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感動を創り、人を創り、街を変え、ローカルから新たな風を吹かす20220113

この記事は2022年1月13日に公開した情報です。

感動を創り、人を創り、街を変え、ローカルから新たな風を吹かす

今年は根雪になるのが遅いね、なんて毎年言っているような気がしますが、2021年12月末、気付けば雪が降り積もる年の瀬に、私たちくらしごと編集部は、札幌駅北口から徒歩10分程のところにある「EZOHUB SAPPORO」という場所にやってきました。

ここはサツドラホールディングスさんが運営しているコワーキングスペース。会員の方がお仕事をしたり、打ち合わせをしたりと、さまざまな方がこの場所でお仕事をされていました。

颯爽と出迎えてくれたのは「人事」を軸にさまざまな場所で活躍している佐藤彰悟さん。札幌のグローヴエンターテイメントというブライダルの会社に籍を置きながらも、「かたわら」という屋号を持つ個人事業主でもあり、さまざまな他企業の人事なども手がけている方です。

今や「副業」というワードも多く広まってきているこのご時世ではありますが、佐藤さんは「複業家」として働いています。

自分が挙げた結婚式場で働くと決意!?

まずは、佐藤さんの「複業」人生が始まったグローヴエンターテイメント(以下、グローヴ)でのお話。


実は佐藤さん、ここに来るまでに2度の転職を経験。新卒で入社したアミューズメント会社では、さまざまな部門を経験し、最終的には採用を担当する人事となり、計13年程働きました。10年以上勤務していたものの、多くの部門で働いていたこともあり、いわゆる「ゼネラリストだった」と言う佐藤さん。転職を考えた際に、「ゼネラリストではなく、何かのスペシャリストにならなければいけない」と、転職活動に苦戦しながら感じたそう。その後無事ITの会社に入社を決め、そこで人事領域のスペシャリストを目指すことに。

そうしてグローヴへと流れつくのですが、ここに入社した経緯がなんとも面白い...!

sato_shogo04.JPGこちらが佐藤さん。まるで先生のような分かりやすいお話に、取材陣も思わずメモを取る手が止まりません。

冒頭でもお伝えした通り、グローヴはブライダルの会社であり、北海道・東北・北関東を中心に11拠点展開しています。「ぼく、そこの(札幌の式場の)新郎だったんですよ」 の一言に、思わず取材陣もビックリ!

「グローヴの式場で式を挙げて、その日にはもうここで働こうと決め、次の日に奥さんに相談し、グローヴに電話をしていました」 と淡々と話す佐藤さんですが、この会社で働きたいと思うに至ったのはこんな経緯がありました。

「やっぱり、自分で挙げた結婚式が良かったのもひとつ。結婚式を考えている段階でまずは相談しに行ってみようとグローヴを訪れてみたら、プランナーさんと雑談から始まって、それが大盛り上がり。『あれ?今日何しに来たんだっけ?』と思うほど雑談ばかり(笑)。でもその雑談の中で、しっかりと僕たちがどんな夫婦なのかをキャッチしてくれていたんです」

結婚式の料理といえばフレンチが定番。 しかし佐藤さんが「フレンチって雰囲気ではないんだよなぁ」とつぶやくと、その場で「じゃあ、フレンチはやめましょう!」と即答するプランナーさん。

結果的に、お料理はお庭でみんなと楽しめるバーベキュースタイルになりました。
佐藤さんご夫婦には「自分たちが目立つのではなく、来てくれた人たちが楽しんでもらえる式にしたい」という考えがあり、それに沿って、プランナーさんもたくさんのアイデアを出してくれました。

もちろん希望予算もあります。予算を抑え、それでも来てくれた方々がビックリするような仕掛けのアイデアをいくつも提案してくれ、共に制作、準備した時間は、佐藤さんにとっては忘れられない時間だったようです。

こうして迎えた結婚式当日。
ロックフェスティバルが大好きな佐藤さんご夫婦がつくりだした「フェス」をテーマにした結婚式は大盛り上がりでした。

そしてこの日のうちに、佐藤さんは「この会社で働く」と決意を固めたのです。

もうひとつ...グローヴが抱えているスローガンとして「ブライダルで地方創生を目指す」 という想いがあります。その名も「ふるさとRE:ブランディング〜感動を創り、人を創り、街を変える〜」。

sato_shogo01.jpgこちらは函館山の夜景をバックに。

グローヴでは、婚礼実施率という数字に着目し、日本で結婚式の実施率が低い地域を中心に式場を展開しています。地域の人々と繋がり、その土地に眠る価値を発掘し、結婚式を通じて顕在化・リブランディングすることに力を入れ、「地域をもう一度活性化させる」事業モデル。

