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「森の魅力発信し隊」便り
北海道

vol.5「第1回オンラインセミナーをレポート!!」20211027

この記事は2021年10月27日に公開した情報です。

vol.5「第1回オンラインセミナーをレポート!!」

私たちは、「森の魅力発信し隊」という若手林業・木材産業従事者を中心とした仲間を集い、日々情報交換をして盛り上がっています。そんな私たちの会話の一部をご紹介!

今回は「森の魅力発信し隊」として初めての試みである、オンラインセミナーが開催されましたので、その様子をレポートいたします!セミナーのメインテーマは最近ニュースでも取り上げられることが多い「ウッドショック」。講師の方にお話を聞かせていただき、その後、隊員を含めて意見交換会という内容でした。

この日、森の魅力発信し隊からは11名が参加。
司会進行は、北海道水産林務部林務局林業木材課担い手育成係 成田雅哉さん、そして、くらしごと編集部より土谷涼平が務めました。

それでは、実際のセミナーの様子を見てみましょう!

北海道におけるウッドショックの影響について

今回のセミナー講師は、木材青壮年団体連合会 常任幹事/昭和木材株式会社 常務取締役 髙橋謙太郎さん。昭和木材は大正2年創業、旭川市を拠点として木材の販売や木製家具の製造、木造住宅の設計・建築など多岐にわたる事業を100年以上続けている会社です。
はじめに、髙橋さんより、「北海道におけるウッドショックの影響について」というテーマで、2021年9月現在、どのような影響が及んでいるのかについてお話いただきました。

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そもそも、ウッドショックとは、「木材の需給バランスが著しく崩れたことにより、木材価格の高騰と供給不足が発生し、その影響が世界中に広がり、混乱が生じている状況」という説明からはじまり、その主な要因として「生産量の減少」「住宅需要の急増」「輸送コンテナ不足」の3つが考えられるとのことでした。さらに「コロナ禍という特殊な状況下で発生したことにより、本来働くはずの様々な調整機能が働かず、木材供給に対し海外依存度の強い日本への影響は大きい」と教えてくださいました。

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この影響により、日本の木造住宅における原料で多い輸入材の価格が25~50%増、さらに供給量も不足することで、結果として建築産業が最も影響を受けるといいます。この状況が続くと、比例して住宅1棟の木材費も底上げされ、住宅価格も上がることが予想されます。
しかし、一般消費者がこのウッドショックの影響を感じることは少ないように見受けられますが、それはどうしてなのでしょうか?
髙橋さんがつづけてこう話します。

「木材は伐採、製材、乾燥と生産工程に最低でも3カ月程の期間を要します。さらに輸入材となると入荷に2カ月程かかり、それらの木材が使われる住宅建築では、契約から完成まで約6カ月程かかりるため、木材の生産から消費までタイムラグがあるんです。そのため、一般消費者の方への影響は、そこまで感じられていないのかなと思います。しかし、この影響が長引くとダイレクトに影響を被る可能性が非常に高いのです」

コロナ禍における輸入品への影響は木材だけに留まらず、食品原料なども高騰する影響が出ています。確かにこれらは、一般消費者への影響が既に及んでおり、ニュースでも取り上げられることが多いですよね。

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ウッドショックの対策として、国産材を使えば良い?

森林率がおよそ7割という森林大国である日本。輸入木材価格が高騰するのだったら、国産材を使えばいいのでは、そう思われる方も多いのではないでしょうか?
しかし、話はそう簡単ではないと髙橋さんが教えてくれました。

「日本と海外の林産業の在り方自体がそもそも違います。海外は民間が主体であり、消費作物として林業経営がなされています。対して日本は国や都道府県が主体であり、環境保全の側面が中心の林業なのです。さらには林業・木材産業の人材不足という側面も大きいです。つまり、日本では商業としての側面が薄く、需要に合わせた増産・減産はほとんどないため、世界的な変動にすぐに適応する事は困難、というのが私の考えです」

