洞爺湖畔にある人気牧場、レークヒル・ファーム。
見渡す限りの雪原にたたずむカフェ風の建物。その奥には羊蹄山を望む、雄大なパノラマが広がっています。ここは虻田郡洞爺湖町にある牧場、レークヒル・ファーム。その名の通り、洞爺湖畔の小高い丘の上にあり、夏には大勢の観光客が訪れ、酪農体験なども楽しめる人気のスポットです。
取材チームがお邪魔したのは、オフシーズンの1月下旬。
さらに平日にもかかわらず、お店は多くの人で賑わっています。みなさんのお目当ては・・・搾りたて牛乳を使ったオリジナルジェラート!「美味しいスイーツのためなら、寒さなんてへっちゃら!」とばかり、お店には次から次へと注文が入ります。
そんなお客さんのオーダーに応じ、手際よくジェラートを盛り付けているのが、今回の主役、山下雪乃さん。作業が一段落すると「お待たせしました!」と愛らしい笑顔を見せてインタビューに答えてくれました。
決め手はロケーション!専門学校を卒業後、単身北海道へ。
山下さんは2020年4月に入社した、レークヒル・ファームの新人社員です。出身は千葉県。専門学校を卒業するのと同時にひとり北海道に移り住み、同社の一員となりました。「両親が動物好きだったので、子どものころからさまざまな動物に囲まれて育ちました。イヌ、ネコはもちろん、ニワトリなども飼ったりして。その影響で私自身も動物が好きになり、仕事にも繋げられればと動物について学ぶ専門学校に入学したんです」
ちなみにこの学校は動物園や植物園、水族館などに向けて、動物の輸出入や輸送を手がける会社が母体となっていて、学校にはフラミンゴやクジャク、ホワイトタイガーなど、まさに動物園でしかお目にかかれないような動物たちが多数飼育されていたのだそう。
「同級生の多くは動物園や水族館の飼育員を志望していましたが、私は動物に関わる仕事以外にも興味があり、就職先を迷っていました。そんな時、登別に住む親戚からレークヒル・ファームで社員を募集しているという話を聞き、応募を考えるようになったんです」
千葉に住む山下さんがなぜ北海道の牧場に?と思うかも知れませんが、実は山下さんの両親は共に北海道出身。登別には母方の実家があり、山下さん自身も、過去にたびたびレークヒル・ファームを訪れたことがあったのです。
「親戚から社員募集の話を聞いたときは、あの牧場!とすぐに思い出しました。募集されてたのが酪農ではなくショップスタッフのほうだったので、いろんなことをやってみたいという私の希望にもあっていて、すぐに連絡して見学に伺うことになりました。
見学は3日間の予定だったんですが、着いてすぐ『ここで働きたい!』と気持ちが固まりました。理由はこのロケーション。こんな素敵な景色を毎日見ながら働けるなら、それで十分だと思ったんです」
近くに親戚が住んでいることも山下さんの背中を押したよう。実際、入社から1年は親戚の家に居候して、職場まで通勤。今は伊達市内で一人暮らしをしているといいます。
「地元を離れることについても、特別、寂しさは感じませんでしたね(笑)」
お昼ご飯はみんなで一緒に!心優しい仲間たちが魅力。
現在、携わっているジェラートの製造・販売について聞くと、製造は機械が行ってくれるので、特に難しいものではないのだそう。一方、販売の際は、しっかり「映える」ように盛り付けなければならず、なかなか難しいとのこと。「昨年まではカフェのほうで働いていたので、ジェラート担当になったのはここ最近なんです。盛り付けについてはまだまだ試行錯誤中ですが、手渡したジェラートをおいしそうに食べているお客様を見ると嬉しい気持ちになります」
お店では、ブルーベリーやかぼちゃ、しそ、あずきなど30種類ほどのフレーバーをラインアップし、季節ごとに約20種類が店頭に並びます。ブルーベリーやかぼちゃは牧場内の農園で自家栽培されたものだとか。
「私の一押し?うーん、どれもおいしいので迷いますが、1つあげるなら白花豆のジェラートかな」
