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栗山町

3.11のボランティアを経て見つけた自分のやりたいコト20220104

3.11のボランティアを経て見つけた自分のやりたいコト

札幌からも、新千歳空港からも車で約1時間。栗山町は抜群のアクセスにも関わらず、のどかな農業地帯の田園風景と豊かな自然が楽しめるまち。くらしごとでも何度も取材に訪れ、そのたびに素敵な人と出会える注目のまちだと感じています。

そんな栗山町で今回取材をさせていただいたのが西脇 宏伸さん。西脇さんは「特定非営利活動法人雨煙別学校(うえんべつがっこう)」の職員さんなのですが、自然体で明るく、つい取材を忘れてしまうほどお話をしていて楽しくなってしまう魅力を持った方。そんな西脇さんのストーリーと、雨煙別学校についてのお話をご紹介していきます。

3.11がきっかけの出会い

西脇さんは札幌出身の29歳(2021年11月現在)。

中学、高校ではサッカーのクラブチームで活躍し、高校を卒業する時には「体育の先生になりたい!」という夢を持っていたそうです。そんな夢を叶えるべく西脇さんは旭川教育大学に進学を決めたのですが、入学直前の3月11日、東日本大震災が起こったのでした。

大学に進学した西脇さんは「被災地のために何かできないだろうか」と漠然とした気持ちを持っていたのですが、当時1年生の西脇さんには何をしたら良いのかも分からず、気が付けば時間だけが流れていくばかり...。そして2年生になった時に、西脇さんの人生に大きな影響を与えた出会いがありました。それが「ふくしまキッズ」です。

ふくしまキッズとは「被災地の子どもたちに原発事故の影響を気にする必要のない場所でのびのびと過ごしてもらいたい」と始まった5カ年計画のプロジェクトで、夏休み・冬休み・春休みに被災地の子どもたちを全国各地で受け入れ、長期滞在してもらい、さまざまな体験をしてもらうというもの。西脇さんがふくしまキッズに初めて参加したのは2012年の夏のプログラムからでした。

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ここには多くの学生ボランティアが参加しており、学生たちは子どもたちの「お兄さん・お姉さん」役となって一緒に活動します。初めて参加した西脇さんも最初は子どもたちと一緒になって体験を楽しむところからのスタート。学校の先生を志す西脇さんにとってふくしまキッズの活動は子どもや教育に関わる活動でもあったためにとても魅力的に感じ、それから毎プログラムに参加するようになりました。

活動をしていく中で、震災の影響で最初は「本当に外で遊んで大丈夫なの?」と言っていた子どもたちが徐々にのびのびと過ごすようになっていく姿や、プログラムの最後には「また会おうね!」と言って帰って行く姿が強く心に残っていると当時を振り返ります。

「ふくしまキッズでは何度も参加していると、ボランティアの中でも少しずつステップアップしていくんです。最初は子どもたちと一緒にボランティアリーダーから説明を聞いてついて行くだけだったのが、徐々に自分もその説明する側になっていきます。そうしていくうちに、ボランティアだけでも体験を回せるようになっていったり、学生ボランティアでプログラムを考えて、それを実行するところまでさせてくれました。そうやって大人が学生にチャレンジさせてくれたことは成長も実感できましたし、大きな経験になりました」

こうした経験の中で、大学で教育を学ぶ西脇さんはひとつの想いを持ちました。

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「学校教育ももちろん大切なんですが、ふくしまキッズの活動を通して社会教育、特に自然教育というものの大切さにも気が付きました。学校教育と社会教育は別物として扱われることが多いのですが、自分はこの両輪を繋ぐコーディネーターみたいになりたいと思うようになりました」

栗山町で地域おこし協力隊に

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そんな想いを抱えつつ、教員採用試験を受験。しかし...

「実は教員採用試験に落ちてしまって(笑)。それでどうしようかな~と思っていた時にお世話になっていたNPOの方から紹介を受けたのが、栗山町地域おこし協力隊だったんです」

ふくしまキッズでは北海道内にいくつか活動の拠点がありましたが、そのうちのひとつが栗山町でした。

その栗山町で「ふくしまキッズの対応ができる地域おこし協力隊がほしい」と紹介の話が出てきたのでした。地域おこし協力隊とはまちおこしに関わる仕事をしながらそのまちへの定住を目指すという総務省の事業です。ふくしまキッズ時代からお世話になっている方からの紹介のお話でもあり、自分のやりたいことと合致していたため、西脇さんは栗山町の地域おこし協力隊になることを決意します。

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栗山町というまちの存在は知っていたものの、実際に住んでみると改めて感じたことはたくさんあったようです。

「栗山町は『都会チックな田舎』だなと思います。札幌からも空港からも近いですし、スーパーもコンビニもチェーン店の洋服屋さんなんかもあってとっても住みやすいまちですよね。ただ、どこかへ行く通り道にはなるのですが目的地になりにくいまちだとも感じました。それでも最近では移住される方とかカフェとかも増えてきていてとっても良いなぁと思っています!」

大学卒業と共に、栗山町では初の採用となる地域おこし協力隊となった西脇さん。

町の教育委員会に所属し、「ふるさと自然体験教育の推進」の仕事をしながら、雨煙別小学校 コカ・コーラ環境ハウスの管理運営をするNPO法人雨煙別学校にお手伝いに行くというスタイルのお仕事が始まりました。

