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北海道で暮らす人・暮らし方
洞爺湖町

洞爺の新たな面白さ発信!外遊び大好き夫婦がまちと人をつなぐ!20230814

洞爺の新たな面白さ発信!外遊び大好き夫婦がまちと人をつなぐ!

今回の舞台は洞爺湖町。
代名詞である洞爺湖温泉や、火山の力を身近に伝える有珠山&昭和新山。日本屈指のカルデラ湖である洞爺湖など大自然に囲まれた場所です。このまちに最近話題のアウトドアショップがあると聞きつけたくらしごとチーム。
早速オーナーの大須賀太郎さん&桃さん夫妻を突撃してきました!

夫はキャンプで妻は山?とっても仲良し大須賀夫妻

この世には2種類の人間がいます。
初対面の人に警戒心を抱かせないタイプか、警戒心を抱かせるタイプ。
大須賀夫妻にお会いしてすぐに理解しました。ああ、こりゃあ前者だな、と。そのくらい自然体で穏やかな空気をまとったお二人なのです。むむー、今日の取材は長居してしまいそうな予感!

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まずは旦那さんで店主の太郎さん。
洞爺に移住してくる以前は、東京でグラフィックデザインを学び、デザインやDTPを行う会社に勤めていた太郎さん。約13年間で得たスキルは健在で、ZERODAYのロゴやイベントフライヤーのイラスト、また居心地の良いお店の空間デザインにも惜しみなく生かされています。

「このZERODAYのロゴができたとき、我ながらすごく気に入って、しっくりきたんです。でも、ある時知り合いに『PROTREK』っぽいねと言われてハッとしました。昔からPROTREKが好きで時計も愛用してたんですが、好きすぎて無意識下に『しっくりくるデザイン』として刷り込まれてたみたいです」

会社員時代は、休日になると仲間と一緒に週末キャンプや、昔から好きだという釣りを楽しんでいました。東京からだと時間もお金も相当かかるそうで、頻繁にというのはハードルが高かったそうですが、今に続くアウトドアライフの種はこの頃にすくすくと成長していきました。大好きな釣りは今ももちろん現役で、休みの日には相棒のクロスバイクで渓流に向かいます。

よくよく生い立ちを聞くと、実は太郎さん、北見生まれなのだそう。1歳前後で引っ越したため、ほとんど記憶はないそうですが、北海道にルーツがあったとはなんだか嬉しいですね!

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さて、マネージャーで奥さんの桃さんはここ洞爺出身です。
高校卒業後は進学で上京。その後、雑貨メーカーや出版社などで勤務します。最終的には、映画好きだったことも高じて映画配給会社に就職しました。

「昔から映画の中でも洋画が好きなんですけど、いざ入社してみたらアイドルがたくさん出てくる邦画の担当で、私はその宣伝部で働いていました。当時はアウトドアとは縁遠く、登山を始めたのは結婚してからです。思えば私の両親が大学で登山をしていて、小さいころから山には連れて行ってもらってたんですが、まさか自主的に行くようになるとは思いませんでした」

学生時代にアルバイト先だったハンバーガー店で出合った太郎さんと桃さんは、20代後半にめでたく結婚。元々キャンプや釣りが好きだった太郎さんに対して、桃さんは虫が大嫌い。アウトドアの世界に入って行ったのもやはり後発です。
しかし、山を目指して以降、桃さんはどんどん山歩きの楽しさにのめりこんで行くことになり、その決定打となる映画が二人をさらなる冒険に導いていくのですが、その話はもう少し後で。

仲間と釣りをしたりビール片手にゆるりとキャンプをするのが好きな太郎さんと、目標に向かって登頂を目指すのが好きな桃さん。

アウトドアへの向き合い方が全然違う二人ですが、ある時、「登山中にキャンプをする」という世界があることを知ります。
これなら二人で一緒にアウトドアを楽しめるんじゃなかろうか、ということで早速準備に取り掛かります。せっかくの登山なので、ギアも二人で選んだそうですが、最終的な決定権は常に桃さんが握っており、太郎さんの提案が棄却されることも一度や二度ではなかったようです。

