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北海道を駆け巡る。道路に惹かれたドボジョ!20180913

この記事は2018年9月13日に公開した情報です。

北海道を駆け巡る。道路に惹かれたドボジョ!

「北海道には台風が来ない」などと言われることもありますが、ここ最近は北海道でも台風による被害が起きています。記憶に新しい2016年8月には、北海道を4つの台風が襲いました。しかもこの時は、立て続けに3つの台風が上陸、1つの台風が急接近したのです。1年間に3つの台風が北海道へ上陸するのは観測史上初めてのことでした。これらの台風は北海道に未曾有な被害をもたらしました。中でも十勝地方を中心として、道路決壊・橋梁流失・路盤流出など交通網への被害は計り知れず、一時、十勝圏と道央圏の交通が寸断された状態にもなりました。

あれから2年経った今、十勝地方の交通網は驚異的な速さで復旧しています。この災害時の復旧事業や交通網である道路や橋梁の整備・維持管理を行っているのが、「北海道十勝総合振興局 帯広建設管理部」です。同部署の事業室事業課 主任の澤部智子さんは、数少ない女性技術職員の一人。澤部さんに入庁の経緯や仕事内容など、これまでについてお話を伺いました。

生まれは東京、育ちは恵庭、就職は北海道。

澤部さんの生まれは東京、お父さまの仕事の都合上転勤が多く、中学生の時に北海道へ引っ越しすることとなり、高校に進学するタイミングで恵庭市に拠点に構えます。高校卒業後は北海道大学で土木工学について学び、その知識を活かし北海道職員・総合土木(建設土木)として入庁されます。

「生まれは東京なので、中学生で初めて北海道に来た時に感じたのが、道路が広いこと!びっくりしたことを覚えています」。

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こんなことから道路という、ある意味マニアックな分野に興味を持ったといいます。「なんで北海道の道路はこんなに広いんだろう?」「道路の傷みが激しいのはなぜだろう?」といった疑問を持ったことなどをキッカケに、大学では土木工学を学ぶ道を選択します。そうして、北海道の道路について調べる中で、地理的なことや、冬には雪が降る気候に関しての工夫など、技術面での発見を重ねる中でさらに興味が湧いてきました。

「高校生の時に、親と北海道に拠点を構えたこともありますが、北海道がどんどん好きになっていましたし、北海道で働こうと決めていました。そこで、自分の興味のある道路に関われる、北海道に特化した仕事はなんだろう?と考えて出した結論が北海道職員になろう、ということでした」。

北海道で働くとなると、例えば公務員だと市町村職員、他にも民間企業などの選択肢もありますが、なぜ北海道職員を選んだのでしょう?と素朴な疑問を澤部さんに投げかけてみると、

「北海道のための仕事、そして北海道全体を見てみたかったんです。市町村職員だとその地域だけに特化してしまうし、民間企業だと道外転勤の可能性も出てくるなと思ったんですよね」。

こうして、澤部さんは北海道職員としての歩みをスタートさせます。

sawabe07.JPG帯広建設管理部のみなさん。

ドボジョ(土木女子)としてのスタート。

澤部さんの最初の配属先は当別町にある空知総合振興局の当別ダム建設事務所。業務内容は当別町のダム建設に伴う、近隣道路の建設です。ダム建設に伴い、周りの道路にも高さが必要になるため、山を切ったり、土を盛ったりと、何もないところに新しい道路を一から作り上げていきます。道路建設の仕事というと現場で工事にあたる作業員のようにも思えるのですが、全く異なるようです。

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「私たち道職員の主な役割は道路など建設事業の計画です。具体的には、地元の方のニーズを把握し、どのような場所でどのような規模のものを作るのか、それにはいくらの予算が必要なのかといったことを立案します。そうして、実際の設計は主に建設コンサルタント、施工は主に建設会社(ゼネコン)が担い、それぞれが連携して事業を進めるのが基本です」。

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建設コンサルタントと建設会社との調整や、施工における工事監督・検定といった役割も澤部さんの仕事です。全体を把握して、調整や指示を出したりと、舵をきる。まるで船長のような役割です。仕事の割合も事務作業:外での作業は7:3くらいとのこと。お話を聞いていると何だかとても難しそう・・・と思ったのですが、澤部さんはこういいます。

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「大きな事業ですから、色々な問題や課題ももちろん出てきます。人員の配置や、資材の高騰化を予算の中でどう対応するかなど、一人じゃどうしようもない時も正直あります。ただ、私たちはチームで業務を行いますので、上司や建設コンサルタントに相談したりと意見交換する中で、みんなでより良い選択肢を見つけ出しています。こうして協力して作り上げた道路が完成した時、この仕事のやりがいを一番感じる瞬間です」。

sawabe03.JPG周りの先輩達にも相談しながらチームワークで仕事を進めます。

嬉しさと責任を感じた地域の方の声。

最初の配属先であった当別町にある空知総合振興局のダム事務所で2年、その後は岩見沢市にある空知総合振興局の出張所で3年、国内大学院での留学を経て、現在は帯広市にある十勝総合振興局で2年目を過ごしている澤部さん。北海道全体に関わりを持っていたかったこともあり、道内各地で働くことには充実感があるといいます。その地域毎、地元の方の声に耳を傾け、いざ工事計画が進むとなると、直接地元の方への説明会や、工事現場付近の個人宅への訪問説明なども澤部さんの仕事です。そんな風に地元の方々と接していると、こんなことがあったんですと澤部さんが言葉を継ぎます。

