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一度は諦めた保育士の夢。叶えた原動力は、子どもが好き!の想い20241003

一度は諦めた保育士の夢。叶えた原動力は、子どもが好き!の想い

大人になっても、ふと幼児期に過ごした場所やそこでの体験を思い出すときは誰にでもあるはず。それが自身の原風景であり、思い出すことで温かい気持ちになれるなんてことも...。そんなとき、一緒に過ごした友だちはもちろん、先生や周りにいた大人たちの顔を思い浮かべる人も多いでしょう。そう考えると幼児期に過ごす環境や関わる人たちがいかに大切かが分かります。そして、日々子どもたちに愛情を注ぎ、成長を見守り関わる保育士や幼稚園教諭の仕事の重要性も分かります。今回は、日高エリアの新ひだか町にある学校法人マーガレット学園におじゃまし、「マーガレット保育園」で保育士として頑張っている井上彩希さんにインタビュー。この仕事を選んだきっかけや仕事のこと、職場のことなどを伺いました。

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町内でも歴史のある学校法人が運営する「マーガレット保育園」

新ひだか町には町立、民間を含め、10の保育施設、幼稚園があります。そのうち、学校法人マーガレット学園が運営する「マーガレット保育園」「認定こども園マーガレット幼稚園」は、同じ建物内に2つの園が一緒に入っています。法人自体は昭和37年に設立され、地域の子どもたちの健やかな成長を願い幼稚園を立ち上げたそう。設立から60年近く、静内エリアを中心に地域の子どもたちの成長を見守ってきた歴史ある法人です。

約15年前に建て替えられたという園舎は、広々開放的でとてもキレイ。ロビー付近は天井も高く、暖かな日差しがたっぷり差し込んでいます。子どもたちが過ごす奥のほうの部屋からは、子どもたちの元気な声が聞こえてきます。

sinhidaka_magaretto00009.jpg奥が幼稚園舎、手前は保育園。2つの施設が一箇所に。

今回インタビューに応じてくれる井上彩希さんは、マーガレット保育園の保育士。地元出身で、実はマーガレット幼稚園の卒園生でもあります。そして、現在マーガレット保育園の園長を務めている岩佐志帆さんはその頃の幼稚園の先生だったそう。

「園長は当時担任ではなかったのですが、いつもニコニコ笑顔で声をかけてくれる先生でした」と井上さんが話すと、「彩希先生も小さいときからとってもかわいらしい女の子で...」と岩佐園長が続けます。「案外覚えているものなのですね」と尋ねると、「優しくしてもらった記憶とか、楽しかったことって覚えていますね」と井上さん。岩佐園長も「関わった子どもたちのことは覚えているんですよね」と話します。

sinhidaka_magaretto00040.jpgこちらが、保育士の井上彩希先生。こどもが大好き!

一度は諦めた保育士の夢。「やっぱり叶えたい」と働きながら資格を取得

井上さんはマーガレット保育園に勤務して5年目。現在は2歳児のパンダ組25名の子どもたちを担任3人と補助の職員とで見ています。

「子どものころから、自分より小さい子どもたちと遊ぶのが大好きで、中学生くらいから将来は保育士か幼稚園の先生になりたいと思っていました」

井上さんは4人兄弟の末っ子で、上3人はすべて兄。兄たちと一緒に遊び回る元気な女の子だったそう。地元の高校を卒業後、保育の専門学校へ進むか、就職するか迷いましたが、就職を選択。別の保育園の補助職員として働き始めます。その後、学校の事務職の仕事に就きますが、心のどこかで保育士になりたいという思いを断ち切れずにいました。

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「やっぱり保育士になりたいなと思っていたとき、ちょうど園長先生からスカウトされまして(笑)、最初は補助職員としてここで働き始めました」

保育士になりたいらしいと知り合い伝手に聞きつけた岩佐園長が、井上さんに連絡をしたそう。声をかけてもらい、「じゃあ今度こそ」と働きながら保育士の資格取得を目指すことにします。短大や専門学校など指定保育士養成施設で学ぶと、卒業と同時に保育士の資格が得られますが、指定養成施設以外の学校へ進学した人や井上さんのような社会人が保育士試験を受験するには、保育園など児童福祉施設での2年以上の実務経験が必要になります。井上さんは受験資格を得るため、日々保育園で仕事をしながら、筆記試験に向けて独学で勉強に打ち込みました。

sinhidaka_magaretto00017.jpg時を経て、当時の幼稚園の先生(岩佐園長/右)と一緒に働くことに。

「家に帰ってからテキストを開いて勉強をするんですけど、肉体的に疲労困憊の日もあって...。何度かくじけそうになったこともありましたが、毎日子どもたちと会うたびに、やっぱり保育士になって子どもたちと過ごしたいから頑張ろう!という気持ちになれて、なんとか勉強を続けることができました。現場で子どもたちと日常的に接していたので、座学で学んでいることと現場のことがリンクして、それも良かったかなと思います」

同園には、働きながら幼稚園教諭の資格を取得した先生もいるそう。岩佐園長も「若い先生たちが頑張っている姿を見ていると、私たちベテランもアップデートしていかなければと刺激をもらいます」と話します。

子どもたちの声に耳を傾け、寄り添うことを大事にしながら保育に取り組む

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筆記と実技の試験をクリアし、無事保育士の資格を取得した井上さん。「資格を取ったことで、担任として子どもたちを見られるようになったのがうれしい」と話します。