こうして2016年頃から日帰り登山の前後をキャンプで挟むという、お二人ならではのアウトドアライフが本格的に始まりました。当時はもう一人、山好きのお友達がいたそうで、その方と桃さんに至っては山行の帰りの車の中で次の週末の予定を組み始めるほど、登山の魅力にドはまりしていました。
東京からでも行きやすい山梨や長野の山から八ヶ岳まで登頂し、もちろん太郎さんも一緒なのですが、あくまでも太郎さんはキャンプがメインで山はサブ。登山計画は桃さんとお友達におまかせだったのだとか。
この二人、悠々と構える羊蹄山の如く、全然お互いのスタイルを崩しません。

映画で見たあの景色に会いに、いざ世界旅行へ!

「わたしに会うまでの1600キロ(原題:WILD)」という映画があります。
過去の自分と向き合い前に進むため、1600㎞という超ロングトレイルの踏破に挑む、シェリル・ストレイドさんの自叙伝に基づく、第87回アカデミー賞にノミネートされた作品です。2015年に日本でも公開されました。
物語の舞台はアメリカ三大長距離自然歩道の一つに数えられる「パシフィック・クレスト・トレイル」。

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この映画をきっかけに、東京で会社員として暮らしていた二人の運命は大きく動き出します。劇中の長い道のりの中で桃さんの心を奪ったのが、パシフィック・クレスト・トレイルの一部である、カリフォルニア州「ジョン・ミューア・トレイル」の景観です。
ヨセミテ渓谷からホイットニー山までの約340kmに横たわる厳しくも美しい大自然。調べてみると、約1カ月あれば踏破できそうであることがわかりました。

しかし当時は二人とも会社員。たかが1カ月、されど1カ月。なかなか行けるものではありません。
基本的に真面目な二人なのです。

「映画で見たジョン・ミューア・トレイルは、ここが全てのトレイルの核心だと思えるくらい、山容が豊かできれいな場所でした。パシフィック・クレスト・トレイル全行程は無理だとしても、ジョン・ミューアならなんとか行けないだろうかと思い、夫に相談してみたんです」

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山歩きにはあまり惹かれない太郎さんですが、「トレイル中は毎日キャンプだよ」という桃さんの一言でいつの間にか乗り気に。
しかしそもそもアウトドアフィールドへの適応力は桃さんよりも高い太郎さん。、自然の中に入っていくことに対しても抵抗がなく、ある種の達観のような精神性を持っています。実際の道中でも、その覚悟の決まり方が桃さんを支えてくれたようです。

二人は行けない理由よりも行くための方法を考えました。
1カ月は無理でも、1週間~10日の旅行を何回かに分けて行ったらどうだろう?とか、せっかくならユーコンの川下りも行きたいよね、など、やりたいことと現実をすり合わせた結果は...
「やっぱり一発でやりたいこと全部やりたい!」でした。
はい、爽快なお二人なのです。

腹を括った大須賀夫妻は一念発起してお金をため、スパっと会社を辞めて世界旅行に行くことを決意しました。そして2019年春、念願の世界旅行へと旅立ったのです。
ジョン・ミューア・トレイルでは、物資の補給でまちに降りるとき以外、ひたすら大自然を歩き、休み、食べ、飲み、寝て、また歩きます。絶景の美しさだけでなく、文明から離れる不便さや、熱いシャワーへの渇望、食べることのありがたさなど、自分の内から湧き出る様々な感情に出会いながら、太郎さんと桃さんは、24日間をかけて憧れのジョン・ミューア・トレイルを踏破しました。

旅のブログ「スガ旅」には、トレイル中の桃さんの揺れ動く感情とグルメ情報が克明に綴られているので、ぜひ一読を。
その後も二人の冒険は続き、2020年1月にトルコから日本へこっそり帰国。なんと桃さんのお父さんの誕生日にサプライズ帰宅を決めました。
最後までおもしろすぎるお二人なのです。

帰国後に洞爺湖移住、そしてZERODAY誕生へ

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東京の会社を辞めるとき、次に住むのは北海道だろうというのが二人の間の共通認識だったそうです。その陰には、桃さんのご両親に対する思いがありました。

