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22歳、地域おこし協力隊をやりつつカフェをオープン!20190816

22歳、地域おこし協力隊をやりつつカフェをオープン!

北海道三笠市。石炭と鉄道の発祥の地として栄えた歴史のあるまちですが、その一方で今やどのまちでもそうですが人口減少などの問題も挙げられます。しかし、このまちでそれに歯止めをかけた大きな要因のひとつともなるのが「三笠高校」の存在です。

1945年に開校したこの学校は当初「道立」の学校でしたが2012年に閉校し、その後三笠市に移管されました。同年4月に「市立学校」として再び誕生。道立時代と違うところは「普通科」がないところです。この学校は主に調理師などの育成に特化した学校として生まれ変わりました。

こうして新たな一期生として入学したのが、今回取材をさせていただく上西歩夢(じょうにし あゆむ)さん。現在22歳のフレッシュさ溢れる若者です。

mikasa_jyounishi2.JPGこちらが上西さんです。

北海道旭川市出身の上西さんは、三笠高校へ進学。お菓子づくりをメインで学び、その後東京の専門学校でさらに製菓の知識をつけ、再び北海道へ。現在は三笠市地域おこし協力隊として活動しつつ、2019年4月には満を持して自分のカフェをオープンさせました。

話せば話すほど甘い顔をした「策士」である上西さんの魅力にどんどん吸い込まれていきます。今や様々な生き方が存在してるこの世界で、協力隊としての活動の傍ら自分の店を若くしてオープンした生き方・働き方は非常に学ぶことが多くありました。

mikasa_jyounishi3.JPG上西さんがオープンさせたご自身のお店の看板です。

科学的にお菓子をつくることに魅力を感じて

上西さんが初めてお菓子作りを体験したのは小学生の時。

それ以来お菓子をつくることが好きで、つくっては当時の担任の先生にプレゼントしていたそう。「お菓子作りが好きな子」と先生の記憶に留められた上西さんは、その先生から「調理に特化した三笠高校っていうのが出来るよ」という情報を受け、受験を決めます。

この三笠高校は、調理と製菓にコースが分かれているそうですが上西さんは製菓コースへ。晴れて一期生として入学を果たしました。

そんなある日、佐藤先生という恩師に出会います。

「佐藤先生は、科学的にお菓子をつくる人だったんです。レシピの分量は全て計算されていて、これくらいの砂糖の量であればこういった味になる、なんてことも全て計算で出していました。佐藤先生の教えを受け、自分も科学的にお菓子をつくるという楽しさにのめり込んでいきました」

上西さん自身も、お菓子を食べては同じようにつくってみて、それが思い通りに行った時が嬉しいと話す通り、もはやお菓子の研究者のようです。

mikasa_jyounishi4.jpg上西さんが一番つくるのが好きだと語るシフォンケーキ

三笠高校を卒業後、上西さんは東京にあるエコール辻東京という専門学校へ進学。
進学を決めた理由としては「さらに知識をつけたかったから」と勉強熱心。この専門学校は1年間という短い期間でしたが、三笠高校で過ごした3年間含め、計4年間自由にお菓子をつくり続けてこれたことがとても楽しかったそう。

こうして東京のあるお菓子屋さんに就職するのですが、今までとの勝手の違いに戸惑う日々...。
今までがいかに自由に楽しく、お菓子をつくってこれたのかということを社会に出て痛感しました。ギャップを感じてしまい、上西さんは早々にそのお店を退職。

その後、カフェでアルバイトを始めますが、当時新宿という都心に住んでいたこともあり次第にお金が底をつきそうに・・・。

「この頃から、そろそろ北海道に帰ることも視野に入れ始めていました」

mikasa_jyounishi7.JPG東京での生活にもなんだか馴染めないような、そんな違和感を感じていたそう。「でも、東京での経験は大きいです。やはり、最先端のお菓子の世界を見ることが出来ましたから」

