私たちは、「森の魅力発信し隊」という若手林業・木材産業従事者を中心とした仲間を集い、日々情報交換をして盛り上がっています。そんな私たちの活動の一部をご紹介します!
今回は、「広葉樹の有効活用」というテーマで、森の魅力発信し隊のメンバーが北海道富良野市に集い、セミナーが開催されましたので、その様子をレポートいたします!
広葉樹と針葉樹?
まず、レポートに移る前に、そもそも「広葉樹」ってなんだ?というところを簡単に触れたいと思います。
日本の森林にある樹種を大きく2つに分類すると、今回のテーマである「広葉樹」ともう一つの「針葉樹」に分けられます。
広葉樹は、北海道では代表する樹種として、ミズナラ、イタヤカエデといったものがあり、ひらたくて幅の広い葉を持つ樹木です。用途として、家具材などに使われることが多い樹種です。
針葉樹は、北海道では代表する樹種としてトドマツ、カラマツ、エゾマツといったものがあり、針のように細く尖った葉を持つ樹木です。用途として、柱などの建築用材などに使われることが多い樹種です。
今回のテーマにある広葉樹は、一般的に成長が遅く、人工林(木材生産を目的として人の手で育てる森林)として育てることは少なく、樹齢を重ねて色や木目が特に優れた希少な木材は「銘木」と呼ばれ、高額で取引されることもあります。
そんな希少な広葉樹を学ぼう!ということで開催されたのが、今回のセミナーなのです!
ということで、さっそくセミナー&森の魅力発信し隊メンバーの様子をお伝えしていきます!
東京大学北海道演習林へ!
セミナーが開催されたのは、北海道富良野市にある東京大学北海道演習林(以下、東大演習林)。ここでは、天然林の管理を行い、関連するさまざまな研究課題に取り組んでいます。この天然林の中には、銘木と呼ばれる広葉樹も多く存在し、それらを1本1本管理しています。旭川市で開催される「銘木市」にも毎年継続的に価値のある広葉樹を出品しており、これまでの最高値は2022年に出品したウダイカンバの丸太で、なんと770万円(長さ11.2m、末口直径60cm)で落札されたそうです!
セミナーには森の魅力発信し隊から11名の隊員が全道各地から集まりました。はじめに、本日のセミナー講師、東大演習林の技術主任 松井理生さん、企画調整係 井口和信さん、土木生産係技術専門職員 井上崇さんの3人から、東大演習林全体の活動についてお話を聞いた後、さっそく演習林に移動して、現場での広葉樹の観察がスタートしました。
優良木の見極めかたとは!?
現場に移動すると隊員たちからは「太くて立派な木が多いなー!」と声が挙がります。
東大演習林では、特に高い価値が認められる広葉樹を、広葉樹優良木登録個体(通称、赤丸)として管理しており、現在約2,000個体が登録されています。本日はその登録個体の中から、まもなく伐期が近づいていており、旭川銘木市への出品候補である樹木について、どうして赤丸として管理しているのか、伐期が近い理由などを説明していただきました。
「このマカバは大きな枝が折れてしまっていて、枝枯れが4割くらいと推測します。マカバの良いところは、枯れてからも5年くらいは材質的に劣化することが少ない点で、そこも扱いやすいポイントですね。逆に難しいのはミズナラで、樹勢が良い状態の時でも中は腐っているケースがあったりします。なので最近では、まだ葉がついた状態のミズナラでも伐倒する例もあります」
こう話してくださったのは、井口さん。赤丸の樹木は、最終的に現地検討会という各担当者複数名による意見交換の上で、伐倒するかどうかの決定が下されるという、管理が徹底されています。
「伐倒の際に気をつけていることはありますか?」
ここで隊員から講師の皆さんへ質問も飛び出しました。井上さんがこう答えてくれました。
「伐倒時に割れてしまうなど、木材としての価値が下がらないように気をつけて伐倒する必要があります。倒した方向の笹藪の中に切り株があって、それにぶつかって割れてしまうこともあるので、伐倒方向には気を使っています」
