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札幌市

北海道で一次産業に就きたい人へ。そっと背中を押してくれる場所20190918

この記事は2019年9月18日に公開した情報です。

北海道で一次産業に就きたい人へ。そっと背中を押してくれる場所

「農業」「林業」「漁業」
広大な大地に耕される農地、連なる山々に漲る木々たち、そして島国ならではの海に囲まれたこの北海道では一次産業が盛んなのは十分想像できます。

生まれた実家が一次産業を担う家だったという方もいれば、もちろんそうではない方もたくさんいらっしゃいますよね。しかしそんな全く一次産業に関わってこなかった人たちの中にも、将来の職業を考える上で「一次産業の道に進みたい」と志す人もいるはず。

全くの未経験者が、一次産業の業界を目指す上で一体どう突き進んで行けばいいのか...そんな方々に向け、手を差し伸べてくれる団体が「農業」「林業」「漁業」とそれぞれに存在している、ということを本日はご紹介します。

  • 北海道農業担い手育成センター
  • 北海道森林整備担い手支援センター
  • 北海道漁業就業支援協議会
こういった組織があるのをご存知でしたか?

農業、林業、漁業に就くためにサポートしてくださるスペシャル機関が札幌にあるんです!

くらしごと編集部、突撃訪問しまして「どうしたらこの業界の仕事に就けるの?」「最初は何をすればいいの?」そんな初心者丸出しでアドバイスをもらってきました。

北海道の広大な大地で生きる仕事。農家を目指す人へ

「ここには現会社員の方から学生さんまで幅広く情報収集のために訪れてくれています」と話してくれたのは、就農相談課に在籍している在原章公さん。

ninaite_nougyou01.jpgこちらが在原さんです。

北海道農業担い手育成センター(以下、担い手育成センター)には、全道各地の情報が集まっているので、「農業をやりたい」という方に対し丁寧にヒアリングし、その方にあった情報をアドバイスしてくれるという場所。

しかし、農業の現場に行かずしてここで得た情報だけで判断するのはなかなか怖いものがあります。やはり実際にその土地へ赴き、そこでの作物に触れるという体験をしてみないと分からないことも多いですよね。

担い手育成センターに相談する魅力のひとつとして、体験ができる場所も紹介してくれるところが挙げられるでしょう。

「うちは北海道179市町村ある内、171市町村と繋がりがあるため、その地域ごとの受け入れ体制や、体験などの情報は手厚く持っています。例えば、『今の時期は野菜の時期ではないから、こっちはどう?』なんて提案もできます」

ninaite_nougyou2.jpgこちらが実際の相談ブース。大きな地図を見ながらそのまちごとの特長なども教えていただけます。

農業とはいえ、野菜農家、花卉農家、酪農...その種類は様々です。実際に体験してもらい、自分の希望と再度向き合うことによって、将来の道も少しずつ拓かれていくはず。

在原さんも「目で見るだけではなく、やってみることが大事」と話す通り、実際に体験してもらうことによって「作物を育てるってどういうこと?」「農村地帯に住むってどういうこと?」そういったところまで理解が進むようです。

また、ここ担い手育成センターには4名のコーディネーターがおり、最低1人は必ず常駐しているとのこと。相談に行った際は、こちらのコーディネーターの方々が親身に相談に乗ってくれます。

ninaite_nougyou3.jpg「私たちが相談に乗ります!」このコーディネーターたちは、農業に携わる人々を指導するため日々道内各地をまわっていた経験をもつ敏腕コーディネーターたち!

このように担い手育成センターに直接訪れて相談をしてみるということも可能です。
「でも、事前にお電話いただいた方が確実です」と在原さん。

「人生がかかった相談ですから。親身に相談に乗りたいと思っています」と心強いお言葉が続きます。

最近では女性の相談者も多いそうです。

「ここに訪れる訪問者の方々はすぐ農業に就きたいというだけではなく、まだ先の話っていう方ももちろんたくさんいらっしゃいます。だから、とにかく皆さんにはここの存在を覚えていて欲しいんです。北海道も場所によっていろいろあり、自分の農業に対する適性もわからない、それをガイドをする役目だと思っています」

農業といえば北海道と、この地に移住してくる人もここ最近増えているように感じます。全くの異業種から農業の世界へ飛び込む人も増えてきている様子。だからこそ、「農家になりたい」という夢や目標を持った時、どうすれば良いのだろうと立ち止まってしまったら一度この担い手育成センターを思い出してみてはどうでしょうか。

木を育て、木を切り、木を守る仕事。林業を目指す方へ

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次は、林業の業界を見てみましょう。このお仕事はなかなか普段生活している中では見ることが出来ない業界。だからこそ、遠い世界と思われがちです。