北海道へのUターン。三笠へ行く決心

こうして北海道、それも地元である旭川へのUターンが決まりました。 戻ってきてからは、 壺屋総本店というお菓子のお店で正社員として働き始め、丸2年働きました。

「ここでは色々なことを経験させてくれ、自由にやらせてくれました。空いた時間には勝手に商品開発をしていました」

上西さんが考案したアイデアが、実際に商品となって陳列棚に並んだことも多々あると言います。

そんなある日、母校である三笠高校の先生から「三笠に高校生レストランができる」という情報を受けました。それも、何やら「地域おこし協力隊」になって、このレストランの企画運営などをする仕事の募集が出ているというのです。

上西さんはこれに手を挙げました。旭川に戻ってきて2年が経った頃、ちょうど他のことにも挑戦したいなと思っている頃でした。

「僕にとって本格的なお菓子・飲食人生のスタートは三笠だったし、その先生からの情報はとても気になりました。地域おこし協力隊っていうのは知らなかったですし、三笠独自の制度なのかな?くらいにしか思っていなかったんですけどね(笑)」

上西さんにとって、「三笠に関われる、母校に貢献できる」理由はそれだけで良かったのです。
この募集に手を挙げた上西さんは面接も無事乗り越え、晴れて三笠市の地域おこし協力隊として採用され、新しくできるという高校生レストランに携わることになっていきました。

失敗しても良い。若いうちから挑戦することに意味があると突き進む

こうして地域おこし協力隊の業務として、高校生レストランに併設される施設で料理教室の企画運営などをはじめ、セミナーなど高校生レストランを拠点に様々な業務をこなしていました。

mikasa_jyounishi20.JPGこちらが料理教室での写真

それと同時2019年4月25日、上西さんは新たな挑戦のスタートを切ります。
三笠市に自分のお店をオープンさせたのです。22歳にして起業。その想いについてこう語ります。

「以前、全道の協力隊が集まる研修会に参加した時に東神楽町の協力隊小島さんという方と出会いました。その方は協力隊卒業を控えており、まもなく自分のお店『シゲバル』をオープンするというお話をしていて、これがとっても刺激になりました」

上西さん自身も昔から30歳くらいには自分のお店を持ちたい...と考えていたそう。

「ただ、30歳まで待ってそこで失敗するよりも、若いうちにやって失敗した方がいいと思い始めました。30歳までやってみて実にならなかったとしても、それまでの間自ら起業していたという経験が得られると思ったので」

しっかりと先々のことを考えている上西さんは、そうと決めたら早速行動開始です。クラウドファンディングを使って開業資金を集めることにしました。目標金額は150万円。

三笠市には、協力隊を3年間遂行し卒業した後に起業するということであれば支援金が出るという制度もあるそうですが、上西さんは自分で資金を集めることにしたのです。これは、現実的なことを見据えての挑戦でした。

「三笠市の協力隊は兼業が許されているので、協力隊とカフェの兼業というカタチでオープンした方が、最初のうちは金銭的にも安定できると考えていました」

まだ22歳なのに策士な上西さんです。

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資金集めのツールとして、クラウドファンディングを選んだ理由もこう話します。
「キングコングの西野さんの本を読んだ時に『クラウドファンディングは協力者を集めること』って書いていて、自分も協力者を募ってみようと思ったんです。それに、銀行から借金をするのもやっぱり怖かったので。最悪、目標金額に達しなかったら、銀行から借りるということも考えていました」

そんな想いも抱えつつ始めたクラウドファンディングは、見事目標達成!
111人もの人が上西さんの「協力者」となってくれたのです。この111人の中には、上西さんの家族を始め、多くの三笠市民の協力がありました。まちの皆さんが、自主的に互いに声を掛け合い協力してくれていたのです。さらにはクラウドファンディング以外でも協賛金を集めてくださった人々もおり、その数含めると141人もの協力者が上西さんを支援しました。

mikasa_jyounishi10.JPG上西さんを囲むのは、三笠市役所の移住担当のお二人。上西さんを面接したのは、写真右の樋口さん。左は上西さんと同い年だという加藤さん。このお二人も、上西さんの協力者としてまわりに声を掛け合いながらその輪を広めていきました。

