札幌に拠点を置き、不動産業の領域から、新しい事業を企画・開発したり、起業する人の支援を行ったりしている株式会社FULLCOMMISSION(フルコミッション)。ゲストハウスTen to Tenの運営、不採算不動産や空き家の再活用、リノベーションしたいお客さまとデザイナーのマッチングなどなど、これまでの不動産業にはない、ひと味もふた味も違う新しいものを生み出しています。
次はどんな面白いことを仕掛けるのかなと期待したくなる同社。今回、お話を伺うのは代表の山崎 明信さんではなく、山崎さんが「おもしろい新人がいるから」と推薦してくださった森 優太さんです。さて、どんな「おもしろい」人材なのか、乞うご期待。
高校野球で甲子園にも出場。人と同じことはしたくないという欲求。
FULLCOMMISSIONが運営している共創型ワークスペース・BYYARDへ伺うと、コワーキングスペースのラウンジでスーツ姿の森さんが迎えてくれました。会社のオフィスも同じ建物内にあるそうですが、普段はここで仕事をしていることが多いそう。21歳という若者にお話しを詳しく聞いていきます。
森さんは、2022年の春からインターンとしてFULLCOMMISSIONにジョインし、今年の2月から社員に。不動産企画開発事業部で、不動産売買の仲介や土地活用も含めた新規事業の提案などを行っています。
生まれも育ちも札幌という森さん。小学生のころから野球をはじめ、中学から札幌大谷へ。野球部で活躍し、全国大会にも出場しました。高校2年生のときにマネージャーに転向しますが、マネージャーとして手腕を発揮し、甲子園や全国大会にも帯同したそう。
森さんご提供写真
「中学に入ったころから、人と違うこと、周りがやらないことをやりたいというのがありましたね。基本、目立ちたがり屋なんですよね(笑)」
そう言って笑う森さん。野球部でマネージャーになったのも、よくある理由でありがちな、ケガがきっかけというわけではなく、「自分よりうまい選手はたくさんいるし、それならマネージャーになってチームを俯瞰で見て、チームマネジメントをしたほうが面白そうだなと思ったので挑戦することにしました」と振り返ります。全体を引いて見渡し、監督と選手の調整をしたり、取材対応の窓口を担ったり、このときの経験は今も役に立っていると話します。
大学生ではないけれど、学生運営のコワーキングスペースに参加
「野球部にいるといろいろな大学の推薦をもらえたのですが、あえてそこに反発して、『北海道大学に行く!』って言い続けていました。受験したら面白いかなって思って。これも単に周りとはちょっと違った選択をしたかったという理由も大きいんですけど...。結局受験には失敗して、ある意味目立てました(笑)。そして、浪人するか、海外へ行くかという選択に迷うことになりました」
海外に目が向いたのは、母親の姉がロサンゼルスで子どもたちのための幼稚園のような場所を運営していたからだそう。「伯母は、アメリカのコミュニティカレッジで学んだあと、大学へ進学した人で、そういう生き方や選択肢もあるなと思って」と話します。
アメリカに行ってみたいという気持ちが強くなり、資金を貯めようと居酒屋などでアルバイトを始めます。同じ頃、友人を介して、北海道大学の目の前で学生が運営するカフェ・コワーキングスペースの「13LABO(イチサンラボ)」の活動に関わるようになります。
「運営メンバーは、北海道大学や北海学園大学などの大学生。僕は学生ではなかったのですが(笑)、イベントを企画したり、企業の方たちと交流したりするのが楽しくて、運営に参加させてもらっていました」
1年後、なんとそこの代表に立候補します。
「何度も言いますが、僕、目立ちたがり屋なので」と笑います。大学生ではなかったからこそできた経験でもあったと教えてくれます。ときはコロナ禍。周りから話を聞いて、どんなイベントがあればみんなに喜ばれるか、みんなの役に立てるかを考え、オンラインを駆使したイベントなどを企画したそう。
「たとえば、大学のサークルと新入生のマッチングイベント。北大生に聞いたら、コロナで新入生との接点がなく、サークルや部活に人が集まらないと。その一方で1年生はどのサークルや部活に入ればいいか分からないと。それなら、オンラインでマッチングの場を提供すればいいのでは?と思いました。30くらいの団体を呼び、200人くらいが参加してくれました」
ほかにも、余市のハンター(猟師)のところに行って鹿撃ちについて学ぶイベントをリアルで実施するなど、「企画して、実施するという楽しさを学びました」と話します。
「周りのみんなは大学生なので、正直焦りも少しありました。でも、この13LABOで学生だけでなく、いろいろな経営者の方、企業の方と出会えて、たくさん話ができたことは自分にとってプラスの時間でした」
東京で見つけた「おもしろそうな」札幌の会社の情報。まさに運命的な出会い
2022年の1〜3月、友人たちと一緒に、出稼ぎのように東京へホテルのアルバイトへ行くことにした森さん。シェアハウスのようなところに暮らし、仕事を始めます。
「東京で暮らしてみたかったんですよね。僕、子どものときから高い建物やビル、都会の町並みが大好きで」
高層ビルが建ち並び、たくさんの人が往来する東京には、モノはもちろん、文化や情報などあらゆるものが溢れていて、森さんは強く刺激を受けます。
「札幌も都会だと思うけど、東京に比べればまだまだ。都市レベルが違うと思いました。そして、大好きな生まれ故郷の札幌をもっと盛り上げたい。何なら、首都にしたいと思いました(笑)」
そんなことを考えながら、東京で山手線に揺られ、スマホでFacebookを見ていたら、たまたまFULLCOMMISSIONの情報を目にします。
