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倶知安町

「あなたの旅に繋がりを」ニセコのバックパッカーズ、たびつむぎ20200615

「あなたの旅に繋がりを」ニセコのバックパッカーズ、たびつむぎ

もはや説明不要なほどに、全国的...いえ世界的に有名なニセコリゾート。特に人気を集めているスノーシーズンにはニセコのパウダースノーを求めて、世界中からたくさんの観光客が訪れています。不動産開発も爆発的に加速したこのニセコでは、こうした観光客が利用する宿泊施設のホテルやコンドミニアムなどがたくさん並んでいます。

そんな宿泊施設の中で、今回取材に伺ったのは、あえてこう呼ばせていただきます「バックパッカーズ」、その名も「ニセコ宿 たびつむぎ」です。JR倶知安駅から徒歩10分、2011年にオープンしたこちらの宿、切り盛りするのはマネージャーの山田亮さん。「ようこそ!」と笑顔で編集部を迎えてくださいました。
今回は、埼玉県出身の山田さんが、ここ北海道のニセコでバックパッカーズを開業した理由、そしてここまでの道のりについての物語です。

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豊かな自然環境を求めて

生まれも育ちも埼玉県の山田さんですが、お母さまのご出身が倶知安町で、ご実家が現在たびつむぎがある場所にあったことから、幼少期にはよく北海道へ遊びに来ていました。こうして北海道に慣れ親しんだからなのか、登山好きのご両親の影響からか、大学進学は豊かな自然環境とそうした学びを求めて、北海道江別市にある酪農学園大学へ進学します。

「大学の建物のすぐ後ろには森林が広がっているんですが、自然環境が好きでしたので、そうした環境の中で暮らしたいなと思ったんです。そして大学で環境共生学という自然環境との調和などについて学んでいく中、卒業後の進路もやっぱり自然が豊かな環境に身を置き、仕事をしたいと思うようになっていましたね」

今では一次産業以外にも、アウトドアガイドやインストラクターといった自然の中で行う仕事も珍しくないですが、当時は今ほどメジャーではなかったと山田さんは言います。そこで山田さんは、大学進学で北海道という新たな土地を選択したように、今後は新たにオーストラリアという土地で、自然の中での仕事を模索しようと決断します。

tabitsumugi12.JPG素敵な笑顔で迎え入れてくれたマネージャーの山田亮さん

今の自分へと繋がるオーストラリアの生活

オーストラリアへは、ワーキングホリデーを活用して渡りました。最初の3ヶ月間は語学学校に通い、その後はゴールドコーストにある世界遺産でのエコツアーガイドの仕事や、タスマニア島でのワイン用ぶどうやフルーツのピッキングの仕事など、大自然の中での仕事に打ち込みます。実はこのタスマニア島での生活が、後の山田さんの人生を左右する大きな経験となるのです。

「タスマニア島では、バックパッカーズ・・・あっ日本ではゲストハウスと言った方が馴染みやすいですが、ここを拠点として生活していまして、この暮らしが本当に楽しかったんですね。何より楽しかったのが、人との出会い。日々いろんな人とこの場所で出会い、話をし、共感や共有をすることがとても新鮮でした。この経験がなかったら、今の自分はないと思いますね」

tabitsumugi1.JPGこの日はあいにくの空模様で羊蹄山は雲に身を隠してしまっていました

こうした楽しい日々はあっという間に過ぎるもの。1年間のワーキングホリデーを終え帰国した山田さんは埼玉のご実家に戻り、東京の旅行会社に就職するのですが、これまでのオーストラリアでの働き方と日本、ましてや大都市東京での働き方にはやはり大きなギャップがあり、仕事のあり方について頭を悩まされたそうです。

「仕事の早さやリズムが全然違うんですよね。正直、東京についていけない自分がいました。先輩で繁忙期には家に帰らず徹夜している人もいましたし、自分の将来像をその人に重ねることができなかったんですね。結果として1年半で退職して、もう一度海外でチャレンジしようと決めました」

山田さんが次なる場所に選んだのはニュージーランドでした。

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さらなる学びを求めたニュージーランド

ニュージーランドといえば、南西太平洋にある自然が豊かな島国ですが、山田さんがこの場所を選んだのは、この環境だけが理由ではありません。オーストラリアでのバックパッカーズでの暮らし、あの人生を左右する経験が山田さんの選択を後押しします。

「タスマニア島のバックパッカーズで経験したいろんな人との出会いから生まれるワクワク感を、世界中のバックパッカーが集まるニュージーランドで、今度は宿泊客としてではなく、人を受け入れる働き手として経験したいと思ったんです。結果としてこの経験が、直接的に今の自分に重なっていくことになりました」

これまで行動からも分かる通り「身を持って感じること」「実際に経験すること」をとても大事されている山田さん。このニュージーランドでの生活はバックパッカーズでの経験に注ぎます。ワーキングホリデーとしての1年間で7箇所のバックパッカーズで働き、それぞれの施設の特徴や評価されているポイント、逆に評価されていないポイントについても学んだと言います。

tabitsumugi6.JPGバックパッカーズとして建設しており、天井も高く快適なドミトリー

「この頃には将来はバックパッカーズを自分でやりたいって思っていましたね。なので『働く=収入』という図式ではなく『働く=学び』という考えに完全にシフトしていて、最低限生きていけるだけの食料と住まいを保証してもらえたら収入はほとんどなくても大丈夫という感じでした」