仕事をしていてやりがいを感じるとき、この仕事に就いてよかったなと思うときについて尋ねると、「とにかく子どもたちと関わっている時間が楽しくて仕方がない」ととびきりの笑顔。外遊びなどで子どもたちと一緒に思いっきり走って遊び、体力を使い過ぎてヘトヘトになることもあると笑いますが、子どもたちから「先生、大好き」と言われると、「本当に幸せだなぁって思います」と嬉しそうな表情で話します。

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「柔らかい雰囲気で、いつもニコニコしている彩希先生は、子どもたちにとっても人気があるんですよ。そして、保護者の皆さんからも評判がいいんです」と岩佐園長。子どもたちが井上さんのところに自然と集まってくるそう。「彩希先生は若いのに気持ちの浮き沈みもなく、子どもたちも常に安心できると感じているのかも」と続けます。

井上さんに普段から仕事中に心がけていることや気を付けていることを聞くと、「子どもたちが不安を感じないよう、平常心、自然体でいるようにしています。それから常に子どもたちに寄り添うことを意識しています」と話します。子どもたちの声に耳を傾け、思いをくみ取るようにしているそう。そんな井上さんの優しさも子どもたちにはしっかり通じているのかもしれません。

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また、体調管理にはとても気を付けていると話す井上さん。岩佐園長は「確かに健康には気を使っているようで、彩希先生が病気でお休みすることはまずありませんし、具合が悪いと言うのを聞いたことがないです。本当にプロ意識が高く、素晴らしいと思います。ただ、上司としてはもうちょっと有給休暇は取ってもらいたいんですけど...」と言いますが、「仕事が好きなもので...」と井上さんは照れくさそうに笑います。

職場には若手からベテランまで幅広い年代の保育士や幼稚園教諭が在籍。「風通しが良く、先輩たちはみんな優しくて、分からないことはすぐに教えてくれるし、困ったことがあったら気さくに相談に乗ってくれます」と井上さん。実際、撮影中もほかの先生たちがとても協力的で、子どもたちと一緒の撮影もスムーズに行うことができました(子どもたちもみんな協力的でした!)。そんなシーンからも普段からのコミュニケーションがしっかり取れていることが伝わってきます。

sinhidaka_magaretto00039.jpg先生それぞれに違うエプロンもかわいいです。

生まれ育った大好きな町で、好きな保育士の仕事ができる喜び

高校卒業後も町に残った井上さん、「同級生は町を離れたりしていますが、私はやっぱりこの町が好きなので...」と話します。「そういう意味では、好きな町で好きな仕事に就けるのはありがたいですね」と続けます。

休みの日には、町外に出た友達と会ったり、ドライブをしたりしてリフレッシュをしているそう。近場の温泉に行ったり、おいしいものを食べに行ったりもすると言います。

「住み慣れているというのもありますけど、新ひだかの町は都会と違ってゴミゴミしていないし、身近に自然もありますし、私にとって居心地のいい町。買い物をするところや食事をする場所もひと通り揃っていて日常生活に不自由はないし、規模的にもちょうど暮らしやすいと思います」

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井上さんの兄弟も町に残っていて、そのうち2番目の兄は町内の別の幼稚園で先生をしているそう(ちなみに井上さんのお父さんは中学校の先生)。そして、マーガレット幼稚園、保育園には、井上さんの兄弟の子どもたち、つまり姪っ子や甥っ子も通っています。その数、なんと8人。「園で会うと、みんな寄ってきてくれます」と笑います。

毎日新しい発見が。子どもたちの成長や笑顔をそばで見られるのがうれしい

とにかく今は毎日保育園で子どもたちと過ごすのが楽しいと話す井上さん。「子どもたちといると日々変化があって、毎日違うから、面白いんです。今担当している2歳児は、会話もいろいろできるのでそのおしゃべりも楽しいし、子どもたちから教えられることもたくさんあって、毎日発見があります」と語ります。

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そんな井上さんですが、ちょっぴり苦手なこともあるそう。「実はすごく緊張するタイプで、大勢の前で話すのが苦手なんです。行事があるときの司会などを任されることもあるのですが緊張でガチガチに...。これからそういったところを克服していけるよう頑張りたいです」と話します。

マーガレット保育園で預かることができるのは2歳児まで。3歳になると、ほとんどの子が同じ建物の幼稚園へ移ります。保育園勤務の保育士である井上さんは、幼稚園の子どもたちの担任になることはできませんが、2歳まで見ていた子どもたちが廊下やホールで会うと「彩希先生!」と声をかけてくれたり、「こんなことがあったよ」「あんなことがあったよ」と話をしてくれたり、同じ園舎で子どもたちの成長を見られるのもうれしいと言います。

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「そういう姿を見ていると、卒園まで見届けたいという気持ちが湧いてきて、幼稚園教諭の資格も頑張って取ろうかなと思いますね。働きながら資格を取った先輩もいますし、前向きに検討してみようかな」と最後に笑顔で語ってくれました。井上さんがそうだったように、いつか井上さんが園で受け持った子どもたちの中から、井上さんの背中を見て、保育園や幼稚園で働きたいと思う人が現れるかもしれません。

ホールで帰る支度をし、「先生、バイバーイ」と手を振る子どもたちはみんなイキイキしていました。迎えに来たお母さんたちに「今日ね、今日ね」と、園で過ごしたことを楽しそうに報告しています。子どもたちをそんな笑顔にするマーガレット学園の先生たちはスゴイ。町の未来を担う子どもたちを育む仕事は尊いとあらためて思いました。

学校法人マーガレット学園
学校法人マーガレット学園 
住所

北海道日高郡新ひだか町静内御幸町6丁目2番26号

電話

0146-42-0737

URL

https://www.margaret.ed.jp/

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一度は諦めた保育士の夢。叶えた原動力は、子どもが好き!の想い

この記事は2024年9月19日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。