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浦河町

ふるさとの宝を、自分らしく輝かせる。産休取得で新たな道も。20190325

この記事は2019年3月25日に公開した情報です。

ふるさとの宝を、自分らしく輝かせる。産休取得で新たな道も。

人口約1万3千人。有名な馬産地であり、伸び伸びした雰囲気の港町でありながら、振興局があるため人の出入りも活発な町、北海道浦河町。山口このみさんは、ここ浦河町で現役の地域おこし協力隊員として活動しています。町のイベント情報などを網羅するウェブサイトの運営などを行う傍ら、自らデザイン事務所を立ち上げました。また、全国でも珍しい、産前産後・育児休業を取得した地域おこし協力隊員でもあります。取材会場となる会議室に現れた山口さんは、ポップでカジュアルに着こなした着物姿が印象的な、キラキラした目の女性。この着物についてはまた後で詳しく聞くことにして、まずは今の仕事に就いた経緯から、リアルな地域おこし協力隊の仕事について尋ねてみました。

旦那さんが浦河町への移住を熱望!?

山口さんは、浦河町出身のUターン組です。高校を卒業するまで浦河町で育ち、その後は旭川の大学を卒業して札幌で働いていました。浦河町へ戻るきっかけを作ったのは、実は山口さんの旦那さん。

「地元で祭りがある時には夫と一緒に浦河に帰り、お神輿を担いだりしていました。すると知り合いのおじさんが、『おお、このみの旦那か、飲め飲め』って構ってくれて。夫は親が転勤族だったこともあり、こうやって町の人と一緒に何かをする経験がなかったそうで、新鮮で楽しかったようです。海があるのも気に入り、居心地が良かったみたい。ある日突然、『転職しようと思う、浦河に移住するのはどう?』と打ち明けられました」

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一方、札幌での会社勤めは順調で、産休や育休も取れる会社で働いていて、将来安泰だと思っていた山口さん。旦那さんの申し出に迷いましたが、「両親も浦河にいて、弟も戻って働いている。このタイミングで故郷に戻るのもいいな」と思い、Uターンを決めました。

浦河町に帰ることが決まり、今度は職探しです。大学ではグラフィックデザインを学び、卒業後は札幌でスマホアプリの開発を経て、建築会社の広報担当としてウェブサイトの更新や雑誌広告の制作などの仕事をしていた山口さん。どうせなら経験を活かせる仕事を、と考えていたところ、地域おこし協力隊の募集を見つけました。募集職種は、「スモールビジネスの支援」。

「商店街のイベントを一緒に盛り上げたりもできるし、商品パッケージを一緒に見直したりもできるなと、イメージが湧きました」と山口さんは言います。応募したところ見事に採用!旦那さんも農協職員として採用され、晴れて二人とも浦河町で働くことになりました。

yamaguchi_03.jpg海と山、自然に豊かな浦河町の商店街

故郷の地域おこしで洗礼!?体当たりでイベントに挑む

山口さんが地域おこし協力隊に着任して早々に取り組んだ業務の一つが、音楽と映画、マーケットを柱としたイベント「うらフェス」第1回の実行委員でした。しかしここで、地域の人たちとの付き合いで壁に当たることに。山口さんはマーケットの担当になり、商店街の店主たちと一緒に取り組むことになりました。

「音楽や映画といってもピンと来ないし、イベントの主旨もなかなか伝わらない、伝達したことも『聞いていない』『うちには話しに来ていない』など、とにかくやりとりが大変で。新しいことに取り組むことにも、『俺たち歳だから』と抵抗があったみたいで、もともと知っているおじさんたちなのですが、それでも心が折れそうに。でも、町を活気づけたいという思いがあったから、本気でぶつかりました。終わった後は、おじさんたちも『子どもたちがたくさん来てくれて楽しかった』と言ってくれましたし、妊娠した時は、『元気か?』『無理するなよ』と声を掛けてくれて、『あの時めげずにやってよかったな』と思いました」

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行政じゃないからこそできる、地域情報を網羅したサイト

うらフェスの運営で気づいたことから、新たに立ち上がった事業もあります。マーケットの出店者を募るため、ハンドメイドをやっているお母さんたちや小さな商店の店主に声掛けをしました。

「せっかくいいものを作っていても、自分たちの企画を発信する術がない。何かイベントがあった後新聞に載り、知り合いから『やってたなら行きたかった』と言われる、という人が多く、これはもったいないなと」

そういった町の人たちの情報を発信できるウェブサイト「Umagnet-うまぐねっと-」を立ち上げました。浦河町の象徴ともいえる「馬」と、「楽しい」と「やってみたい」をくっつけるという意味での「マグネット」を掛けたサイト名です。

