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北海道で暮らす人・暮らし方
湧別町

牛も人も、みんなが気持ち良く暮らせる牧場を目指して20190212

牛も人も、みんなが気持ち良く暮らせる牧場を目指して

オホーツク海の中央部に位置し、北海道の最大の湖であるサロマ湖を有する北海道湧別町は、2009年10月に「湧別」と「上湧別」が合併し、来年で合併10周年を迎えます。オホーツク海とサロマ湖のホタテやカキといった豊富な海産物が自慢ですが、何といっても有名なのはまちのシンボルにもなっているチューリップ。

まちの中心部にある総面積は12.5ヘクタールのかみゆうべつチューリップ公園では、毎年5月から6月にかけてチューリップフェアが開催され、約200品種、70万本ものチューリップが咲き誇り、道外や海外からたくさんの観光客が訪れます。

今回取材に訪れたのはそんな観光地から車で30分ほどのところにある中谷牧場さん。子牛に乳を飲ませる哺乳から、成牛まで育て、搾乳した牛乳を出荷しています。早速、牧場の現場を取りまとめている中谷理恵さんと旦那様の秀太さんにお話を伺いました。

浦河で馬の調教に携わり、酪農の道へ進んだ秀太さん

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秀太さんは1992年に札幌の普通科の高校を卒業後、たまたま目にした求人票をきっかけに、北海道浦河町のとある牧場で競走馬の調教に携わることに。

「レース用の調教ではなく、その前段階。つまり人や環境、そして馬具などに馬を慣れさせる調教だったので、馬が暴れたり、場合によっては蹴られたり、常に危険の伴う仕事でした。過酷でしたが、馬と接するのは楽しかったし、一緒に働く仲間に恵まれたので、頑張って続けましたね」

その後、根室の酪農牧場を経て札幌へ戻り、以前仕事の関係でお世話になった先輩たちと3人で酪農専門の人材紹介の会社を立ち上げました。なぜ「酪農専門」なのでしょうか。

「3人で色々話し合った結果、僕自身の酪農経験が活かせるし、今は酪農の担い手が不足しています。そして何より、他の人材紹介会社がやっていないことをアピールポイントにしたかったんです」

現代の酪農担い手ニーズ、そしてご自身の酪農経験をプラスした人材紹介会社は、思わぬ方向に秀太さんを導きます。

中谷牧場、そして理恵さんとの出会い

nakatani_bokujyou3.JPG本当に仲むつまじいお二人。写真からもその楽しい雰囲気が伝わってくるようです

この会社を通じて知り合った方に「紹介したい人がいる」と告げられ秀太さんが訪れたのはまさに中谷牧場。そこには、いわゆる「お見合い」がセッティングされていたそうです。

「理恵さんもお父さんにも初対面で、もう完全にお見合いって感じで、とにかく緊張しました。いきなり2人でドライブしたんですけど、何を話したらいいのか分からなくて『好きな食べ物は?』みたいな、まるで中学生のような会話でした(笑)」

ある日突然、ひょんなことから酪農を通して出会い、そして結ばれた理恵さんと秀太さん。ご夫婦の牧場での生活や仕事はどんな感じなのでしょうか。

秀太さんが驚いた、中谷牧場の雰囲気の良さ

秀太さんが中谷牧場に来てまず驚いたのは「雰囲気の良さ」だったと言います。

「僕は人材紹介の会社で様々な牧場を見てきましたが、一番気にしていたのは『雰囲気』なんですね。中谷牧場に初めて来た時、スタッフがみんな笑顔で、本当に良い雰囲気だったんです。思わずお父さんに『この牧場はなぜこんなに雰囲気がいいんですか?』と尋ねてしまったんですよ」

nakatani_bokujyou4.JPG女性陣スタッフも仲良く肩組んでポーズ!

そう笑顔で話す秀太さんに、理恵さんが答えてくれました。

「忙しい夏場などはなかなか難しいんですけど、仕事が一段落したり、ちょっと時間が空いたらみんなでご飯を食べに行ったり、花見に行ったり、近くで何かイベントがあったりしたら、みんなで出かけたりしますね」

ちなみに理恵さんのお父様は1999年から2007年まで牧場で働く傍ら湧別町議会議員も務めていました。ご自身がまちづくりに携わっていたからこそ、目配り、気配り、心配りを忘れず、良い雰囲気づくりや働きやすい環境づくりに人一倍気を遣っていたのでしょう。