林業をテーマにした映画もかつて話題となりましたが、北海道にいながら「林業に就きたい」と思った時どうすれば良いのか。そんな林業に就きたい方の相談に乗ってくれる場所が札幌にありました。それが、北海道森林整備担い手支援センターです。(以下、担い手支援センター)

お話を聞かせてくださったのは三谷さん。実際に相談しに来た方々のサポートをしてくださる方です。

ninaite_rinngyou2.jpgこちらが三谷さんです。

「ここに来られる人は、経験者より圧倒的に未経験者からの相談が多いです」と、これから相談したいと考えている方にとっては安心の一言。年齢層も18〜60代までと幅広いのだとか。

どんな人が林業に興味を持つのでしょうか。聞いてみると、「自然が好き」「いつも山に登っています!」といった理由から林業に興味を持ったという方々が多いと言います。

「まずは実際にここに来てもらって『林業の仕事とはこういうもの』というところからしっかり教えます。例えば、林業と言えども『木をつくる仕事』『木を加工する仕事』とありますから、どちらに興味があるのかってところからまずは確認します」と林業のあれこれをイチから教えてくれるそう。

林業というものに少しでも興味を持ったら、まずはこの場所へ訪れてみるのが良いのかもしれません。三谷さんも「来てもらうのは大歓迎です!もちろん、お電話で問い合わせをいただくことも多いです」と笑顔。

ninaite_ringyou3.jpgこちらが北海道森林整備担い手支援センターが入っているビルです。札幌駅からすぐ近くにあります。

農業、漁業にも通じるところですが、林業もそれぞれの地域にそれぞれの特色があります。そういった違いもこの担い手支援センターで教えてくれるので、改めて自分の希望とのマッチングを考える良い機会になるのかもしれません。

さらに三谷さんは林業に本格的に就くかどうかを決定する際にオススメな研修があると教えてくださいました。それが、「支援講習」というもの。

やはり実際にやってみないと自分に合うかどうかというところは分かりませんよね。特に林業なんて、普段目にしない仕事だからこそ、想像だけでは厳しいものがあります。

三谷さんが教えてくださったこの支援講習は無料で受けることができ、5日間、20日間と2つの期間のコースが選べますが、一番オススメだと言うのが20日間コース。

「20日間ともなると、やはり生半可な気持ちで受けることは出来ませんからね。さらに資格もいくつか取れるんです」

なるほど、確かに20日間も林業を体験してみるとなると簡単な気持ちでは臨めません。経験すれば確かなものを見つけることができそうですね。
こういった体験を通して、実際に林業に就こうと心を固めた人を多く輩出しているそう。この中にはもちろん女性も含まれ、今では「林業女子」として北海道各地で活躍されています。

また、なかなか想像しにくい世界だからこそ「休みってあるの?」「体力的にも厳しいのでは?」なんて疑問も思い浮かぶかと思います。

厳しい世界なのでは...と取材陣も想像していたのですが、「働き方改革」なんて言われている時代の中、林業の業界も変化しつつあるようです。

かつてはそのシーズンだけ雇用される「季節雇用」が主流の業界でしたが、今では通年雇用を実施する事業体もぐんと増えてきています。

「隔週休みや有給をしっかりとれるなど、働く人のことを考える考え方も変わってきているんですよ」と三谷さんが話す通り、現場の人たちの意見を尊重してくれる業界と変わっているのです。

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最後に「林業の仕事はどんな人に向いていると思いますか?」なんて質問を投げかけてみました。すると三谷さんは「林業に向かないって人はいないと思います」と一言。

「もちろん、疲れるし大変です。でも、1年経てば慣れてしまうんですよね」
1年続いた人は恐らくその後も続く。気づけばこうして林業の魅力に捕らわれる人も多くなっているのです。

海が好き、自分の腕一本で働きたい、漁師を目指す人々へ

さて、最後は漁業です。

漁師さんが海に出て、魚をたくさん獲ってくるお仕事...というのは想像できますよね。

さらには代々受け継がれる職業というイメージをお持ちの方もいるのではないでしょうか?全くの未経験の人が「漁師になりたい」という夢を抱いた時、どうすれば良いのでしょうか。

まさにそういった「漁師になりたいけれど、どうすれば良いか分からない」という方がまず相談してもらいたい場所が北海道漁業就業支援協議会。

優しく出迎えてくださったのは、宮本さん。
「ここは就職斡旋の場所ではなく、後継者をつくるためのサポート事業を行っています」と話してくださいました。

ninaite_gyogyou3.jpgこちらが宮本さんです。

「漁師になりたいと思った方はまずこちらに連絡して相談していただいても構いませんが、オススメなのはフェアに参加することですね」と教えてくださったのは毎年開催されているイベント。