「もともと大学で地域社会学について学んでいて、就活していた当時も地方創生の仕事がしたいという気持ちもあったのですが、当時は『となると、公務員か?NPO法人か?』という考えしかなかったんですね」

しかし、民間企業でも、はたまたブライダル企業でも地方創生はできる...佐藤さんはその事実に気がつきました。

グローヴの代表は「まるでルフィのような人」

佐藤さんはグローヴの代表のことを「純粋な人。漫画、ONE PIECEのルフィみたいな人」と話します。

離職率が高いと言われるブライダル業界ですが、グローヴの離職率は業界平均の1/3以下。これに対し、佐藤さんの見解はこうです。

「ブライダル業界の離職率が高いと言われている理由のひとつは、結婚式への思い入れが強くなりすぎてしまう人がいるんですよね。そうなると、家に帰ってからも、休みの日も、担当の結婚式のことを考えてしまう。そうこうしている内に、何かのタイミングで疲れてきてしまったり、自分がしたくて家に持ち帰っていた仕事だったのが、いつしか『会社のせいで...』という気持ちになってしまう可能性も。ゴールのない業界だからこそ、線引きが必要なんです」

sato_shogo03.jpgアットホームな式も、エンタメ要素を含んだ式も対応可能!と口コミでも好評価だったグローヴ。

だからこそ、グローヴの代表はそこをハッキリと線引きしました。
「勤務時間内でやることが正解。それ以外の時間でやったことは0点」とハッキリ断言したのです。

「決められた範囲内でやれることが、私たちのできる最大限のことだ」と線引きしたことで社員たちの心身も守られているのですね。

「代表が言っていたんです。『俺が思うカッコイイ大人は、定時で帰って、プライベートも充実させている人』って」

現在49歳の代表。20代前半は、営業職として一般的な会社で勤め、ブライダルとは全く違う業界にいたからこその柔軟な考えなどが随所に感じられます。

代表だけではなく、社員の70%程はブライダル業界を考えていなかった人、もしくは異業種からの転職者が多いそうです。これは新卒入社、中途入社問わず。良い意味で「ブライダル、ブライダルしていない会社」と佐藤さんはその印象を話してくれました。

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また、グローヴには「リフレッシュ休暇」の制度があります。この制度ができたきっかけは、代表宅でのパーティーの時。とある女性社員が、お酒の力も相まってか「私、友だちいなくなっちゃうかも...」と一言悩みを漏らしたそうです。

代表が話を聞いてみると、どうやらその女性には土日休みの友だちが多く 、ブライダル業界は基本平日休みのお仕事のため「呼んでもどうせ仕事で来れない人」という位置づけとなってしまい、飲み会などにもどんどん呼ばれなくなってしまったそう...。

これを聞いた代表は、幹部が集まる会議にて7日間のリフレッシュ休暇をつくろうと提案。しかし当時の幹部は猛反対でした。

「7日も休まれたら現場が回らなくなる。せめて3〜4日では?」という声に対し、7日であることを絶対に譲らなかった代表。

その理由は「まじめな人ほど3〜4日だと土日を外して休んでしまう。7日と決めてしまえば、みんなが土日休むことができる」という、本当に社員のことをよく考えてくれてのこと。

長い論争の末、なんとか7日のリフレッシュ休暇が実現しました。

導入当時は、休暇による体制を整えることにバタバタしていたそうですが今ではすっかりそれにも慣れ、現在は週5日以上の連休を年2回取るというスタイルに変わったそうです。

sato_shogo07.jpg「感動とは、期待に応えるのではなく超えること。」をコンセプトに、とにかく質にこだわるのがグローヴ。

本業以外の仕事を持つことの意義

佐藤さんが複業をスタートしたのも、代表の一言がきっかけでした。代表がこんなことを佐藤さんに投げかけたのです。


「うちの社員って、副業している人結構いるんだよね。彰悟くんも好きなことやってみたら?」

今でこそ「副業」は身近なものとなってきましたが、当時はまだまだ。ましてや北海道の企業では馴染みのないもの。 しかし、グローヴの代表はむしろ社員の背中を押してくれていたのです。その後援もあり、佐藤さんは課外活動の一貫として「就カフェ」という、就活支援サークルを立ち上げました。

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もともと東京一極集中や、新卒一括採用への疑問を持っていた佐藤さん。

「大学生の就活を見ていると、『大手主催の大きなイベントに行く、イコール就活』になっていたり、クリエイティブな仕事がしたい人が地元で仕事を見つけられずやむなく東京に行く選択をするしかなくなる人がいたり、と歯がゆさを感じます」

ドームに出展しない中小企業や、クリエイティブな企業は北海道にもたくさんあり、実はそこの会社は若い人材を欲しがっている...。しかし、就活のレールに乗ってしまっている学生たちに、そういった情報が届いていない現状をどうにかしたいと考えていたのです。

お金を得たいと思ってこのサークルを立ち上げたわけではなく、「地元の後輩たちのために、自分ができることをやりたい」と動き出しました。

これまでの長い人事経験を活かして、現役人事が主催する就活サークルとして、学生たちからも大人気。学生は社会人と話す機会が少ないからと、月に一度社会人の方と話す飲み会を企画したり、現役人事の立場からの佐藤さんによるキャリアカウンセリング、模擬面接、エントリーシートの添削などなど...学生たちの就活相談を一挙に受け止めていました。

函館開催チラシ.jpg函館で開催したことも!

