大通公園、狸小路、すすきのといった、札幌市の中心スポットからも程近く、観光やビジネスの拠点としても好立地にたたずむ6階建てのビルが、シェアオフィスとゲストハウスが一体となった複合施設「CONTACT」です。1階がコワーキングスペース兼ラウンジ、2階がシェアオフィス、3〜6階が「GOEN LOUNGE & STAY SAPPORO」というゲストハウスになっている、北海道で有数の規模を持つゲストハウスです。
※CONTACTの新型コロナウイルスならびにその他感染症拡大防止について
2019年にオープンしたこの施設、運営をしているのは、蔦屋書店やTSUTAYAで有名な株式会社北海道TSUTAYAなのです。全国的にも珍しい「泊まる」と「働く」が融合しているこの複合施設、実は旅行好きのある女性社員のひらめきから生まれたとのことで、その生みの親であり、CONTACTのマネージャーでいらっしゃいます塩津萠さんにお話を伺いました。
全てのきっかけは企画提案から
CONTACTが生まれることになった、そのひらめきとは!?
と紐解いていきたいところですが、まずは塩津さんご本人について触れていきたいと思います。
ご出身は北海道函館市、お母さまの勧めと、これまでとは異なる環境に身を投じてみたいとの想いから、高校進学で北海道を離れ、神奈川県藤沢市にある慶應義塾湘南藤沢高等部へ進学します。その後は慶應義塾大学理工学部に進学し「人間の愛着を測る」をテーマに研究され、大学院までを修了します。
こちらが塩津萠さん。好きなものは旅行と歴史(特に幕末史)。
「学生の時、東京に『代官山 T-SITE』(※)ができて、すごいお洒落な空間だな〜と興味を持っていたら、その2年後、2店舗目がなんと地元函館にできると聞いて衝撃を受けました!全国いろんな土地があるのになんで函館なんだろう?と思って会社を調べたのが入社のきっかけでした」
こうして塩津さんが入社したのはカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下CCC)。CCCはTSUTAYAや蔦屋書店をはじめとし、音楽ソフト、映像、ゲーム販売、飲食、家電、出版、ネット事業など、多岐に渡る事業を展開するCCCグループのホールディングカンパニーです。そして塩津さんが配属となったのが、株式会社北海道TSUTAYA、そして「函館 蔦屋書店」だったのです。
「入社1年目、私は雑誌を担当していたのですが、ひょんなきっかけで、企画のプレゼンをさせてもらえる機会を会社からもらったんです。CCCの考え方として、全ての事業はライフスタイルの提案であり、ビジョンとして『世界一の企画会社』と掲げているほど、企画というものに力を入れているんですね。ただ、私みたいな新人が企画提案できる機会をもらえたのは本当に運が良かったと思いますね」
実はこの企画提案がCONTACTが産声をあげた瞬間でした。
(※)蔦屋書店を中核とした、本・映画・音楽といったコンテンツを中心に、豊かな生活を提案するライフスタイル提案型商業施設
CONTACTプロジェクト始動!
塩津さんが提案した企画とは「商品・サービスの選択に宿泊という体験を加えることによる生活提案」、噛み砕くとお店などの売り場で商品が陳列されているものを見て選択するよりも、宿泊というある種の生活空間に商品が存在していて、それを実際に体験し、良いと思ったものを選択できる、という一連の流れを提供するというものでした。なんとこの企画が通り、次の年からCONTACTのプロジェクトに従事することになります。
「正直、当時は事業計画書もPL(損益計算書)も右も左もわからない状態でしたし、結構プレッシャーを感じていました。でも、せっかく得た機会で、ましてや自分で企画したものですから、がむしゃらにチャレンジしてみようと思いましたね」
スタッフと1階のラウンジで打ち合わせをすることもしばしば。
社会人2年目で自分の企画した複合施設をオープンさせるという大きなプロジェクトのマネジメントを任される、なかなか誰でも背負えることではないことは想像できます。
そこから1年間、塩津さんはこの企画の柱となる宿泊施設の場所探し、そして全国のゲストハウスを調査すべく、およそ70箇所の施設に宿泊して経験を自身に擦り込んだりと、インプットに時間を注ぎます。そうした中、当初の企画自体もブラッシュアップされていき、最終的に描いたコンセプトは「『旅する人』と『働く人』が出会い、新しい接点が生まれる場所」でした。
