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北海道で暮らす人・暮らし方
旭川市

北海道で自然と一緒に成長する。林業を学ぶ若者のストーリー20220908

北海道で自然と一緒に成長する。林業を学ぶ若者のストーリー

豊かな森林が広がる北海道。その森林面積は日本全国の森林の約4分の1を占め、木材の生産量も日本一を誇ります。そんな北海道の旭川市に2020年4月、林業・木材産業の専門学校「北海道立北の森づくり専門学院」(略称「北森カレッジ」)が開校しました。林業が盛んな北海道ではありますが、長年の課題のひとつが林業の担い手不足。
北森カレッジでは、道内各地の企業や、森林大国フィンランドとの連携・交流も図りながら、実践重視の2年間のカリキュラムを通して、これからの北海道の森林づくりを担える人材を育てています。

(北森カレッジについてはコチラ)

そんな北森カレッジに集まるのは、年齢も性別も出身地も異なるバラエティ豊かな生徒たち。生徒の中には北森カレッジで学ぶために北海道に移住してきた人も少なくありません。今回はその移住者の一人でもある、北森カレッジ2年生 部屋希美さんにお話を伺いました。

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栃木県で生まれ育った女子高生が、なぜ卒業後の進路に北森カレッジを選んだのか。
北海道で学び、暮らす中で感じていることとは。
そこには自然を愛する部屋さんの、「自然と触れ合いながら暮らし、成長したい」という思いがありました。

体を動かし、自然の中で学ぶ

部屋さんは、栃木県生まれ栃木県育ちの20歳。高校を卒業してすぐに、北森カレッジ入学のために北海道へ移住してきました。高校は地元の農業高校で、林業コースを選択していたという部屋さん。
高校入学時から林業を志していたのでしょうか?
「農業高校を選んだ理由は、きのこ栽培をしている学校だったからです。元々きのこが大好きで。見ても可愛いし、食べても美味しいし、種類がいっぱいで興味が尽きません(笑)。きのこに関する何かをやりたいなと思い、農業高校の林業コースを選択しました」
こうしてきのこへの興味から林業を学ぶようになった部屋さんは、次第に林業を仕事にしたいと考えるようになったそうです。
「林業コースで学んでいくうちに、仕事にするなら、自然と触れ合いながら仕事ができる林業がいいなと思うようになりました。そんな時に学校の先生が北森カレッジのパンフレットを持ってきて、体を動かして学びたいなら北海道に新しい学校ができたよと教えてくれて。せっかくなら北海道で学びたい!と思い、北森カレッジへの進学を決めました」

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北海道以外にも多くの林業専門学校がある中で、部屋さんが北森カレッジを選んだ決め手は『体を動かしながら学べるから』。
北森カレッジでは、生徒に実践的な技術力を身につけさせるために、チェンソーや高性能林業機械を実際に使用する授業が多くあります。部屋さんは当初の希望通り、体を動かして学ぶ実践三昧の日々を送っているようです。
「座学は高校で学ぶ内容よりも断然レベルアップしています。さらに授業の3分の2は実習と言っていいくらい、外に出て体を動かす機会が多いです。高校でもチェーンソーを使うことはありましたが、授業のレベルや回数は段違い。高校の時は丸太を2〜3本伐っておしまいだったけれど、北森カレッジでは何日も何日もチェンソーの使い方を学びます。冬には実際に山に入って、立木を伐ったりもするんですよ」

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「座学ばかりだとすぐ忘れちゃうから、体を動かせて学べるのはとても楽しい!」と笑う部屋さん。
実技の他にも、森林・林業に関する多種多様な授業がある中で、お気に入りの授業は「樹木学」だそうです。
「樹木学では、木の樹皮や葉っぱの形、冬芽の特徴などから樹木の種類を覚えるのがすごく楽しいです。私はまだ全然覚えられてないんですけどね(笑)」

ちなみに元々大好きだったきのこについては、「自主研究」のテーマに掲げて研究を進めているそうです。
「北森カレッジには、自ら課題を見つけて研究・発表する『自主研究』という授業があるんですが、私はきのこをテーマにして、なぜそこに生えているのか?生えやすい環境は何なのか?などを研究しています。学校の隣には林産試験場があってきのこの研究者もいらっしゃるので、疑問が生まれたら聞きに行ったりもしています」
林業に、きのこに。好きなことを学べる喜びが、部屋さんの笑顔から伝わってきます。

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校舎には誰もが林業や樹木、その他山に関係する本がズラリとならび、すぐに手にとって読めるコーナーもあります。

仲間と北海道を満喫!

