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北海道で暮らす人・暮らし方
中頓別町

恵まれた環境で、地域おこし協力隊からフィッシングガイドへ20230308

恵まれた環境で、地域おこし協力隊からフィッシングガイドへ

北海道北部、宗谷地方にある中頓別町。明治末期に砂金が見つかり、一時は多くの人たちでにぎわいましたが、現在は豊かな森と清流に囲まれた林業と酪農が盛んな町です。

日本最北の鍾乳洞「中頓別鍾乳洞」があることでも知られています。

この町で、大好きな「釣り」を仕事にしているのが、今回登場していただく三浦毅さんです。2021年の春からフィッシングガイドサービスを行う「TEKU-TEKU」をスタート。三浦さんに中頓別町での暮らしのこと、仕事のことなどを伺いました。

小学校時代に知った釣りの面白さに父親とハマる

三浦さんは札幌市出身。小学校に入る頃にたまたま自宅の物置で見つけた竿を持って、近くの川へ行ったのが釣りをはじめるきっかけでした。釣りに夢中になった三浦さんは、もっと上手になりたい、もっとレベルの高い釣りを経験したいと、本や資料を読み漁ります。

「とにかく釣りをするということが楽しかったんですよね。最初は河原で虫を見つけてそれを餌にして魚釣りをしていたんですが、そのうち疑似餌釣りがしてみたくなって、父親を誘ってフライ・ルアーフィッシングを始めました。小学校の2、3年生のときだったかな。父は海釣りをしていて川釣りはやっていなかったんです。でも僕がきっかけで父も川にハマって、毎週末のようにいろいろな川へ二人で釣りに行きました」

nakaton_miura2.JPG車の後ろには色んなグッズが積まれています。

もらったお年玉もすべて釣り道具につぎ込むほどのめり込み、小学校時代は釣りばかりしていたそう。「川釣りは、魚が釣れるポイントを探しながら先を読んで移動したり、周りの状況を見ながら考えたりして動くんです。それが面白かったんだと思います」と釣りにハマった理由を教えてくれました。

中学、高校は陸上部で長距離走の選手として活躍。部活が忙しく、釣りに出かける回数は減りますが、「それでもやっぱり休みがあれば釣りに行っていました」と笑います。神奈川の大学へ進学してからは、再び釣り三昧の日々。横浜のみなとみらいエリアが自転車で行ける距離だったこともあり、海釣りもするように。

「海ではスズキがよく釣れました。あとは、バイクも持っていたので、山梨のほうや芦ノ湖なんかに遠征してそちらでも釣りを楽しみました。大学卒業後は、そのまま関東で就職。社会人になったので思い切って車を購入し、休みのたびに千葉や茨城方面へ出かけ、千葉ではブラックバスをよく釣りましたね」

30歳のとき、地域おこし協力隊として中頓別町へ

nakaton_miura4.JPG目がとってもキラキラしている三浦さん。


神奈川で結婚し、所帯を持った三浦さんでしたが、30歳のとき、生まれ故郷の北海道へ帰ろうと思い立ちます。

「いずれ北海道へ帰るつもりではいました。たまたま地域おこし協力隊というものがあると知り、サイトなどを調べてみたら中頓別町で募集をしていたんです。ネイチャーガイド的な仕事をすると書いてあって、挑戦してみようかなと。今でこそ地域おこし協力隊はみんなに知られていますけど、当時はまだ『それ何?』と言われることも多かったころでした」

川以外の自然に関しても興味があった三浦さん、無事採用が決まり、実家のある札幌を飛び越えて中頓別へ。「森も川もあって、釣りをするにはいい場所だなと思っていました。何が釣れるかなって楽しみでしたね。近くの猿払村にはイトウがいるし」と振り返ります。

話を伺っていると本当に釣りが好きなのだなと感じます。とはいえ、移住となると奥さんの同意も重要になるのでは...?と尋ねると、「移住する際、田舎だから嫌というのもなかったようです」とニッコリ。奥さんは釣りをしませんが、三浦さんの釣り好きに関しては認めてくれていて、食べられる魚を釣ってくると、おいしく料理してくれるそうです。

仕事を機に、自然の知識や写真撮影にも興味を持つ

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三浦さんは協力隊員として、鍾乳洞のある「中頓別鍾乳洞自然ふれあい公園」で仕事を始めます。公園を訪れる人たちのガイドをしたり、園内の看板や表示物の制作をしたり、ホームページも作成し、SNSの発信も行いました。そうした仕事の傍ら、ガイドとして知識を深めようと北海道アウトドアガイドの資格も取得。

「釣りで森や山の中に入ることはしょっちゅうで、昔から自然には親しんでいました。なので、仕事内容的にはとても楽しく取り組めました。SNSにアップするために園内にある植物や昆虫を写真に撮って調べているうちに、いろいろ知識もついてきました」

さらにこれがきっかけで、カメラにも興味を持ちはじめ、一眼レフを購入して、趣味も兼ねて自然の景色を撮影するようになります。仕事を通じて、興味の幅が広がっていったそう。

協力隊員任期終了後も町に残って自然にまつわる仕事を

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3年の任期を終えたあと、三浦さんは中頓別町の職員になり、そのまま町に残ることにします。その理由を「出る理由がなかった」と振り返ります。釣りの環境も良く、ネイチャーガイドの仕事も楽しく、暮らしも十分満足していたからだそう。