現役漁師経営者である親方たちが、毎回30団体前後集まり、漁業に興味のある方がそのフェアに参加する、分かりやすく言えば合同企業説明会のようなものが年に1〜2回開催されているそうです。

このフェアに参加し、親方から声がかかり条件が合えば研修生として受け入れてもらえこととなります。

「ご夫婦で来られる方、女性の方もいらっしゃいます。実際にこのフェアを通じて、女性の方が利尻で漁師になったケースもあるんです」

宮本さんの感覚で言えば、若い人が漁業に興味を持って来てくれているのを感じるそう。「まずは知りたい」その原動力で、フェアに来る若者の姿もちらほら。もちろん、実際に行って、話を聞いてみて「自分とは合わない」と思うのもひとつ。逆に、さらに魅力に感じるという人も多いのだとか。

ninaite_gyogyou5.jpgこちらがそのフェアの案内ポスター

ではその『魅力』とは何なのでしょうか。

「親方になったときの収入面もありますね。自分の腕1本で思っている以上に収入があることを知り、プラスに働くようです。あとは、海が好きだとか魚が好きだという理由で来る人も多いですよ」

フェアを通じて実際の現場へ研修に行くと、昔は「思ったより厳しかった...」と言って途中で辞めてしまう人も多かったけれど、最近では最後まで研修をやり抜く人が多いとのこと。この要因としては、受け入れる側の親方の意識も今の時代に合わせて変わっていったのではないか、というところが影響しているのではないでしょうか。

また、親方だけではありません。
受け入れるまちの自治体の意識も変わっていきました。
自治体もどんどん受け入れ体制や担い手不足解消のために変わっていったのです。

 ninaite_gyogyou4.JPG漁業の現場も、時代に合わせて変わっていきました。

「利尻・礼文は住宅もしっかり確保していて、格安で入居することができるんです。さらには磯船だとかも一式でプレゼントされたり、着業資金が出ることも。一人前になるまでは月いくらか手当てを出すよなんて自治体もあります」

最初の頃こそはまだこうした取り組みも限られた自治体だけだったのが、今では少しずつその範囲を広げていっているそう。

こういった制度のおかげで、立派な一人前となった漁師も実際にたくさんおり、今も尚漁師として健在しているのです。

「嬉しかった話では、漁師になりたくて、ここを通して研修生となり晴れて漁師になった若者が、今度は親方となってフェアに出展してくれたのは嬉しかったですね。二代目に突入したんだなぁと」としみじみと語る宮本さん。

「自分だけのツテで親方のところへ行く人もいますが、フェアはやはり『きっかけ』にもなりやすいのです」

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では、漁師を目指すにあたって大切なことは何でしょうか?

「親方や地域と馴染めないと大変。地域全体で受け入れることを意識していかないとダメ。本人も自分が飛び込んでいくって意識が必要。環境ですよね、やっぱり。それでこそ後継者になっていく。それを乗り越えないと。それくらいの覚悟を持ってくる人も増えてきています」と優しく教えてくださった宮本さんでした。

相談できる存在がある安心感

今回は「農業」「林業」「漁業」と北海道の一次産業にスポットを当てて取材をしましたが、そういった業種とゆかりがない人も「やってみたい」というその本気と覚悟があればいつだってこうした現場に参入できるのだということが分かりました。


大事なのは「やりたい」と思う気持ち。では次に、どうすれば良いのだろうと立ち止まってしまった時には一度こうした団体に相談しに行ってみるという行動は一番良いのかもしれません。

3つの団体、皆さん口を揃えてこう言っていました。
「気軽に相談しに来て欲しい」と。
一次産業が活発なそんな北海道のこの地で、ぜひとも第一線でチャレンジしてみませんか?大丈夫、背中をぽんと押してくれる人が、まちが、あなたをサポートしますから。

北海道農業担い手育成センター・北海道森林整備担い手支援センター・北海道漁業就業支援協議会

<北海道農業担い手育成センター>

北海道札幌市中央区北5条西6丁目1-23北海道通信ビル6階

℡:011-271-2255

<北海道森林整備担い手支援センター>

北海道札幌市中央区北4条西4丁目1-3伊藤ビル6階

℡:011-200-1381

<北海道漁業就業支援協議会>

北海道札幌市中央区北3条西7丁目(北海道水産ビル内)

℡:011-280-3007

mail:fish01@h-suisankai.or.jp


北海道で一次産業に就きたい人へ。そっと背中を押してくれる場所

この記事は2019年6月4日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。