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札幌、北海道で、共創ビジネスを生み出す大日本印刷のプロジェクト20230829

札幌、北海道で、共創ビジネスを生み出す大日本印刷のプロジェクト

ここ数年、DXとともによく耳にするようになった「共創」「共創ビジネス」という言葉。さまざまなステークホルダー(経営者、従業員、消費者、協力企業、研究機関、行政機関などの利害関係者)と共に協力しながら新しい価値やビジネスを創造するというものです。一つのマーケティング手法としても捉えられていますが、デジタル化が進む中、企業もその在り方を含め、新規事業を立ち上げる際の足掛かりとして共創事業を取り入れるところが増えてきました。

大日本印刷・情報イノベーション事業部の北海道でも、2020年に共創型ビジネス推進プロジェクトが立ち上がり、活動を行っています。今年の冬には同プロジェクトによる「ウインタースポーツフェスティバル」も開催。今回は、このウインタースポーツフェスティバルのメイン担当者である濱田翔一さんを中心に、同プロジェクトのリーダー・辰巳仁志さん、もう1人のメンバー・山谷将広さんに、プロジェクトの歩みやこれからのことなどを伺いました。

「このままではいけない」と、新しいことにチャレンジ

大日本印刷の北海道エリア独自の取り組みとして始まった共創型ビジネス推進プロジェクト。同社がこのプロジェクトを立ち上げることにした理由の一つに、印刷業界の先細りが挙げられます。

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「紙の印刷物がどんどん減っていく中、これまでのように印刷の受注を待っているだけでは会社の売上が下がるのは明らか。自分たちで新しいビジネスのタネをまいて、育てていかなければならないという意識が社内に芽生えていました。さまざまな可能性を探って、いろいろな人や企業と一緒に、社会の課題解決のための新ビジネスをやっていってもいいのではないかという考えから、このプロジェクトが始まりました。共創による社会課題解決のためのプロジェクトですね」(濱田さん)

3年前にプロジェクトが立ち上がった際、メンバーに抜擢されたのは、営業マンとして活躍していた30代、40代の3人でした。異業種交流会に参加するなど、自発的に外へ情報を取りに行くタイプだったり、チャレンジ精神旺盛なタイプだったりしたことが、選ばれた決め手になったようです。

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「ずっと営業畑にいると言っても、うちは受注型の営業が中心なので、基本的に受け身。でも、いつも受け身でいると、結局クライアントのことしか知らないんですよね。交流会でいろいろな方と話をすると、いかに自分が世の中のことを知らないで生きてきたかがよく分かる(笑)。個人的にも外に視野を広げていかなければならないと思って、交流会に出るなど外にも目を向けるようにしていました」(辰巳さん)

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ずっと営業畑の辰巳さんと濱田さんと少し違い、山谷さんは営業以外に、「May ii(メイアイ)」という「移動に困って手助けを求める人」と「手助け可能なサポーター」をつなぐスマートフォン向けアプリの開発に携わったり、会社のPR事業に携わったりしてきた経験もあるそう。

「昔から好奇心が旺盛で、いろいろなことにチャレンジしてみたいタイプだったので、デジタル系の仕事やPR系のことに携わることができたのは楽しかったです。今回も共創型のプロジェクトに参加でき、いい機会をもらえたと思っています」(山谷さん)

プロジェクトがスタートした当初は、営業マンとして顧客回りをする傍ら、何ができるかを3人で模索していたそう。会社からは、何をやってもいいからまずはチャレンジしてみてほしいと言われます。

「とはいえ、これまでゼロから何かを生み出す仕事をしてきたわけではないから、本当に難しくて(苦笑)。今はイベントなどいろいろはじめていますが、これをビジネスとして形にしていくと考えたとき、これがまたなかなか悩ましいところでして...。ゼロから何とか生み出したとしても、それを10にまで持っていくのは僕らだけでは難しいので、ほかの企業や個人のプレイヤーの方たちも一緒に実現できる形にしっかり持っていきたいと考えています」(辰巳さん)

