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まちおこしレポート
美唄市

地域おこし協力隊がつくった美唄の食材をPRするカフェ20171004

この記事は2017年10月4日に公開した情報です。

地域おこし協力隊がつくった美唄の食材をPRするカフェ

人と人との縁が作った、あったかいカフェ

『あったかい』『食卓』『ほっとする』...。そんな願いが込められた真新しいカフェ「カフェ ストウブ」が、2017年北海道美唄市に誕生しました。

国道12号線に沿って広がるとても大きな市のため、その平坦な土地を生かして農業も工業も盛んなまちです。北海道内でも主要な道路である国道に市街地が面していることから、国道沿いには多くのお店が立ち並んでいます。

しかしストウブがあるのはその国道から外れ、住宅街を横切り、少し開けた場所に放牧される羊たちが見えたその何もない平地の真ん中に立っています。

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行き交う車の中には停車して羊の写真を撮っている人の姿もあるほど、閑静な住宅街の一角ののどかな景色です。

ストウブはその名前の由来にもある通り、石窯(Stone Oven)を使って焼くパンが人気のベーカリーカフェ。おいしいパンのテイクアウトはもちろん、そんなパンにぴったりな地元美唄の食材を使った食事、そして近隣の空知産のワインも楽しめる、美唄を丸ごと味覚で楽しむことができるカフェです。

そんなストウブを営業されているのが石井さんご夫婦。石井賢(すぐる)さんと由佳さんです。賢さんは、美唄市の地域おこし協力隊でもあります。

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そして可愛い双子のお子さんたちも時折お店番をしていますよ。

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2017年1月にまずはパンの販売を開始し、同年4月には店内にカフェスペースもオープン。取材日はまだオープンして数カ月しか経っておらず、さらにこの日は定休日だったにも関わらず、お休みと知らずにパンを買いに来るお客さんがいるほど既にファンがいるお店となっています。そんなストウブが生まれたきっかけと軌跡をたどらせてもらいましょう。

「キーパーソン」との運命の出会い

ストウブは一軒家のベーカリーカフェで、石井さんが営業をしているため「石井さんのお店」と思われるかもしれませんが、経営をしているのは株式会社アセンブリという会社。この会社は美唄市内の農家2軒と食品会社1軒、そして今回大きなキーパーソンとなる美唄市の西川農場合計4社が共同で作った会社です。


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石井さんと西川さんの出会いのお話の前に、西川農場についても少しお話しましょう。

西川農場では「アスパラひつじ」と「北海道地鶏」を育てている農場です。この話のキーポイントとなる「アスパラひつじ」。アスパラを食べて育つからこう呼ぶそう。昔、西川農場の近所の農家さんがアスパラの出荷できない根本部分を「餌の足しにならないかい?」と持ってきてくれたことが一番のきっかけでした。

こうしてアスパラを食べて育った羊のおいしさに驚いた西川さん。実際検査をしてみるとお肉に含まれるアミノ酸の量が通常よりも高く、甘みや旨みが上がると同時に臭みが無くなっていたそうです。こうして美味しい「アスパラひつじ」が誕生し、西川農場としての第一歩となりました。

その後、「美唄のおいしい食材を美唄で味わえるようにしたい」という想いを持っていた西川さんは美唄市役所に相談をしながらその夢を叶えるために模索を始めたのでした。

整体師の道からカフェの道へ

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一方、ストウブのシェフを務める石井さんは1986年、東京都で生まれその後三重県で育ちました。スポーツ推薦で東京の大学へ進学、就職も整体師の仕事が決まっていました。

しかし実家のお母さまがカフェを開業していたことから、カフェを手伝いたいという気持ちが強くなった石井さん。もともと料理や「ものを作る」ということが好きだった石井さんは整体師の道を捨て大手のパン屋さんに就職を決めたのです。

そこで基礎を勉強した石井さんは、より実践的な仕事を求めてイタリアンも提供しているベーカリーカフェにステップアップのため転職。店長代理を務めるほど信頼を得たスタッフとなっていきました。そのカフェでは前職の一般的なパンとは違い、ハード系のパンを作っていたため、その作り方を学ぶと同時に調理の腕も磨いてきました。

そのベーカリーカフェで同僚だった由佳さんと出会い結婚。もともと由佳さんが北海道札幌市の出身ということもあり、お子さんができたことで由佳さんの実家のある北海道への移住を決めました。働いていたベーカリーカフェに退職の意思を伝え、惜しまれつつも移住の準備を進めていったのです。

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「札幌でレストランをメインに就職を探していたのですが、チェーン店のようなところが多くてあまり良いお店を見つけられなかったんですよね。僕は野菜も好きなので農家でもいいなぁと思っていたんですが、それも見つからなくて」と札幌での仕事を決めかねていたと言います。

そんな時、1つの出会いがありました。2015年の夏のことです。西川農場の西川さんは東京にいる美唄出身の方からの紹介で東京の飲食店にアスパラひつじの営業で訪れます。そこはイタリアンも提供するベーカリーカフェ、そう石井さんの勤めているカフェでした。

「美唄の食材で作った料理を美唄で食べられる場を作りたい」という想いを持っていた西川さんはついに「作ることができる人」に出会ったのです。初めて出会った石井さんに「美唄に来ないか」と声をかけ、就職先を決めかねていた石井さんもまたその環境に惹かれ美唄への移住を決心。同年10月に挨拶のため美唄へ赴き、初めて美唄へと足を踏み入れることとなりました。

奇跡の出会い、北海道移住への軌跡

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石井さん夫妻が移住の準備を進めている一方で、西川さんはかねてより美唄市役所に相談をしていた話を本格始動するために動き出します。

