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新ひだか町の移住者たちが集う!「午後カフェ」潜入レポート20220527

この記事は2022年5月27日に公開した情報です。

新ひだか町の移住者たちが集う!「午後カフェ」潜入レポート

移住の動機は様々です。
なんとなく生活の舞台を変えたくなる人もいれば、一念発起して夢を叶えるために移り住む人や、いわゆる田舎暮らしを目指して引っ越す人もいます。
そしておそらく多くの場合、現地に知り合いはほとんどいないのではないでしょうか。
初めての土地、新しい生活。
道内でも移住件数が多い新ひだか町に、移住者が集まる「午後カフェ」なる秘密集会(?)があると聞き、その実態を調査すべくお邪魔してきました!

午後カフェ誕生の歴史と「新ひだか町暮らし・サポーターズ」

木村孝男さんは2014年に新ひだか町に移住しました。
元々は東京でデザイン事務所を構える経営者(2005年に息子さんに継承)ですが、若いころから競馬が大好きだったことが高じて、50歳になる年にはついに新ひだか町内の一口馬主クラブ法人の会員になります。
馬への愛はその後も燃え続け、「いつかはここに住みたい」という思いは移住という形で結実します。
こうして馬産地と東京を行き来する、夢の2拠点生活がはじまりました。
あるとき、新ひだか町が主催する地方創生のワークショップに参加した木村さんは、
「人手不足で移住者のケアに回せるパワーには限りがある。家探しのサポートにしても、特定業者を紹介することはできない」
という、行政という公共機関ならではの悩みを耳にします。
これがきっかけとなり、2017年に移住者の悩み相談や困りごとをサポートし、移住者がさらに移住者を呼び込む仕組みづくりを目指す「新ひだか町暮らし・サポーターズ」が結成されました。
その活動の一つが「移住・交流カフェ」。

gogokafe2.JPG「午後カフェ」が開催されるsyzygy cafe(シジジーカフェ)
情報交換や雑談はもちろん、近隣農家さんでトマトの収穫体験や、移住者宅に集まってのミニコンサートなど、交流の場はさまざまです。
現在は「午後カフェ」に名前が変わり、月に1度移住者や体験移住者、そして地域住民が集まって、お茶を飲みながらゆるい情報交換の場を作っています。もちろん参加は自由。来たい人が来たいときに集まってきます。

ちなみに午後カフェの会場は「syzygy cafe(シジジーカフェ)」。
個性的な店名は、太陽・地球・月が1列に並ぶことを表す言葉に由来するそう。
東京からUターンしてきた夕張出身のマスターが、ネルドリップで入れる自家焙煎コーヒーや、天体をモチーフにした焼き菓子も、コーヒーに合うと人気です。

そうそう、こちらのカフェでは、「Radioしずない」という地域の情報を発信するポッドキャスト番組も配信しているそうですよ。この後紹介する移住者も出演しているとか。気になる方は聴いてみてください!

Radioしずない

gogokafe17.JPG

さて、木村さんは、2018年に日高管内初の民泊施設として、「サポーターズハウスときわ」をオープンさせます。家具家電付きの家を1棟まるごとリーズナブルに借りることができ、体験移住者からも、たいへん人気があったのですが、こちらは2022年春に営業終了とのこと。

新ひだか町暮らし・サポーターズ

取材当日、残念ながら木村さんはご不在。
木村さんは東京にいることが多くなったため、現在午後カフェは新ひだか町職員の市川福子さんが主体となって運営しているのだそうです。
ということで、お次は市川さんにいろいろ聞いてみましょう!

移住のことならおまかせ!市川福子さん登場

市川さんの肩書は、新ひだか町総務部まちづくり推進課 地域活性化・観光グループ所属の「移住コンシェルジュ」。
移住に関する相談やサポートを一手に引き受け、これまでに約400組の体験移住者を受け入れ、彼らの移住相談に乗ってきたその道のスペシャリストです。
木村さんの移住を担当したことをきっかけに、移住者向けの取り組みを一緒に企画してきました。

gogokafe18.JPG新ひだか町への移住のことならお任せ! 市川福子さん
...と、今でこそ受け入れ側の市川さんですが、よくよく話を伺うとなんとご自身も新ひだか町に移り住んだ移住者なのだとか。
以前は千葉に住んでいましたが、旦那さんが仕事で新ひだか町静内に住んでいたこともあり、何度か遊びに来たことはあったそうです。
しかしその当時は特に移住を考えていたわけではない上、北海道といえば雪まつりや富良野のラベンダーなど「これぞ北海道!」というイメージしかなかったため、当時の市川さんにとって新ひだか町は、「あれ、北海道っぽくないとこだな」という認識だったそうです。

