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土地に惚れ込み三笠に移住、絶景ヴィンヤードで夢の実現を20230612

土地に惚れ込み三笠に移住、絶景ヴィンヤードで夢の実現を

北海道の中央部に位置する三笠市。 札幌や旭川から車で一時間、新千歳空港からも車で一時間ほどと、アクセスしやすい場所に位置します。 かつては北海道有数の炭鉱のまちとして栄えました。豊かな自然に囲まれたこのまちには森や湖などが多くあり、釣りやキャンプなどアウトドアレジャーが楽しめるのが魅力です。また、南部には大雪山系が広がり、ハイキングや登山を楽しみつつ、四季折々の風景を味わうこともできます。

山と緑に囲まれた三笠市の達布(たっぷ)地区、その小高い丘にある山﨑ワイナリー。かつて麦畑だったこの土地には、大切に育てられてきたワイン用のブドウ畑が広がっています。丘を吹き抜けてくる風のざわめきに、小鳥のさえずり。開放感のなかで、自然と深呼吸をしたくなる光景です。

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今回の主役は、山﨑ワイナリーで6年間修業した後、隣接した土地で「AKASAKA Vineyard(赤坂ヴィンヤード)」を始めた赤坂卓也さん。ヴィンヤードとは、ブドウを栽培する農園のこと。この秋に初めての収穫を迎え、オリジナルのワイン醸造に向けて日々畑作業に励んでいます。

札幌市出身で高校まではサッカー、大学時代はラグビーに打ち込み、卒業後はトマムのリゾートホテルに勤務。 三笠市に移住するまで「ワインはよく知らなかった」という赤坂さんが、なぜこの世界に?
これまでの道のりと、これからの楽しみなプランについてお話を伺いました。

独立1年目、自家栽培のブドウでワインづくりを目指す

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赤坂ヴィンヤードは、山﨑ワイナリーの畑の続きにあります。植えているブドウは3種類で、人気の高いピノ・ノ ワールとソーヴィニヨン・ブラン、そして「山﨑のワインのなかでも抜群に美味しいんです!」というピノ・グリに絞り込みました。

大切なブドウの木を守るために、畑の周囲にはエゾシカ除けの電気柵、野ウサギ用には低い位置にネットを張り 巡らせています。
「ウサギの被害が多いんですよ。雪解けの4月ごろに来て、畑の小さな苗木を噛みちぎってしまうんです」と苦笑いをする赤坂さん。
「まあ、それだけこの場所は自然が豊かという証拠なんですけどね」

育てているブドウの木は3年目で、秋には初めての収穫とワインの仕込みを迎えます。取材時の5月中旬は、 ちょうど「芽かき」のシーズン。枝から余分な芽を摘んでいく作業を見せてもらいました。どれを残してどれを減らすか、たいへん神経を使う作業だといいます。
「もう少しすると、ブドウの葉が茂って一面が緑色になって、初夏には小さな花が房状に咲くんです。花からは せっけんの香りがして、僕はとても好きなんですよ」と、ブドウへの愛情を語る赤坂さん。

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ワインの品質は、ブドウの質が8、9割を占めるそうで、造り手の裁量が試されます。また、雨量や日射などの自然条件にも左右されるため、毎年ブドウの出来は違ってくるのだとか。

「ワインの仕込みはいつも同じではなく、 その年のブドウにとって適切な処理を施していくんです」と赤坂さんは強調します。
仕込みは1年に1回だけの真剣勝負。その経験を重ねるだけ上手になる。赤坂さんの言葉を借りれば「つかんでくるものがある」のだそうです。

山﨑ワイナリーで経験を重ねてきた赤坂さんですが、自分の畑でのブドウ栽培に当たっては、
「正直なところ、楽しみが半分、不安が半分です。これで収穫できるんだろうかと思ってしまうこともあります」と話します。
その一方で「この畑でも前の方と奥の方では土壌と日当たりが違いますから、違う味のブドウができると思うんですよね」 と、楽しそうにブドウづくりの魅力を話してくれました。

野外教育を学び、リゾートホテル勤務で芽生えた夢

ところで、「お酒は好きだけれどワインにはあまり関心がなかった」という赤坂さんは、なぜこの道に入ったので しょうか。これまでの経歴をお伺いしてみました。

札幌市出身の赤坂さんは、将来は教師になろうと北海道教育大学の岩見沢校に入学。大学の先輩で、赤坂さんに大きな影響を与えたのが、山﨑ワイナリーの次男で、現在はブドウ栽培を担当する山﨑太地さんです。赤坂さんはワイナリーの収穫ボランティアに参加したのをきっかけに、太地さんと一 緒にお酒を飲みに行くようにもなりました。