それは、「食でまちの魅力を発信する」という想いに共感した市役所が提示した協力体制は「地域おこし協力隊として石井さんを雇用し、まちおこし会社である(株)アセンブリへ出向してもらう」という支援方法でした。

こうして「地元産の食材を地元で提供できる場を作りたいという想いを持つ人」と「北海道に移住して調理の仕事をしていきたい人」と「まちおこしを支援したい行政」という3者が西川さんをきっかけにクロスし、ここにカフェストウブが生まれることとなったのです。

cafestoven2.jpg目印は道路に面しているこの看板

地域おこし協力隊としてカフェをオープン

2016年4月、地元産の食材を地元で提供できる場をつくるというミッションを与えられ、美唄市地域おこし協力隊に着任した石井さん。


さっそくカフェのオープンに向けた準備が始まり、地域おこし協力隊としてイベントの手伝いをしたり、(株)アセンブリへの出向として農場で羊の世話をする傍ら、道内の有名なパン屋さんを食べて歩きました。

その中で同じ空知管内にあるパン屋さんのパンに感銘を受けます。そこのパンの焼き方が、石窯焼きだったのです。

cafestoven13.jpg店内は広々と開放的。窓からは羊の群れを見ることが出来ます。

通常のオーブンで焼いた場合、パンは表面から順番に焼けていきます。そのため外側から順番に水分が蒸発していき、外側は固く内側は水分が残りしっとりとします。一方、石窯で焼くパンは遠赤外線で焼くため水分の蒸発の仕方が均一でもっちりとした焼き上がりになるそうです。もちろん人の好みは様々ですが、石井さんは「この石窯パンが最高においしい!」と感じ、ストウブでも石窯を使いたいと思うようになりました。

そんな石井さんの希望を、西川さんは受け入れてくれました。
さらになんと、西川さんはもともとピザ用の石窯を持っておりパンを焼く練習用にと使わせてくれたのです。石井さんはパンを焼く基礎はあったものの、今までの電気窯と勝手の違う焼き方や火加減をマスターすべく特訓し始めます。

石窯は薪を使って窯の温度を上げ、その余熱でパンを焼くというスタイル。2日前に仕込みをしパンを焼くのは当日の日付が変わってすぐの深夜の1時半から。窯の温度が上がるまでに時間がかかるため仕込みや焼くタイミング・数量などをはかることは簡単ではありません。しかし石井さんはそれでも自分の感動した石窯パンにこだわりました。

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一方でその石窯を設置するカフェの建物の準備も始まります。資金の準備が間に合わずオープン予定は先延ばしになってしまいましたが、資金をできるだけ抑えるために活躍したのはやはり西川さんでした。

ストウブの内装はシンプルながら洗練されたオシャレな雰囲気なのですが、カウンター周りをはじめ、多くの部分が西川さんのDIYによるもの。さらにストウブのホームページも、これも西川さんが作ったというのですから本当に多才な方です。

こうして2016年11月にようやく整地が始まったストウブは翌年2017年の1月にオープンしたのでした。

これからのストウブ

1月にオープンした当初はテーブル席は無くテイクアウトだけのパン屋さんで、最初はとにかく「ストウブのパンのおいしさを知ってもらいたい」という気持ちだったそうです。


cafestoven6.jpgお店の前で家族4人でパシャリ。いい笑顔!

4月には念願のテーブル席ができたことでベーカリーカフェとしてのストウブが始まりました。

石井さんは「美唄のおいしいものを美唄で食べられる場所」をストウブで叶えるため、美唄産のおいしい食材を確保に動きました。アンテナショップ「PiPa」では農家さんが直接持ってきた野菜が並んでいるのですが、地域おこし協力隊の繋がりを生かしておいしいと思った野菜を生産している農家さんを紹介してもらい、直接買い付けを実現させました。

こうして最高においしい美唄の食材と、こだわりぬいたパンで作るサンドはまさに「美唄のおいしい物を美唄で味わう」ことのできる逸品です。

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「今も確かに買いに来てくれる方はいらっしゃいます。でも、まだまだここで食事をしていってくれるお客さんは少ないと感じています。ベーカリーカフェというものがまだ定着していないのかなと思っていて、今後はもっとカフェを利用してもらえるようになっていけたらいいなぁと思います」と語る石井さん。

今後は移住者同士の交流会をストウブで開催したり、もっと空知産のワインも一緒に楽しんでもらえるようにしていきたいそうです。

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石井さんの地域おこし協力隊の任期は2019年3月末まで。それまでにストウブの経営を安定させ、任期が終わってからもストウブが長く愛され続けるお店であるようにしていかなければなりません。

この美唄というまちでは、まちの中に強い想いを持つキーパーソンがいて、夢を叶えたい「ヨソモノ」と様々な縁で出会い、自治体はそれを応援するという町おこしの理想的な形が自然と成り立ちました。きっとそんな美唄にはこれからもたくさんの夢を持った人が集まり、ストウブは美唄と空知のおいしい食の数々で、そんな人々を暖かく迎える大切な場所になっていくに違いありません。

cafestoven16.jpg「カフェストウブには明るく温かい未来が待ってるど〜」

カフェストウブ(STOVEN)
住所

北海道美唄市西5条北5丁目5-5

電話

0126-35-4077

URL

http://stoven.cafe

◎営業時間/10:00〜18:00

◎定休日/水・木曜日

ストウブのFacebookも随時更新中


地域おこし協力隊がつくった美唄の食材をPRするカフェ

この記事は2017年8月10日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。