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北海道で暮らす人・暮らし方
岩内町

海と山と人情があるまちの、進化する子育て環境。20221005

海と山と人情があるまちの、進化する子育て環境。

岩内町は北海道の西海岸、積丹半島の「付け根」に位置し、明治期のニシン漁によって栄えたまち。今も日本海の荒波の中で育まれたサケやスケトウダラをはじめとする漁業が行われています。世界的スノーリゾート地ニセコからもほど近く、美しい海と山に囲まれた抜群のロケーションを兼ね備え、最近では町内で栽培されたホップと海洋深層水で醸造されたクラフトビールが誕生するなど、このまちに住む人たちのさまざまな活躍を通して、注目度が増しています。

そんな岩内町に2011年に移住してきたのが笠原亜里紗さん。札幌市からUターンしたご主人の辰徳さん、4歳の快瑠(かいる)くんとともに、小さなまちの豊かで幸せな暮らしを楽しんでいます。聞けば、子育てしやすい環境にも満足している上、この先はさらなる「進化」にも期待を寄せているのだとか。今回は、笠原さんの岩内暮らしと子育ての話題を中心にインタビューしました。

20220803_iwanai_kosodate_6.png岩内町での子育てについてお話してくださった亜里紗さん

スイカ、メロン、トウキビは買ったことがない!?

亜里紗さんは北海道清里町のご出身。大学進学に伴い、札幌市に暮らしの場を移しました。学生時代には札幌ドームのアルバイトスタッフとして働き、卒業後にそのまま就職したといいます。

「私は、主に修学旅行生や観光客をご案内する観光ガイドの担当でした。実は、主人と出会ったのが札幌ドーム。同じ職場で働いていましたが、彼が地元の岩内でお父さんの仕事を手伝うことになったので、先にUターンしたんです。私は結婚後もまだ札幌で働いていたので、2~3年はお互いが札幌と岩内を行き来するような週末婚状態(笑)」

亜里紗さんが岩内町に移住してきた当初は辰徳さんの家族や親戚しか知り合いがいなかったと振り返ります。けれど、3カ月ほどが経ったところで、町役場のパート職員として働き始めると、一気に顔見知りが広がったと笑顔を見せます。

20220803_iwanai_kosodate_7.pngまちの高台に建つ岩内町役場。3階のフリースペースからは美しいオーシャンビューが望めます

「転勤などで町外から来る人が多いからでしょうか、まちの方々は明るく誰にでも気さくに話しかけてくれる雰囲気。移住者である私もすぐに受け入れてくれましたし、『一度会ったらもう知り合い』という人が多い気がします。気づけば玄関に野菜や魚介類などが入った袋が置いてあることなんてしょっちゅう。特に、メロン、スイカ、とうきびは買ったことがないくらいです(笑)。こんな高級食材をお裾分けしてくれるなんて、都会に暮らす人からするとうらやましい環境ですよね。最初は浜言葉が荒っぽく聞こえるかもしれませんが、本当に気にかけてくれることが伝わってきます」

やさしいおせっかいが大好きな町民に囲まれて暮らすこと約7年。亜里紗さんと辰徳さんとの間に快瑠くんが生まれました。

20220803_iwanai_kosodate_12.png4歳の「4」を教えてくれた快瑠くん

子どもの興味を広げるアートやスポーツ、国際交流。

現在町内には町立保育所が3カ所、私立幼稚園が2カ所あり、都市圏のように待機児童問題もありません。快瑠くんを保育所に預けて働いている亜里紗さんは、子どもの人数が多くはないからこそ、一人ひとりに保育士の目が行き届いていることを感じるそうです。

「息子もお友だちが増えましたし、近隣の公園に行ったり、カブトムシを取ったり、自然を生かした遊びを満喫しています。最近、家の中に出た虫を退治してくれるなど、少しずつ頼もしくなってきているかな(笑)。実は快瑠は今サッカーに夢中で、週2回『ちびっこサッカー教室』に通っているのですが、もしものための保険料が800円かかるだけ。元・中学校の校長先生で現在町議会議員の方が、子どもたちにサッカーや勉強を無償で教えてくれていて、本当にありがたいです」