そして、4年生になる前の春に転機が訪れます。

「あるゼミの先生のプロジェクトに参加したのですが、それがとても面白かったんです」 と赤坂さん。
野外教育をテーマとするそのゼミで学びたいと大学院に進んで、子どもたちとのキャンプや学生たちとの山登りなど、自然活動を通じてさまざまな人と出会い、研究をする2年間を送りました。

そこで得たものは、教育とは先生として子どもに教えるだけではなく、あらゆる世代の人たちの成長を促す、多様な教育のスタイルがあると知ったこと。そしてもう一つは、自然のなかで過ごすことの贅沢さ、心地よさをでした。
「ゼミ活動でご一緒したある方が『風を肌に感じたり、風の音を聴いているだ けでも気持ちいいよね』とおっしゃっていて、僕もその世界観に共感しました」

mikasa_akasaka05.JPG収穫ボランティアにて。この経験が後の人生に大きな影響を与えます。

2014年に大学院を出た後、もともと人が好きなこともあり、接客の仕事への就職を希望した赤坂さんは星野リゾートトマムに就職しました。

「接客が好きだったのもありますが、星野リゾートは、例えばトマムだったら『雲海テラス』のように、地域や自然の良さをお客さんに体験してもらうことをとても大切にしているんですよね。地域の良さについてすごく考えている企業ってすごいな、と思いましたし、僕の思いと共通するところ もありました」と赤坂さん。

mikasa_akasaka06.JPG星野リゾートトマム勤務時代の一枚。

入社後は、自然体験ができるアクティビティの担当を希望していましたが、配属されたのはフロントでした。

「毎日200人から300人のお客さんと接していました。直接『ありがとう』の言葉をいただけるのはうれしかったですね。 時にはクレームもありましたが、私は接客が好きなので充実していましたし、とても勉強にもなりました」

合間にはレストランや客室業務もあって多忙な日々でしたが、お客さんに喜んでもらえる宿泊業の面白さを知った赤坂さんは、やがて自分の宿を持ちたいと強く思うようになります。卒業後も連絡を取っていた山﨑太地さんにそれを話してみたところ、「ウチでやればいいんじゃない?」という返事をもらいます。その言葉に押されるように して、赤坂さんは自家製ワインを提供する農園の宿をつくろうと、山﨑ワイナリーのある三笠市への移住を決意しました。

山﨑ワイナリーで農業への戸惑いから面白さを知るように

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2017年、赤坂さんは三笠市の地域おこし協力隊に入り、山﨑ワイナリーで研修の日々を送ります。地域おこし協力隊を修了した後も3年間、独立することを前提に社員として働きました。ホテルマンから転身した最初の1年は、かなりのつらさもあったといいます。

「私はスポーツ好きで、何に対しても 全速力で駆け抜ける性格だったんですよね」と自己分析をする赤坂さん。リゾートホテルの多忙なフロントでも、 その能力を生かして数百人のお客さまに全力で丁寧に、そしてスピーディーに対応してきました。

「ところが、農業はスピード重視ではなく、ゆっくりであっても着実に、ずっと動き続けているのが大切なんですよ。猛暑のなかでも、一日中畑で働き続けなければいけない。自分の頭と身体を切り替えていくのに時間がかかりましたね」

mikasa_akasaka08.JPG山崎ワイナリーで研修を始めて間もない頃。自らの木を植えた際の一枚。

また、1年目の赤坂さんにとっては、すぐには結果が出ない農業、醸造という仕事に対するジレンマもありました。

「いまやっている作業が何につながるのか、どういった成果になるのかという見通しがつかないことがつらかったです。でも、これを1年、2年とやっていくと、自分のやっている作業の意味や段取りが分かってきて、『これは面白い!』と感じるようになったんですよ。それからは『もっとこうしてみよう!』と工夫もするようになりました」

少しの手入れの違いやタイミングで、できるブドウも違ってくる。場合によっては、何もせずに待つことが良いときもある。抗わずにその土地の力を生かしたブドウづくり、ワイン醸造を行う山﨑ワイナリーで学びながら、赤坂さんはその奥深さに惹かれ、ワインを飲むことも大好きになったのでした。

人に恵まれ、景色に惚れ込み、三笠の地に根を下ろす

「農業にまったく縁がない自分が、ブドウ栽培へ飛び込むことに不安がなかったかといえば、むしろ不安は大きかったし、今でもあります」という赤坂さん。
そんなご自身を支えてきたものは、何だったのでしょう?