もちろん、これらの活動は業務終了後に全て行っていたこと。

「学生たちのために」その想いが強いからこそ、それが佐藤さんの原動力となっていたのかもしれませんね。

佐藤さんを通じて、北海道の企業との出会いも増えた学生たち。「微力ながら、北海道経済の活性化に寄与したかった」と佐藤さんは話します。

sato_shogo05.JPG現役人事が主催する就活サークルとして、新聞にも取り上げられたことをきっかけに北海道の地方自治体との連携プロジェクトが決まりました。

そこからどんどんご縁が繋がり「複業人事」として今では5社と契約を結びお仕事をされているまさに「複業家」となりました。 北海道で3社、東京で2社 ほかにも、北斗市や厚真町、岩見沢といった市町村とも事業を遂行した経歴があります。

以前、内定者と社長の食事会の席でとある内定者の女性がこんなことを社長に聞いてきたと言います。

「彰悟さんは複業をたくさんやっていますけど、心配じゃないんですか?本業が疎かになってしまうのでは?」

その内定者の女性はバレエを幼少期から続けている方だったのですが、代表は逆にこう問いかけました。「もし友だちに『社会人にもなって、バレエなんてもう辞めれば?足を挫いたら困るでしょ?』と言われたらどう?」

その女性の答えは「辞めません。バレエは私のライフワークですから」でした。

社長の考えはこうです。
「社員が仕事終わりや、休みの日などに好きでやっていることを会社が禁止するのはおかしい」

佐藤さんはこの社長のエピソードに言葉を継ぎます。

「もし本当に社員の副業をダメだと思っているなら、今流行りのフリマアプリで物を売ることも禁止しないとダメですよね(笑)。副業しているから本業が疎かになるっていうのは、飲み過ぎて次の日の仕事に支障が出るのと同じ。個々人の責任感次第ですよね」

とは言え、北海道では佐藤さんのような働き方をしている人は稀。だからこそ、自分からこうした働き方を発信して、ロールモデルになる、ファーストペンギンにならなければいけないと言っていました。「ローカルの働き方を変える」佐藤さんにとっての重要ポイントなのです。

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佐藤さんはグローヴとして東京採用に携わっていたり、東京の会社の人事のお仕事も請け負ったりと、札幌も東京も知っているからこそ「自分は札幌の方が心身共に健康で働ける」と考えています。

「子育て環境を考えてもそう。ここではキャンプもBBQもすぐできますから!」

そう話す佐藤さんですが、いくつもの会社のお仕事を担う複業家って、そもそもお休みの日は取れているのでしょうか...と不安になるも「全然休みますよ。日曜日は絶対仕事しませんから!」と。では、普段のお仕事は一体どんなスケジュールなのか...気になったので聞いてみました!

6:30 4歳の息子と共に起床
8:00〜食器洗いなどをして家を出発
9:00〜9:30にコワーキングスペースに到着
16:00に帰り、子どものお迎え、食事とお風呂を一緒に
20:30 息子を寝かせてから仕事再開

「9:00〜17:00までフルタイムで働いている人と稼働時間は結局は同じなんです。途中で帰って、子どもが寝てからまた仕事をしています」という佐藤さん。今しか過ごせない、子どもとの時間を大切にするこの働き方が、今の佐藤さんにはピッタリなのでしょう。

また、この2年程で社会全体的に「リモート」「在宅」「テレワーク」などの言葉が身近となり、佐藤さんにとってもこれが追い風となりました。

sato_shogo11.JPG「グローヴだけだったら、グローヴに興味のある人としか出会えなかった」と話す佐藤さん。

「僕にとっての『複業』は全部本業の意識でやっているんです。ライフワークですね。やりたいこと、ご縁が先で、お金はそのあと付いてくるイメージです」

佐藤さんの想いは、ただひたすらまっすぐに「ローカルの働き方を変えたい」 というところ。このような働き方が、北海道でも出来るのだという空気感をつくっていきたいと今日も佐藤さんは発信し続けます。

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グローヴエンターテイメント(株)/かたわら代表 佐藤彰悟さん

グローヴエンターテイメント(株)

かたわら


感動を創り、人を創り、街を変え、ローカルから新たな風を吹かす

この記事は2021年12月21日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。