他にも「この木の状態は伐倒するか?」「どうやって立木から中の状態を推測するのか?」など、たくさんの質問も飛び交い、隊員のみなさん、メモを取ったり、写真を撮影したりと、とても熱心に講師の皆さんの説明に耳を傾けていました。
隊員同士による議論も
このように演習林の中の赤丸の樹木を見ながら、それぞれの状態についてなど説明を受けていく中、隊員同士でこんなやり取りがありました。とあるミズナラの伐倒方向についてです。
「これを倒す時は、重心の方向には別の赤丸の樹木があるので、やっぱり反対側に倒しますか?」
「いやこれは反対には無理でしょー!」
「こっちなら枝が他の樹木にかかっちゃうよね」
などと、全員樹木の真下から上を見上げて、伐倒方向をそれぞれの観点で議論していました。隊員の皆さんは、それぞれの事業体で担当している業務や、伐倒に使用する機材も異なります。そんな隊員同士、垣根を越えた議論はとても興味深く、面白いものでした。
こうして、合計7本の樹木を見てまわり、演習林内でのセミナーは終了しました。
今回のセミナーを終えてみて、隊員の感想
最後に、演習林から戻ってきた後、隊員それぞれから本日の感想が述べられましたので、ご紹介いたします。
最後には講師と隊員の皆さんで記念撮影!
■(有)丹羽林業/丹羽智大さん
普段作業している厚真町にはなかなかこんな太い木はないのですが、非常に参考になりました。
■北海道大学北方生物園フィールド科学センター/高橋悠河さん
以前、北森カレッジに在籍していた際にも一度見学させていただいたのですが、その時とはまた違った視点で勉強させていただきました。
■長尾工業(株)/平川晃教さん
普段入っている山と景色自体はそんなに変わらないと思ったんですが、樹種や太さが全然違ったので、とても丁寧に管理されているのが印象に残りました。
■minotake forest works/鈴木勇一さん
これから天然林の間伐などメインでやっていくので、今日のテーマはこれからの作業にもとても役立つものでした。
■(有)高野林業/高野哲臣さん
普段は節があるからここは外そうなどと、何気なく玉切りしていることもありましたが、次からはまた違った視点で見ることができるかなと思います。
■(株)イワクラ/鎌田和希さん
例えばハーベスタに乗っている方とそうでない方など、隊員の方々それぞれ異なる立場の考え方などを、こうした場で一度に聞けたのが自分の中で今後にすごい活かせると思います。
■和寒町森林組合/佐藤大樹さん
あんなに太い木であっても、中の状態が腐っているなど、状態によって全然価値が変わることが勉強になりました。これから自分も気をつけて見ていきたいなと感じました。
■(株)TOP FOREST/斎藤琢磨さん
ただ太いだけの木ならたくさんあるんですけど、その中でも良い木、銘木になるような木の見極め方など勉強になりました。
■なかそらち森林組合/富樫智明さん
森に入って一番感じたことは道幅が広いな〜ということ。あと、1本の木を倒すか判断する時に、何人もで話し合って決めるところは私たちにはないところだったので、勉強になりました。
■なかそらち森林組合/藤田悠介さん
はじめて東大演習林を拝見させていただき、割と平坦な場所だなという印象と、植生もきちんと管理されていて歩きやすく、良い環境だなと思いました。
最後に、森の魅力発信し隊の事務局である、北海道庁林業木材課/成田雅哉さんがこのように締めて、セミナーの全行程を終えたのでした。
北海道庁林業木材課/成田雅哉さん
「人工林を対象とした森林整備が主流である中、広葉樹の価値や有効活用方法などについても知っていただき、広葉樹を活かした森林施業を進めていけたらと思い、今回のセミナーを企画しました。全道各地から事業体や立場の異なる隊員がこのように集まり、意見交換やコミュニケーションを取れたことが本当に良かったと感じています」
- 森の魅力発信し隊