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日本と海外では林業・木材産業の構造が大きく異なることで、単純に国産材の供給を増やすということでのウッドショックの解決は難しいのですね。

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ウッドショックに立ち向かうためには

では、今後はどのようにウッドショックに立ち向かえばよいのでしょうか。
最後に髙橋さんが考える「ウッドショックに立ち向かう強い国づくり」をこう話してくれました。

「現在の構造自体が変わること、変えることが求められていると感じています。そのためには『需要を理解した戦略的な林産業』を目指す必要があると思っています。つまり、今、何が、どれくらい必要かという消費者目線によるアプローチや、フレキシブルな産業と結び付け、双方の利点を活かす新しい試みもポイントだと思います。そのためは、産業としての魅力開拓、さらに広く発信することで、新しい担い手やプレーヤーを増やすことが重要です」

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「ピンチはチャンス」という言葉の通り、このウッドショックという逆境の中、何かを変えることで生き残り、次のステップへ進むことが必要とされているのかもしれません。

よく流通経路を川の流れに例えて川上~川下という表現がされますが、林業・木材産業の業界において、川上とは実際に山の中で素材生産・造林などを行うことを指し、川下とはその素材が加工された後に製品として提供を行うことを指します。髙橋さんはどちらかというと川下側でウッドショックの影響を大きく受けるといいます。逆に、森の魅力発信し隊のメンバーは川上側の方が多く、皆さん、ウッドショックの影響とこれからについて、真剣に興味深く聞き入っていました。

こうして髙橋さんのお話は終了し、つづいて質疑応答&意見交換会へと移りました。その様子も実際のやり取りを交えてレポートいたします!