「私の両親は結構高齢になってきてるんですが、東京に住んでいたら1年に1回合えるかどうか。あと何回会えるんだろうというのがずっと気になっていて...。できればそばに住みたいという気持ちは話していたんです」

ふむふむ。親が気になる気持ち、わかります。
でも地元を離れる側の太郎さんはどうだったのでしょうか。

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「東京にいる間は僕の両親が近くにいたんです。行ってみれば彼女が僕の地元に来てくれていた状態ですよね。うちの両親はまだ若いし、北海道も住みやすそうだなとは思っていたので、移住しようと決めました」

当然のようにさらりと語るお二人ですが、言葉や行動の端々にお互いのことを理解し、尊重していることがにじみ出ています。

とはいえ、最初から洞爺を目指したわけではなく、最初は札幌で再びサラリーマンとして社会復帰し、静かに暮らしていこうと思っていたそうですが、時はまさにコロナ禍真っ只中。ストレートに再就職の道は厳しそうだと判断し、太郎さんは半年ほど東京でITやWebの技術を学ぶスクールに通いました。実際にはその道へ進むことはなかったのですが、その技術は現在のZERODAYのWebサイトに生かされています。

さて、同じく東京で派遣の仕事に勤めていた桃さんはひと足先に洞爺に戻っていました。親戚の牧場で働いていたところに太郎さんも合流し、草刈りや木の剪定をして生活をしていたそうです。そうして1カ月ほど洞爺で暮らし、近くの漁港で釣りをしたり、キャンプをしたりしているうちに気づきました。

「あれ、ここ楽しいんじゃないか?」

そう、洞爺はアウトドアが好きな二人にとって絶好のフィールドだったのです。
しかしその反面、自分たちが旅したまちに当たり前にあったものが、ここにはありません。
アウトドアで遊ぶために必要なガス缶やナイフなどのギアが手に入るアウトドアショップです。

世界旅行中のヨセミテで立ち寄ったお店で二人で話した「いつかキャンプ用品や地元のお土産が一緒に並んだお店をやるのも楽しそう」という夢。
北海道に住むことは決めた。
遊ぶフィールドととして洞爺は楽しい。
やりたいことを阻むものは特にない。

「それなら」ということで誕生したのが今のZERO DAYです。

本当の意味で「開かれたお店」

お店は洞爺湖温泉のメインストリートに面した、元ドラッグストアを改装。
当初は大型アウトドアショップのように沢山の商品を仕入れて大量に陳列するイメージでいたそうですが、突然現れた個人経営の新店にいきなり商品を卸してくれるメーカーは決して多くはなく、そこで助けてくれたのが桃さんの2人のお姉さんでした。

一番上のお姉さんが切り盛りする伊達の「めむはうす」は、地元では有名な雑貨店。販売のノウハウや仕入れのルートを紹介してくれるなど、二人を支える強い味方でした。
取材当日はめむはうすの定休日だったので、なんと自転車で遊びにいらしていました!こっちも仲良し!

ちなみに下のお姉さんのお店はZERODAYと同じ道路沿いにある「HOLIDAY MARKET TOYA」という雑貨のセレクトショップ。おしゃれでかわいいアイテムがいっぱいなので、どちらも要チェックです。

ところで、みなさんは「アウトドアショップ」と聞くと、興味はあるけどちょっと入りにくいイメージってありませんか?
奇しくもコロナ禍によるキャンプブームで、アウトドアが随分身近になりましたが、例えば「山という山を制覇し真っ黒に日焼け&雪焼けしたスペシャリスト以外は入っちゃいけないんじゃないか」とか、「専門的な道具の知識をつけてからじゃないと質問もできなそう」とか...。
実際にはそんなことないのですが、どんなお店でも「専門店」の扉を開くのは少し勇気がいりますよね。

ご心配なく。
ZERODAYの扉は、最初っから開いています。

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ていうか、扉...ある?
ここだけアメリカやヨーロッパのトレッキングルート沿いのまちを思わせるファサード。取材時(6月)はフルオープンで営業していました。

