札幌市の働いていない女性の中で、就業を希望している人は26,5%(※1)これは全国平均の22,9%(※2)に比べて非常に高い数字です。
(※1 ※2 平成24年 総務省統計局「就業構造基本調査」)
つまり、働きたいけど、理想の働き方に巡り会えない、という女性がたくさんいるということです。
札幌市民としては少し悲しいことですね。
この理由はもちろん、いろいろあるでしょうし、簡単に解決できる問題ではないでしょう。
でも、そんな女性達が集まって交流することにより、理想の働き方を見つけたり、そのヒントにつながる発見があったり、お互いのサポートができる出会いがあったり。
そんな場所があったら素敵だと思いませんか?
今日は実際にそんな場所をつくり、理想の働き方を探す女性のサポートを続ける方達と、その場所にたどり着き自分のやりたいことを見つけつつある女性のお話です。
起業に向けた女性の皆さんの悩みとは
札幌駅の北側出口すぐ、チカホ(地下歩行空間)からも直結の、アクセス抜群の立地にあるのが今日の舞台である、女性のためのコワーキングスペース「リラコワ」です。
札幌エルプラザ4階と言えばわかりやすいでしょうか。
出迎えてくれたのは、「リラコワ」でコンシェルジュもつとめる新岡唯さんと、立ち上げメンバーでもある菅原亜都子さんです。
まずはここを立ち上げたきっかけと経緯を菅原さんに伺いました。
公益財団法人 さっぽろ青少年女性活動協会の職員である菅原さんは、もともと起業したい女性に向けてセミナーの開催などはしていたそうです。
その中で聞く女性の皆さんの悩みとしては、主に
「家で仕事をしているので、家事の合間にやることになり、なかなか頭の切り替えができない、集中して考えたり作業することが難しい」ということと、
「孤独。どうしても一人で考え込んだりしてしまい、それを変えるために異業種交流会などにも参加してみるが、いわゆる名刺交換して挨拶して終わりの男性的な交流会が多く、求めているのとはちょっと違った。もっと気軽に悩みとかを相談できる雰囲気を求めている」というものの2つでした。
実際に見学に行ってみると
ちょうどそのころ、札幌市内にもコワーキングスペースがポツポツできはじめた頃でしたので、ではツアーを組んで見学に行ってみましょう! と企画し実際に希望者の方達と数カ所を見に行ってみたそうです。
そうすると、こんなところがあったんだ! という感動はある一方で、ちょっと行きづらいかもという声がちらほら聞こえてきます。その理由を聞いてみると...
「業種が限られてるのと、行きづらい雰囲気がある」とのこと。
当時はまだ、コワーキングというと、IT系や、ものづくりの業種が大部分で、若いおしゃれな男子がいたりして、「私なんかが行っていいの?」「子供なんか連れていったらダメだよね?」 という印象を持ってしまう女性が多かったそうです。
そこで、
「もっと、私たち女性が使いやすい、行きやすい、コワーキングスペースがあったらいいね」
とイメージを話合っていた、ちょうどそのタイミングで、市内のとある企業でも、ママ向けのコワーキングスペースができないか模索しているとの話を耳にしたのです。
同じ目的を持つ者同士で、一緒に何かカタチにできないかと、試行錯誤する中でやはりぶつかるのがビジネスとしての壁でした。
事業化となると、採算性など中々難しい問題があったのです。
とにかくまずはやってみよう
でもそこで立ち止まらないのが菅原さん達でした。
悩むよりまずは1ヶ月だけやってみようということになり、経産局の補助も受けてスタートを切りました。
「とにかくやってみるしかなかったですよね」
そうしていざ始めてみると、予想外に1ヶ月で99名もの利用者さんが集まったのです。
利用者さん達からは、
「楽しい、もっと続けて欲しい、常設のスペースにして欲しい」
などの声が続々とあがり、その後は国の補助も受けて3年間さらに期間を延長することになります。
その間に、
「女性達の「この場所が必要だよね」という声が口コミやSNSなどにより、どんどん広がって行ったんです。そしてついには札幌市長のもとにもその声が届いたんですよ」
と菅原さんは当時を振り返ります。
2017年からは札幌市の補助事業ということになり、常設のコワーキングスペース「リラコワ」がこうしてめでたく誕生したのでした。
予定外の退職の末、出会ったリラコワという場所
2017年に札幌にJターンして以来、ご自身も起業に向けて活動中の新岡さん
さて、週2〜3日程度、ここでコンシェルジュを含む女性支援の仕事をしながら起業準備中(1/29 取材日時点)の新岡さんにもリラコワとの出会いについてお聞きしてみました。
北海道門別町(現 日高町)の出身である新岡さんは、小学校卒業と同時に進学の為札幌へと単身引越します。
中学校・高校卒業後は東京に出て、大学卒業後は人材紹介の会社に入社。その後はITの会社で人事企画業務に携わります。そのまま人事のプロとしてキャリアを積み、好きな仕事を続けたいし出世もどんどん狙っていきたいと、未来を描いていたとき、突然ある壁にぶつかります。
お子さんを預かってくれる保育園がみつからないのです。
50歳や60歳になったら、北海道に移住しようね、それまでは
東京で好きな仕事をバリバリ続けようね、とご主人と話していた新岡さんですが
「予定が20年早まっちゃいましたね」と笑います。
保活の末、札幌にJターンすることになり、保育園はなんとか無事決まったものの、今度は自分のやりたい仕事、やりがいのある仕事がなかなかみつかりません。
