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花屋の仕事に誇りを持って取り組む女性。通いたくなる小さな生花店20240716

花屋の仕事に誇りを持って取り組む女性。通いたくなる小さな生花店

皆さんは行きつけのお店、いくつありますか。店員さんと顔なじみで、あなたの好みまで分かってくれているようなお店。飲食店なら何軒かあるよという人も多いかもしれませんが、「お花屋さん」だったらどうでしょう? 今回、取材させていただいた留萌市の生花店「花日々」は、毎週のようにお花を買いに行きたくなる、行きつけにしたくなるようなお店。小さな店には、次から次へとお客さんが訪れ、いかに地域の人たちに愛されている「町のお花屋さん」であるかが分かります。

花が好きだったわけではないところからのスタート。23年を経て独立

留萌市内に5つある商店街のうち、「神社下商店街」と呼ばれるところにあるのが「花日々」。ここを切り盛りしているのは、生まれも育ちも留萌市という小美川(おみかわ)友美さんです。

rumoi_hanahibi00068.jpgこちらが、花日々の店主、小美川友美さんです

20代前半まで自由気ままにアルバイト生活をしていた小美川さん。ずっとこんな働き方をしてはいられないと考え、留萌に戻り、「昼間の仕事で正社員」という条件で仕事を探します。

「ハローワークでたまたま生花店の募集を見つけ、花が好きという訳ではなかったのですが、とりあえず働いてみることにしたのが最初です」

そこは、当時市内に数店舗あった生花店の中でも、人気があり、とにかく忙しい店でした。「仕事は見て覚えなさい」「聞く前にまず見なさい」と、初日から厳しく叱られたそう。

「心が折れそうになりましたけど、自分の中にある負けず嫌いな部分に火がついてしまって(笑)、必死になって仕事を覚えました」

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懸命に仕事をこなしていくうちに、先を読みながら仕事ができるようになり、気が付けば店を任される店長になっていました。働いている間に花に関する知識はどんどん増え、アレンジメントなどのセンスも磨かれていきました。

「厳しくも仕事のいろはを全部教えてくれた社長の奥さんが亡くなり、自分自身も一度リセットしようと思い、23年間働かせてもらったんですが辞めることにしました」

辞めた後、よく店に来ていたお客さんたちに「お世話になりました」とお礼の挨拶にいくと、「いなくなられたら困る」「これからどうすればいいの」と想像もしていなかった反応が返ってきたそう。中には涙を流すお客さんまでいました。

「そんなに親しくしていたわけではない方からもそんな風に言われて、こんなに慕ってくれるお客さまがたくさんいたなんてと正直驚きました。実は、辞めた後のことは何も考えていなかったのですが、どこかに就職するにしても、まったく初めてのことをゼロからやるより、経験のあることをやったほうがいいのかなと思い、独立することにしました」

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買い付けに行っていた旭川の花卉市場の人たちや、仕事を通じて繋がりができた人たちとの横の繋がりをなくしたくないという気持ちもあり、2019年5月に生花店「花日々」を立ち上げます。45歳のときでした。

看板犬の咲ちゃんとスタートした小さな生花店「花日々」

地域に密着した店にしたいと考えていた小美川さん。お客さんからも分かりやすい店名にしてねと言われていたこともあり、「花日々」という店名にしたそう。

実は物件を探すのにはひと苦労しました。空いている店舗であっても、貸してもらえないなど、なかなか条件の合う物件には出合えずにいましたが、たまたまここが空いていると知人に聞き、大家さんに直接交渉して何とか借りられることに。

「ここはもともとクレープ屋さんだった店舗で、自分が1人で回すにはちょうどいいサイズだと思ってここに決めました。知り合いの大工さんに大急ぎで必要最低限のところだけ直してもらい、バタバタと1カ月でオープンにこぎつけました」

rumoi_hanahibi00091.jpgお客様のリクエストどおり、わかりやすい店名に。花のある日々。

店には、オープンのときに小美川さんが飼い始めた看板犬がいます。ジャック・ラッセル・テリアのメスで、花が咲くの「咲(さく)ちゃん」と言います。とてもおとなしく、人懐っこい咲ちゃんはお客さんたちにも大人気です。