「場所は、北海道の中心である札幌、さらにその中心地でと考えていました。コンセプトも準備を進めていく中で、これからの世の中どうなっていくのだろう?と考えてみた時、いろんな働き方が生まれていく中、『旅する』と『働く』、『宿泊』と『オフィス』をかけ合わせるのが面白そうとなったんですね。それらが同じ空間にあることで、旅する人と地元の人の出会いや、札幌をはじめとしたこの土地にいるクリエイターやアーティストといった面白い取り組みをしている人が集まることによる賑わい、外の人から学べることなど、これらを融合させたいなと思いました」
そうして、構想から約2年が経った2019年2月、ついにシェアオフィスとゲストハウスが一体となった複合施設CONTACTが札幌にオープンしました。
コンセプトは「旅する人」と「働く人」の融合
むき出しのコンクリートと赤を基調とした看板やドアのお洒落な外観、1階の入口を入ってすぐにあるのがゲストハウス、シェアオフィスの受付、カフェを提供する総合カウンターです。そして奥には利用者全ての方がくつろげる空間のラウンジがあります。周りの壁には函館 蔦屋書店のコンシェルジュが「知」「思」「動」をテーマにセレクトした、雑誌や本が所狭しとラウンジを囲みます。
1階のラウンジはカフェだけでの利用もできます。
「ここを設計する際に、一番大事にしたのがこのラウンジなんです。私が全国のゲストハウスをまわって感じたのが、どんなにラグジュアリーなベットがあっても、どんなに綺麗なキッチンがあっても、最終的に印象に残るのは、ラウンジでどう過ごして、誰と何を話したのか、ということでした。なので、ここを利用する『旅する人』と『働く人』が自由に出会い、話をしながら過ごす。この瞬間が最も心地良いと思える空間を心がけました。本もそうですし、アートやデジタルサイネージでもそうした空間を演出しました」
今回、こちらの取材はラウンジにてお話を伺ったのですが、実際にラウンジで座っていると、ビジネス、海外アート、サブカルチャー、歴史などさまざまジャンルの本と、インテリアとして一際存在感を放つアート作品が視覚的に刺激を与えてくれて、どこかワクワクするようなそんな感覚を覚えました。塩津さんこだわりのラウンジを肌で感じた瞬間だったと思います。
そして、3〜6階のゲストハウスGOEN LOUNGE & STAY SAPPOROにも、随所に塩津さんの経験が活かされており、こう教えてくれました。
「例えばですが、タオルは無料で貸し出しています。他では有料だったり、あるいは持込のタオルを使うことが多いのですが、仮に持ち込んだ場合は、朝シャワーを浴びて、午前中にチェックアウトするとなると、タオルを乾かして移動することができないんですよね。半乾きのまま旅のカバンに詰め込まなくていいようにとの思いからですね。また、一般的にゲストハウスでは、ドミトリーでの一人あたりのスペースはそこまで広くはありません。だからこそ、この限られたスペースを心地良く過ごしてもらえるように、リュックは布団の横に置けるようスペースを設けたり、小物を置ける棚を設置したりと、ちょっとしたことなんですが配慮しました」
布団の上に置かれている手書きのウェルカムメッセージと折り紙の鶴が気持ちをほっこりさせてくれます。
さらに24時間スタッフが駐在しており、女性専用のフロアもあることから、一人旅の女性でも安心して使用できると評判で、実際に利用者は女性の割合が多いそうです。利用者としては、札幌の中心部でこうしたこだわりの空間を安価で利用できるのも嬉しいポイントですね。
1階のラウンジではビアパーティーや様々なイベントも開催されています。
これからのCONTACT
オープンから約1年が経過し、道内外の方はもちろん、海外の方にも広く利用をしていただいているというゲストハウスGOEN、そしてCONTACT。運営も2年目に入りこれからについても塩津さんに伺いました。
「マネージャーとして、オープンしてからの1年間は現場の作業ばかりに注力してしまったというのが正直なところで、もっと自分自身の人との繋がりやCONTACTの認知を広める活動もしたかったという想いです。ですので、今後はこの現場のマネジメントは任せて、私はもう少し俯瞰的なポジションからCONTACTを支えていく予定です」
今後は、宿泊の予約管理システムやWebやSNSをはじめとした広報、また外との繋がりをCONTACTに落とし込むといった、これまでなかなかできなかった新しい取り組みに塩津さんはチャレンジされるとのこと。
「この箱が人生を変えるきっかけに」
最後に、塩津さんが発したこの言葉にCONTACTの想いが詰まってると感じた取材でした。
- CONTACT / GOEN LOUNGE & STAY SAPPORO
- 住所
北海道札幌市中央区南2条西5丁目26-4
- 電話
011-522-5548
- URL