プロジェクトチームの初仕事は、新千歳空港を会場にしたeスポーツ大会

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プロジェクトの最初の仕事は、2021年の秋にプレ的に関わった「北海道エアポートeスポーツチャレンジ」。新千歳空港を会場に、「PUBGモバイル」(バトルロイヤルゲーム)の大会を開催しました。3人のうち、誰かがeスポーツやゲーム好きなのかと思いきや、そういう訳ではなかったそう。

「たまたま上司からeスポーツの大会運営ができる人材がいると紹介され、グループ会社の北海道コカ・コーラボトリングに企画を持ち込んでみたら、空港を会場にやってみてはということになり、そのまま新千歳空港に企画を持ち込み...と、話がトントンと進んでいったというのが初年度でした」(濱田さん)

翌年は規模を拡大し、「FORTNITE」(世界中で人気のバトルロイヤルゲーム)の大会を開催。eスポーツ愛好家だけでなく、さまざまな人たちが楽しめるように、トークステージやIT体験コーナーなども用意したそう。

「初年度は空港に人を集めて賑やかに催すということに意識が集中していましたが、2年目は、地域の産官学を繋いで取り組みたいと考えました。千歳には科学技術大学、日本航空大学校、隣の恵庭にはハイテクノロジー専門学校があります。この大会が、遊びに来た子どもたち、地域に暮らす子どもたちに対して、広義でのIT教育につながればと考え、大学や専門学校にも協力をお願いし、体験コーナーでドローンのプログラミングやVR体験などを行いました」(濱田さん)

2023年も11月に開催する予定。地元の大学や専門学校はもちろん、自治体なども巻き込み、多方面と共に大会を作り上げていけたらと考えているそう。

「コロナも収まってきたので、ゆくゆくは海外からも選手を呼べるような大会にできたらと思っています。今は国際線側のイベントホールを会場にしていますが、いつかもっと大きなものにできたら、たくさんの人が行き交うセンタープラザの大きなビジョンを使って、大々的にやりたいなと個人的には思っています。と、夢は広がりますが、収益を考えながらやらなければならないのが難しいところ。スポンサー探しをするなど、そういった課題もまだまだあります」(濱田さん)

ウインタースポーツの普及という大きな目的を掲げ、開催したスポーツフェス

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eスポーツ大会のあと、プロジェクトチーム主導で実施したのが、2023年4月1日、2日にサッポロテイネで行われた「ウインタースポーツフェスティバル」です。このイベントは、スノーボードと札幌が大好きという濱田さんの想いが強く詰まっていました。

「学生時代に年間100日滑っていたくらいスノーボードが好きで、ずっとウインタースポーツの普及のために何かできないかと考えていました。札幌は都会でありながら、すぐ近くにゲレンデがあり、気軽にウインタースポーツが楽しめる恵まれた環境。雪をネガティブなイメージで捉える人もいますが、雪にもっと親しんでほしいと思っています。また、自分が親となり、子どもたちに札幌や北海道の良さ、雪のある暮らしの楽しさなどを伝えていきたいという想いもありました」(濱田さん)

ウインタースポーツの楽しさを子どもたちやファミリー層に知ってもらいたいとサッポロテイネに企画を持ち込んでみたところ、すぐにOKが出ます。

「そこから、さぁどうするかという感じで(笑)。以前、当別町のマラソン大会を立ち上げたときに実行委員会を組成したのを思い出して、ウインタースポーツの普及という大義のもとで、行政も巻き込んで、実行委員会を立ち上げることにしました」(濱田さん)

北海道にいる500人以上のオリンピアン、パラリンピアンをまとめる「北海道オール・オリンピアンズ」にも協力を要請し、札幌市や札幌商工会議所などにも実行委員に入ってもらいました。各所をまとめるのはかなり大変だったそうですが、たくさん勉強になったと言います。

「イベントを実施するにはスポンサーも必要なので、スポンサーセールスは自分たちで行いました。でも、3人だけでやるには限界があるので、会社中のメンバーを巻き込み、イベント当日も社員総動員で対応しました(笑)」(濱田さん)

元日本代表選手と一緒にスキーやスノーボードを滑る企画を目玉で用意したほか、クロスカントリースキー、ミニスキー、シットスキーなど15以上のスポーツ体験を用意。さらに、室内でVR体験などが行えるコーナーも作りました。2日間で2100名ほどのファミリー層が集まり、大盛況となりました。