物心つく前から牧場を継ぐと決めていた理恵さん

nakatani_bokuzyou18.JPG笑顔がとっても素敵で元気いっぱいの理恵さん。

小学生の頃から牧場を手伝っていたという理恵さん。牧場を継ぐと決めたのはいつ頃なのでしょうか。

「実は私自身が記憶にないくらい小さい時から『牧場を継ぐ!』って言っていたみたいなんです。中学生の時にはすでに牧場を継ぐための進路を決めていました。中学卒業後、学校法人酪農学園を運営している江別市の高校へと進学し、帯広畜産大学を経て、人工授精(※)による繁殖の勉強をするために富良野の藤井牧場さんのもとで実習生として1年間働きました」

その後理恵さんは富良野から実家の牧場へと戻り、繁殖の業務を担当することになります。

(※)雄牛から精液を採取して、雌牛に人工的に注入し、妊娠させること。

牧場の将来を見据えて

nakatani_bokujyou7.JPGカメラ目線を決めてくれる中谷牧場の牛さん

目標に向かって真っ直ぐに進んできて「牧場を継ぐ」ということが現実味を帯びてきた理恵さん。

「今まではとにかく牧場を回すことで手一杯で、まわりのことを考えたり、将来のことを考えたりする余裕がありませんでした。それこそ、父の後を追いかけているだけみたいな感じです。でも、今は秀太さんがいることで今まで気付かなかったことに気付けたり、少しずつだけど牧場の将来について考え、一歩一歩前進できているので本当に助かっています。ひとりではいつまでも進めなかったかもしれません」

nakatani_bokujyou12.JPG見つめ合って笑い合うお二人。互いに大切な存在です

秀太さんと二人三脚で頑張ることで、今までできなかったこと、そして見えなかったものが見えてきたそうですが、牧場の将来について考えるからこその悩みもあるようです。

「今までは父の考え方と方針が中心にあって、私は上手く意見が言えずにただ付いていくだけでした。でも、今後は新しいことにもチャレンジするし、私と秀太さんで牧場のことや従業員のことなど、父と一緒に考えてやっていきたいです。そして将来は私たちに牧場を任せてもらえるようならなくてはと思っています」と理恵さんは言います。

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経営者であり、父であり、仕事仲間である...そんな難しい距離感はあるものの「いつまでも父の背中を見ているだけではいけない」と理恵さんは力強く語ります。

ジャージー種の牛乳を使った加工品の販売

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先ほど「新しいことにもチャレンジする」と教えてくれた理恵さん。新たな挑戦とはいったい何でしょう。

「中谷牧場には全国で最も多い乳牛であるホルスタイン種の他にジャージー種という珍しい品種の乳牛を飼育しており、道内で約800頭いるジャージー牛のうち、1割強に当たる約100頭程がいます。ジャージーはホルスタインと比べて搾れる乳量も少なく、飼育に手間もお金もかかりますが、人工授精による繁殖で少しずつ数を増やしていきました。そのジャージー種の牛乳でつくったアイスや飲むヨーグルトなどを販売する予定です」

nakatani_bokujyou13.JPG子牛の可愛さは飽きることがありません

ジャージー種の牛乳でつくったアイスや飲むヨーグルトの販売はお父様の夢だったそうで、隣の佐呂間町の廃校になった小学校を借りて工場を新設し、来年3月を目標に稼働予定とのこと。

牛も人も、みんなが気持ち良く暮らせる牧場を目指して

理恵さんに「今後、どんな牧場を目指したいですか?」と聞くと真剣な表情で答えてくれました。

「牛と人に優しく、そしてみんなが気持ち良く暮らせる牧場にしていきたいですね。何より、私自身がそんな牧場に働きたい。父もハッキリとは言わないですけど、きっと同じだと思います」

そして秀太さんも言葉を継ぎます。

「僕がまだこの牧場の仕事に慣れていない時、上手くいかないこともたくさんありました。でも、そのたびにみんなが励ましてくれました。だからこそ『みんなのために頑張ろう!』って思うんです。ホント、他にこんな牧場ないですよ!」

nakatani_bokujyou8.JPG背の順に並び、スタッフたちと笑い合う空間はなんとも言えず楽しそう

牧場の仕事は厳しい。だからこそ支え合う。
失敗は誰にでもある。だからこそ励まし合う。
こんな牧場で働きたい。だからこそ、自分たちがつくる。

理恵さんと秀太さん、2人の笑顔は中谷牧場のシンボルのように思えました。

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有限会社 中谷牧場
有限会社 中谷牧場
住所

北海道紋別郡湧別町計呂地358-1

電話

01586-4-7006


牛も人も、みんなが気持ち良く暮らせる牧場を目指して

この記事は2018年11月21日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。