最近はプライベートで他のジェラート店を訪れ、どんなフレーバーが人気なのかチェック。
「そういうことをするようになったのも、仕事が楽しく、やりがいを感じているからかもしれないですね」
入社からまもなく3年になる山下さんに職場の魅力を聞くと、やはりここから見える景色が一番だと、迷いなく答えます。
「後ろには洞爺湖、前には羊蹄山。一年を通して四季それぞれ美しさがあり、こういう環境で働けることを、私はとても魅力に感じているんです。個人的に一番好きなのは、まだ野の花も残っている初秋の夕焼け。羊蹄山が赤く染まり、息を呑むほど感動的です。
それともうひとつ、ここの魅力と言えるのは、一緒に働くスタッフのみなさん。ショップも牧場も関係なく仲が良く、すごく優しい人が多いと思います。お昼ご飯はみんなで一緒に食べたりして、家族的な雰囲気も気に入っています」
聞けば昼食時はご飯と味噌汁、そしてジェラートが食べ放題で、各自はおかずを用意するだけ。スタッフの中にはどんぶりいっぱいのジェラートを食べる人もいるとか、いないとか...。
夏の繁忙期には目の回るような忙しさになるものの、お互いにフォローし合いながら、お客さんを迎えているのだと教えてくれました。
「自分たちの手でブルーベリーを収穫したり、花壇に花を植えたりするのも、こういう職場ならではですよね。私は外で体を動かすことも好きなので、率先して作業を行い、時には牛舎で牛のお世話も手伝ったりしています。これからの目標ですか?うーん、この場所をもっとたくさんの人に知ってもらうことかな。私にできることはまだ少ししかないですが、いろんなこと貢献できるようステップアップしていきたいと思っています」
できる限りの省力化に取り組み、働きやすい環境に
最後に、同社で運営責任者を務める塩野谷さんにもご登場いただき、人材採用への考えを伺いました。「うちでは数年前から、酪農や農業について学んでいる大学生を対象に、積極的に新卒採用を行っています。新卒学生の採用に力を入れるのは、その素朴さや素直さに魅力を感じるから。スタッフの定着率も良く、近隣の牧場のなかでは若いスタッフが多いほうだと思います」
生き物と向き合う酪農という仕事。しかも繁閑の波がある観光に力を入れていることから、働き方が変則的になることは否めないという塩野谷さん。しかし、そうであるからこそ融通が利く部分は全力で効率化を図ってるのだそう。
「例えばカフェで出しているピザは、生地の製造を地元の福祉施設に委託していて、私たちから見れば業務の削減を、福祉施設の側から見れば障がいを持つ方々の雇用の確保というwin-winになる仕組みを構築しています。そのピザを焼くオーブンも最新式のものを導入し、簡単な操作で誰でも美味しく焼けるようにしています」
また3月には、カフェに5カ国語対応の券売機を導入予定で、外国人観光客に説明をする時間を短縮。
「お客様とのコミュニケーションは大切なことですが、同じ説明を一日に何十回もするとなれば、さすがにスタッフの負担が大きい。細かなことでも省力化を積み重ねて、仕事内容、時間、待遇のバランスを良くしていきたいと考えています」
レークヒル・ファームの今後については、あれもこれもと手を広げるのではなく「深掘り」をしていきたいと思いを語ります。
「お客様の癒しになるような部分に力を注いでいきたいですね。こういう場所ならではの時間の流れとか、自然との触れ合いとかをアピールしていければと。
天気の良い日は皆でバーベキューをする。農園でどんな野菜を育てようかとわいわい相談する。ライフスタイルそのものが仕事になる楽しさを、スタッフにも感じてほしいと思っています」
- レークヒル・ファーム 有限会社レークヒル牧場
- 住所
北海道虻田郡洞爺湖町花和127
- 電話
0142-83-3376
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