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ふるさと自然体験教育とは、1985年(昭和60年)に栗山町が国蝶オオムラサキ生息の国内北東限だということが発見されたことから始まった、自然教育を中心に置いた「ふるさと教育」です。

町民のボランティアによって離農地帯だったハサンベツ里山の環境整備を行うなど活発な市民活動によって支えられてきたのですが、その里山再生を行ってきたボランティアにも高齢化の問題が差し迫っていたそうです。

そこでまずは「その場所が賑わっていること」が見えるようにすることが必要だと考えました。何か面白いことをやっている!と思ってもらうことで多くの人が集まるのではと考えた西脇さんはふくしまキッズの経験を活かし、その伝手で里山のボランティアに多くの学生を集めたのです。

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しかし当然西脇さんは町民の方にとっては「よそ者」です。

始める前は「栗山のことなのにどうして部外者を呼ぶ必要があるんだ?町内のボランティアを集める方法を考えた方が良いのでは?」という意見も当然あったそうです。しかし繰り返し外から若者たちが栗山にやってきて、楽しそうにボランティアをしていく姿を見て少しずつ周囲の目も変わってきました。こうして少しずつ、栗山町内での理解者、協力者も増えていったのでした。

協力隊の任期を終えて...

地域おこし協力隊の3年の任期を終えた西脇さんは、そのままNPO法人雨煙別学校の職員となりました。NPO法人雨煙別学校は、宿泊施設の運営、環境教育プログラムの企画・実施、「ふるさといきもの里オオムラサキ館」の管理運営をしている団体です。


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雨煙別小学校は1936年(昭和11年)に建設された校舎で、現存する中では道内最古の木造二階建て校舎です。平成10年(1998年)に閉校したのですが、公益財団法人コカ・コーラ教育・環境財団からの支援を受け、栗山町民と連携して改修工事を行いました。こうして雨煙別小学校は2010年(平成22年)、体験型宿泊施設「雨煙別小学校コカ・コーラ環境ハウス」として再生したのです。

豊富な自然体験プログラムを求めて多くの人が訪れます。10名以上で宿泊利用が可能で、合宿や宿泊学習、社員研修などの利用が多いそうですが、西脇さんはここで予約の受付や施設の管理、そして見学したいという方に館内の案内をされたりもしているそうです。

小学校の宿泊体験学習や、ワーケーションの受け入れにもピッタリな場所です。自然にも囲まれた環境で、宿泊の心地よさだけではなく、まわりの環境にも癒やされます。

2階部分が主に宿泊スペースとなっており、1階は打合せなどの会議や、作業スペースとしても利用可能。実際に取材当日、栗山町で農家を営む荻野さんという男性が、とある作業をしにこの建物に訪れていました。

というのも、農家である傍ら、アパレルのデザイナーもやっているという、とっても興味深い荻野さんとタッグを組んで、この建物をPRすべくサコッシュの製作を進めているのです。今日はちょうどそのサコッシュをつくりにやって来たようでした。ここでやっているサウナも、荻野さんと共に企画しているそうですよ!

終始和やかな雰囲気の取材で職員さんたちの仲の良さは伝わってきたのですが、若い方からベテランの方まで幅広い年齢層の方が、一緒に働いているのもその秘訣かもしれません。ちなみに、3名でこの大きな校舎の施設を支えているそうですよ!

nishikwaki_kuriyama8.jpg職員の方と楽しく打ち合わせ中

そうそう、ふくしまキッズには実は後日談があったのです。それは、西脇さんが協力隊を卒業した2018年に起こった胆振東部地震の時でした。

北海道中が暗闇に包まれたブラックアウトはまだ記憶に新しいことかと思います。地震によって被災地の多くでは、子どもたちが学校にも行けず遊ぶこともできない状況となりました。

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そこでふくしまキッズは「アドバンスプログラム」として被災地の子どもたちが遊ぶ場を提供するプレーパークをつくります。そこでも活躍したのが、学生ボランティア。西脇さんがお兄さんとして面倒を見ていた、東日本大震災の当時の被災者だった子どもたちが成長し、今度はお兄さん・お姉さん役となって北海道の被災地の応援に来てくれたのです。

西脇さんはOB的な存在として少しだけこのプログラムにも参加をしたそうなのですが、この出来事が強く印象に残ったそうです。そして、この活動は忘れられてはいけないと感じたと強く言いました。

nishiwaki_kuriyama31.jpgこちらがその時のとある一日。真ん中にいるのが当時の福島の小学生で、ボランティアに駆けつけてくれました。

大学生の頃にふくしまキッズに参加した西脇さんは、今はこうして栗山町で実際に環境教育を教える立場になりつつあります。

この西脇さんのもつ朗らかな人柄と楽しい雰囲気はきっと今後も多くの仲間を作り、西脇さんの体験した記憶と想いを引き継いで、今後も多くの子どもたちと、栗山町を訪れる大人たちにも大切な経験をさせてくれるに違いありません。お話を聞いていて、そんな姿が目に浮かび、とっても楽しみな気持ちでいっぱいになりました。

関連動画

NPO法人雨煙別学校「雨煙別小学校 コカ・コーラ環境ハウス」 西脇宏伸さん
NPO法人雨煙別学校「雨煙別小学校 コカ・コーラ環境ハウス」 西脇宏伸さん
住所

北海道夕張郡栗山町字雨煙別1-4

電話

0123-72-1696


3.11のボランティアを経て見つけた自分のやりたいコト

この記事は2021年10月1日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。