資金面だけではありません。この素敵な店内は、全て自分たちでDIY。床もはがして、壁も、空調にもペンキを塗って...一番身近な応援団である家族も総出で、そして多くの友人、市役所の方にも手伝ってもらいながら完成したお店なのでした。

さて...多くの人の協力を得て迎えたオープン日。
上西さんはあえて大々的にオープン日を告知していませんでした。

取材を進めていくうちに少しずつ分かってきましたが、上西さんは生粋の「策士」。告知を大々的にしなかったのも、何か理由があるに違いありません。

「オープンが大混雑していると、せっかく来たのに混んでてお店になかなか入れなかったとか、注文が遅いとか、そういうのがあるとマイナスイメージがついてしまうので。だから、お客さんを分散させるためにも告知はしませんでした」

これは趣味のひとつでもあるカフェ巡りで出会ったお店の方からのアドバイスだったそう。おかげでマイナスイメージもつくことなく、ゆるりと始め、多くの人に愛されるお店となりました。

mikasa_jyounishi9.JPG4人男兄弟の末っ子だという上西さん。作戦立てがうまいのも、なんとなく分かります。

食のまち三笠市ブランドをつくりたい

協力隊とカフェの業務を兼業している今、午前中は主に協力隊の仕事を、そして夕方からカフェでの仕事という生活を送っています。忙しい日々なのでは?と思いきや、どちらも好きなことなので、苦になることもなく過ごしているとのこと。

「『今日仕事行きたくないな〜』なんてそんな気持ち、久しく抱いていないですね!」とニコリ。

mikasa_jyounishi15.JPGカラフルのマグカップがとってもキュートです。

また、一期生がこうしてこのまちに戻ってきたということは現三笠高校生の刺激にもなっているそう。

上西さんの協力隊任期は残り1年半。今後の目標について、聞いてみました。
「このまま今を継続していきたいし、カフェの認知もあげていきたいです」

上西さんはさらに言葉を続けます。
「任期が終わったら、カフェだけでは厳しいので、お菓子教室を開いたり、三笠市に事業所を置いて東京や札幌に店を拡大させたいです」

また、このまちについて懸ける想いも聞かせてくださいました。
「三笠市は『食のまち』と謳っています。三笠高校の卒業生は今や200人ほど。卒業生は今、それぞれの地で頑張っています。いつかそれぞれが力をつけて、このまちに戻ってきて欲しいです」

mikasa_jyounishi11.jpg上西さんの両サイドの女性は、同じく地域おこし協力隊の面々。それも、実はこの3人三笠高校の同級生なのです!

そんな話をしている時に、ひとつの例を上西さんが挙げました。

「スペインのサンセバスチャンという過疎地があったんです。そこは美味しい海産物が有名の場所で、それを聞きつけた腕の立つ料理人たちが次第に集まってきました。こうして今ではそのまちは、ミシュランに載るようなお店が軒を連ねています。三笠もそうなって欲しい...『三笠ブランド』が出来てほしいですね」

確かに、お店がたくさん集まると競合してしまうかもしれません。でも、たくさん色んなお店があった方が「あのまちへ行ってみよう」と、そのまちの「ブランド」ができると上西さんは考えます。

三笠の行く末を、上西さんはワクワクしながら見つめています。

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これからは経営や起業の勉強を深めて、今度はその知識を教える立場になりたいという目標の他、すでに保持しているコーヒーソムリエの資格のさらに上、コーヒーマイスターの資格取得を目指しているという上西さんの挑戦は止まりそうにありません。

三笠市地域おこし協力隊 上西歩夢さん

◎上西さんのお店はこちら
2Beans Coffee
北海道三笠市幸町7-5
営業時間:18:00〜22:00
定休日:水曜日
2 Beans Coffeeのインスタグラム


22歳、地域おこし協力隊をやりつつカフェをオープン!

この記事は2019年7月19日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。