「不動産の領域で新しい事業を企画開発したり、ゲストハウスやったり、海外でも事業をやったり、こんなことをしているおもしろい会社が札幌にあるなんて!と思って、その場ですぐに、社長にDMを送りました。札幌に首都機能を移し、高層の『森ビル』を建てて、そして総理大臣になりたいというような話を書いた記憶があります」
と、ここで気になったのが「森ビル」。六本木ヒルズなどを手がけるデベロッパーの森ビルのこと?と尋ねると、「その森ビルがやっているような高層ビルやまちづくりを札幌でやりたいなと。僕も『森』なので、札幌の『森ビル』(笑)」と楽しそうに話します。
そんなチャレンジングなDMを送ったにも関わらず、山崎社長からもすぐに返信が来て、翌朝にはオンラインで面談。そのあと、山崎社長が東京を訪れた際にリアルで会うと、「まずはインターンで来てみる?」と誘いを受けます。
自分なりの営業スタイルを手探り。結果を出すために頑張るのは自分
お世話になっている先輩と。
札幌に戻り、4月からインターンとして働き始めます。先輩に同行したのは、最初の1週間だけ。ひと通りの仕事の流れを教えてもらったら、あとは自分で営業回りをスタート。
「最初はひたすら、不動産買取の飛び込み営業。ときには、土地や建物の所有者に門前払いされることもありましたが、活用方法の提案書を持っていったり、会ってもらえないところには手紙を書いたり、手探りですが自分なりの営業スタイルを見つけていきました」
買い取った建物はリノベーションして販売します。資金の融資などもすべて自分で行わなければなりません。もちろん、分からないこともあります。先輩のサポートを受けながら、一つひとつ勉強していき、自分のものにしていきました。
今年の2月から晴れて正社員に。「自分のスタイルがだいぶできた気がします。仲介業者の人たちとのコミュニケーションも取れるようになりましたし、いかにたくさんの人に会い、話をし、信頼関係を築くかが大事だと分かりました」と話します。
今月、去年から関わっていたお客さまのリフォーム案件が引き渡しに。そのお客さまから、「森さん以外にはお願いしない。森さんを信頼しているから」と言われたときはとても嬉しかったそう。
「お客さまの希望を叶えるために頑張って良かったと思いました。そういう積み重ねがこの仕事のやりがいなのかなと感じています」
不動産営業はインセンティブが高いと言われ、自分の頑張り次第ですべてが決まります。仕事で壁にぶつかることもあると思いますが、「長く野球をやっていて、結果を出さないといけない世界にいたせいか、うまくいかないからといって落ち込んでいるくらいなら、結果を出すためにどうすればいいかを考えて動くタイプ。自分で頑張って解決していくしかないと思うので」と話します。
自分にとって社長は師匠。いつかは不動産やまちづくりの仕事で独立したい
「FULLCOMMISSIONのスタッフは、みんなそれぞれやりたいことがあって、将来起業を考えている人もいます。そして、会社はそれを応援してくれます。僕自身も、『森ビル』を建てるためにいつか独立したいと考えていて、今は不動産についてイチから学ばせてもらい、経験を積んでいるところです」
小学生の頃、家に入ってくる不動産のチラシを見るのが好きだったという森さん。「こういう家に住みたい」「こういう間取りがいい」と、チラシを見ながらあれこれ想像するのが楽しかったと言います。オープンハウスに見学に行くのも好きで、自転車に乗ってあちこち見て回ったときもあったそう。
「自由研究で、札幌のタワーマンションについて調べたこともありました。建物やまちづくり、再開発に子どもなりに興味があったんですよね」
森さんにとってFULLCOMMISSIONという会社は、出会うべくして出会った会社という印象です。誘ってくれた山崎社長は、森さんから見てどのような方なのでしょうか。
「自分の考えをしっかり持っていて、決断力が早い。仕事の質が高く、ハイレベル、ハイスピードで事業を回していくのは、本当にスゴイと思います。僕が将来、独立したいということも知っているので、いろいろな経営者の方に会わせてくれるなど、いつも気にかけてもらっています。僕にとって、師匠のような存在です」
まだまだ学ぶことはたくさん。そして、100歳まで生きて22世紀を見たい
社員になったのを機に実家を出て、一人暮らしをはじめたという森さん。料理、洗濯、掃除と家事も頑張ってやっていますが、「家を出て、あらためて親のありがたみを感じています。特に洗濯」と笑います。休みの日は、お気に入りのカフェで過ごしたり、最近始めたゴルフに行ったりしているそう。
「まだまだ学ぶことはたくさんあるから、あと数年はFULLCOMMISSIONでしっかり力をつけたいと思います。僕、22世紀を見たいと思っていて、100歳まで生きる予定なんですけど、去年、自分の人生計画表を作ったんですよね」
そう言って見せてくれたスプレッドシートには、毎年の目標や夢が細かく書かれていました。え? 結婚遅くない? なんて盛り上がる取材陣でしたが、社会人として、まだまだスタートを切ったばかりの若者の想いに、札幌の未来が明るく見えてきたのでした。
そして大学全入時代とも言われるような昨今。なんとなく大学に進むくらいであれば、同じ時をいろいろな経験を積む期間、人と出会うための時間として、人生の選択肢の幅を広げた森さんの生き様にも、共感できることが多々あった気がしました。
- 株式会社 FULLCOMMISSION (フルコミッション)
- 住所
北海道札幌市中央区北5条西11丁目15-4 BYYARD内
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