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役場のサイトとは違い、営業に関する内容が載せられないなどの縛りがないため、小さな商店や趣味の活動、町や振興局の情報なども全てまとめて掲載できるサイトとして、facebookやTwitterと連動させて運営しています。お洒落なロゴや洗練されたデザインも、デザイナーである山口さんの個性が生かされていると共に、柔らかい雰囲気でみんなが親しめるサイトになっています。山口さんが産休に入るのを機に、協力隊の活動費での運営から、自分のデザイン会社での運営に切り替え、スポンサー探しにも奔走しました。

「Umagnet-うまぐねっと-」のHP

yamaguchi_06.JPG珍しいジーンズ生地のおしゃれな着物!

それでは突然ですが、ここで気になっていた素敵な着物姿について聞いてみましょう。

「同級生から着付けを習って、着物を着るようになりました。着物に関心を持ってから知ったのは、亡くなったお祖母さんの着物を着る人がいなくて、結局捨ててしまう人が多いということ。それなら活用させてもらえませんか?と声を掛けたら、『うちの着物も引き取って』と、かなりの数の着物を寄付してもらえたんです」

観光協会と連携し、着付けができる方にも協力してもらい、町の桜まつりや港まつりの時にレンタルして高校生に着てもらったり、外国人観光客へのレンタルも行っています。また、町内の古民家カフェで着物を着てお茶やランチを楽しむ会も月2回開催しています。趣味から始まった着物が地域資源の掘り起こしにつながり、関係機関をつないで地域おこしにも結びつけているところに、山口さんの手腕が光ります。

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産前産後・育児休業を取得、その後は自立の道を模索!

地域おこし協力隊の任期は3年間。その後のことに、不安はなかったのでしょうか?

「正直、当初は不安はありました。でも2年経ってみて、自分ができることが町の人にも周知されてきて、声を掛けてもらえることも増えたので、不安はなくなってきました」

浦河町の地域おこし協力隊は、卒業後に向けて副業もOK。そこで山口さんは、2018年の始めにはデザイン事務所「Komi desigN」を設立し、仕事を受けられるようになっていきました。妊娠がわかった時にも、山口さんには仕事を辞めるという選択肢はありませんでした。浦河町役場 企画課主幹の菅野泰弘さんも、報告を受けると早い段階で1年間休業して任期を伸ばせる制度があることを確認し、山口さんに提案しました。

「山口さんはこれまでの2年間の活動でせっかく町のいろいろな人とつながりもできたので、ぜひ育休を取って続けて欲しいと思いました。人当たりも良いので、頼られて声を掛けられることも多くなっています。浦河町では、地域おこし協力隊の方は定住にこだわらず、本人や家族にとって一番良い形で卒業後の進路を考えていただけるようにサポートしています」と菅野さん。

yamaguchi_08.JPG「町としてしっかりサポートします!」と役場の菅野泰弘さん。

Uターン・Iターンの人材確保をしたい企業をサポートするNPO法人「カエロ」の役員にも就任した山口さん。育休からの復帰後、任期はあと1年。その後の展開については、どのように考えているのでしょうか?

「デザインの仕事もいただけるようになってきましたが、まだ『地域おこし協力隊の山口です』と言ったほうが伝わりやすいんですよね。この肩書きで動けるうちに、あと1年で活動を軌道に乗せていきたいなと思っています。私たちが高校を卒業した当時は、買い物がしたければ札幌に長距離バスで行くしかなかったですが、今はネット通販もあり不便はほとんどありません。働く先さえあれば、帰ってこようと思う人もたくさんいると思います。情報を蓄積し、戻りたい人の足がかりになっていきたいですね」

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一度町の外に出たからこそ、経験や技術を身につけ、地域の資源を外からの目線で見て掘り起こしている山口さん。そして、町の人たちとの関係を築きながら、その思いが形になりつつあります。故郷だからわかることもあり、ぶつかる壁もある。そこも乗り越えて、誰も進んでいない新しい道を切り拓こうとしています。

yamaguchi_09.JPG取材は2018年の12月。この記事が公開される頃には、きっと元気なお子さまが産まれていると思います!

浦河町 地域おこし協力隊
浦河町 地域おこし協力隊
住所

北海道浦河郡浦河町築地1丁目3-1(浦河町役場)

電話

0146-26-9012(浦河町役場 企画課)

浦河町役場公式サイト

Komi desigN(山口さんのデザイン事務所)


ふるさとの宝を、自分らしく輝かせる。産休取得で新たな道も。

この記事は2018年12月4日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。