学生の頃から、自分のやりたいことを見定めて、その目標に向かって走り続けてきた新岡さんにとって、能力を活かす場が無いというのは、どんなに落ち込んだことでしょう。
新岡さんのユーモアに取材中も笑いが絶えませんでした
ある日、新岡さんはそんなもやもやした思いを知り合いの新聞記者にぶつけます。
「働きたいところがないので、もう自分で起業するんです!!!」
すると、その新聞記者は、
「札幌で女性が起業するなら、まずは「リラコワ」だよ! きっと相談できる人がいるから行ってごらん! 」と値千金のアドバイスをくれたのでした。
結果的に、新岡さんはここで菅原さん達に出合い、起業を実現するのはもちろん、人の輪も手に入れるのです。
(この取材の次の日、新岡さんは、かねてから準備をすすめていた、子連れワーケーションやフリーランスの支援をする会社を立ち上げ、社長としての第一歩を踏み出しました。)
コンシェルジュの結ぶ新たな縁
このあとはランチ会で、そのあとはボードに行くんです! ととっても活動的な小松さん
さて、そんな新岡さんや菅原さんから
「りりちゃ~ん」と呼ばれる女性がいました。
りりちゃん、こと小松りりこさんもリラコワの利用者さんとのことなので、早速お話を伺ってみます。
奈良県出身の彼女は、20歳の時に札幌に来て以来様々な仕事を経験しますが、マッサージの仕事をしていたときに知り合いの社長に紹介をされたことがきかっけでリラコワを訪れます。
そのときのコンシェルジュは、小松さんと話してみて
「子育てしながらとか、お母さん達も好きな仕事を続けられる為に、とか新岡さんと目指しているものが近いな~」
と感じて雑談程度に2人を引き合わせたそうです。
すると年代も近いこともあり、たちまち意気投合。
いざ、具体的に話してみると、やはり、やりたいことがぴったり同じという訳にはいかなくそれぞれの道を進むことにはなりましたが、意見を出し合って、お互いが刺激を受け合う良い関係が築けたのでした。
「良いことだけでなく、悪いことも本音で言ってくれる、めったにない人なんです」
とお互いのことを大切な存在と思っているのが伝わってきます。
自分には無理と、あきらめかけたけど
小松さんはご自身のお母様が、子育てに苦労するのを目の当たりにした経験から
「お母さんになっても気持ち良く働き、気持ち良く生きられる、まわりの人に頼れる世の中、が理想なんです」
と目を輝かせます。
実は、その実現の為に、1年前に手始めとして家事サービス業を手がけてみたのですが、トライ&エラーの繰り返しや、理想と現実のギャップに、
「やっぱり自分には無理なんだ。。。。」
と起業自体をあきらめかけたことがあったそうです。
そんなとき、新岡さんの存在に助けられます。
「自分に無いものを持ってたり、エネルギーのある人のそばにいたい思った。」
と小松さんは当時の心境を振り返ります。
実はその頃、新岡さんも、思い描く事業についていろいろ悩み、落ち込んでいた時期だったんだそうです。
「それでも立ち止まらず行動を続ける姿に、ずいぶん励まされたんですよ、かっこいいなって。」
と小松さんは恥ずかしそうに打ち明けます。
打ち合わせ・交流スペースでは、何人かがあつまると自然に話に花が咲きます
専門的な機関ではないけれど
菅原さんもおっしゃっていましたが、「リラコワ」は専門的知識のある起業支援機関ではないかもしれません。もちろん、具体的な相談があれば、ふさわしい専門の機関を紹介することもできます。
でも、それよりは「リラコワ」は、様々な人と出会って様々な情報を得たり、発見をしたり、刺激を受けたりしながら、ゆっくりゆっくり自分のライフプランとも合わせて、やりたいことを見つけたり育てていく、そんな場所なのかもしれません。
「何かやりたいけど、具体的にはぼんやりしてて、、そんな方が多いんですよ。」
と皆さん口をそろえます。
または、
「よし起業するぞ! と決めた人が外でいろいろ傷つき、打たれたときに帰って来る場所。でもあるんです」
と新岡さん。
例えば金融機関などで、計画にだめ出しをされたり、必要以上に甘さを指摘されてしまったりしたとき、もう一度ちゃんと話を聞いてくれる人がいたり、大丈夫だよ、と励ましてくれる人がいたり、まさに冒頭で菅原さんが語った、起業にまつわる「孤独」を解決してくれる場所にちゃんとなっているんですね。
小松さんは、「リラコワ」でのそういった出合いのおかげで今、再び「お母さんの為の」事業立ちあげに向かって進み始めました。
ちなみにキーワードは「おそうざい」だそうです。
どんな事業になるのか取材陣も楽しみにしています。
どう働くかは、どう生きるか。かもしれません
起業したい! という人はもちろん、何かやってみたいけど何をやりたいかわからないという人も、まずは一度ここ「リラコワ」を訪ねてみてはいかがでしょう。
起業の為に行動というと、少し身構えてしまうけど、素敵な出合いや素敵なミライの為、一歩を踏み出してみる、と言うとそんなに難しいことではない気がしませんか?
なにしろ、ここは「日本で一番ハードルの低いコワーキングスペース」ですから
関連動画
- 女性のためのコワーキングスペース リラコワ
- 住所
札幌市北区北8条西3丁目札幌エルプラザ内
- 電話
011-728-1255(お問い合わせ 札幌市男女共同参画センター)
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