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質疑応答 & 意見交換会

■北森カレッジ/鎌田和希さん → 昭和木材/髙橋謙太郎さん へ
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    北森カレッジ/鎌田和希さん昭和木材さんは、事務所が中国にあると思いますが、中国のウッドショックの状況も日本と変わらないのでしょうか?
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    昭和木材/髙橋謙太郎さん中国は状況が大分異なりまして、多額の資金を元に、木材の買い集めが起きました。そのため、日本が本来ヨーロッパなどから仕入れをするはずの木材も、中国から買うという動きが起きています。ただ、中国も高騰している木材をたくさん買い集めているので、安く売る訳にはいきません。そのため、たくさん所有しているから強い状況にあるとは言えないと、私は考えています。
  • ■和寒森林組合/佐藤大樹さん → 昭和木材/髙橋謙太郎さん へ
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      和寒森林組合/佐藤大樹さんウッドショックとは少し離れてしまうのですが、林業に携わるようになって6〜7年経ちますが、普段は針葉樹ばかりに触れるため、広葉樹を見てもなかなか樹種などが判断つかないんです。何かアドバイスをいただけたら嬉しいです!
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      昭和木材/髙橋謙太郎さんやっぱり山の作業は針葉樹がメインですよね。しかも広葉樹はたくさん種類ありますしね。私のいる旭川市では林産組合が主体となって、広葉樹の原木の入札市を毎月行っている「銘木市」というものがあります。これは、たくさんの広葉樹を一度に見ることができ、サイズも樹種も掲示されています。広葉樹は数を見ないとなかなか判断ができないので、たくさん見てみてください。
    • ■北海道庁/成田雅哉さん → 和寒森林組合/佐藤大樹さん へ
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        北海道庁/成田雅哉さんウッドショックの影響で山元(山の所有者)への還元は大きくなったと感じますか?森林組合の観点で、佐藤さんいかがでしょうか?
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        和寒森林組合/佐藤大樹さん時間差はありましたが、今は少しずつ値段が上がってきていますね。先ほどの髙橋さんのお話を踏まえると、この先数カ月はこの流れが続くのかなと思っています。
      • ■北森カレッジ/佐藤一樹さん → 昭和木材/髙橋謙太郎さん へ
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          北森カレッジ/佐藤一樹さん先ほどのお話で担い手の話があったと思いますが、木材の値段が上がった際に、就業者へ例えば所得の面での還元は将来的にあるのでしょうか?
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          昭和木材/髙橋謙太郎さんこれはなかなか私が判断できる立場ではないのですが、山元で利益が増加した場合、就業者への還元がある可能性はあると思います。ただ、同時に最終的な消費者の負担も増加することになるため、一般的に考えると消費自体は減少傾向になる可能性もあります。このように、全ては繋がっていくので、一概には判断し辛いのです。当社の話になりますが、担い手確保は非常に重要と捉えていますので、所得面だけでなく、一昔前に比べると働き方や条件は大分変わってきていますね。
        • ■北海道庁/成田雅哉さん → 丹羽林業/丹羽智大さん へ
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            北海道庁/成田雅哉さん厚真町の丹羽さんは「ATSUMA96% PROJECT」にも携わっているかと思いますが、何か川上から川下との連携など考えていることはありますでしょうか?
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            丹羽林業/丹羽智大さん「ATSUMA96% PROJECT」はざっくりいうと、厚真町の川上から川下までのメンバー数名が集まって木工品などの製品を生み出すプロジェクトなんですが、当社でいくと、請負がメインの会社です。そのため、このプロジェクトのように個人間での連携は可能ですが、それ以上となると今は正直難しいのかなと思っています。そういった意味では、社有林を持っていたりする大きな事業体などの方がやりやすいのかもしれないですね。
          • ■丹羽林業/丹羽智大さん → 昭和木材/髙橋謙太郎さん へ
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              丹羽林業/丹羽智大さん私は川上側の人間ということもあって、木材青壮年団体連合会の活動に触れることがほぼないのですが、川上側と一体となって何かやろうとしている展望などあれば教えてください。
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              昭和木材/髙橋謙太郎さん木材青壮年団体連合は、木材産業(主に川下)に携わる⻘壮年経営者や後継者が所属する団体で、相互の啓発と知識の向上を図り、木材に関する社会的な普及啓蒙活動などを行なう組織となります。なんですが、現在は、家具や木工品関連の方が属していたり、木材関連で裾野が広がってきています。もちろんその範囲は、川上の方々へも同じくです。今後は、守備範囲にこだわらず、大きな繋がりで何かを生み出せる組織になってくれたら、その分、力も発揮できるし、新しい人や風が入ってくるのではと期待しています。
            • ■北海道庁/今廣佐和子さん → 昭和木材/髙橋謙太郎さん へ
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                北海道庁/今廣佐和子さん先ほど、セミナーの中で「フレキシブルな産業と結び付き」というお話がありましたが、何か具体的にイメージされている産業や業界はありますでしょうか?
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                昭和木材/髙橋謙太郎さんそうした結び付きを目指したいということではありますが、何か具合的な戦略はこれからという感じです。海外の事例の話でもしましたが、林業を林業としてだけでなく、他の産業の一部としても組み込んでいくと、デメリットだと思っていたことが、メリットになってくるなど、何か変化が起きるのではないかと私は期待しています。私はずっと木材産業の業界にいるので、なかなか他の目線を持つのが難しいのですが、北森カレッジの方たちみたいな新しい目が入ると、きっと変わってくるんじゃないかなと思っています。

              • 他にも質問や雑談があったりと、たくさんのお話が繰り広げられました。
                今回、メインテーマであるウッドショックに関する話題はもちろん、他にも様々な話題で隊員同士の交流が図られ、隊員にとっても実りあるオンラインセミナーになりました。

                次回は、2022年2月頃に開催予定になりますので、お楽しみに~!

森の魅力発信し隊

過去の森の魅力発信し隊便りはこちら


vol.5「第1回オンラインセミナーをレポート!!」

この記事は2021年9月30日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。