生まれも育ちも栃木県の部屋さんは、これが初めての一人暮らし。縁もゆかりもない北海道での生活に、不安はなかったのでしょうか?
「ワクワクする気持ちの方が大きかったです。実際に北海道に来ると、栃木とは生えている植物が違うし、海無し県民としてはまず海があることにも感動しました。あとは、北海道は美味しいものがいっぱいというイメージだったので、そこも楽しみでしたね。旭川に来てラーメンにはまりました(笑)」
栃木県から遠く離れた北海道での進学を、ご家族も応援してくれたそうです。
「我が家は母子家庭なので、はじめは金銭的に厳しいかなとも思っていたのですが、北森カレッジに行きたいという気持ちを話したら、『じゃあいいよ』と送り出してくれました。母は『自分でやりたいことは自分で責任持って好きにやっていいよ』というスタンスで、結構フリーダムなんです」

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自分の好きなことに真っ直ぐな部屋さんの意志の強さは、ご家族の応援にも支えられているのかもしれません。
また部屋さんにとっては、北森カレッジの同級生たちも頼りになる存在のようです。
「北海道には知り合いがいないので、何かあっても頼れる人がいないという心配はありました。でも実際は、あまり問題なかったです。学校のクラスメイトとは男女関係なく仲がいいですね。休日一緒に過ごしたり、お祭りがあれば一緒に行ったり。私は車を持っていないので、車持ちの人に観光に連れて行ってもらったりもしています」

林業の業界には女性が少ないというイメージがありますが、北森カレッジには現在、2年生に6名、1年生にも6名と、女性の生徒も増えてきています。
「クラスには年齢は違うけど6人も女性がいるので、とっても楽しいです。女性同士、同じ悩みを共有できるのも心強いですね」
同じ林業を志す仲間と共に、学びも北海道も満喫しているようです。

北海道は自然と一緒に成長できる場所

「北海道に来てよかったことは、自然と一緒に成長できること」と語る部屋さん。
「北海道は、もはや生活の一部に自然がありますよね。そこが地元とは違う北海道の魅力です」と目を輝かせます。
本州とはスケールが異なる広大で豊かな北海道の自然は、「自然と触れ合いながら仕事をしたい」という部屋さんにとって、美味しい食べ物や観光地以上に、強く心を惹きつけるもののようです。そして、そんな自然に囲まれた北森カレッジで学べていることは、部屋さんのモチベーションも引き上げています。

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新しく学校に導入された大画面の林業機械シミュレーターです。生徒であれば誰でも好きな時間に練習することができます。

「学校は自然とたくさん触れ合いながら学べるし、林業や木材産業のプロにもたくさん会うことができます。フローリングの板を見ただけで樹木の種類が分かってしまうような木材のプロの方が外部講師で来られたり、先生の中には実際に林業の現場で働いていた方もいて、現場でのリアルな話も聞けたりもする。そんな環境で学んで成長できるのがすごくいいなと思います」
これから就職活動が本格化する部屋さんは、卒業後も林業に携わりながら、大好きな北海道に住み続けるつもりです。
「せっかくここで学んだのだから、北森カレッジで2年間学んだ自分達だからこそできる仕事をしたい。地元に帰る気は全然無いです。親も『好きなことをしてきなさい』って送り出してくれたから、自分の好きなことをやっていきたいと思っています」
柔らかい笑顔の中に、真っ直ぐな思いを抱く部屋さんに、北海道の森の明るい未来を見た気がしました。

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北海道立北の森づくり専門学院 部屋希美さん
住所

旭川市西神楽1線10号

電話

0166-75-6161

URL

https://www.pref.hokkaido.lg.jp/sr/kms/

0166-75-6161(代表)

0166-75-6163(教務課)


北海道で自然と一緒に成長する。林業を学ぶ若者のストーリー

この記事は2022年7月14日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。