続けて、ニュージーランドで印象に残っているバックパッカーズについてこう教えてくれました。

「ニュージーランド中部にあるホープウェルというバックパッカーズで、女性2人と小さな子ども2人のファミリーが宿泊してくれた時のことです。お客様のおもてなしとして、子どもと一緒に遊んだり、釣りに行ったりすることはよくあるのですが、この時もそうでした。そんなこともあり、子どもが私になついてくれるんですが、私にはよくある日常でした。何日か滞在された後、お客様も帰られて、しばらく経った頃、一通のはがきが届いたんです。開けてみると、あの家族からで、実はあの旅は家族のお父さんが亡くなった傷心旅行だったと綴られていました。私にとっては日常だった子どもや家族との触れ合いが、あの家族にとっては特別なことだと感じてくれたようです」

このような経験ができたことや、いろんな人に出会い、自分とは異なる考え方に触れられたことが、ニュージーランドでの大きな収穫で、これが今でも一番の活力になっていると言います。
そして、ニュージーランドでのある意味で修行ともいえる期間を終え、山田さんは帰国します。

tabitsumugi8.JPG「ホープウェルは素晴らしいですよ〜」と当時を振り返りながら思い出話を聞かせてくださいました

HOMELYでCOZYな宿

ニュージーランドにいた頃から、既に日本でバックパッカーズをやろうと決めていた山田さんは、今度は国内を知るべく、山梨県の河口湖畔や、岐阜県の飛騨高山にあるゲストハウスで数ヶ月間働き経験を積みます。

「いろいろ考えて、一旦整理するために埼玉の実家に戻って両親と話をしたところ『そうしたらニセコがいいんじゃない?』と打診されたんです。その頃にはもうここは誰も住んでいませんでしたので、すぐに決めました」

ニセコでやると心に決めた山田さん。ニュージーランドのバックパッカーズ、そして日本のゲストハウスを学んできた経験を活かし、満を持してご自身の宿をオープンしたと思いきや、それはもう少し先のお話。今度はニセコを知る、土地を知るということで、ラフティングガイドや観光協会での案内所スタッフの仕事に約2年半従事します。そして、その仕事と並行しながら「たびつむぎ」の建設も進めたのです。

tabitsumugi4.JPG引き戸とのれんが日本ならでは温かさを感じさせてくれます

「これまでの経験を詰め込んで設計したんですが、まだ日本でもそこまでゲストハウスというものが認知されてなかったので、大工さんにイメージを伝えるのが大変で(笑)。似ているのはユースホステルって言ってなんとかイメージしてもらいましたね」

山田さんの経験、そしてこだわりが詰まった「たびつむぎ」。ゲストが集まるリビングは宿の中心にあり、その横には自由に寝そべったり、リラックスしたりすることができる囲炉裏付きの和室も併設されています。そして、リビングの大きな窓からは、ニセコのシンボル羊蹄山をダイナミックに望むことができます。

「宿のコンセプトはHOMELY(家庭的な)でCOZY(居心地の良い)な宿です」

2011年1月、ついに山田さんのバックパッカーズ「ニセコ宿 たびつむぎ」がオープンしました。

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10年目を迎えて

ニセコにはゲストハウスが数多くありますが、たびつむぎの特徴の一つが、JR倶知安駅からほど近く、市街地のスーパーやコンビニへのアクセスも良いこと。これは、長期滞在者には嬉しいポイントです。個室とドミトリー合わせてベット数は12ベッド。ウィンタースポーツのオンシーズンである冬、また夏には羊蹄山の登頂を目指して、国内外からたくさんのゲストが訪れます。ちなみに、夏は登山をされる方の無料送迎サービスもあるそうです。
2020年、オープンから10年目という節目を迎えた山田さんとたびつむぎ。これからの歩みについて聞いてみました。

tabitsumugi11.JPGゲストの方々の思い出が詰まったノート

「これまでたびつむぎの運営は基本的に私一人でやってきました。なので、正直サービスの提供で一杯一杯になることもしばしばあります。それ故に、人との繋がりを提供するところではあるんですが、その繋がりに私自身が触れられていないという感覚が生まれる時もあるんです。これはちょっと良くないぞと思ってまして、サービスする側に集中しすぎるのも良くないかなと。なので、今後はお客様はもちろん、他のゲストハウスのオーナーさん、つまり横の繋がりなんかも作っていきたいなと思っています」

こうした繋がりは、かつて山田さんが海外のバックパッカーズで感じた、新しい目線や異なる考え方に触れた「喜び」や「学び」をきっともたらせてくれることに違いないと感じました。

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ニセコ宿たびつむぎ
ニセコ宿たびつむぎ
住所

北海道虻田郡倶知安町旭44

電話

0136-22-0539

URL

https://tabi-tsumugi.net


「あなたの旅に繋がりを」ニセコのバックパッカーズ、たびつむぎ

この記事は2020年4月21日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。