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【北海道へ移住 生活費のお話し】Vol 8 新ひだか町20220526

【北海道へ移住 生活費のお話し】Vol  8 新ひだか町

北海道の南西部。長い長い海岸線と並行して走る国道235号線を、苫小牧方面からえりも方面を目指してひた走るくらしごとチーム。
目指すは日本屈指の馬産地・日高エリア「新ひだか町」。
ここに一年間のちょっと暮らし体験を経て、この春から本格的な移住生活を始めた、岡山県からの移住者がいると聞き、会いに行ってみました!

移住をお考えの方へ

移住 生活費シミュレーション 北海道新ひだか町

北海道新ひだか町に移住したら今の生活費はどうかわるの?
どのくらいの生活費がかかるのか、シミュレーターをつかって計算してみよう!

延里文子さん 基本データ

<ご家族構成>
単身で移住
家族は旦那さん、ご子息2人の4人家族で、それぞれ別々の場所で暮らしている
<移住情報>
岡山県岡山市から北海道新ひだか町に2021年から「ちょっと暮らし」開始。
<移住時の年齢>
65歳
<移住前の不安要素>
特になく、「なんとかなる!という気持ちだった」そう
<現在のお仕事>
新ひだか町内の介護施設に看護師として勤務

移住してみての感想

  • 初めての一人暮らしは思った以上に楽しい
  • 町の移住担当者のサポートが手厚くて助かっている
  • クーラーいらずで虫も少なくて嬉しい
  • やりたいことをやれている充実感が大きい

移住前の生活費と移住後の実際の生活費(月額)

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※左側は移住前の家計調査による平均的な数字、右側が延里さんの実際の生活費
※交際費・嗜好品等の出費は含まれていません
・・・・・・・・・・・・・
1年間のちょっと暮らし体験を経て今年から本格的な移住生活を始めた延里さんですが、なんとすでに一人暮らし用の家を町内に建ててしまったそうです!ものすごい行動力&決断力!!
何をやるにも前のめりなそのバイタリティーと、新ひだか町での暮らしについて、インタビューさせていただきました。

勤め上げた看護の世界を離れ、移住へ!

岡山県で生まれ、岡山県で育ち、岡山県で暮らしてきた延里さん。
看護専門学校を卒業して、岡山県岡山市の川崎病院に就職。13年間勤務したのち、系列の福祉施設に18年間勤めました。
実力をつけた延里さんに管理職への道が示されます。が、患者さんに寄り添い現場で働くことを強く望み、これを辞退し続けたそうです。
その後、国家公務員として国立療養所 邑久光明園(※以下 光明園)に入り7年間勤務。そして岡山での最後の職場となる特別養護老人ホームで、5年間の勤務を経て今に至ります。
ちなみに最後に務めた特別養護老人ホームは、自宅のすぐ近くにある150名程度の利用者がいる大きな施設。延里さんのお父様も入居していたのだとか。

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看護一筋43年の大ベテラン。数多くの経験の中で、延里さんの介護に対する姿勢の背骨となったのは、光明園での7年間だそうです。
光明園は岡山市の東南にぽっかりと浮かぶ、長島という風光明媚な島にある施設。全国に13カ所あるハンセン病治療のための療養所です。
感染力は弱く、進行も緩慢なこの病気は、治療法が確立された今ではほぼ100%完治できる病気です。しかし現在も後遺症に苦しむ方は多く、無知を発端とする多くの差別と悲しみを生んできました。
こうした歴史的な背景もあり、一人ひとりの患者さんの気持ちに真剣に向き合える看護師でないと、患者さんから信用してもらえない場所だったそうです。表面的な対応をしているだけでは見透かされ、はっきりと拒絶されることもしばしばなのだとか。
看護の仕事は患者さんとの信頼関係あってのもの。延里さんは休みの日には資料館に足繁く通い、ハンセン病に関する知識や理解を深める努力を続けました。
その努力が実り、徐々に心を開いてくれる人が現れ、ハンセン病だと診断されたときのつらさや、入院することになったときの気持ちを話してくれる患者さんも増えていったそうです。

看護の世界でたくさんの経験を積み、惜しまれながら一線を退いた延里さんですが、仕事中によく聞いていたラジオ番組があるそうです。
それは「大山慎介のちょっと暮らし北海道」(STVラジオ他)。
電波を通じて北海道各地の魅力や日々の暮らしに触れるほか、これまで旅行で色々な場所を訪れましたが、地元の人と触れ合うチャンスはほとんどなく、それを残念に思っていたそうです。
「ラジオで厚沢部町の『ちょっと暮らし』についてやってて、いいなあと思ってたんです。それを思い出して、じゃあ、私もやってみようかなって思って」。
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こうして思い立った延里さんが、移住先として新ひだか町を知った最初のきっかけは、一般社団法人北海道移住交流促進協議会の「北海道で暮らそう! ガイドブック」でした。
思・即・動の延里さんですので、すぐに新ひだか町にコンタクトをとります。
その時に新ひだか町の窓口となったのが、自身も移住者である「移住コンシェルジュ」の市川さんでした。
こちらの市川さん、新ひだか町に移住してきた人たちと一緒に「午後カフェ」という取り組みを行なっているのですが、それはまた別のお話で。