咲ちゃんと小美川さんの1匹と1人で始まった「花日々」ですが、扱っている花の質の高さ、小美川さんのセンスや対応力が評判となり、1人で回すには大変な状況に。

「嬉しい悲鳴ですよね。仕入れも水あげも1人でやって、さらに配達もしていたので、店を空けるとその間に寄ってくださったお客さまに迷惑がかかるし...。2年間、1人でやっていましたが、さすがに忙しすぎて以前の職場で一緒に働いていたスタッフに来てもらうことにしました」

rumoi_hanahibi00060.jpg看板犬の咲ちゃんが、いつでもよりそってくれます

花を見る目が肥えている留萌の人たちに納得してもられるものを提供

「留萌は花の需要が高い地域だと思う」と小美川さん。母の日や誕生日などのイベントごと以外でも、仏花も含め、日常的に花を購入する人が多い傾向にあると言います。

とはいえ、人口減少もあり、かつては10軒以上あった市内の生花店も、今は「花日々」を含め3軒。「寂しい気もしますが、私は今通ってくださる一人ひとりのお客さまに実直に向き合うだけです」と小美川さん。

「花を飾るのが日常的なだけあり、留萌の人は花を見る目が肥えていると思います。鮮度も含め、花の良しあしをよく分かっているので、仕入れも、扱い方も手を抜かず常に気を使っています」

常連客の中には、「この花良くないよ」と率直に意見を言ってくれる人もいるそう。「そういう意見はありがたいと思って受け取っています。店の改善に繋げていけますからね」と話し、「ダメなところを言わずにそのまま店からお客さまが離れていくよりも、店のためにと意見を言ってくれるほうがずっといいですよ」と続けます。

rumoi_hanahibi00006.jpg弱ったり、元気のない花は1本も見当たりません

生花店が一番忙しくなるのは、母の日と言われますが、「花日々」の場合は、お盆も同じくらい多忙に。墓参りに来る人も増えるため、とにかく花を絶やさないようにするのが大変だと話します。繁忙期には、1日2〜3時間の仮眠をとって旭川まで仕入れに行き、水あげし、セットし、夜通し作業ということもあるそう。

「正直大変ですが(笑)、いつ仕入れたか分からない鮮度の悪い花より、仏さまにはきちんとしたいい花を飾りたいと思うのは当然。皆さんのその気持ちに応えられるように頑張っています」

田舎や都会に関係なく、目の前のお客さまに花のプロとしてやれることをやるだけ

「花日々」の客層は、老若男女問わず幅広いのが特徴。「お母さんの誕生日に」とおこづかいを手にやってくる子どもから、毎日の仏花を欠かさない高齢者の方までさまざまです。アレンジなど依頼される花も、お祝い用から葬儀の花まで多彩。

rumoi_hanahibi00087.jpgお花にのせて、いろいろな気持ちを伝えるお手伝いをします

「うちは都会的でちょっと入りにくい雰囲気の店ではなく、子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで誰でも気軽に入りやすい地域密着の店。でも、だからと言って手を抜いた花は作りません。田舎だから、都会だからとか関係なく、ステキだねと言って喜んでいただけるものを提供するように徹底しています。流行のアレンジを作ってほしいとか、ちょっと珍しいスタンドを用意してほしいとか、お客さまのあらゆる要望に応えられるよう常に勉強しています」

某人気漫画のキャラクターを模したアレンジメントの依頼や、風船と組み合わせたスタンドの依頼など、さまざまなものに対応できる力は、これまでの豊富な経験と日ごろからアンテナを張り、勉強しているからこそ。小美川さんのこうしたプロとしての意識の高さも店を利用する人たちに伝わっているのでしょう。多くのお客さんたちと信頼関係が築けているのも分かります。

rumoi_hanahibi00081.jpg球形や立体的なアレンジメントなど、お客様の希望に出来る限り対応します

小美川さんの凄いのは、常連を含め、年に数回だけ訪れるお客さんのこともきちんと頭に入れているところ。350人以上の顔と名前を覚えていると言います。

「いつも仏花を買ってくださる方なら、長さはどれくらいにカットするのかなど、指示をいただかなくても頭に入っています。好きな花、嫌いな花などもノートにすべて記入して、頭にインプットするようにしています。中には『いつもの』と注文されるお客さまも多いんです(笑)」