「まずはこの達布(たっぷ)地区の丘陵地帯に広がるブドウ畑の景色です。初めて来たときに、風が気持ちよくて、 景色も素晴らしくて一目惚れ、ピンと来ました!」と赤坂さん。
特に、景色をオレンジ色に染めて沈んでいく夕日 はお気に入りで、名刺のロゴマークに入れているほど。同じように欠かせないのは、この三笠市で会った人の縁だと赤坂さんは話します。

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「太地さんは、楽しいときも、しんどいときも一緒に農作業をしているので心強い存在です。山﨑家の人たちも良い方たちばかりで、将来的に宿を持ちたいという夢への応援もしてくれました。それに、三笠市役所の方も親身になってくれて、フレキシブルに対応してもらえたり、住む家を紹介してくれたりと。たくさんお世話になっている分、みなさんに恩返しをしたい気持ちがあります」

山﨑ワイナリーで修業させてもらったことを感謝しているという赤坂さんは、こう振り返ります。

「ネットや本、参考 文献なども調べましたが、実際には書いてある通りにならないことも多いんです。それは、ブドウの出来によって ワインにするための適切な処理が違ってくるからなんですよね。やはり学びになったのは、20年の自家栽培、自家醸造の歴史を持つ山﨑ワイナリーでの実地研修でした」

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達布は、ブドウ造りに適した場所です。この辺りには、赤坂さんを含めブドウ農家が8軒、ワイナ リーは3軒あります。 冬は2mもの雪が積もるというこの土地。その雪が、ブドウを守ってくれるのだそうです。

「マイナス20度くらいになってしまうと、ブドウは越冬できなくて死んでしまうんです。ワイン用のブドウは寒さにも弱いし、病気にもあまり強くないので。でも雪の中だとそんなに低温にならない。 しっかり雪が降るこの地域だからこそ、ワイン用のブドウを育てられるんです」

十勝のような雪が少なくて寒い土地では、日本で交配された山ブドウ系の『山幸』など、寒さに強い品種が栽培されています。それに対して、ピノ・グリやソーヴィニヨン・ブランといったフランスを原産とする品種は、達布の土地と気候に合っているとのこと。

ブドウ栽培のお手伝いや朝のお散歩ツアーができる宿を構想中

現在も山﨑ワイナリーで働き、冬にはワインショップでアルバイトをしながら、この秋には赤坂ヴィンヤードとしてのブドウ収穫にワイン醸造と着実に歩みを進めている赤坂さん。5年後をめどに建てる宿のプランを構想しています。

「畑の横にトレーラーハウスがあって、ブドウ畑で目が覚めるのもいい。端の方に一棟貸しみたいなコテージみたいなのが1個か2個あってもいい。畑の真ん中くらいに建てたら面白いですけどね。この丘からの絶景や鳥のさえずり、吹きわたる風を感じたりしてもらいたいです。希望があれば朝の散歩ツアーを行ったりブドウ栽培の手伝いをしてもらったり、母屋で自家製のワインを飲んでもらいながら、 ゆっくりと過ごしてもらえればと思います」

mikasa_akasaka13.JPG畑の中を歩きながら、将来のビジョンを楽しそうに語る赤坂さん。

「私は接客が好きなので、できればおしゃべりをさせてもらえればと思いますけれども、静かに過ごしたい方もいると思うので、程よい距離で...」と、元ホテルマンとして「お客さま本位」が身についている赤坂さん。ほかにも、空知のワインづくりに関わる人たちや、お客さんが集まって交流するハブ的な施設として使うことで、まちや地域を 盛り上げるお手伝いができたらとも考えています。

ワイン造りのきっかけを与えてくれた山崎ワイナリーの人々。つらいときに励まし合った近隣の畑で働く人々。地域おこし協力隊として来た時に親切にしてくれた三笠市役所の人々。

「三笠の人々皆が本当に優しかったんです。知り合いも誰もいないところで仲良くしてくれた。自分と繋がってくれた人々へ、この地へ恩返しをしたいんです!」

「全速力で駆け抜ける性格だった」という学生時代や、慌ただしかったホテルマンのころと違って、「結構、人間的になったと思います。いまでは毎日の暮らしが楽しいですね」と穏やかな笑みを見せる赤坂さん。

接客が好き、 人間が好きという言葉が、そのたたずまいからも伝わってくるお人柄は、オリジナルのワインや農園の素晴らし い景色とともに、新しい宿でたくさんのゲストを惹きつけていくに違いありません。

収穫から熟成の工程を経て、赤坂さんのワインができあがるのは来春の予定。幾重もの「繋がり」によって作られたワインはどのような味がするのでしょう。ブドウ畑の奥に沈む、大きな美しい夕日を思わせるような、深い優しい味わいがするのかもしれません。

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AKASAKA Vineyard 赤坂卓也さん
AKASAKA Vineyard 赤坂卓也さん
URL

https://www.instagram.com/akasaka_vineyard/


土地に惚れ込み三笠に移住、絶景ヴィンヤードで夢の実現を

この記事は2023年5月16日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。