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「ある道路建設の現場で、工事の総仕上げに立ち会った際に、現場近くの住民の方に『終わったのかい?良かったね、ありがとうね。』と声をかけて頂いたんです。道路を作ることは、計画段階から含めると長い時間を掛け、時には何十年も掛けて完成するものなんです。これまでの長い時間の中で本当にたくさんの方々が関わってきた現場ですし、このような言葉をかけて頂き、とても感慨深い気持ちになりました」。

この時、感謝に対する純粋な喜びとともに、自分自身が関わった道路が何十年も形として残り、その地域の人、ましてやその近隣の人達にとっては、おそらく一生その道路と付き合っていくことを改めて実感し、大きな責任も感じたといいます。
こうした地域との関わりは澤部さんがやりたかった道路を通して北海道と関わることに正に直結していることでしょう。

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旅行好きにとって転勤は好都合!

ここでちょっと一息。日々の暮らしやプライベートについても澤部さんに聞いてみました。

「以前は職員公宅に住んでいましたが、ここ帯広に来てからはちょっと気分を変えて民間アパートに住んでいます。帯広は今年で2年目を迎えましたが、食べ物も美味しくて、一度は住みたいと思っていたので、この地への転勤はすごく嬉しいです(笑)。あと、私は旅行やドライブが好きなので、その時その時に転勤した土地を拠点として、道内いろんなところへ足を伸ばしています。最近では、釧路や旭川に出掛けたりと楽しんでます!」と笑顔で話してくれた澤部さん。

また、転勤で生活が変わると、その地域での新しい発見や好きな旅行の選択肢も広がるのが嬉しいとのこと。ただ、道外の旅行先では職業病か、「舗装の素材が違うな」「北海道にはない作りの道路だな」とついつい道路を見てしまうんだとか。

sawabe06.jpg帯広からの日帰りドライブの一コマ。

ドボジョ(土木女子)の働き方とは?

近年、国全体の取り組みとしてある「働き方改革」。北海道でもその取り組みの一つとして「女性の活躍促進」があります。そんな背景もあってか、澤部さんを含め、北海道職員・技術職員においての、女性の進出も増えてきているとのことです。ただ、土木技術者で見ると女性は14人(2018年7月現在)とまだまだ少ないのが現状。実際に土木技術者として活躍している澤部さんは、こうした女性の活躍についてどのように感じているのか聞いてみました。

sawabe09.JPG澤部さんが工事監督の現場です。

「私は大学で土木について専門的に学んでいたため、特に抵抗はなかったのが正直なところです。実際の業務も事務作業が多かったりと、体力的にも女性だからといって問題はありません。現場でも女性専用トイレを設置したりしているケースもあります。また、周りに事務職の女性職員もたくさんいますので、女子トークをするのにも困ることはないです(笑)。最近でも女性の技術職員が毎年数名ずつ入庁しているので、たまに連絡取り合ったりもしていますよ」。

北海道職員の制度としても、産前・産後休暇、育児休業・休暇・短時間勤務など、仕事と家庭の両立を支援しているため、女性にとっても働きやすい環境が整っているといえます。

sawabe10.JPG同僚とのランチも楽しみのひとつ。

土木の醍醐味、そこにある使命感。

冒頭でも触れた2016年8月に十勝地方を襲った台風。この翌年に澤部さんは帯広建設管理部に着任しました。自身も復旧工事にも関わり、いち早く復旧することに尽力されました。やはり復旧へのスピードが求められる中、大変なことも多かったのでは?と思いますが、澤部さんはこういいます。

「こういう時はやらなきゃいけないっていう気持ちが大きくて、正直大変だとか業務時間がどうとか、あまり思わなかったですね。災害時だけではなく道路建設もそうですが、使命感を持って業務に取り組めるのが、土木の醍醐味ではないでしょうか」。

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現在、技術士や土木施工管理技士といった資格取得に向けても勉強中の澤部さん。最後にこう締めくくりました。

「土木は経験工学ということも言われますが、やり続けることに意味がある仕事だと思っています。経験を積んでやっていくことに価値があり、そこにおもしろさもあるんです。それから北海道職員として土木に関わること、なかなかイメージがつかないかもしれませんが、一人でも多くの方に興味を持ってもらえたら嬉しいですね」。

北海道十勝総合振興局 帯広建設管理部
北海道十勝総合振興局 帯広建設管理部
住所

北海道帯広市東3条南3丁目1番地

電話

0155-26-9005

URL

http://www.tokachi.pref.hokkaido.lg.jp


北海道を駆け巡る。道路に惹かれたドボジョ!

この記事は2018年6月28日時点(取材時)の情報に基づいて構成されています。自治体や取材先の事情により、記事の内容が現在の状況と異なる場合もございますので予めご了承ください。