移住先としての新ひだか町はこんなところ

そう、新ひだか町は「移住コンシェルジュ」が置かれるほど移住者の受け入れに積極的な町なんです。
毎年募集している「ちょっと暮らし体験」で用意している住居は全10棟。取材でお邪魔したのも、延里さんが実際に暮らしていたお宅で、元々は教員住宅だったものだそうです。
2LDKで家具家電付き、キッチンもお風呂もトイレもきれいです。ちなみにトイレは温水洗浄便座なので冬でもヒヤッとしません。
1週間から最長1年まで利用でき、1日1,100円(30日未満の場合は消費税別途)。詳しくは町のホームページ「滞在・移住ナビ」をチェックしてみてください。

新ひだか町 滞在・移住ナビ

こうして2021年4月から新ひだか町での「ちょっと暮らし」を始めた延里さん。
その決め手は「不自由なく買い物ができること」と、「ほどよい自然との距離の近さ」だそうです。
ここで改めて新ひだか町について見てみましょう。

まずは場所から。
高速道路を使うと札幌からは約2時間10分、新千歳空港からは約1時間20分。イメージ的には北海道の左ほっぺの海岸線沿いに位置します。
東に浦河町、西に新冠町と、北海道屈指の馬産地に挟まれ、「ひだか」というワードが持つ「馬」への連想を裏切らない、「ザ・日高」を体感できる自然豊かな場所です。
次にまちの規模はどうでしょうか。
新ひだか町が属する日高振興局7町の合計人口約63,000人。新ひだか町はその1/3程度を占め、約21,000人が暮らすまちです。
市街地には大型ショッピングモールや電器店、ドラッグストアなども数多く並び、もちろん飲食店もよりどりみどり。
休日には近隣からも多くの買い物客が訪れる、日高随一のアーバンシティなのです。

nobusatosann27.JPG新ひだか町では馬のいる風景が当たり前
なるほど、延里さんの言う「不自由なく買い物ができること」と、「自然とのほどほどな距離の近さ」にも納得ですね。
でもこのくらいの条件であれば、北海道なら他にも適地がありそうな気もします。
「1年間くらいの長期で体験できるところがあんまり見つからなかったんです。それに移住コンシェルジュがいれば、知らない土地でもなんとかなるかなって思って」。
なるほど、自然やまちの規模などの生活環境(=ハード面)だけではなく、行政サイドの心強いサポート(=ソフト面)がしっかりしていたことが、移住を決める決定打だったんですね!

実は延里さんが新ひだか町に来る1年前に、旦那さんが北海道陸別町で単身3カ月ほどの「ちょっと暮らし」をしていたことがあるそう。
まさか奥さんまで「ちょっと暮らし」を始めるとは驚きもあったでしょうが、これは旦那さんも「ノー」とは言えなかったのかもしれません。
ご本人も「先に主人に(陸別に)行かせてあげたんで、いいかなって(笑)」と、どこまでも奔放です。
ちなみにご主人は現在岡山に戻られていて、ご子息2人は埼玉・広島とみんなバラバラの場所で暮らしているそうです。場所はバラバラですが、年に一度は必ず岡山に集合したり、新ひだかにも遊びに来たり、とっても仲良し。
むむー、なんて自由な家族!

nobusatosann30.JPG移住コンシェルジュの市川さん(右)の存在もとっても心強かったそう

地域のニーズにハマった「手に職」が強い!

65歳の定年まで看護の世界の第一線で勤め上げてから、新ひだか町への移住という選択をした延里さんですが、移住を検討する多くの人にとって「仕事どうする問題」は大きな不安の一つではないでしょうか。
「お金もそうですけど、友達が一人もいないので、そういう意味でも仕事はしようと思ってました」。
なるほど、確かに地元の友達作りをするうえでも仕事って大事ですね。
ちょうど2~3カ月の期間で募集していたミニトマト農家の農業アルバイトを紹介され、試しに参加してみたそうです。
それってかなりの重労働なんじゃ...?
感想を聞くと、「トマトをちぎるだけかと思って気軽な気持ちで行ってしまったんですが、当然そんなわけなくて。服の中に入れる扇風機を貸してくれたんですが、やー、暑かったですね(笑)」。
それでも芯が強いので、契約した試用期間はきっちりと勤め上げたそうです。すごい...。