「私たち自身もアウトドアの楽しみ方はだいぶライトな層なので、誰でも気軽に入ってきてもらえる空気感のお店を目指しています。商品はできるだけ展示会などで触れたり、実際に使ってみて良かったものを置くようにしています。そのほうがお客さんにおすすめするときの熱の入り方が違ってくるんですよね笑。うちの場合、お客さんから良い商品の情報を教えてもらうことも多くて、一緒にネットを見ながら商品を探したりします」

さすが初対面でも警戒心抱かせないタイプ!
出会った人をみんな仲間にしていくタイプ!

アウトドアでみんながつながる場所を目指して

まだ3年目ながら、アウトドアを起点に多くのつながりを生み出してきた大須賀夫妻ですが、本当はもっともっと地元の人と一緒に楽しめることを増やしたいと考えているそうです。

太郎さんと桃さんが関わっている、ZERODAYの営業とは別の取り組みを2つご紹介しましょう。

~3milesclub~
毎週土曜日の9:00から約2時間、ZERODAY前に集まった人で洞爺湖周辺のフットパス(約5㎞程度)をのんびり歩くという、実にシンプルな企画です。シンプルだからこそ意外な化学反応もあり、例えば草や虫に詳しい参加者がいたら、ちょっとした講座のようになることもあったのだとか。

~Re:TOYAプロジェクト~
洞爺湖の魅力を再確認し、地域ぐるみのPRを目指すことを目的として生まれたプロジェクト。洞爺湖各地のスポットでスタンプを集める「THE MAP」には数多くの地元事業者が賛同し、これまでに約60名の制覇者が現れました。Instagramとの連携も図り、何度も洞爺を訪れてもらうためのきっかけづくりとして成果が上がり始めています。参加店同士がお互いに紹介し合ったり、はじめての店でも入りやすくなったという感想をお客さんからもらったり、意外な好循環も生まれているのだとか。

人のつながりがさらに人を呼び、全道各地のアウトドア事業者やショップ関係者の仲間も増え、お店に来たお客さんに近隣のアクティビティ情報の紹介をすることもあるそう。
アウトドアショップとしての純度も高まっていそうですが、それも善し悪しな部分を感じているそうで...

「ただ、こうやっていろいろイベントとかプロのアウトドア事業者さんの紹介とかやればやるほど、『やっぱりガチの人たちの店だ』と思われてしまうこともあって...。一緒に関わってくれている方たちは、もちろんプロでガチな人もたくさんいますが、ぼくら自身は全然そんなことはないただのアウトドア好きなので、ほんとに気軽に遊びに来てほしいです。今はそこがジレンマですね笑」

長い旅路の途中で、歩かずにのんびりリフレッシュするオフの日。そんな一日のことを0 mile day = ZERODAYと呼ぶそうです。
今後は入口にカフェスペースを作り、アウトドアに興味がない人でもふらりと立ち寄れるようにしたいと話す太郎さんと桃さん。そして「アウトドアギアを売るだけのショップではなく、人が集まる場所を作りたいんです」、とも。

1軒のショップを基点に、洞爺のアウトドアフィールドを自ら楽しみ、それを伝える。
近い将来、ここから洞爺の新たなアウトドアカルチャーが生まれそうな予感がビンビンです。洞爺に行くならぜひ一度立ち寄ってみては?

ただし、大須賀夫妻とお店の魅力にはまってしまっても、当方では一切責任を負いませんので、その時はアウトドアライフを存分に楽しみましょう。
忙しい毎日に、ZERODAYを。

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ZERODAY 大須賀太郎さん・大須賀桃さん
ZERODAY 大須賀太郎さん・大須賀桃さん
住所

虻田郡洞爺湖町洞爺湖温泉45 柴田屋ビル1F

電話

0142-82-3020

URL

https://zeroday-toya.com/

https://www.instagram.com/zeroday_toya/

https://www.instagram.com/retoya_project/


洞爺の新たな面白さ発信!外遊び大好き夫婦がまちと人をつなぐ!

この記事は2023年6月20日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。