「子どもたちが喜んでいる姿を見ることができたのは嬉しかったです。あとは、今後これをどうビジネスとして続けていくかを考えなければなりません。イベントをやることがゴールではなく、ウインタースポーツ普及のためには、ウインタースポーツの情報がひとつに集まっている、まとまっているようなコンテンツが必要と考えています。まだまだこれからです」(濱田さん)

次の冬もイベントは開催する予定。もっとたくさんの人がウインタースポーツを楽しめるような仕掛けを作っていきたいと考えているそうです。

スポーツだけでなく、食や観光、環境なども視野に入れ、地元を活性化させたい

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イベントの話が続きましたが、共創型ビジネス推進プロジェクトはイベントをやるためのチームではありません。札幌独自で立ち上がったプロジェクトなので、もちろん北海道や札幌を盛り上げるための共創型ビジネスを展開するのも大きな目的の一つです。

「イベントはあくまできっかけの一つ。もちろん今後もeスポーツやウインタースポーツもやっていきますが、食、観光、環境問題などにまつわることもやっていきたいと3人で話しています」(濱田さん)

それぞれ担当分野も分かれているそう。リーダーの辰巳さん、アクティブ系の濱田さんに対し、山谷さんは環境問題の分野を担当。

「環境、サーキュラーエコノミー(循環型経済)に関して目下勉強中です。道内で行われているサスティナブルなイベントに参加したり、環境問題に取り組んでいる企業へヒヤリングに伺ったりしているところです。北海道で環境活動をしている人や企業と一緒に、新しいビジネスが何かできるのではないかと考えています」(山谷さん)

前向きに、次世代へバトンを渡すための土台作りをしていきたい

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北海道、札幌が大好きと言う3人。もともと転勤がない地元企業ということで3人とも入社を決めたそう(入社時はDNP北海道だったため、転勤がなかった)。のちに会社の組織改編などがあり、辰巳さんは東京勤務を4年間経験。そのときに札幌の良さを実感し、「住むなら札幌」と改めて感じたと話します。また、生まれも、育ちも、職場も東区で、唯一東区でなかったのは大学だけという濱田さんは、札幌愛が強く、「札幌から離れたくない」と言います。

「都府県の方たちは、北海道、札幌はとても魅力的と必ず言ってくれます。住んでいる人の中には、雪が...という人もいるけれど、外の人から見て、基本的にネガティブな印象がない場所だと思っています。だから、子どもたちには自分の住んでいるところに誇りを持ってもらいたいです。仕事を通じて、そういうことを子どもたちに伝えていけたらと考えています」(濱田さん)

そんな濱田さんは、子どもたちに北海道、札幌の魅力や可能性を伝えるため、ウインタースポーツの普及活動も合わせて出前授業をしたこともあるそう。

「40代のぼくらは次世代へのつなぎ役だと思っています。失われた30年なんて言う方もいますけれど、そんなバイアスは無視して、いい形で、前向きに次世代へバトンをつなぎたいです。このプロジェクトでそんな土台作りをしていきたいですね」(濱田さん)

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昨年、北海道マラソンのゴールデンパートナーとして同社が協賛した際の新聞広告に、「北海道に、今はまだないあたりまえを。」というコピーが掲載されました。「このコピーがプロジェクトのパーパスです」と濱田さん。北海道、札幌というステージで、これから先の「未来のあたりまえ」を作るのが自分たちの仕事だと考えています。

「何かあったら、大日本印刷のあのプロジェクトの人に相談すればいいよって、たくさんの人たちに頼りにしてもらえるような存在になりたいです」(濱田さん)

北海道、札幌が大好きな3人が、これからどのような共創型ビジネスを生み出していくのか楽しみです。

大日本印刷株式会社 情報イノベーション事業部 東日本CXセンターエリアBX第1部 共創型ビジネス推進プロジェクト
住所

北海道札幌市東区北7条東11丁目1-1

電話

011-750-2205

URL

https://www.dnp.co.jp/


札幌、北海道で、共創ビジネスを生み出す大日本印刷のプロジェクト

この記事は2023年5月17日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。