教室の他にも、yuyuは市の学童保育所として登録されています。ゲストハウスという場で学童保育を実施することにより、「世界と触れ合える学童保育」を目指し2017年夏に開始。「子どもが遊びに来れる宿をつくりたい」と木村さんは話します。

また、wayaもyuyuも商店街との繋がりも濃く、地元のお祭りのサポートや餅つき大会なんかも企画・参加しています。町内会のイベントの1つ、お祭りで山車を引く時にはタイミングが合えば、ゲストも参加。海外からのゲストは毎回大喜びです。

「河嶋峻、木村高志、柴田涼平」とは

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河嶋さん、木村さん、柴田さんに惹かれ、念願の入社を果たした奥村さんはこの3人についてこう話します。

「あの3人は、ジェットコースターみたいな人たち。降りたと思ったらまたすぐ上りがやってくる。ずーっと、良い意味でハラハラドキドキするあの感じです」そうニコニコ話す奥村さん。

一番最初に、彼らの経歴が各メディアを呼んでいるのかも、と書きましたが、きっとそれだけではないはず。彼らの魅力に、私たちも知らぬ間に引き込まれているのかも、そんな気になってしまいました。

「河嶋峻、木村高志、柴田涼平」
この3人の名前は、きっと今後北海道中に、そして世界へと名を馳せていくことでしょう。

guesthouse_yuyu11.jpg代表の3人は全国全道を飛び回る。なかなか集まる機会が減ったそうですが、取材中ひょこっと現れた柴田さん

気になっていたことの1つ、「3人の間でぶつかったことは?」の問いに対しては、「よく聞かれるんですけど・・・ないんですよね」と木村さんは笑います。

「きっと、3人の中で役割分担がしっかりと出来ているというのが理由だと思います」

3人の性格的なバランスが良かったというのも1つ。そして何より、それぞれの相手を思う気持ちが強いのだろうなと取材をしていて感じました。

そう思ったのは木村さんの一言。
「友情で世界を変えたいんです」という言葉。

友情で生まれたStaylinkは、これから働くことの価値観を変えていきたいと木村さんは話します。例えば、今後は月6日休みか月8日休みかを社員本人が選べるような制度の導入も検討していると言います。また、現在も社員契約期間は2年間。その後の更新の可能性ももちろんあれば、2年後自分の夢へ向かって新たな道へ進むも良し。

生活と職場が一緒であり、仕事と遊びがくっついているからこそ、新しい働き方が今後Staylinkから発信されていきそうな予感です。

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最後に、木村さんに河嶋さんと柴田さんへメッセージをお願いしてみました。
「メッセージかぁ・・・」と一瞬頭を抱えたかと思うと・・・

「涼平へ。休み、しっかり取ってね。無理しちゃうところがあるから。体が一番だよ。河嶋へ。・・・・・・早く幸せになってねってところですかね(笑)」
照れながらも、しっかりと答えてくれました。

Staylink、今年は社員旅行でUSJに行くのだとか。木村さんは他のメンバーに「俺は別行動するから」なんて言っていましたが、Staylinkに関わるみんなのことを想う気持ちは熱い木村さんです。

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合同会社Staylink「ゲストハウス雪結(yuyu)」
住所

北海道札幌市中央区南3条東4丁目3-13

電話

011-522-7660(電話予約は当日のみ)

URL

http://yuyu-gh.com

◎1号店「ゲストハウスwaya」

・・・北海道札幌市豊平区豊平2条4丁目1-43

◎それぞれのfacebookはこちら

・・・「ゲストハウスwaya」

・・・「ゲストハウスyuyu」

◎それぞれのインスタグラムはこちら

・・・「ゲストハウスwaya」

・・・「ゲストハウスyuyu」


「友情」で世界を変えようとする若き3人組

この記事は2017年10月24日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。