かゆい所に手が届くとはこういうことを言うのかもしれません。また、初めて来店したお客さんにも笑顔で声をかけ、「何を選べばいいか分からない」という人の場合は話し方や雰囲気、ライフスタイルなどから好みの花を探っていくようにしていると言います。

個人店ならではのサービスも。花屋は、お客さまの気持ちを花で届けるいい仕事

地域に密着している「花日々」では、小美川さんの裁量で臨機応変にお客さんの対応を行っています。これも「町のお花屋さん」ならでは。たとえば、荷物をたくさん持ったお客さんが来たときは、花と一緒に荷物も配達してあげたり、店の前に飾ってあるプランターの花が1株だけ欲しいと言われれば、本当は3株であっても1株だけ譲ってあげたり。また、咲ちゃんを飼っている小美川さんは、ペットを飼っているお客さんがペットを亡くしたと聞くと、我慢しきれず花をプレゼントすることもあるとか。

rumoi_hanahibi00048.jpgお花と一緒に供えたいとのニーズもあり、何と店内ではフルーツも購入可能

「いい意味で距離が近いというんでしょうかね。お客さまとは日々の出来事など、楽しく会話しながら接しています。そういえば、『タクシー呼んで!』って入ってくる常連さんもいるんですよ(笑)。お客さん同士が話をしていることもあって、ここがちょっとしたコミュニティーの場にもなっているときもあります」

「花日々」の隣には、「ソウルキッチン」というカフェがあり、さらにその隣には中華料理の「萌美飯店」が並んでいます。向かいにはお弁当屋さんや「るもいプラザ」なども。この神社下商店街や留萌の町についてどう考えているかを尋ねると、「商店街が少しでも盛り上がったらいいなと思います。人がいると、やはり賑やかですしね。留萌の町全体でいえば、町の人が外から来た人に対してウェルカムな雰囲気で町を盛り上げようとすれば、もっと活気づくのかなとは思います。頑張っている人もたくさんいるんですけど、ちょっと惰性的になっているところがあるかもしれませんね」と冷静に分析します。

rumoi_hanahibi00098.jpgお客様の希望があれば、一株でも販売しますよ!とのこと

話を伺っていると、日々の業務でとにかく忙しそうという印象の小美川さん。それでも、年に2回は道内の生花店仲間や友人たちと温泉旅館やホテルに泊まりに行くのが恒例行事になっているそう。「みんなと一緒にまた頑張ろう!って話をして、リフレッシュして帰ってきます」と話します。励まし合い、切磋琢磨できる仲間がいるのも小美川さんにとっては大きいようです。

これからの「花日々」のことを伺うと、「体が続く限りやりたいですね。もし、花屋をやってみたいという人がいれば、仕事を教え、最終的に店を譲ることも考えています。私は花が好きでこの世界に入ったわけではなかったけれど、今では花が大好きだし、花屋の仕事って本当にいい仕事だなって思う」と話します。さらに「花は暮らしに必要なものだと思う」と続け、「花屋が作る花は、お客さまの嬉しい、悲しい、ありがとう、おめでとうといった、気持ちをのせてお届けするもの。だから常にベストでいいものをお届けできるようにと考えています。ね、いい仕事でしょ?」とニッコリ。こんなお花屋さんが近くにあれば、ぜひ通いたいって思いますよね。

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花日々
花日々
住所

北海道留萌市開運町3丁目5‐30

電話

0164-42-5502

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花屋の仕事に誇りを持って取り組む女性。通いたくなる小さな生花店

この記事は2024年6月7日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。