「確かに店は少ないけれど、近くの名寄に行けば大型のショッピング施設もあるし、隣の浜頓別にホームセンターもドラッグストアもあるし、そもそもネットで買い物ができるから、日常生活で不便を感じることはほぼないんです。むしろ都会にいるより、釣りのできる場所がすぐそばにあるほうが僕としては嬉しい。今もそうですが、仕事前や仕事後にすぐ釣りに行ける環境がとても気に入っています」

nakaton_miura6.JPG町内にはスキー場もあります。

三浦さんは町の職員として、「中頓別鍾乳洞自然ふれあい公園」のほか、「そうや自然学校」の運営や管理も担当。「そうや自然学校」は、廃校になった学校の建物を用いた都市と農村の交流を図ることを目的とした施設で、手つかずの中頓別の自然に親しむさまざまなアクティビティプログラムを提供しています。

「協力隊のときからガイドとして体験ものやイベントの企画はやってきましたが、自然学校の運営に携わるようになってから、さらに広い範囲で中頓別の自然と関わるようになりました。それまでカヌーなどに乗ることはなかったのですが、カヌー体験なども手掛けるようになりました」

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その後、一般社団法人「なかとんべつ観光まちづくりビューロー」を設立することになり、三浦さんは立ち上げから関わります。ビューローは、自然や食、産業などの観光資源を生かした観光客誘致のほか、地域住民に町に誇りと愛着を持ってもらえる地域づくりの場として設立。設立と同時に、三浦さんもビューローの責任者として転籍し、そうや自然学校の運営も指定管理者として請け負います。

釣り好きを生かし、フィッシングガイドとして独立

ビューロー立ち上げのときから、いずれ独立することを決めていた三浦さん。2年が経った2021年、フィッシングガイドの事業を行う「TEKU-TEKU」を立ち上げます。

「独立したとはいえ、今もネイチャーガイドの仕事や地元の子供たちの自然体験教室のサポート、森の保育園の活動支援などは行っています。ちなみに、この町の子どもたちは、3歳から森の保育園で豊かな自然に触れながら成長していきます。だから、都会の子と違って、山や森、川でどうやって遊ぶかを自然と身に着けているんですよね。たくましい子が多いと思います」

そう話す三浦さんにも5歳になる息子さんがいます。一緒に釣りに出かけることもよくあるそうで、「冬はわかさぎ釣り、夏は川でニジマス釣りを楽しんでいます」と嬉しそうです。

安全に釣りを楽しめる環境を提供するのがガイドの仕事

nakaton_miura8.JPG中頓別町の多くが森林で囲まれています。


「TEKU-TEKU」を利用するお客さんは、ほとんどが道外の釣り好きな人たち。三浦さんはお客さんを連れて釣りスポットを案内し、時には秘密の釣りスポットへ連れていくこともあるそうです。

「北海道は自然に恵まれた、素晴らしい釣りのスポットがたくさんある場所。その一方で、手つかずの自然が多いということはクマと遭遇する危険もあるし、整備がされていない危険なところもたくさんあります。フィッシングガイドの仕事は、お客さんに安全に釣りを楽しんでもらえる環境を提供することです」

フィッシングガイドのシーズンは5~11月。雪深い冬は、夏の準備を行ったり、宣伝活動を行ったりします。東京で開催される釣りのイベントに出向き、一人でも多くの人に釣りスポットとしての道北の魅力をPR。また、地元のハンターが仕留めたエゾシカの皮を使った毛鉤「ディアヘアー」を作っているという三浦さん。それらもイベントに持っていく予定だそう。

「エゾシカの皮を使ったメイドイン北海道と言うと、みなさんとても興味を示してくれるんですよ。毛の品質もイイねと評判です」

自然から四季を感じられるのが、田舎暮らしの魅力

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「僕にとって中頓別は暮らしやすくて、居心地がいい場所なんですよね。もちろん大好きな釣りも楽しめますし」と話す三浦さん。ここの暮らしで気に入っているのは、「自然を通じて四季のリズムを感じられるところ」だそう。

春になると雪が解け、山菜が芽を出します。そして、雪解け水がなくなる頃から、緑豊かな森に囲まれ、川釣りがスタート。秋になると森は美しく紅葉し、キノコなどの山の恵みをいただきます。冬は雪で閉ざされてしまいますが、厳しい冬があるからこそ春の訪れの喜びもひとしおです。

「手つかずの自然が多く、人口も少ない中頓別では、そもそも山に入る人の数も少ないので、札幌近郊とは比べ物にならないほど立派な山菜や行者ニンニク、ラクヨウもたくさん手に入りますよ(笑)。自然の四季を感じながら暮らせるのは、田舎暮らしならではの醍醐味。こういう生活をしてみたいという人には満足度の高い暮らしができると思います」

都会で暮らしていた経験があるからこそ、自然に囲まれた田舎での生活が豊かなものであることを実感している三浦さん。釣りと自然への愛がひしひしと伝わってくるインタビューでした。

フィッシングガイドサービス TEKU-TEKU 三浦毅さん
URL

https://teku-teku.hokkaido.jp/


恵まれた環境で、地域おこし協力隊からフィッシングガイドへ

この記事は2023年1月16日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。