その後本格的に移住を考え始め、道内をあちこち見て回った市川さん。
縁あって十勝の清水町で4年間アスパラの栽培に従事したこともあるそう。
「2~3回死にかけました」と、厳しい自然を相手にする農業の大変さを実感した市川さん、思いがけず新ひだか町のほうが自分にあっているのではないかと意識するようになりました。
「雪が少ないのと、地域に暮らすおじさんやおばさんが、妙に明るくて、良い意味で"いい加減"というか、イタリア的なラテン系のノリが、なんとなく肌に合ったんですよね」。
日高がイタリアとは初めて聞く例え!ちなみに旦那さんもラテン系だそうです。

gogokafe9.JPGドリンク片手に、楽しい時間を過ごす移住者の皆さん
こうして新ひだかに移住した市川さん夫妻。旦那さんはお花の栽培で新規就農しましたが、十勝での経験から自分は農業に向いていないと思った市川さんは、役場の臨時職員(移住担当)として入職。以来、所属部署は変われど移住の担当を続け、10年目を迎えました。

午後カフェが誕生した背景について改めて聞いてみたところ、市川さんが移住した際に実際に困っていたことがアイデアの源でした。
「移住したての時って、その土地になじみたいという気持ちが強い一方で、たまにその気持ちから離れて息抜きをしたい自分がいたんですよね。だから自分と同じような立場の人と話ができると気持ちがラクになるんじゃないかなあ、と思ったんです」。
全国を見渡すと、「農家のお嫁さんの会」や「〇〇県人会」など、移住者と似た立場の人たちの集まりがたくさんあるそうです。
新しい生活に悩みはつきものですが、その悩みの中には地元の人には打ち明けにくいこともあって当然。そんなとき先輩移住者に話を聞いてもらえたらとっても心強いですよね!
御多分に漏れず役場の業務はすこぶる多忙だそうで「だいぶ忙しい職場ですよ~」と話しますが、目は楽しそうです(笑)。

午後カフェ参加者インタビュー!

市川さんは自ら午後カフェの司会も務めています。
その日の参加者の紹介や、参加者からの近況報告。日高地方の注目ニュースや役場からの情報提供など、おしゃべりのネタには事欠きません。
取材にお邪魔した日は、新型コロナウイルスの影響もあり、3カ月ぶりの午後カフェ。それもあってか、参加者同士のおしゃべりも弾んでいたように感じます。

gogokafe10.JPG
そ、
そんな楽しい時間をお邪魔しちゃうようで恐縮ですが、参加者の皆さんにも新ひだか町での暮らしについて、いろいろ聞いてみました!

【CASE1 清水隆雄さんの場合】
出身地/東京都
新ひだか歴/1年10カ月
新ひだか町に来てよかったこと/スーパーなど買い物ができる場所に困らない、苫小牧にも適度に近い、馬がたくさんいる

元々、都内の区役所に勤務していた清水さんは、どうやら生粋の馬好きさん。
馬との出会いは相当早く、小学校の頃にはすでに競馬の魅力に取りつかれ、その情熱は収まるどころか成長につれてより強くなっていきました。

gogokafe11.JPG東京から移住。清水隆雄さん
そしてついに、馬を求めて馬産地・日高への移住を決めたエリート競馬フリークの一人です。
ご本人曰く「区役所勤めでだいぶ資金は貯まったので、ほんとは働かずにだらだらしながら馬を見ていたい...」とのことですが、残念ながら周りが放っておきません。
清水さんはすでに新ひだか町民の目に留まり、特技の写真撮影や動画編集などを頼まれているのだとか。
とはいえ、そういった縁がつながり、地元の馬主とも知り合いになったそうで、夢の馬産地ライフを楽しんでいます。
清水さんのYoutubeチャンネル「アホヌラ競馬ch」では、競馬場の現地動画や競馬ゲームの実況動画のほか、地元の競馬関連企業とのコラボ動画もアップされているので、要チェック&チャンネル登録!

「アホヌラ競馬ch」

【CASE2 日吉清秀さんの場合】
出身地/東京
新ひだか歴/10カ月
新ひだか町に来てよかったこと/なんと言っても自然の景観!人口が多過ぎないので開放的

gogokafe8.JPGご夫婦で移住。日吉清秀さん
もうすぐ移住1周年を迎えるという日吉さんは、奥さんと2人で新ひだか町にやってきました。ちょっと暮らし体験が終了したら、少し山のほうに引っ越す予定があるのだとか。
もしや山岳ガイドさん??
...と思いきや、意外や意外。
ISOという世界標準の規格の認定に関わる仕事をしていたという、なかなか珍しい経歴の持ち主です。
正直あまりISOがわかっていませんが、ご本人曰く「すごいカタい仕事です」とのこと。
その反動かどうかは定かではありませんが、毎年一回は日高に来て馬や景色を眺めることを楽しみに、忙しく日々を乗り越えてきたそうです。
「日高山脈と馬のコラボも大好きですが、生まれたての仔馬のかわいさはスゴいですよ。母親と一緒にいる姿を見られるのは春から夏。まさに今ですね」。
なるほど!見られる馬にもシーズンがあるんですね、知らなかった。