聞けば、最近では札幌とオーストリア出身のご夫婦が営むクライミングジムもOPENし、大人はもちろん小学生くらいの子どもたちにも人気なのだとか。

また、町内には木田金次郎美術館やピカソの作品が収蔵されている荒井記念美術館があるなど、小さなまちとは思えないほどアートにふれられる機会が多いのも特徴的。木田金次郎美術館では、岩内高校美術部の顧問だった先生が、町民を対象とした「岩内絵画教室」を開いていて、子どもたちの展覧会を開いたり、商店街の各店舗に子どもたちが描いた絵を1枚1枚展示したりと、まち全体が展示会場みたいなんだそう。

さらに近年外国からの移住者も増えている岩内町では、子どもたちが彼らとの交流を通してネイティブの英語に触れられる機会も増えており、スキー場を運営しているYuki Kamui(株)では毎年、小学生などを対象に各種アクティビティをすべて英語で行う「サマーキャンプ」が開催されています。

「息子はまだ小さいので参加してませんが、もう少し大きくなったらサマーキャンプも是非、体験させてみたいですね!」

子どもたちの興味や関心を引きつける取り組みやコンテンツ豊富な環境が、可能性を広げていきます。

まちのみんなが子どもの成長を見守ってくれる感覚。

亜里紗さんは岩内町の暮らしにも満足しています。まちにはコンビニはもちろんスーパーマーケットやドラッグストア、100円ショップやホームセンターもありながら、昔ながらの精肉店や鮮魚店、酒屋や洋菓子・和菓子店などの専門商店も多く、普段の買い物にはまったく困らないといいます。

「岩内町民はBBQが大好きなんです。週末ともなると、あちらこちらの家から肉を焼く香りが漂ってきます(笑)。だからなのかは分からないですが、まちのなかには4店舗も精肉店があって、私たち家族も、そこで買ったお肉とおすそ分けの野菜や魚介でよくBBQをします」

お庭のある家が多かったりで、近隣を気にせず気軽にBBQができる環境は、まさに都会にはない日常なのかもしれませんね。
他にもお休みの日には、亜里紗さんと辰徳さんと快瑠くんと3人で町内の公園で遊ぶのことが多いのだとか。中でも、絶景が眺められる「いわないオートキャンプ場 マリンビュー」内の公園に出かけるのがお気に入りだそうで。

20220803_iwanai_kosodate_1.png圧巻の景色が眼下に広がります

「『いわないオートキャンプ場 マリンビュー』のなかの公園は、小さい子用と大きい子用の遊具が揃っていて、私も快瑠もお気に入りの場所。青く広がる日本海と岩内のまちを眺めながら子どもを遊ばせられる、このまちならではの公園ですね。コロナ禍でしばらく中止でしたが、今年は港で花火大会もあるし、規模を縮小しながらも岩内神社のお祭りがありました。都会のようにあちこちでイベントが開かれるわけではありませんが、限られた中でも子どもが楽しめる催しがあるのは助かります。息子は毎日のようにお祭りに行って、目をギラギラさせて金魚すくいに熱中していましたね(笑)」

20220803_iwanai_kosodate_9.png200年以上の歴史をもつ岩内神社例大祭。町内を天狗が練り歩きます

一方、町内には小児科を兼ね備えた大きな総合病院やクリニックはあるものの、専門外来が少ないことに不便を感じることはあると正直に語ります。

「例えば、町内には皮膚科の専門外来がないので、息子がアトピーになった時には隣町の倶知安まで行かなければなりませんでした。とはいえ、車で30分ほどなので、よほどの緊急時でない限りはそこまで大きな不安はないと思います」

