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まちおこしレポート
美深町

「起業」を移住提案の軸に、「アウトドア」を道北の価値に。20171102

この記事は2017年11月2日に公開した情報です。

「起業」を移住提案の軸に、「アウトドア」を道北の価値に。

新規事業者への補助金やサポートが手厚い美深町。

美深町は北海道の北部に位置し、東西を山地に囲まれた自然豊かなまち。実はキャンパーにとっては聖地ともいわれ、稚内や利尻島、オホーツクに旅するための拠点としても人気があります。「びふかアイランド」内のキャンプ場には、3〜4カ月もの間、まるで暮らすように滞在する旅人も少なくないそうです。

このまちには移住体験住宅(最長90日)が3棟(内、1棟は2016年に新築)あり、ここ最近は旅人としてではなく移住を視野に訪れる方もじわりじわりと増えているそうです。そのヒミツを探るため、美深町役場総務課企画グループ商工観光係の前田研吾さんにインタビューのマイクを向けました。

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「まず正直にお伝えすると、移住政策に関わる分野に行政予算を大きく割く方向ではなく、今、お住まいの町民本位で力を入れているのが現状です。捉えられ方の問題かもしれませんが、移住された方も町民になるわけでして、移住者助成などの入り口部分にコストをかけすぎず、長く住みたくなる町を形づくることこそが、移住される方に対しても結果的にメリットになると考えています。例えば、住宅の新築やリフォームなどは費用の一部を補助しますし、まちには官舎が多く、人口に対して医療や福祉の施設が充実しているのも特徴。まずは限られた人員や予算を『住み続けたくなる町』に配分しているのです。その分、他の北海道の市町村に比べると、移住アピールの華やかさや情報伝達の力はまだまだこれからだと感じていますが、子どもが中学生までは医療費無料だったり、待機児童がゼロといったアピールポイントなども備えていますし、私たちの町でできることを私たちの考えるスピードで伝えていきたいですね」

そんな美深の目玉ともいえるのが商工業の施策や補助金。今、まちではすっかり寂しくなってしまった商店街を盛り返すためにも、事業継承者に補助金を出したり、中小企業の人材確保に向けて給与の1/2以内(限度額8万円)をサポートしたり、経営安定化や人材定着のための取り組みに力を入れているのです。

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「この商工業の施策は事業継承者に限らず新規開業する人も対象です。つまり移住する方が美深町で事業を起こすと、最大24カ月は月額10万円以内(単身者の場合)の援助や賃料・固定資産税などの1/2以内(限度額10万円)の補助金を受けられます。事実、このサポートを活用してチーズ工房や飲食店を開いた方もいるんですよ」

なるほど、起業の初期費用や開業後しばらくのランニングコストが抑えられるという視点から、移住を考えるのもアリ。もちろん、ネット環境や社会インフラは整っているので、場所を選ばないシゴトで事業を起こす場合は、暮らしやすく落ち着いた雰囲気の美深町も十分な候補地になりそうです。

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観光協会は移住者にとっての「最初の友だち」!?

美深町役場とは違ったアプローチから移住促進に力を入れているのが美深町観光協会。しかし、観光と移住とはまったくの別ジャンルに思えますが...?そんな疑問に答えてくれたのが事務局長の小栗卓さんです。

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「美深町には『チョウザメ館』や『トロッコ王国』、『函岳』などいくつか観光スポットはありますが、例えば富良野に比べると観光客の数は圧倒的に少ないのが現状です。なので、僕らの主な仕事である観光案内は、未来の移住者になるかもしれない人との貴重なファーストコンタクトだと考えるようになりました」

観光協会が事務所を構える場所はJR美深駅内。旅行者も町民も集まりやすく、観光をきっかけに移住のことやまちの様子を伝えるには好都合です。スタッフの皆さんは、一人あたりと接する時間を増やし、訪れた人と深い人間関係を築くように心がけています。

「僕らの本業は観光PRですが、移住の窓口としても責任を持ってお付き合いして、『まちの最初の友だち』になりたいんです。美深には不動産会社がないので、物件情報を耳にしたら住む場所をご紹介しますし、もし町内でお店を開きたいという方には契約書づくりもアドバイスします(笑)」

さらに、小栗さんは美深だけにとどまらず、道北エリアにスポットを当てる取り組みにも中心的に携わっています。その一つが「道北クラフト&プレイ」を合い言葉にアウトドア情報を発信する「BASIS(ベイシス)」。道北着地型観光プロモーション推進協議会が進めるプロジェクトです。

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「美深に限らず、道北は目立った観光地が少ないがゆえに手つかずの自然が残っています。はっきりいうとアクティビティを楽しむというよりも、険しささえ感じられる未開の地です。だからこそ、天塩川では人工の障がい物がなく約160kmをカヌーで川下りできたり、朱鞠内湖で釣り竿を片手に幻といわれるイトウと格闘したり、コアなアウトドアファンを魅了するポテンシャルにあふれています。これって、道内外だけでなく世界的にも自慢できるフィールドたと思うんです」

最近では、シンプルな板でサーフィンのように雪の上を滑るアイテム「スノートイ(雪板)」の人気が高まり、アウトドアビギナーも集まるようになってきたのだとか。今は「道北といえばアウトドア」を周知している段階ですが、それが根づいていけばマニアックなアウトドアファンが暮らすエリアとしても期待が持てそうです。

美深町役場
美深町役場
住所

北海道中川郡美深町字西町18番地

電話

01656-2-1611

URL

http://www.town.bifuka.hokkaido.jp/

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美深町観光協会

北海道中川郡美深町字開運町 交通ターミナル内

01656-9-2470

http://www.bifuka-kankou.com/


「起業」を移住提案の軸に、「アウトドア」を道北の価値に。

この記事は2017年8月22日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。