馬のいる風景を愛でる一方で、日吉さんはITエンジニア向けの講師という新しい仕事に挑戦中。プログラミング言語の一つである「Java」の習得に向けて日夜勉強を続けています。
実は、IT系の技術習得を選んだのには理由があるそうです。
「せっかく移住したんだから、どうせならまちのためになることを仕事にできればと思ったんです。例えばいつかITを使ったまちおこしを企画することになったとき、私がその技術を理解できていれば。何かの役に立てるんじゃないかなって」。

gogokafe4.JPGご近所の移住体験者(左)ともいろいろ情報交換
まだまだ勉強中と謙遜する日吉さんですが、新ひだか町のITまちおこしが世間を賑わす日はすぐそこかも!

【CASE3 田中昇さんご夫婦】
出身地/大阪
新ひだか歴/5年
新ひだかに来てよかったこと/家族全員の笑顔がふえた!

工事関連企業の管理職のご主人と、長唄の師匠の資格を持つ奥様。
生まれも育ちも大阪という田中さんご夫婦と次男の3名が、新ひだかに移住したのはもう5年前のこと。
母屋に昆布小屋がついた古民家という名の廃屋を手に入れ、必要最低限の部分だけは大工さんにやってもらい、あとは全て自分たちで改修しました。
ちなみにここでいう「全て」という言葉には、サッシの設置や壁紙の張り替え程度でなく、コンクリート打ちや天井の葺き替えなどもやってるぞ、という意味が含まれています。
もう、ほとんど、「建てた」といって差支えなさそうです。

gogokafe12.JPG大阪から移住。田中昇さん
「うっかり柱を切っても天井が落ちてもそれは自分らの問題。誰にも迷惑かけないっていうのが、とても気楽でいいんです。サイディングもね、裏表間違ったりして。でも怒る人いないでしょ(笑)」。
ご夫婦揃ってにこやかにすごいことを言いのけます。

さて、田中さんが「周囲への気遣いからの解放」を強調するのには、ご夫婦ならではの理由がありました。
「次男が障がいをもってまして、大阪の時はお隣さんとの距離が近いから、気になってずっと見てないといけないから気が張ってたんです。それがこっちだとだいぶ距離が広いでしょう。それにうちは海が近いから、ちょっと大きな声を出しても波の音で気にならない。自然がいっぱいで息子も喜んでるんですよ」。

もう一つ、嬉しい誤算がありました。
「隣の浦河町にある『べてる』という障がい者施設があるんですが、ここの川村先生は全国的にも有名な方なんです。まさかこんなに近くだったとは知りませんでした」。

gogokafe13.JPGDIYについて、とっても詳しく教えてくれた田中照世さん
とても楽しそうに新ひだかでの暮らしを教えてくれる田中さんご夫婦。
自宅でお友達とカラオケ大会を開いたり、地元のタコや昆布を使って本場大阪のたこ焼きをふるまったり。近所の人に誘われて旅行にもよく行ったそうです。
「豚を半頭買いしてみんなでお好み焼き作ったりね。そしたら近所の人が山芋持ってきてくれたり、漁師さんがマグロ一本持ってきてくれたり(笑)。そういう物々交換みたいなお付き合いができたのがうれしかったです」。
インタビュー中もずっと笑顔が絶えません。
奥さんの言葉をお借りすれば、「子供って親を見てるでしょう?こっちに来てからは主人が楽しそうなんです。そうすると息子も楽しそうでね。それを見てると私も楽しくなるんです」。

モノでもカネでも手に入らない笑顔のタネは、意外なところにあるのかもしれませんね!     
gogokafe19.JPG
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いかがでしたでしょうか?
いやー、さすが移住者ということになるんでしょうか、皆さんそれぞれに個性強いですね!
取材当日は14名程が参加していましたが、もし全員にお話を聞いてたら、ついつい移住しちゃっていたかもしれません。
約2時間があっという間に過ぎ、市川さんのまとめで午後カフェは閉会。
皆さんそれぞれに情報交換や雑談を楽しみ、帰りの足取りは心なしか軽やかに。それぞれの思い描く移住生活がこれからも続いていきます。

gogokafe3.JPG市川さん以外の役場の方も気軽に参加します
新ひだか町への移住に興味のある方は、移住コンシェルジュ市川さんまで相談してみては?

新ひだか町滞在・移住ナビ

新ひだか町「移住コンシェルジュ」市川福子さんと移住者の皆さん
新ひだか町「移住コンシェルジュ」市川福子さんと移住者の皆さん
住所

北海道日高郡新ひだか町静内御幸町3丁目2番50号

電話

0146-49-0294(新ひだか町 総務部まちづくり推進課)


新ひだか町の移住者たちが集う!「午後カフェ」潜入レポート

この記事は2022年4月15日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。