数年後には小樽と余市を結ぶ後志自動車道(高速道路)が、倶知安町まで延伸され、岩内町から倶知安町まではもちろんのこと、人口約11万人の近隣都市である小樽市へも車で片道1時間ほどかかるところ、さらに短縮されます。

20220803_iwanai_kosodate_3.png「弁慶の刀掛岩」を背景に

「ほどよい田舎町でありながら近隣のまちとの交通アクセスも良いですし、海も山もあって自然環境も抜群。そして何より岩内の良さは『人』だと思っています。まちぐるみで子育てしているような感覚。商店街で知り合いに会うと、『あら、大きくなったね』とか『子育てで困ったことはないかい?』とか、気さくに話しかけてくれる人ばかりなんです。みんなが息子の成長を見守り、楽しみにしてくれているということを肌で感じます。こういった人の温かみは、都会ではなかなか得られないですよね」

新しい保育施設のオープンや小中一貫教育のスタート。

岩内町の子育て世代にとって、最近気になる話題といえば教育環境の進化。このホットなトピックスについて亜里紗さんと同じ岩内町役場で働く、経営企画部企画財政課地域創生係長の村瀬文彦さんが教えてくれました。

20220803_iwanai_kosodate_8.png岩内町経営企画部企画財政課地域創生係長の村瀬文彦さん

「岩内は他の自治体に比べて子育て面が先進的かといわれると、まだまだ後れを取る部分もあります。けれど、今後は子育てや教育にまつわる環境づくりにまちとしても力を入れていく予定です。さまざまな施策を考えている中でも、目玉となるのが令和8年の開設に向けて整備が進められている小中一貫校(義務教育学校)でしょうか」

新たな学校は、義務教育9年間の発達段階を踏まえた一貫性のある教育活動が推進されるほか、食物アレルギーに対応した給食室など、多様化・複雑化する社会状況の変化に対応した整備が進められていくとのことです。

20220803_iwanai_kosodate_10.png完成イメージ図。町内4つの小学校と中学校を統合し、小中一貫校となります

「最近よく耳にするのが中1ギャップ。小学校から中学校に進学する際、制服や環境、教師がガラリと変わることで心が不安定になってしまう生徒もいるといいます。小中一貫校の場合は、そのギャップを解消しやすいことも特徴です。また、年上が年下の面倒を見る機会も多いので、学年を超えて仲良くなりやすいことも良い点でしょう」と村瀬さん。

9年間という長期スパンで教育が行われる小中一貫校では、先生たちは長年、子どもたちの成長や学力などを見ることができるため、一人ひとりの個性や学力などを把握しながら細かなケアをすることもできるのだとか。
加えて、令和5年4月からは新たに町立保育所がオープンする予定。併設する子育て支援センターでは、これまで私立幼稚園や町立保育所でサービスを提供していなかった一時預かりも行うそうです。

20220803_iwanai_kosodate_11.png多様化する保育ニーズに対応していく新たな保育施設

「私の場合は用事がある時に息子を実家に預けられますが、ママたちが買い物や病院に行くために一時預かりが利用できるようになると本当に助かるはずです。これから移住してくる子育て世代にとってはますます良い環境に進化しますよね。まだ先のことですが、息子が小中一貫校でお兄ちゃん・お姉ちゃんに勉強を教わったり、一緒に行事を楽しんだり、そんな変化を目の当たりにできるようになることが今から楽しみです」と亜里紗さん。

岩内町の海を眺める柔らかな表情は、このまちの暮らしや子育て環境を心から気に入っていることを物語っているようでした。

20220803_iwanai_kosodate_4.png

笠原亜里紗さんご家族
住所

北海道岩内郡岩内町

◎岩内町公式ホームページ

https://www.town.iwanai.hokkaido.jp/

◎岩内町観光ポータルサイト

https://www.iwanai-kanko.jp/


海と山と人情があるまちの、進化する子育て環境。

この記事は2022年8月3日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。