その後に出会ったのが、今の職場の代表を務める遠藤さん。遠藤さんも延里さんと同じく、福祉の世界で長年活躍してきた方です。
遠藤さんは新ひだか町内の知的障がい者施設で働いた後、当時の役場で実施していた在宅介護支援センターのソーシャルワーカーやケアマネージャーとして勤務。
そして52歳の時に退職し、その後「合同会社しずない介護サービス」を設立しました。
nobusatosann4.JPG合同会社しずない介護サービス代表の遠藤さん。延里さんに絶大の信頼を寄せています
延里さんが勤める「凜」は今年で4年目。37名のスタッフで小規模多機能型居宅介護と認知症対応型共同生活介護の両方とホームヘルパーのサービスを提供する、日高管内でも貴重な施設です。

「延里さんはとにかくサービスのレベルが高くて早い。当施設のやり方や利用者さんとの接し方も日々研究されているのがわかります。岡山弁の優しい響きも心地よくて、入居者さんだけでなくスタッフからもとっても信頼が厚いんですよ」。
折しも人材不足に困っていたところに現れた大ベテランに寄せる期待は絶大。「ちょっと暮らし」の期限とともに離職になってしまうと思っていたため、移住が決定したときは本当にうれしかったそうです。
一応書類上は70歳までという契約になっているそうですが、「契約満了後も是非働いてほしいです!」とさらなる期待を込めています。

移住地でのお仕事について、延里さんにも聞いてみました。
「小規模多機能の施設は人数が少なくてとっても気持ちに余裕ができますね。その分入居者さんのお世話も細かくできて楽しいですよ。今は自分の仕事の範囲を決めず、垣根はできるだけ作らないようにして、自分ができることはやっていこうと思っています」。
さらに、
「自分が(利用者として)入ってもいいなと思う場所ですね」。
と、非常に説得力のあるクチコミもいただきました。

仕事が休みの日には家の掃除をしたり、職場の人たちとドライブに行ったりと、充実の移住生活を楽しんでいる延里さんですが、好きな場所を聞くとなんと「職場の裏」だそう。
nobusatosann25.JPGこの日は残念ながら「フサイチ」には会えませんでしたが、別の馬がすぐそばに
そこにあるのは牧場でした。
「フサイチ」という白馬がいて、呼べば来てくれるんだとか。
う~ん、日高っぽい!

・・・・

悔やむよりも「なんとかなる」の精神で飛び込む!

「実は先週まで入院してたんです」。

!?

突然の告白にざわつくくらしごとチーム。
い、いまなんて?

なんでも、2月の初めに雪に足を滑らせて1日2回転んでしまった日があったのだとか。その時は特になんともなかったのですが、3月中旬に認知症の症状が現れたため病院に行ったところ、「慢性硬膜下血腫」の診断を受けたそうです。
入院の噂が広まると周りは騒然となり、心配して泣き顔を見せる上司に職場はもうあたふた!
幸い手術は成功し、この取材の6日前に無事退院したとのこと...!そうとは知らず長々とすみません...!
それにしてもタフ!!

nobusatosann7.JPG肝を冷やした職場の皆さんが張り出した"転倒注意"の張り紙!
なんだかお話を聞けば聞くほど無敵感の漂う延里さんですが、ようやく見つけた弱点が一つ。
それは「方向音痴」。
移住体験が決まり、車に布団を積んで北を目指した延里さん。それを待っていた市川さんにその時のことを思い出してもらいました。
「体験住宅の入居当日、待てども待てどもお見えにならないので電話してみたら、『どんどん山の方行っちゃうんだけどなんでだろー?』って。11時には到着するはずが全然来なくって焦りました(笑)」
そもそも岡山から車で移住すること自体もスゴイのですが、みなさんも車で移住の際は、カーナビの目的地設定には気をつけましょう。

ご自身も「この移住は成功!」と話す延里さん。その背景には手に職を持っているということの強さがありますが、なにより取材でもにじみ出る愛嬌や明るさ、気風の良さが、成功を連れてきているようにも思えます。
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元の職場の同僚が餞別に苫小牧行きのフェリーのハイクラス客室をとってくれたり、
実のお姉さんがちょっと暮らし体験住宅の賃貸料を肩代わりしてくれたり、
家を建ててくれた建築会社がちょっとマケてくれたり、
転んで頭を打ったと聞いたら泣いて心配してくれる友人がいたり...。
移住生活成功の奥義は、案外このあたり隠れているのかもしれません。

延里さんの行動力の根底にある「なんとかなる」という気持ち。
来年だったら行けない気がするから、後悔しないためにもやれそうな今やってしまおうという気持ち。
移住に関する悩みや不安は、数え始めたらきりがありませんが、必要最低限のラインをクリアしたら、一回飛び込んでみるのが近道なのかもしれません。
移住に興味があるアナタ、道内でも移住者の多い新ひだか町の「ちょっと暮らし」を試してみては?
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ここがポイント、移住して良かったこと

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移住をお考えの方へ

移住 生活費シミュレーション 北海道新ひだか町

北海道新ひだか町に移住したら今の生活費はどうかわるの?
どのくらいの生活費がかかるのか、シミュレーターをつかって計算してみよう!


【北海道へ移住 生活費のお話し】Vol 8 新ひだか町

この記事は2022年4月15日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。